Sing... うたう Feb. 2022
         
 お正月を迎えて早やひと月が経ち、立春を迎えた2月となりました。そして北京オリンピックが開幕しましたが、オミクロン株の猛威が続いており、昨年の東京オリンピックと同様に無観客の開催です。早くマスク無しの生活をと願うばかりです。

 先日、大学生の孫娘から、メールがきました。
おばあちゃんちに、昔使ってたフィルムカメラなあい?
フィルムカメラ?確か捨てずにあると思うよ。大学で使うの?

まじ!!そうじゃないけれど使ってみたいなあと思って・・・。
おばあちゃん達 もう使うことなあい?

もう使わないよ。使ってくれると嬉しいなあ!
嬉しい!!カメラの写真見たいから 画像送ってもらっていい?

ミノルタのコンパクトカメラだけど 長く使っていないから カメラ屋さんでメンテナンスしてもらった方がいいかも。
カワイイ!!ありがとう!そうするね。

 ここ何年も、フィルムカメラを手に取っては、「デジカメの時代も過ぎ、今はスマホの時代だよね。」と呟きながら捨ててしまうには忍びなく元の場所に戻すことの繰り返しでした。そんな時に孫からのメールです。また陽の目をみることになったカメラを手に取り“ここを開けてフィルムを入れるのよね。”“シャッターはここだったかなあ?”“そうだ電池を入れるんだよね。”などと丁寧に汚れを拭き取りながら、家族の行事や旅行に活躍していた頃を思い出しました。孫のところでも再活躍しそうなカメラは、息を吹き返したようにみえました。きっと楽しい思い出をたくさん残してくれることでしょう。

 使い捨てカメラが、若者の間でブームになっていると聞いたことがありました。スマホのバッテリー切れで撮影できなかったとか、スマホを持っていくのを忘れてしまったとか 軽量なのが気に入っているとの声もききます。そこからフィルムカメラへとシフトしていったのでしょう。フォルムやもった感じが好き! フィルムをセットしている感じが好き! どんな写真が撮れたかわからなくて現像までの間ドキドキする! 撮影の設定をするのが面白い!など、ひとつひとつ吟味しては試し、五感に伝わってくるデジタルでは味わえないアナログさが、再ブームになった理由のようです。

 必要な情報をインプットしスイッチオンすると、短時間で縫い目のないニットが完成する
工業用コンピューター編機は、まさしくデジタルの最たるものです。それに反して一目一針と
手を動かしながらの編物は、まさしくアナログの世界です。何を編もうかな? 糸や色はどうしようかな?と編む前からいろいろと考え、また、編む途中に完成したニットを想像するのも楽しみのひとつです。そして完成した時の達成感は、アナログだからこそ味わえる醍醐味です。
 最近編み物人口が減少傾向にありますが、フィルムカメラと同じように、アナログな編み物にも興味を持ってくれる若者が増えることを願うこの頃です。
Fukiko
ニッターズハイ
 ニッターズハイ? ランナーズハイなら知っているけれど・・・と思いながらそのタイトルの漫画本を思わず購入しました。漫画家猫田ゆかりさんが描かれた編み物にハマる男子高校生が主人公の作品です。
 物語の内容は、中学時代は全国も目指せる優秀な陸上選手だったものの、怪我により競技から遠ざかってしまった浜中健斗。失意のまま高校に入学してすぐ、手芸部へと勧誘されるが、「男が手芸なんて変だし」と言ってしまう。ところが「編み物男子」と噂される男子生徒との出会いが、健斗の高校生活を大きく変えることに・・・。糸を編みながら友情を育むストーリーです。
 
 健斗は、編み物男子の指導を受けながら棒針あみのマフラーを編み始めますが、目がそろわず四苦八苦し編んでは解きを繰り返すことに。すると編み物男子から編み物は「トライアルアンドエラー」を楽しむといいよ。と言われます。失敗を重ねながら、問題を解決していくことをトライアルアンドエラーというのだそうですが、その言葉通り編んでは解きを繰り返しながらも、徐々に編み物にハマって
いく健斗です。
そうしてある時、編んでいる途中で周りの音が聞こえなくなり、手が勝手に動き、あと何時間でも編んでいたいような状態になったのです。マラソンやジョギングで、次第に苦しさが増してくるけれど、それを我慢して走り続けるとある時点から、
逆に快感や恍惚感を生じることがあるそうです。その状態のことを「ランナーズハイ」というそうです。まさしく健斗が陥ったランナーズハイと同じような状態になり、「ニッターズハイ」となったのです。
 
 猫田ゆかりさんがこの漫画を描かれた経緯は、2年前くらいから編み物にはまり、編み物をテーマに漫画にすると面白いなと思われていたそうです。そしてその頃、帯状疱疹になってしまって、痛くて漫画も描けないし、本も読めない、寝ることもできなくなって何もできなくなってしまわれました。でもなぜか編み物をしていると、痛みをあまり感じなくなったそうです。そこから、この漫画を描こうと決心されたのだそうです。手芸が心身の辛さや不具合を軽減するというのは、よく聞きますね。
また、男だから女だからという固定観念や偏見という「ジェンダーバイアス」を考える内容にしたかったとも言われています。

 主人公の名前は、浜中健斗・・・ハマナカ?
 編み物男子は、 黒葉 類・・・クロバー?
 ペットの猫は、 だるま ・・・ダルマ?
くすっと笑えるネーミングに、猫田さんのユーモアのセンスが光っています。次号が楽しみです。