ガールズ&パンツァー 1〜12話

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第1話「戦車道、始めます!」

予想以上におもしろそうだったので。

 そんな今回のお話は…
 西住みほは大洗女子学院の転校生。実家を離れ寮暮らしを始めたばかり。クラスでもまだ友達もなくひとりで過ごすことが多い。
 そんなみほに声をかけてきたのが武部沙織と五十鈴華だった。3人はあっという間にうち解ける。
 そこに現れたのは生徒会長の角谷。「必修選択科目なんだけどさぁ……。『戦車道』取ってね、よろしく」。
 わざわざ戦車道がない大洗女子を選んだみほは困惑する。悩むみほをよそに戦車道のオリエンテーションが始まる。
 以上公式のあらすじ。

 別に戦車オタクでもミリタリマニアでもないので、「戦車と少女」の組み合わせによくある「萌えなんちゃら」なんだろうなーくらいに思ってはいたのだが、公式のチーム分けなど見るとカメさんチームとか、あんこうチームなどなど異様にのほほんとしており、のほほんミリタリものなら見よっかなーなどと思っていたら、以外にも良く出来ていたし、なかなかおもしろかった。
 で、今回のお話は戦車を操る「戦車道」なるものが乙女のたしなみとされている架空の世界で、家が戦車道の家元で戦車になにかトラウマがある主人公「西住みほ」は、戦車道がいやで転校し一人暮らしをしている。友達も出来て楽しい学校生活であったが、選択必修科目で戦車道が復活する事となり、生徒会から戦車道を選択するようにと横暴なことを言われてしまうのだが……。という話。
 第1話ということもあって、戦車が登場するのはアバンと最後だけで、戦車道にトラウマがある主人公が紆余曲折あって、また戦車道をする事となるまでを描いているのだが、そこへ行き着くまでを短い尺ながら上手くまとめてあって感心。
 メインキャストである主人公西住みほと武部沙織、五十鈴華がどのような人物で、どういう関係を気付くのか、そして戦車道を生徒会から無理矢理進められ、戦車道がイヤでせっかく転校してきたみほの悩みと葛藤、メインキャストの友情を良く描いている。
 アバンでは戦車で戦闘している部分を見せておいて、こういう物語であるということを示しておきながら、今回の内容としては戦車が動くところはまったく無く(オリエンの映像は除く)、タイトル通り戦車と同様メインである少女たちを描き、ただ可愛い女の子が戦車に乗って「イエー!」ってだけではないのが良い。
 きっとおそらく「戦車」はメインである事に違いないだろうが、戦車というだけで物語は成り立たない。それを動かす人があってはじめて物語が回るのだ。
 なんだかちょっと頼りなさそうな主人公みほは転校してきたばっかりでまだ友達がいないようだ、というところから始まって、そんな彼女に沙織と華が声をかける事から話が動き出す。程なく打ち解け合う三人だが、そうなる様子は割と短い尺になっていて、それはきっと全体的な尺の関係もあろうが、それでも彼女らの人となり、みほのピュアさであったり、沙織の人懐っこさであったり、華の優しい気配りであったりをしっかり見せているので、その短い尺の間に仲良くなってしまう彼女らが気にならない。
 正直な話をすれば、劇中時間的にたった2日(?)でここまで仲良くなるものか?とは思うものの、生徒会の横暴な勧誘というイベントを起こしてトントン拍子に進ませて気にさせる暇を与えないのは上手いだろう。
 ともあれ、ひとりぼっちだった主人公が念願の友達を得て楽しい学校生活を送れるようになったと思ったところに、上記した生徒会のイベントで上がったテンションを一気に落としてしまい、さらには自分はやりたくない戦車道を、オリエンテーションの経て沙織も華も興味を持って選択科目で戦車道をとりたいと言い出す始末。
 せっかく戦車道と関わりのない所に来たというのに、やっとできた友達に一緒にやろうと誘われてしまうみほ。部屋でひとり葛藤し、翌日ふたりの前でやはりどうしてもやりたくない事を話す。もう友達ではなくなってしまうかもしれないと思ったろうみほであったが、沙織と華は悩ませて悪かったとみほと一緒の科目を選択する。ここまでみほが沙織と華という友達ができた事にとても喜んでいる様子を見せてきただけに、みほの心中を察する事が出来るし何よりその友情が気持ちいい。
 そして、戦車道を選択しなかった事で生徒会から呼び出しを受けたみほに沙織と華が彼女の手を繋ぎ、学校にいられなくするぞと言う生徒会の横暴にも屈せずみほを庇い続ける。ここが今回のクライマックスであろう。
 生徒会と友達の言い合いを聞きながらまたもみほは葛藤する。戦車に乗りたくない自分と本当は戦車道やりたいのに自分と一緒が良いとしてくれた友達。その間に挟まれたみほは意を決し「戦車道、やります!」と言う。さっきまでどうしてもやりたくないと言っていたみほがやると言いだしたのだから沙織と華が「えぇ〜っ?!」となるのも当然だが、このイベントの後にみほ自身が言うように、そんな自分の気持ちを考えてくれるふたりの事が嬉しかったのだ。自分の苦い思い出のためだけに、こうまでしてくれる友達を不利な状況に追い込むような事はしたくなかった。こういう事からもみほがふたりに声をかけられ、そして友達として接してくれることが彼女にとってどれほど嬉しかったのかを感じられるではないか。
 先にも述べたが、たった2日でここまでの友情?というのはあるものの、みほがふたりと友達になれた事がどれほど嬉しい出来事であったかが、ありありと分かり感情移入させられているので、尺の短さを気にさせない見事なまとまりと共に、これからこの仲良し三人娘が戦車道を通してどう友情を深めていくのかを気にさせてくれる。やはり物語は感情移入させてなんぼ、なのである。
 最後は彼女らの住む街が、なんでか空母の上に成り立っており、「どゆこと?」と思わせて引っぱるのだからこれまた上手いこと作ってあるじゃないか。

