大和王権に於ける 国造成立に関する覚書
ー 先代旧事本紀 第十巻 国造本紀を通して −
1.はじめに
古事記・日本書記の成立時期より遅れて成立したと思われる先代旧事本紀。平安初期には、成立し
たのでありましょう。原本は、既に無く、写本としてのみ存在するという。
江戸時代初期頃までは、古事記・日本書紀・先代旧事本紀は、三代古典と言われていたと言う。その
後、先代旧事本紀 序文の記述から記紀を信奉する人達?から先代旧事は、偽書というレッテルを貼
られたのではという。
今では、記紀で、解明されない事柄が、解明でき得る古典資料としての価値を認められつつあるよう
です。
この旧事本は、原本を書き写す際に、写し手により新しい事柄が少しずつ付け加えられ、今に至った
のではと推察いたしましたが、どうでしょうか。
2.旧事本紀 第十巻 国造本紀に現れる国造
本紀には、国造は、144と記されていますが、実際は、135しか記載されていないという。
国造本紀の記載順に記録していくと。
1 大和国造・・・三輪山西山麓の一部の地をさし、その地を統括した豪族。神武天皇の御代に成立。
2 葛城 〃 ・・大和国葛上・下郡で、奈良県南葛城郡金剛山の麓の地。 〃
3 凡河内〃・・・大阪府東部の地。 〃
4 和泉国司(造カ)・・ 元は河内国。712年元正天皇の御世、和泉国和泉郡に管理者を置き、国とした。
5 摂津国司造・・・職員令に摂津職があり、兵庫県東部の古い国。倭名抄に、「摂津国。延暦13(794)
年職を停め、国と為す。」とある。桓武天皇の御世に職を改め国と為す。と記述。
6 山城国造・・・畿内に属した一国。現 京都府南部。延暦13(794)年山背を改め、山城と為す。神武
天皇の御代に成立。
7 山背 〃 ・・成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
8 伊賀 〃 ・・東海道に属した一国。現 三重県北西部。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば
頃)の御世に成立。孝徳天皇(7世紀中頃)の御代に伊勢国に属し、天武天皇(7世紀末
頃)の御代に、元に戻る。
9 伊勢 〃 ・・東海道に属する一国。現 三重県の大部分。神武天皇の御代に成立。
10 嶋津 〃 ・・東海道に属した一国。現 三重県志摩半島の部分。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4
世紀半ば頃)の御世に成立。出雲臣の祖が、初代国造。
11
尾張 〃 ・・成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。{初代国造 小止ヨ命。}
12 三河 〃 ・・ 〃 初代は、物部連の祖。
13 穂 〃・・・雄略天皇の御世に初代は、葛城臣族。元三河国宝い郡。
14 遠淡海〃・・・遠江国。現 静岡県の一部。初代国造は、物部連(総領的伴造で、ニギハヤヒの子宇摩
志麻ジ命の後裔)。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
15 久努 〃 ・・現 遠江国山名郡久努郷の地。初代国造は、物部連(総領的伴造で、ニギハヤヒ六世孫
の末裔)。仲哀天皇(景行天皇の次の次の天皇でありますが、7世紀前半カ)の御世に成立。
16 素賀 〃 ・・現 遠江国佐野郷素賀村カ。神武天皇の御世に成立。
17 珠流河(スルガ)国造・・駿河国。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。初代国
造 物部連(総領的伴造で、ニギハヤヒ七世孫の後裔)。
18 いほ原国造・・駿河国いほ原郷。初代は、吉備氏の祖で、景行天皇の御世、吉備氏は、蝦夷征伐に功あり
いほ原国に封じられ、成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
19 伊豆 〃 ・・東海道に属する一国。伊豆半島全域と伊豆諸島を含む地。仲哀天皇(景行天皇の次の次の
天皇でありますが、7世紀前半カ)の御世に成立。孝徳天皇(7世紀中頃)の御世に、駿河国に
属し、天武天皇(7世紀末頃)に元に戻る。初代は、物部連の祖(物部氏の支族カ)。
20 甲斐 〃 ・・東海道に属した一国。現 山梨県。景行天皇の御世に成立。
21 相武(サカム)国造・・東海道に属する一国。相模国で、現 神奈川県の大部分。初代は、出雲臣の祖の末裔。
成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
