―夢―
―夢、これは夢…
だってこの人がこんな風に取り乱して泣くはずがないから…必死で叫ぶ声は耳に入らないけれど、口の動きで私の名前を呼んでいることがわかる。私の目が開き、一瞬、彼の瞳に安堵が宿る。流れ落ちる涙を拭うこともせず、私の頬にポタポタと落ちる。
―どうせ見るなら…あの人の夢が見たかった…
唇が動く…最後に、最後にあの人の名前を呼ばせて…
「………」
声を出せたかはわからなかったが、唇であの人の名を唱えてみると、彼の目が大きく見開かれる。そして、私の体は彼に抱きすくめられる。
―ごめんなさい、意地悪だった…いつも困らされてばかりだったから、あなたの反応が見たかっただけなの。
耳は相変わらず音を捉えることはできない、しかし震える彼の体が、慟哭を伝える。
―目が覚めればまた、あなたは私を困らせようとする。目が覚めればまた、いつもの日々が始まる…
でも、それでも、あなたの名前を呼ぶべきだった?こんなに後悔するくらいなら、あなたの名前を…
―ねぇ、ムルタ。それでも私はあの人の名前を呼びたかった。これが最後だから。
目が覚めたらまた、私はあなたのことを思い続けるから。
―だから、泣かないで…
to be continue
〜あとがき〜
これのみドミニオン崩壊時のお話、のつもりです。というか、本当は長編ノベルのプロローグ用に書いたものを単独でも使えそう、と思って使用。あえて言うなら「ナタル編」かな。なんかしゃべり方…女性らしくなってしまいました。