 ともあれ、ただ女の子が戦車でドンパチやるだけなのかと思っていた所、予想に反して厚い友情を見せてくれて、見ていてとても気持ちがよかったのと共に、これからの彼女たちがどうなっていくかとても気になります。
 おもしろいアニメになってくれると良いなー。

第2話「戦車、乗ります!」

細かい所でおもしろいなぁ。あと、やっぱほのぼのしていて良い。

 そんな今回のお話は…
 戦車道をやることを選んだみほ。最初の仕事は、戦車道を選んだメンバー全員で学校周辺に放置された戦車を探すことだった。
 沙織と華と戦車を探すみほは、近くにいた優花里にも声をかける。戦車も無事揃い、メンバー全員で洗車をする。
 放課後も一緒に過ごした4人は、みほの部屋で夕食とともに食べるのだった。
 翌朝、みほは登校途中にいまにも倒れそうな女の子を発見する。彼女は成績トップだが遅刻常習犯の冷泉麻子だった。
 以上公式のあらすじ。

 お話的には後に「あんこうチーム」のメンバーとなる秋山優花里・冷泉麻子と知り合い、戦車道の方はアバウトな自衛官・蝶野 亜美によっていきなり実践練習が始まった。という話。
 戦車関連よりも、みほと友人たちの方が良く描かれていて、上記したように秋山優花里・冷泉麻子と知り合う話なのだが、今回麻子の方はちょっとフラグ立てただけで、みほの友達が優花里を加え3人になりました。ということの方がメインのような気がしないでもない。
 しかし今回は見せるべき所が多々あって、戦車の捜索から始まり、優花里の事、みんなでお食事会、麻子の事、その他のチーム、そして初めての戦車を1本に上手くまとめてあって感心。まぁ前回みたいな盛り上がり所は無いのだけど、ほのぼのとしたみほたちの学校生活と戦車が上手く折り重なっており、よくよく考えれば全くミスマッチではあるのだが、ほのぼのしたまま戦車動かしている事にあまり違和感を感じないのだから良く出来ている。
 やはり今回はまず、新参メンバーの秋山優花里だろう。公式のキャラ紹介には「なによりも戦車が好き!」とあっり正しく戦車オタク的で、戦車に関連する事に異様にテンション上がってしまったり、それを指摘され、我に帰って恥ずかしがったりする様は愛嬌があって可愛い。しかしそっちよりもそれ以外の方が気になったりする。
 公式キャラ紹介には「みほに憧れてチームに参加した」とあって、知り合う前は物陰からみほを見つめていたり、明らかにみほを憧憬の念で見ている。みほの戦車道の経歴はまだよく分かってはいないのだが、密かに憧れている人間がいるのだから、それなりの経歴を持っているのではなかろうか。
 そこでだ。戦車大好きな優花里と現在戦車にトラウマを持ち、あまり積極的に関わりたくないみほが今後どうなるかを気にさせるではないか。
 優花里としては有名な家元の出である事だし、自分と同じく戦車が好きなのだろうと思っているのは、戦車を洗車したあとに「早く乗りたいですね」と語りかけた事でも分かる。みほはあの通りけっこうなピュアさなので優花里を疎ましく思う事は無いだろうが、今となっては好きじゃない戦車と戦車好きの彼女にどう向き合っていくのか。また憧れの人物が今は戦車を避けていると知った優花里がみほに対してどうするか。まぁこんなほのぼのしているアニメだし、第1話のアバンで普通に戦車を駆っていたみほなので、なんだかんだで解決しちゃうんだろうけど、前回みたいにまたそういう所で厚い友情が展開されるのではないかと期待してしまう。
 それともうひとつ、優花里はあれだけ戦車好きなら、なんで戦車道が盛んな学校へ行かなかったのだろうか。大洗女子学園に来てから戦車にハマったのかしらねー。ってゆーか、その辺は語られるのかしら?