22 師長(シナガ)国造・・相模国、餘綾郡磯長郷カ。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成
立。初代は、茨城国造の祖の末裔。
23 む邪志(ムサシ)国造・・武蔵国。初代は、出雲臣の祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば
頃)の御世に成立。
24 胸刺(ムサシ)国造・・ 武蔵国。初代は、岐閉(きへ。陸奥国石城郡苦麻村 現 福島県双葉郡大熊町熊周辺)
国造の祖(出雲臣)の末裔。
25 知々夫(チチブ)国造・・ 武蔵国秩父郡。崇神天皇の御世に成立。
26 須恵国造・・・ 上総国周准郡の地付近。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
初代は、茨城国造の祖の末裔。
27 馬来田(ムマクダ)国造・・ 上総国望陀郡(現 千葉県木更津市周辺の地)。初代は、茨城国造の祖の末裔。
成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
28 上海上(カミウナカミ)国造・・ 上総国海上郡(現 千葉県市原市)付近の地。初代は、出雲臣の祖の末裔。
成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
29 伊甚(イシミ)国造・・・ 上総国夷隅郡(現 千葉県夷隅郡勝浦市)付近の地。初代は、安房(アワ)国造(養老年
間に上総国の南部を分離した国)の祖(出雲臣の祖カ)。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
30
武社(ムサ) 〃 ・・・ 上総国武射郡(今は、山武郡)。初代は、和邇臣の祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次
の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
31 菊麻(キクマ)〃 ・・・ 上総国市原郡菊麻付近の地。初代は、む邪志(ムサシ)国造の祖の末裔。成務天皇(景行
天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
32 阿波(アワ) 〃 ・・・ 現 千葉県南部の地。安房(アワ)国。初代は、出雲氏族の後裔であるが、安房の膳大伴部
の管理者であった為、大伴と称した。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御
世に成立。
33 印波(イニハ) 〃・・・ 下総国印旛郡の地。初代は、意富臣の祖の末裔。応神天皇の御世に成立。
34 下海上(シモツウナカミ)国造・・ 下総国海上郡付近に地。初代は、上海上国造の祖の末裔。応神天皇の御世に成立。
35 新治(ニイバリ)国造・・・・ 常陸国新治郡の地。初代は、安房(アワ)国造の祖の末裔と同じ。成務天皇(景行天皇の
次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
36 筑波国造・・・ 常陸国筑波郡の地。初代は、天津日子根命の末裔カ。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半
ば頃)の御世に成立。
37 茨城 〃 ・・ 常陸国茨城郡の地。初代は、天津日子根命の末裔。応神天皇の御代に成立。
38 仲 〃 ・・・ 常陸国那珂郡の地。伊予(イヨ)国造と同祖(神八井耳命の末裔)。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
39 久自(クジ)国造・・ 常陸国久慈郡の地。初代は、物部連の祖(ニギハヤヒ六世孫の末裔)。成務天皇(景行天皇の
次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
40 高(タカ)国造・・・ 常陸国多賀郡の地。初代は、出雲臣の祖の八世孫。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半
ば頃)の御世に成立。
41 淡海(アフミ)国造・・・ 近江国野州郡の地。初代は、開化天皇皇子の三世孫。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4
世紀半ば頃)の御世に成立。
