Sing... うたう            
 今年の桜前線は、少々せっかちなようですね。皆さんはお花見を楽しまれたでしょうか。
 先月15日に「洋装産業新聞」のコラムに私のエッセイが掲載されました。今月は、その文をご紹介いたします。

 幼い頃 母が編んでくれた手作りニットのぬくもりは、いつまでも心に残っています。そんな母が編み針を動かしている横で、見よう見まねでマフラー・手袋を編んだのが、私の編物元年。中学高校時代には、レース編みのテーブルクロス・ドイリー・セーターを編んでは、夏休みの宿題として提出していました。一本の糸から様々な模様が誕生していく不思議さに、ワクワクしながら編んだことが懐かしく思い出だされます。 

 本格的にニットの勉強をし始めたのは、2児の母となってから。良き先生に巡り合い、講師の資格を習得しました。その後は、手芸店で編物を教えていましたが、21年前に自宅で教室を開きました。
 5ヶ月後に第1回目のニット展を開催しました。教室のあまりの狭さに私と生徒達は中に入れず、外でお客様をお迎えしたのが、ついこの間のことのように思い出されます。その後は、近くのギャラリーでニット展を毎年開催し、去年で21回目となりました。
 
 10年目には、当初の私の夢の一つであるファッションショーを、市の文化ホールで開催しました。それまでの10年間は、編物教育協会・おんどりニットフェスタ等の入賞など、何度もショーに参加する機会があり、たくさんの学びがありました。夢は見るものではなく叶えるもの と言いますが、それを実感した10年目でした。
 その翌年からは、ギャラリーの庭園に場所を移し、自然の木々・光や風を舞台にしたショーを開催しました。戸外でのショーは、照りつける太陽・木枯らし・そして雨と、私に試練を与えてくれたこともありました。でも、風に揺れるニット、光を浴びたシャイニーなニットは美しく、計8回行いました。
 
 20年目の一昨年からは、チャペルで開催し、パイプオルガンの生演奏とオペラ歌手との共演にチャレンジし、さらなる夢を実現しました。ニットと音楽と文化の融合、そして自然の中でのファッションショーは、これからも続けて行こうと思っています。
 
 今は、日本デザイン文化協会及び日本編物文化協会に所属し、より深くニットの勉強に励んでいます。ニットは無限の世界と可能性を秘めていて、私を魅了してくれます。夢を一つ一つ実現させてくれたのもニットで、多くの人達に支えられていることを、気付かせてくれました。今はその幸せに感謝する毎日です。

 近年編物をする人が減少し、編物教室も少なくなり日々淋しさを感じています。でも、ニットのぬくもりの中に、愛と夢をプラスすれば、やさしく・やわらかく・美しいニットたちの世界が広がり、ふんわりと包み込んでくれます。そんな魅力を多くの皆さんにお伝えしたいと、毎日編み続けております。
Fukiko
 
SAKURA」
咲いている期間が短くて、潔く散ってしまう桜。
咲きだした頃はワクワクするのに、散っていく姿は美しくもせつない
そんな気持ちになるのは、日本人特有の感情だそうです。

いつ咲くか?と待ちわび・・・ 咲けば散らぬか?と心配になり・・・

「SAKURA」 そんな人間様の想いなど知らぬ存ぜぬ・・・

                                         写真・文 坂井ルミ
夢先案内人


裾からのグラデーションが

美しいパーティードレス

花のモーチーフを

配した帽子がポイント

シンプルだけど

存在感のあるニット