 個人的に今回のメイン所はみほの部屋へみんなをご招待してのお食事会である。
 意外や意外で、家事に関して一番使えるのが沙織だったてのもさることながら、隠れメガネっ娘だったとは。ま、メガネっ娘はともかく、その後のガールズトークを聞く限り、なるほどな家庭力ではありますな。あぁそういえば、男子が肉じゃが好きなのはホント都市伝説なので女子の皆さんはあんま信用しないように(笑)。
 さて、肉じゃがはともかく、皆さんをお見送りしたあと、みほが「転校して良かった!」と満面の笑みで言い、普段の彼女ならやらなさそうなスキップしながら自室へ戻るという浮かれっぷりを見ても、みほが戦車云々よりも友達の方に重きを置いている事が分かる。戦車道はやっぱりイヤだけど、みんなと一緒だからというのがみほの本音だろう。むしろ彼女は戦車道なんかよりも、このお食事会みたいなことの方がよっぽどしたいコトなのだ。こういうキャラクターの心情がよく表れているのは良い。
 そんなみほがこれからどうして前回のアバンみたいに活き活きと戦車を駆るようになるのかの心の変遷を、これからきっと上手く描いてくれるだろうことを期待できるではないか。この「どうなっていくのかなぁ」と思わせてくれるのは大事だろう。そう思わなければ続きなんぞ見ないからな。
 こんな特に大事件が勃発するような事の無い物語で、続きを気にさせるのだから上手いこと作ってあると言えるのではないだろうか。

 その他気になった所と言えば、まず沙織が挙げられる。というのも、彼女がみほを良く見ていて気遣っている様子が良いのだ。
 アバウトな自衛官に西住家の人間と悟られ話を振られて困っていると、すぐさま自衛官に質問して話題を変えるし、テレビで姉のまほが出て消沈するみほを見ても、同じくみほの気持ちを切り替えさせる。恋愛体質(?)でみほの周りでは一番今時の娘な沙織だが、こういう意外にも友情に厚い様子を見せてくれるのだ。
 また細かい所だが、自衛官に話を振られた件で、みほがうしろを振り向いて沙織が自分を思って話題を切り替えた事が分かり微笑む様も良い。こういう小さい事でも積み重なって彼女らは友情を深めていくのだなぁと思えるし、そういうちょっとした動作でそれと分かるように作られている点も上手い。
 細かい所と言えば、今回は妙に細かい所で凝っているというか、さりげない事をしてくれていておもしろい。
 まず戦車の捜索の件だが、みほたちが山林の中で見つけるのは良い。しかし他の3両がどうしてそこにある?というような、断崖絶壁の裂け目の中だったり、水没していたり、小動物の飼育小屋の中だったりして笑ってしまった(笑)。水没していた戦車なんてダメになっていそうな気もしますが。
 また、そんな戦車たちを生徒会が「あとの整備は自動車部に今晩中にやらせる」とか言い出すし。いやもう夕方ですよ?間違いなく完徹ですよね。サラッとそんなこと言いますけど、なんて横暴なんだ生徒会。まぁ第1話でも「横暴は生徒会に与えられた特権だ」って言ってましたけど。
 そんな生徒会会長は、戦車に乗り込む際、背が小さい事もあって足がかからないどころかジャンプすらしないで広報の河嶋さんを呼ぶので持ち上げてもらうのかと思ったら……踏み台にするのかよ!(笑)それにもまして踏み台にされることを疑問に思わない河嶋さんもどうなんだと思わざるを得ない。
 そしてアバウトな自衛官登場のシーン。輸送機からパラシュート付けて戦車で落下はまぁ百歩譲って良いとしよう。それで学園長の車に豪快にぶち当たった上に踏みつぶしていくのだが……学園長の車って形から察するにF40じゃねーか!そんなことをしでかしておきながら戦車からひょこっと出てきて、そんなことがまるで無かったかのような爽やかさで「こんにちわー!」だもんな(笑)。もうこれだけでこの自衛官が「こーゆー人なんだな」と分かるんだから見事な演出である。