42 額田国造・・・ 近江国坂田郡カ、美濃国池田郡額田郷カ。初代は、和邇臣の祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次
の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
43 三野前(ミヌノミチノクチ)国造・・ 美濃国本巣郡の地。初代は、開化天皇皇子の子。開化天皇(崇神天皇の父 7世紀
末〜8世紀始め頃カモ)の御世に成立。
44 三野後(ミノノミチノシリ) 〃 ・・ 場所は、不詳。初代は、物部連の祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世
紀半ば頃)の御世に成立。
45
斐陀(ヒダ)国造・・・ 飛騨国の地。初代は、尾張連の祖(ニギハヤヒ四世孫)の末裔。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
46
上毛野(カミツケヌ)国造・・・ 上野国の地。初代は、崇神天皇の皇子 彦狭嶋命は、東山道12ヶ国を平定し、国造に。
崇神天皇の御世に成立。
47
下毛野(シモツケヌ) 〃 ・・ 下野国の地。仁徳天皇の御代に、毛野国を上・下に分け、初代は、崇神天皇の皇子6世
孫下毛野君奈良。
48 道奥菊多国造・・・ 陸奥国菊多郡(磐城国<旧陸奥>石城郡)の地。初代は、師長(シナガ)国造の末裔。応神天皇
の御代に成立。
49 道口岐閉 〃 ・・ 常陸国多珂郡道口郷の地。初代は、師長(シナガ)国造の末裔。応神天皇の御代に成立。
50 阿尺(アサカ)〃 ・・ 岩代国(旧 陸奥)安積郡の地。初代は、阿岐国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
51 思(オモイ) 〃 ・・・ 陸奥(岩代国)信夫郡カ、陸前国志田郡カ。初代は、阿岐国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天
皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
52 伊久(イク) 〃 ・・ 陸奥(岩代国)伊久郡の地。初代は、阿岐国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
53 染羽(シメハ)〃 ・・ 陸奥国標葉郡(磐城国そう葉郡)の地。初代は、阿岐国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
54 浮田(ウキタ)〃 ・・ 陸奥国宇田郡(磐城国相馬郡)の地。初代は、崇神天皇の5世孫。成務天皇(景行天皇の次の天
皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
55 信夫(シノブ)〃 ・・ 岩代国(旧 陸奥国)信夫郡の地。初代は、阿岐国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
56 白阿(シラカハ)〃・・・ 磐城国(旧 陸奥国)白河郡の地。初代は、阿岐国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
57 石背(イハセ) 〃 ・・ 岩代国(旧 陸奥国)岩瀬郡の地。初代は、師長(シナガ)国造の祖の末裔。成務天皇(景行天皇
の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
58
石城(イハキ) 〃 ・・ 磐城国(旧 陸奥国)岩城郡の地。初代は、師長(シナガ)国造の祖の末裔。成務天皇(景行天皇
の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
59 那須国造 ・・・ 下総国那須郡の地。初代は、孝元天皇の皇子の孫。景行天皇の御代に成立。
60 科野(シナノ)国造・・ 信濃国の地。初代は、神八井耳命の孫。崇神天皇の御代に成立。
61 出羽(イデハ)〃 ・・ 東山道に属した国。元明天皇の御世、和銅5年。陸奥と越後の二国分けてから、出羽国を置く。
62 若狭国造・・・ 北陸道に属した一国、現 福井県西部の地。初代は、阿部氏族。允恭天皇の御代に成立。
63 高志 〃 ・・・ 越国(越前・越中・越後・能登加賀諸国。)。初代は、阿部氏族。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4
世紀半ば頃)の御世に成立。
