「 道路にデビューする前に 」 

 富中 昭智 とみなか あきのり

  

    別冊モーターサイクリスト 2007.2  VOICE掲載

 

 

見通しの悪い交差点に近づいたときのこと。自分の前を自転車がすごい勢いで横切っていった。慌ててスピードを緩めて自分の信号を見る。確かに青だ。しかし,こちらがバイクの態勢を立て直している間に,その自転車の姿はそこにはなかった。

最近,こんな光景が特に珍しくなくなったように思うのは自分だけだろうか。それとも自分の住んでいる地域だけの特殊事情? それにしても若い人が多いように見受けられる。

 朝,自転車に乗って急いでいるのは中学生,高校生ぐらいがほとんど。彼ら自身に不安はないのかな? 今までが大丈夫だったから? 万が一事故になっても交通弱者だから自分に責任はないと考えているのだろうか? いたい思いをするのは自分なのに。場合によっては命を落としたり,大怪我をして後遺症が出たりするかもしれない。彼らの多くは今後免許を取得して,間違いなく道路にデビューしてくるだろう。それは原付かもしれないし,場合によってはいきなりクルマかもしれない。そんな人たちは免許を取得する人のうち,ほんの一握りかもしれないが,確実にいると思う。教習所に通ったり,試験を受けたりするから大丈夫と信じたいが,免許を既にもっている人でも最近報道でよく目にするように,飲酒運転などの違反の多さを見ると,そう楽観もしていられない。

 どんな理由であれ,事故が起きてしまうのは悲しい。免許を取得して道路へデビューする前に何らかの形で交通安全について今一度学ぶ機会が必要な時代なのかもしれない。

 

 

→おーとばいザムライ