 今回は実践練習の最中で終わったのだから、次回はドンパチメインかしらねー。みほが西住流の師範の娘と他のチームにバレてしまった事で標的にされてしまったようだし。
 みほがどんなポテンシャルを見せてくれるのか、また最後のメンバー麻子がどうみほたちの中に入ってくるかが楽しみです。


第3話「試合、やります!」

まさかお風呂シーンがあるとは。

 そんな今回のお話は…
 戦車演習場でみほたちが操るIV号戦車がぶつかりそうになったのは麻子だった。なりゆきで戦車に麻子が乗り込んだ直後、IV号戦車は砲撃を受けて操縦手の華が気絶する。
 バレー部チームと歴女チームに狙われ絶体絶命の危機に、IV号戦車を操って見せたのは麻子だった。
 窮地をしのいだIV号戦車は反撃に転じる。校内練習試合が終わり、大浴場で初めての試合の感想を語り合うIV号戦車の面々。麻子の参加も決まり、5人で改めてポジションを決める。
 以上公式のあらすじ。

 お話は最後のメインキャスト麻子がみほたちのあんこうチームに加わり、聖グロリアーナ女学院と親善試合することとなって試合が始まった所で引っぱった。なるほど1話のアバンはこの親善試合だったのかー。
 さて、まずは前回からの初めての実戦ですが、劇中麻子が言っていたように、みほたちのチームが勝ったというよりは他が脱落していくので戦闘としては特に面白味はないのだけど、その特になんでもない戦闘に緊張感と盛り上がりどころ、そして見応えを作っており感心。
 西住流家元の娘であることがバレて標的にされるみほたちの駆るIV号戦車D型(以下IV号)は他のチームの砲撃に驚いた沙織によって逃げの一手。吊り橋を戦車で渡ろうとするも、華は運転に不慣れで落ちそうになってしまう。そこへ砲撃を喰らい衝撃で華が失神してしまう。
 戦車で吊り橋なんか渡れるのかなぁーなんて思っていた所に不慣れな運転もあって落ちそうになってしまい、さらに砲撃を喰らって操縦士の華が気絶。まぁ冷静に考えなくとも展開的にはやはりみほの力を見せたいはずなので、なんとかなることは分かってはいるものの、逃げられない吊り橋の上、しかも操縦士の気絶というところから、どうやって逆転させるのかを気にさせてくれるし、なによりこれまでずっと見てきた仲良しの彼女たちがどうなってしまうのだろうかと思わせるのと同時に、やはりみほの力の片鱗を期待してしまうじゃないか。
 そんななんとかなることは分かってはいるものの、どうするんだろうなぁと思っていると、直前でIV号戦車D型に乗り込んだ麻子が、学年主席という類い稀な頭脳を持つキャラクターであることを示す設定を活かし、華に替わって見事な操縦で体勢を立て直すことから逆転劇が始まる。
 他のチームが初めての戦車ということもあってIV号に当てられない中、逆にみほたちが砲撃を命中させていくのだが、見所は初めての砲撃時である。砲塔を回転させ、みほの「撃て!」の発射命令までに間が取ってあるのだ。みほの「発射用意!」で停車させて、砲手の優花里が標準器を覗き、IV号の砲を真正面から映す。この間がみほたちのチームが初めての砲撃を「するぞ〜するぞ〜」とワクワクさせてくれる。
 対して発射後から命中までは気持ちが良いほどのスピード感だ。ただそれまでの差が良いだけではなく、発射から命中までのシークエンスを短いカットで分けて、短い時間の中で、「なにが」「どうなったか」がちゃんと分かるのが素晴らしい。
 引き金を引いてIV号の砲が火を吹く様子を違う角度から2カット。IV号内部で装填された砲弾の薬莢(で、いーんですかねー?)が排出される様子。III号突撃砲F型(以下III突)に向っていく砲弾。命中し煙を噴き白旗が揚げられるIII突。これらはたった1、2秒程度の時間だがこのスピード感とヒットした高揚感もさることながら、この一発でピンチを一転させた気持ち良さと言ったらない。
 またIV号内部で初めての砲撃に、ヒットしたことではなく砲撃をしたことの衝撃が今まで感じたことのないショックで、みほ以外が唖然とする様がまたおもしろいではないか。自分も戦車に乗って砲撃を体験したのなら、きっと彼女たちのようになるのではないかと思わせてくれる。また個人的にはIII突に砲弾ヒットする直前にちょっとスローがかかるのも良い。その瞬間に動作を敢えて遅くさせることで手応え感を出しているのだ。この辺の演出は上手い。
 III突の後の砲撃はこの初めての砲撃ほどの発射シークエンスは描かないのも興味深く、次の八九式中戦車甲型(以下八九式)の場合は、ちょっと引いたアングルで八九式の砲弾はIV号の脇を通り抜け、IV号から発射された砲弾が飛んでいき八九式に命中し車体がノックバックする様子まで。38(t)戦車B/C型(以下38t)に至っては、IV号の後ろからのカメラアングルで、IV号の砲が火を吹くと一瞬遅れて画面奥の38tが煙を拭くというワンカットだけだ。
 初めての砲撃は彼女たちとって特別な体験なので細かく描いているが、その後は第三者目線で戦車での砲撃戦は実際このようなスピード感なのであることを示している(いや、実際見た事は無いんでホントにそうなのかどうかは知らないんですけどね/笑)。同じ砲撃だが場面によって違った演出をしてくるのだから上手い。
 尺的にはAパートの前半で終わってしまうこの初めての演習だが、上記の通り見事な見応えであった。