64 三国 〃 ・・・ 宝亀9年9月に、越前坂井郡三国湊という記載あり、初代は、竹内宿禰の三男蘇賀石川宿禰の後裔。
成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
65 角鹿(ツヌガ)国造・・・ 越前国敦賀郡の地。初代は、吉備臣の祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半
ば頃)の御世に成立。
66 加我(カガ) 〃 ・・・ 加賀国。初代は、初代は、垂仁天皇の皇子の末裔。雄略天皇の御代に成立。孝徳天皇の御世
に、越前国になり、嵯峨天皇の御世の弘仁10年に、越前国を割きて、加賀国とされた。
67 加キ国造 ・・・ 地域不詳。初代は、能登国造と同祖(崇神天皇皇子)末裔。仁徳天皇の御代に成立。
68 江沼〃 ・・・ 加賀国江沼郡の地。初代は、蘇我臣と同祖(竹内宿禰の4世孫)、反正天皇の御世に成立。
69 能登 〃 ・・・ 能登国。初代は、崇神天皇の皇子の孫。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に
成立。
70 羽クイ 〃 ・・・ 能登国ハクイ郡。初代は、垂仁天皇の皇子の子。雄略天皇の御代に成立。
71 伊禰頭(イミズ)国造・・・ 越中国射水郡の地。初代は、蘇我臣と同祖(竹内宿禰の孫)、成務天皇(景行天皇の次の天
皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
72
久比岐(クビキ) 〃 ・・ 越後国頸城郡の地。初代は、大倭国造の祖の末裔。崇神天皇の御代に成立。
73
高志深江 〃 ・・ 越後国頸城郡沼川郷深江村の地。加賀北陸に栄えた大豪族 阿部氏一族の末裔。崇神天
皇の御代に成立。
74
佐渡国造 ・・・ 佐渡島の地。初代は、阿岐国造と同祖(安芸国の土豪)の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
75
丹波(タニハ)国司・・ 元明天皇の御世(和銅6年)に丹波国を割って、丹後国を置く。
76
但ジ麻(タジマ)国造・・ 但馬国、現 兵庫県北部の地。初代は、垂仁后妃の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
77
二方(フタカタ) 〃 ・・・但馬国二方(美方)郡二方郷の地。初代は、出雲国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の
次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
78
稲葉(イナバ) 〃 ・・・ 因幡国、現 鳥取県東部の地。初代は、開化天皇の皇子の子。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
79
波伯(ホウキ) 〃 ・・・ 伯キ国、現 鳥取県西部の地。初代は、出雲臣の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
80
出雲国造 ・・・ 現 島根県の地。初代は、出雲臣族の祖の11世孫。崇神天皇の御代に成立。
81
石見(イハミ)国造・・ 現 島根県西部の地。初代は、紀伊国造と同祖の末裔。崇神天皇の御代に成立。
82
意岐(オキ) 〃 ・・ 隠岐国、現 島根県 隠岐の島諸島で一国を形成。初代は、孝照帝の末裔カ。応神天皇の御世
に成立。
83
針間(ハリマ)〃 ・・ 播磨国、現 兵庫県南部の地。初代は、景行天皇の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
84
針間鴨(ハリマカモ)国造・・ 播磨国加茂郡上鴨郷の地。初代は、毛野氏族の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
85
明石国造・・・ 播磨国明石の地。初代は、大倭直と同祖の末裔。応神天皇の御世に成立。
86
美作 〃 ・・ 現 岡山県北部の地。元明天皇の御世(和銅6年)に備前国を割って、同国を置く。
87
大伯(オオク)国造・・ 備前国邑久郡付近の地。初代は、神魂命の七世孫。応神天皇の御世に成立。
88
上道(カムツミチ)国造・・ 備前国上道郡の地。初代は、孝霊天皇の孫 吉備武彦命の末裔。応神天皇の御世に成立。
89
三野(ミヌ) 〃 ・・ 備前国御野郡の地。初代は、孝霊天皇の孫 吉備武彦命の末裔。応神天皇の御世に成立。
90
