Sing... うたう Oct. 2022
         
 10月に入り、澄み渡った秋空で咲く彼岸花の便りが届きました。ちょっぴり感傷的になってしまうこの頃です。
カレンダーをめくると、あと2枚となり日々過ぎ去る速さにため息をついてしまいました。

 立命館アジア太平洋大学(APU)の学長出口治明さんは、日本生命を経て2006年にライフネット生命を創業、2018年から学長に就任されました。しかし、昨年1月に新学部の設置準備の真っ最中に脳卒中になり、右半身麻痺となられました。それから、約1年間復帰のために手足と言語のリハビリに励み、今年の入学式では電動車椅子に座り、元気な姿で祝辞を述べられました。

 出口さんは、体がこれまで通りに動かせず、一時は言葉も失い、社会のひずみを目の当たりにする・・・そんな嘆き悲しんでもおかしくない状況を、まったく悲観されなかったそうです。
 「脳卒中で障害が出ても落ち込まない患者は珍しいそうです。理学療法士さんから『落ち込みませんでしたか』と聞かれたのですが、僕には落ち込む意味がわからない」との出口さんの言葉。
 「確かに手足が不自由だったり、話すことができなかったりすることは事実ですが、病気が起きたのはもう『過去』のことです。変えることができない事実を悲観して立ち止まるのは、時間の無駄です。泣いて時間を浪費するより、現実を直視して、今やるべきことが何かを考えて実行に移した方がよっぽどいい。」だから理事長へ復帰のためリハビリに励まれたそうです。
 そして、「そういう「底力」はもともと人類に備わっていて、強い者や賢い者が生き残るのではなく、変化に適応できた者だけが生き残っていくのです。」「現実をそのまま受け入れ、流れ着いた場所で一生懸命頑張れば次の扉が開かれる。人間には、本能に備わった、いまを生き抜こうとする力があるのですから。」と言われています。何かあるとついついネガティブ思考になってしまう私には、強く心に響く言葉の数々です。

お前はお前でちょうどよい。
顔も体も名前も性も、お前はそれで丁度よい。
貧も食も親も子も息子の嫁もその孫も、
それはお前に丁度よい。

幸も不幸も喜びも、悲しみさえも丁度よい。
歩いたお前の人生は悪くもなければ良くもない。
お前にとって丁度よい。

地獄へいこうと極楽へいこうといったところが丁度よい。
うぬぼれる要もなく卑下する要もなく上もなければ下もない。
死ぬ日月さえも丁度よい。

お前はそれは 丁度よい。

左は、良寛さんの言葉です。

出口治明さんの言葉や岡山ノートルダム清心女子大学理事長をされていた渡辺和子さんが言われていた「置かれた場所で咲きなさい。」とも通じる言葉ですね。

自分を見つめ直すような言葉の数々、
彼岸花の便りと共に私の手元に届きました。
Fukiko
エリザベス女王
 9月8日にイギリスのエリザベス女王が、スコットランドのバルモラル城で老衰のため96歳で死去されました。
 6日には、トラス新首相を任命したばかりでした。スコットランド民族衣装のタータンチェックのスカート姿で、笑顔で握手される姿から、その2日後に天に召されていかれるとは思いもよりませんでした。
 在位最長記録の70年間には、スキャンダルも多々あり、苦悩も多かったそうです。ダイアナさんの死亡の際には、すぐにメッセージを発しない女王に批判の声が多く、王制廃止論が叫ばれたこともありました。

  しかし、明るく笑顔を絶やさない女王の親しみやすい、またお茶目な人柄は、多くの人の心をつかんでいました。またご主人のフィリップ殿下との仲の良さも魅力の一つなのでしょう。女王の戴冠式後の王冠姿を見て、「素敵な帽子だね。どこで見つけて来たんだい?」とユーモアセンスあふれる殿下の言葉に、お二人のウィットにとんだ日々の会話が想像できます。

 女王の死去される前に、2重の虹がバッキンガム宮殿の上空にかかったそうです。またウィンザー城からも見えたとか。まるで映画の中のワンシーンを見るようでした。
 
 そして英国の伝統と歴史を彷彿とさせる厳かな国葬は、世界の人々の心をくぎ付けにしました。
秋らしい深みのある

グラデーションカラーを

多方向に配した

色の変化が楽しい

プルオーバー

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