 みほたちのチームの勝利で終わった練習試合後はお風呂シーンでちょっとビックリしてしまった。沙織のお胸が豊かなのもさることながら、脇を見せてくれるんだからその手の者としてはたまらん。
 そんな脇フェチなことは放っておいて、初めての実戦に感激な沙織たちであったが、やっぱり車長はみほが良いということになる。沙織・華・優花里から勧められたみほは、「私なんか全然……」とか言いつつも、皆によろしくと頼まれ一念発起した表情になってそれを了承する。
 本来は自分に戦車道の才能が無く責任のある立場に向いてはいないと思っているのだろうが、やっと出来た友達に頼られ、その想いに応えたいという彼女の気持ちがよく表れている。またその後、沙織がお尻がビリビリするからとクッション敷いたりと思い思いに私物を持ち込んだり、他のチームは戦車を塗り替えてしまったりして、辟易した表情の優花里が「あんまりですよね?」と問うと、みほは唖然とした表情から一転、笑って「楽しいね」と返す。戦車で楽しいと思ったことなんて初めてだと。
 最初は沙織たちが一緒にやろうと誘っても、どうしても戦車に乗りたくないと言って俯いていたみほが、今は戦車が楽しいと言って笑うのだ。その彼女の心の変遷もさることながら、戦車で笑うみほを見て、沙織と華が微笑むのだ。無理をさせてしまっているかもしれないと思っていたかもしれない彼女たちであるが、今こうして戦車で素直に笑えるみほに喜んでいる彼女たちのさりげない友情が見ていてほっこりします。タイトル通り、戦車と少女たちをメリハリ付けて描いている点も好印象だ。

 さて、最後のメンバー冷泉麻子ですが、みほたちと紆余曲折あってメンバーになるのかと思っていたら、幼馴染みだった沙織に、頭脳明晰の替わりに(?)極度な朝寝坊な所為で単位が足りていないことをつかれてやむを得ずという感じだったのはちょっと残念ではあった。
 でもまぁ幼馴染みであるが故に、割と偏屈な麻子を懐柔する沙織という点では、長い付き合いだからこその友情とも言え、5人の中でもそれぞれ違った関係性を作っていると考えれば良く出来ている。色々あってみんなでひとつの強固な絆を作るプリキュアとは違って、それぞれがそれぞれに違う関係性を作ってひとまとまりとするのは、むしろ等身大の女子高生していて自然なのかもしれないな。
 ともあれ、聖グロリアーナとの親善試合で5時起床となったため、ねぼすけな麻子を遅刻させないため、IV号でお迎えし空砲鳴らして起こしたり、空母の上から陸に上がり次週ついに決戦です。どーでもいーけど、みほたちは毎回空砲鳴らして麻子を起こす気なのか?(笑)