下道(シモツミチ)〃 ・・ 備中国下道郡の地。孝霊天皇の孫 吉備武彦命の末裔。応神天皇の御世に成立。
91
加夜(カヤ) 〃 ・・ 備中国賀陽郡の地。初代は、孝霊天皇の孫 吉備武彦命の子。応神天皇の御世に成立。
92
笠臣(カサノオミ)〃 ・・ 備中国の一部の地カ。初代は、孝霊天皇の皇子 稚武彦命の後の者。応神天皇の御世に成立。
93
吉備中縣(キビノナカツアガタ)国造・・ 備中国後月郡縣主郷の地。初代は、神魂命十世孫。崇神天皇の御代に成立。
94
吉備穴(キビノアナ)国造・・・ 備後国安那郡の地。初代は、和邇臣と同祖(孝照天皇の皇子 天足彦国押人命)。景行
天皇の御代に成立。
95
吉備風治(キビノホムヂ)国造・・ 備後国品治郷の地。初代は、天日槍の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世
紀半ば頃)の御世に成立。
96
阿岐(アキ)国造・・・ 安芸国安芸郡の地。初代は、安芸国の土豪の孫。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半
ば頃)の御世に成立。
97
大嶋(オオシマ)〃 ・・ 周防国大島郡の地。初代は、出雲臣族の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば
頃)の御世に成立。
98
波久岐(ハクキ)〃・・周防国(現 山口県)吉敷郡の地。初代は、阿岐(アキ)国造と同祖の末裔。崇神天皇の御代に成立。
99
周防国造・・・・ 現 山口県東部の地。初代は、茨城国造と同祖の末裔。応神天皇の御世に成立。
100
都怒(ツヌ)国造・・・ 周防国都濃郡の地。初代は、竹内宿禰の裔 紀臣の末裔。仁徳天皇の御代に成立。
101
穴門(アナト)〃 ・・・ 長門国(現 山口県西部の地)。初代は、河内桜井屯倉の田部の伴造家の末裔。景行天皇の御
世に成立。
102
阿武(アム) 〃 ・・ 長門国阿武郡阿武郷の地。初代は、神魂命(カムミムスビノミコト )十世孫。景行天皇の御世に成立。
103
紀伊国造 ・・・ 現 和歌山県全部と三重県南部の地。初代は、神皇産霊命(神魂命)五世孫。神武天皇の御世に成立。
104
熊野 〃 ・・・ 紀伊皇牟婁郡熊野(紀伊半島南部一帯の地)。初代は、ニギハヤヒ五世孫。成務天皇(景行天皇の
次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
105
淡道(アワヂ)国造・・・ 淡路島全島で一国。初代は、神皇産霊命(神魂命)九世孫。仁徳天皇の御世に成立。
106
粟(アハ) 〃 ・・・ 阿波国(現 徳島県)。初代は、神皇産霊命(神魂命)九世孫。応神天皇の御代に成立。
107
長(ナガ) 〃 ・・・ 阿波国那賀郡の地。初代は、名方郡御間都比古神社の祭神の九世孫。成務天皇(景行天皇
の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
108
讃岐国造 ・・・ 現 香川県。景行天皇の皇子の末裔。応神天皇の御代に成立。
109
伊余(イヨ)国造・・・ 伊豫国(現 愛媛県)。印幡(下総国)国造と同祖末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀
半ば頃)の御世に成立。
110
久味(クミ) 〃 ・・ 伊豫国久米郡の地。初代は、神魂命(カムミムスビノミコト )十三世孫。応神天皇の御代に成立。
111
小市(ヲチ) 〃 ・・ 伊豫国越智郡の地。初代は、ニギハヤヒの子 ウマシマジノミコトの末裔。応神天皇の御代に成立。
112
怒麻(ヌマ) 〃 ・・ 伊豫国野間郡の地。初代は、阿波国造と同祖末裔。仲哀天皇皇后の御代に成立。
113
風速(カゼハヤ)国造・・・ 伊豫国風早郡の地。初代は、ニギハヤヒ六世。応神天皇の御代に成立。
114
都佐(トサ) 〃 ・・・ 土佐国(現 高知県)。初代は、阿波国那賀郡の地の国造と同祖で、摂津三島の豪族の末裔。
成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立)
115
波多(ハタ)国造 ・・・ 土佐国幡多郡の地。崇神天皇の御代に成立。
116
筑志(ツクシ)〃 ・・・ 古代北九州地方の国名。孝元天皇の皇子の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀
半ば頃)の御世に成立。
117
筑志米多(ツクシメタ)国造・・・ 肥前国三根郡米多郷の地。初代は、近江息長氏の末裔。成務天皇(景行天皇の次の
