養心館50周年記念誌に寄せて 令和2年夏
剣を通じた人間形成が養心館のめざすところである。道場完成以来、愛知県に就職して、道場で稽古をするのは、盆正月に帰省した折だけであった。ある時、少年部の稽古を見学した。稽古終了後、子供達は正座をしたまま、素読を始めた。『身体髪膚、之を父母に受く、あえて毀傷せざるは孝のはじめなり、身を立て、道を行い、・・・・』、孝経にある一節で、親義別序信(五倫)が養心館のめざす人間関係の在り方。門前の小僧お経を覚える、の諺にある如く、子供の頃から暗唱することで、独りでに身に付いてくるものとの考えから、この素読があったのだと思う。
『剣法秘訣 北辰一刀流 千葉周作述』という書き物がある。千葉周作の孫千葉勝太郎勝胤が、千葉周作から直接指導を受けた弟子から聞き取りをして編集したものである。親父はこれを筆写し、最後に、『昭和五年四月十四日 妹尾養心館井下経広』と記してある。昭和七年武道専門学校への入試面接(面接官の一人が佐藤忠三先生)で、武専受験の理由を問われた時、『武専には内藤先生が居られるから武専へ行けと、中学の恩師(妹尾武俊先生)から言われていたので、そのつもりでおりました』、で合格。剣聖内藤高治は、水戸出身で北辰一刀流。よって、武専の剣道も北辰一刀流の流れを汲んでおり、養心館の剣道は北辰一刀流である。道場の扁額、『道無双』は佐藤忠三先生、『不動心』は妹尾武俊先生の揮毫による。従って、道場で剣道、居合を修行する事により、自ずと先人の影響を受けている。これが養心館である。
新型コロナウィルスの発生で、世界が変わる。この変化に対応していく新しい人材が、養心館から排出していくのを楽しみにしている。 以上、啓策(記)
|