 そんな今回気になったことが色々ありまして、まず前回で戦車道は十分安全に配慮されていると優花里が言っておりましたけど……どう考えても砲弾の直撃喰らったら人は粉になっちゃいますよねぇ。今回吊り橋でIII突に一撃喰らったシーンはみんな戦車から顔出していたし、戦車に当たったから良かったものを初めての戦車なんだから、出した顔に当たったかもしれないことを考えるとちょっと恐ろしいですよね。一体どの辺が十分安全に配慮されているのか知りたい所だが、きっとそこは突っ込んではいけないんだろうなぁ(笑)。
 それから何故か空母の上で暮らしているみほたちですが、沙織の口から「昔はみんな学校が陸にあった」と意外な設定が語られた。ということはだ。今はみんな学校が空母の上にある、ということなのか。しかも学校の規模によって空母の大きさも違うらしく、聖グロリアーナの空母は大洗よりもふた回りくらい大きかったですな。いったい何がどうして学校が空母の上に存在することとなったんですかねー。というか、空母上にある街は、そういうことを考えると学校のための街ということなんですかね? 謎は尽きない。
 最後は「あんこう踊り」。みほは転校してきたから知らない様ですが、他の皆さんからすると、一生ネタにされるくらいとっても恥ずかしい踊りのようです。それがどんなか知りたいのはともかく、そこで沙織・華・優花里が、勝てばいいし負けたら自分たちも一緒に踊ると言ってくれたことは、みほにとってやっぱり大きなことなのではないだろうか。
 負けてしまってあんこう踊りやりたくないとかよりも、自分のことを思ってそういってくれる友達が出来た、それを確認できたことを素直に受け止めて喜ぶみほの笑顔がステキであった。

 というわけで、あんまりにもおもしろかったので随分と長文になってしまったが、まぁおもしろかったんだからしょうがない。
 次回、初めての対外試合で隊長に任命されたみほの手腕で、全国大会準優勝したことのある強豪をどう打ち破るか、またみほたちがこの試合を機に友情を深めていくかが楽しみです。


第4話「隊長、がんばります!」

くぉら!一年坊!!

 そんな今回のお話は…
 大洗の郊外で始まった聖グローリアーナ女学院との試合。みほが考えた大洗女子の作戦は「こそこそ作戦」。
 「こそこそ隠れて、相手の出方を見て、こそこそ攻撃を仕掛けたいと思います」。
 偵察に出たIV号戦車は、聖グロリアーナの戦車隊を引きつけるため砲撃を仕掛ける。IV号戦車を追って迫ってきた聖グロ戦車隊を、一斉に迎え撃つ大洗女子の各チーム。
 しかし、実力差のため、逆に聖グロの一斉攻撃にさらされピンチに陥ってしまう。生徒会チームと1年生チームが脱落した時、みほが下す決断とは……
 以上公式のあらすじ。