天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
118
豊 国造 ・・・ 豊前・豊後の国。初代は、出雲臣族。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
119
宇佐(ウサ)国造・・・ 筑紫国宇佐郡の地。初代は、高御産霊命の孫。神武天皇の御世に成立。
120
国前(クニサキ)国造・・・ 豊後国国埼郡の地。初代は、吉備臣の同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇 4世紀
半ば頃)の御世に成立。
121
比多(ヒタ) 〃 ・・・ 豊前国日高(比多)郡の地。初代は、葛城国造と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。1
122
火(ヒ) 国造 ・・・ 肥前・肥後の国。初代は、豊後(多臣族)、大分国(後の大分郷)の末裔。崇神天皇の御世に成立。
123
松津(マツツ)国造・・ 地域不詳。初代は、ニギハヤヒの子ウマシマジの末裔。仁徳天皇の御代に成立。
124
未羅(マツラ) 〃 ・・ 肥前国松浦(万豆良)郡の地。初代は、物部氏族の穂積臣と同祖の末裔。成務天皇(景行天皇
の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
125
阿蘇国造 ・・・ 肥後国阿蘇郡の地。初代は、多氏族、神八井耳命の末裔。崇神天皇の御世に成立。
126
葦分(アシキタ)国造・・・ 肥後国葦北郡の地。初代は、吉備氏族の祖。景行天皇の御代に成立。
127
天草国造 ・・・ 肥後国天草郡の地。初代は、神魂命(カムミムスビノミコト)十三世孫。成務天皇(景行天皇の次の天皇
4世紀半ば頃)の御世に成立。
128
日向(ヒムカ)国造 ・・ 現 宮崎県。初代は、景行天皇の皇子三世孫。応神天皇の御代に成立。
129
大隅(オオスミ)〃 ・・ 和銅6(713)年に日向国を割って、大隅国を置く。景行天皇の御代に同国を平定。仁徳朝の
御代に国造を置く。
130 薩摩国造 ・・・ 現 鹿児島県の大隅半島を除いた地域。景行天皇の御代に平定。仁徳天皇の御代に・・・・。
131 伊吉(イキ)嶋 造・・・ 壱岐島。継体天皇の御世に筑紫国造 磐井に従う新羅人を討ち、上毛布直を造とする。
132 津嶋縣直 ・・・ 神武天皇の御世、高御産霊命の五世孫を津嶋縣直とする。
133
葛津(フジツ)国造・・・ 肥前国藤津(布知豆)郡の地。初代は、神魂命(カムミムスビノミコト)の末裔。成務天皇(景行天皇
の次の天皇 4世紀半ば頃)の御世に成立。
134
多ネ嶋(タネノシマ)国造・・・ 種子島。和銅6(713)年に、日向国の4郡を割って、大隅国とする。天長元(824)年に、
多ネ島を廃し、大隅国に属さしむ。
実際は、134の国造の記述でありました。
3.初代の国造成立時期内訳
*
神武天皇期に成立 ( 崇神天皇の時期カ )
大和・葛城・凡河内・山城(以上畿内)、紀伊・伊勢(以上関西)、素賀(遠江)、宇佐(九州) ・・・8ヶ国(畿内 4、
関西 2、中部 1、九州 1)
*
崇神天皇期に成立 ( 3世紀末頃カ )
知々夫(武蔵国秩父)・上毛野(上野国)・下毛野(下野国)(以上関東)、科野(信濃国)・久比岐(越後国)・高志
深江(越後国)(以上中部)、出雲(島根県)・石見(島根県)・吉備中津縣(備中国)・波久岐(周防国)(以上中国)、
波多(土佐国)、火(肥前・肥後国) ・・・・12ヶ国(関東 3、中部 3、中国 4、四国 1、九州 1)
*
景行天皇期に成立 ( 4世紀前半 )
甲斐・那須(下総国)(以上関東)、吉備穴(備中国)・穴門(長門国)(以上中国)、葦分(肥後国) ・・・・ 5ヶ国(
関東 2、中国 2、九州 1 )
*
成務天皇期に成立 ( 4世紀中頃 )
山背(794年以前の国名)・伊賀・嶋津(志摩半島)・熊野(紀伊)(以上関西)、尾張・三河・遠淡海(遠江国)・珠流
(駿河国)・いほ原(遠江国)・斐陀(飛騨国)・三野後(不明)・高志(越国)・三国(越前国)・角鹿(越前国)・能登・伊
禰頭・佐渡(越中国)(以上 中部)、相武(相模国)・師長(相模国)・む邪志(武蔵国)・須恵(上総国)・宇来田(上総
国)・上海上(上総国)・伊甚(上総国)・武社(上総国)・菊麻(上総国)・阿波(安房国)・新治(常陸国)・筑波(常陸国)・
仲(常陸国)・久自(常陸国)・高(常陸国)(以上 関東)、淡海(近江国)・額田(近江国)(以上 近畿)、阿尺・思・伊久