 お話は聖グロリアーナ女学院との親善試合をAパートで、Bパートからは華と華の実家の話と全国大会に出場し一回戦の相手が強豪サンダース大学付属高校に決まるというお話。
 タイトル通り、戦車と女の子を半分ずつやるんだから、正に看板に偽り無し。試合で高揚感のあるAパートと華道の家元の娘である華が母に戦車道をしている事を知られてしまい反対されるという割としっとりとしたBパートで構成されている。
 まずはなんと言っても前回からの聖グロリアーナとの親善試合だろう。結果から言ってしまえば負けだが、みほの力で限りなく引き分けに近い負けになった。
 生徒会の河嶋さんの立てた当初の作戦は、まぁ何せ初心者ばっかりなので、みほが懸念していた通りに逆包囲されていきなりのピンチですよ。
 まぁそれというのも、普段冷静な河嶋さんは妙に興奮していて、囮役となったIV号が視界に入ったとたん撃ち出しちゃうし、なによりIV号と元バレー部の八九式以外は38tは金ピカだし、III突はのぼり立ててるし、一年生チームのM3中戦車リー(以下M3)はピンクだしともう遠目からバレバレですもんねー(笑)。みほがバラバラに砲撃しないで履帯(簡単に言うとキャタピラね)狙えって言ってんのに河嶋さんは興奮しちゃって聞きやしねぇし。しかしアレだね。河嶋さんは意外と使えないよね(笑)。
 まぁ河嶋さんはともかく、38tは履帯はずれちゃうし、一年坊共ときたら戦車放り出して逃げるし!敵前逃亡は世が世なら銃殺だっつーの。その後の展開を考えたら、M3が残ってたら「もしかした」かもしれなかったからなぁ。まぁけど、その敵前逃亡はBパートで活きるので、上手いこと考えてる。
 ともあれ、みほたちのIV号とバレー部の八九式、歴女チームのIII突が市街地まで戦略的撤退してからがこの試合のおもしろい所である。
 自分達の庭である大洗の街に誘い込んで状況を有利に運ぶのだが、III突が狭い路地で待ち構え付けていたのぼりでカモフラージュしていたり(ここで爆笑してしまったよ/笑)、八九式が立体駐車場から出てきたりと、見事に奇襲が成功するのだけど、戦車で戦っているというのに戦争っぽさを感じさせないほのぼのさが良いではないか。
 戦車道という武芸(スポーツ?)が乙女のたしなみである架空の世界を表しているようで、本来「兵器」という人殺しの道具である戦車を、そのように感じさせないし、街のみんなが観戦していて、ビルの屋上やらから手を振ったり、歩道に普通に人がいる中を戦車が走っていったり、戦車が店に突っ込んでも「これで新築できるぜ!」「縁起良いな」「ウチにも突っ込まねぇかな」などと、戦車道とはこういう認識なのであるということを示していて、この物語のほのぼのとした雰囲気を作り上げている。

 試合はIII突が一両撃破するものぼりを立てているのが仇となり撃破されてしまう。しかしコイツら、III突は車高が低いからとか言って狭い路地に入ったはいいけど、のぼりが見事に現在位置を示していて案の定、木の塀越しに撃たれて撃破されるとかアホだろ(笑)。対して八九式はおしかったねー。マチルダII 歩兵戦車 Mk.III/IVの後ろのタンク(?)の所に当てちゃったみたい。撃破出来ずに逆に逃げられなくなって撃破されてしまい。グロリアーナ残り4両に対し、大洗はみほたちのIV号だけになってしまう。
 と思いきや、履帯が外れて脱落したかと思われていた生徒会の38tがやってきてピンチを脱出と思い気や、意外と使えない河嶋さんは至近距離だというのに見事に外し集中砲火を浴びてしまうのだから笑える(笑)。
 で、ここからがみほの本領発揮ですよ。38tが撃破されているうちに一撃離脱して一両撃破。通りを回り込んで壁を上手く利用して2両撃破。いやぁ壁を回り込んで敵が出てくるのを待つのは、私もバーチャロンフォースでよくやるので(出てくると思わせておいて際で止まると、出てくる前提で攻撃してきた敵機の隙を狙えるんですよねー)やるなぁと思ったよ。そして隊長機チャーチル歩兵戦車 Mk.VIIと一騎打ちです。
 突撃と見せかけて直前で右側面に回り込み一撃。しかし聖グロリアーナの隊長ダージリンはそれを直前で読んだかIV号にあわせて砲塔を回し一撃。発射はIV号の方が早かったもののチャーチルを撃破するには至らず、逆にチャーチルの砲はIV号を撃破した。くそー装甲の差かー。
 こうして初めての対外試合は幕を下ろしAパートが終わる。