・染羽・浮田・信夫・白阿・石背・石城(以上 陸奥国 東北)、針間・針間鴨(播磨国)・吉備風治(備後国)・阿岐(安芸
国)・大嶋(周防国)・長(阿波国)・但ジ麻・二方(但馬国)・稲葉(因幡国)・波伯(鳥取県)(以上 中国)都佐(土佐国)
(四国)、筑志・筑志米多・葛津(肥前国)・天草(肥後国)(以上 九州)・・・・58ヶ国(関西 6、中部 13、関東 15、
東北 9、中国 10、九州 4、四国 1 )
*
仲哀天皇期に成立 ( 4世紀末頃カ )
怒麻(伊予国)
*
応神天皇期に成立 ( 4世紀末 )
印波・下海下(下総国)・茨城・道口岐閉(常陸国)(以上 関東)、道奥菊多(陸奥国)(以上 東北)、意岐(隠岐)・
明石(播磨国)・大伯・上道・三野(備前国)・加夜・笠臣(備中国)・周防(山口県)・粟(阿波国)(以上 中国)、讃岐
(香川県)・久味・小市・風速(伊予国)(以上 四国)、日向(宮崎県) ・・・ 19ヶ国(関東 4、東北 1、中国 9、
四国 4、九州 1)
*
仁徳天皇期に成立 ( 5世紀前半 )
都怒(周防国)淡道(淡路島)松津(不詳)、大隅(鹿児島県)薩摩(鹿児島県) ・・・5ヶ国(中国 2、九州 2、不詳
1)
*
反正天皇期に成立 ( 5世紀中頃カ )
江沼(加賀国)
*
允恭天皇期に成立 ( 5世紀中 )
若狭(福井県)
*
雄略天皇期に成立 ( 5世紀後半 )
穂(三河国)、加我(加賀国)、羽クイ(能登国) ・・・ 3ヶ国
*
継体天皇期に成立 ( 6世紀前半 )
伊吉(壱岐島)
*
和銅6(712)年に成立か。
出羽(東北)、多ネ嶋(種子島) ・・・2ヶ国
*
3ヶ国については、良くわからない国であり、除外してあります。
国造については、ほぼ6世紀前半頃には、確定したようでありましょうか。7世紀後半には、飛鳥浄御原令(689年)
により、天武天皇による官僚政治を規定したようであります。7世紀中頃には、それぞれの郡司には、在地の有力首
長(国造)が、任用されていったのでは・・・。天智天皇の頃のことかと。
4.初期国造で出自の分かる者の内訳
全国造 135 内出自の分かる国造 75 約56%
・ 天皇の皇子・・16ヶ所 (中部5 関東3 九州3 近畿2 四国1 中国1 東北1)
・ 出雲臣 ・・14ヶ所 (関東9 中国2 中部・近畿・九州 1)
<千葉県>
・ 物部連 ・・12ヶ所 (中部5 四国2 近畿・関東・九州・中国・不詳 1)
<静岡県>
・ 神魂命 ・・ 9ヶ所 (中国3 九州2 近畿2 四国1 不詳 1)
< 山陽道中心カ
>
・ 天津日子
根命 ・・ 5ヶ所 (関東4 中国1)
<千葉県>
・ 竹内宿禰
・・ 4ヶ所 (北陸3 中国1)
・ 安部氏族
・・ 3ヶ所 (北陸3)
・ 吉備氏 ・・ 4ヶ所 (中部2 九州2)
・ 神八井耳
命(多氏) ・・ 4ヶ所 (九州2 中部1 関東1)
・ 葛城臣
・・ 2ヶ所 (三河1 九州1)
・ 尾張連 ・・ 2ヶ所 (尾張1 飛騨1)
全ての国造の数の56%しか国造の出自が判りかねますが、それでも、大和朝廷の成立時の様子は、垣間見
られるのではなかろうか。
日本書紀による国譲りの話等は、出雲臣出自の国造の多さから何等かの推察が出来るのでは・・。また、物部
連出自の多さも目に付く。
物部名は、全ての地域の氏族が、持ちえた部民の総称ではないかと。
竹内宿禰系・安部氏族・吉備氏・葛城臣系は、天皇家に対峙出来えた氏族ではありましょうが、敗れ去った氏族
でありましょう。しかし、徹底的に壊滅されず、生き残ったのでありましょう。
そうした状況が、この先代旧事本紀 第十巻 国造本紀に記述されていると言えるのではないかと。これを記述
した者は、物部一族の者ではないかと言われる所以でありましょう。
5.国造本紀に記述される国についての雑感
現在の県域の広さではなく、もっと狭い村単位くらいの広さを表す国を想定しているのでは・・・。国造とは言うもの
の、雄略天皇以降の頃の国造という大きな力を持ったものではないかのように思える。むしろ、実質支配した豪族
のような感じがしてならない。
とすれば、その地域に、やってきた頃を記録しているに過ぎなく、その後 本来の国造として、存在した氏族の記録
と捕らえれば、尾張地域に限ってみれば、3世紀頃に尾張氏は、流入してきたといえますし、本紀の内容に合致する
といえましょう。
また、神武天皇の頃に成立した国は、畿内が中心であり、後の畿内での主だった国でもあった。やはり、こうした時
期は、崇神天皇の時期と重なるのでは・・・。