 Bパートからは、まずは約束通りの「あんこう踊り」の披露から始まり、その後祖母に顔を見せにいくという麻子を除く4人で街を散策、の途中で華の母親五十鈴百合と出会う。あまり事情を知らない優花里が戦車道の事を口にしてしまい、華道でなく戦車道を選択した華に百合は戦車道を止めるように言うが、華の決意は固く、勘当されるような形になってしまった。というのが大体の流れ。
 前回から気になっていたあんこう踊りは、ピンクの全身タイツにあんこうの帽子をかぶって踊るという、まぁ思っていたよりかは変な踊りではなかったものの、思春期の女子としたらそら恥ずかしいだろう。なにせぴっちぴちの全身タイツなので身体のラインがバッチリですし、胸の豊かな方々はそらまぁ「ぶるんぶるん」ですからねぇ。どーでもいーけど、ED見るとあんこう音頭は作詞がシリーズ構成の吉田玲子、作曲が監督の水島努となっています。ホンマかいな。
 さて、Bパートの見所は華の実家に行ってからで、何故戦車道をやっているか理解できず反対する母に、華は生けても生けても何かが足らないような気がする事、そしてなにより「可憐で繊細」な五十鈴流にはない「力強さ」身につけたいのだとして戦車道を辞めないと宣言する。
 その言葉にみほは、はっとした表情を見せる。道は違えど同じ家元の娘で戦車から逃げてきてしまった彼女だが、自分の家の流派には無いものを身につけたいとする華に、何か思う所があった様子だ。
 華はいつか母が納得いく花を生けてみせれば分かってくれるはず、そのためにがんばるのだと穏やかな表情で言う。そんな華にみほも穏やかな笑顔で「私もがんばる」と返す。その表情と言葉からみほがこの一件で何を得たのかは詳しくは分からないが、断固反対する母を押切り勘当されるような形になっても、自分の気持ちを変えずに貫いて、いつもと同じ穏やかな彼女でいる華を見て、戦車道を随分と前向きとらえる事が出来たのではないだろうか。また、試合後にダージリンから姉のまほとは随分違うと感想を述べられた事を見ると、みほの戦い方は「西住流」とは違うのだろう。そう考えるとみほは戦車道と言うよりかは「西住流」から逃げていたのかもしれない。でも、今回の一件を経て、家元の娘と言えど、その型にはまる事こそが唯一の正解というわけではないことを朧げながら感じたのではないだろうか。
 その後空母に帰ると、敵前逃亡した一年坊たちが待っていて、戦車を放り出した事を謝り、みほたちの活躍を見てこれからはがんばりますと決意を見せる。また好敵手と認めた相手にしか紅茶を贈らないとする聖グロリアーナから紅茶セットと、まほとの試合よりおもしろかったまた公式戦で戦いましょうとする手紙をもらい、みほは「次は勝ちたいです」と言う。
 戦車道から逃げてきた彼女だが、今ここに至って自分らしく戦車に向き合えるようになった。それもこれもみほが転校し沙織たちに出会ってこそである。一旦全てを捨てることで、そこから新たに見える事だってあるのだ。
 その後から全国大会の抽選会へ話は飛び、一回戦で強豪サンダース大学付属高校と当たる事となった。優勝候補の一角だけあって、何十輛も戦車を保有する所を見せて引っぱった。
 次回からはどうも全国大会編のようで、きっとダークホースとなるだろう西住みほ率いる大洗女子学園の活躍と、そんな中でも忘れないだろう少女たちの様子を期待していきたい。

 さて、個人的に気になった所としましては、試合で沙織がいきなりみほを「みぽりん」と呼び出しましたな。沙織以外はみんな名字か名前にさん付けなんだけど、沙織としてはもっとフレンドリーになりたくてあだ名つけたんですかねぇ。劇中その「みぽりん」に言及されませんでしたが(笑)。またBパートで華のうちの奉公人新三郎に、「やだ、目が合っちゃった!」などと抜かしており(笑)、その恋愛体質的なキャラクターを見せてくれて楽しい。
 そういえば、沙織はまだ優花里の事を呼んだことないですよね。あんまり趣味があわなさそうなので、やっぱ少し距離おいているのかしらねー。
 あと、先刻大会の初戦がサンダースに決まった時に、意外と使えない河嶋さんが「どんな事があっても負けられない、負けたら我々は……」などと言っており、思えば戦車道が随分と昔に無くなったというのに復活させて、イヤがるみほを半ば無理矢理引っぱり込んだのだから、戦車道を復活させた事は生徒会的に何か裏がありそうですなぁ。
 サンダースと言えば、抽選で大洗がサンダースの隣を引くと歓声があがり、サンダースと思われる娘たちが「やったー!」と喜んでおりましたな。まぁ高校野球で言う所のお礼の拍手みたいなもんですが、ふふふ。吠え面かかせてやるぜサンダース!

 しかしあれだね。全国大会だっつーのに16校しかないってことは、やっぱ戦車道って下火なんですかねー。つか大洗がフツーに全国大会の抽選に出てるってことは、予選もないってことか?!


第5話「強豪・シャーマン軍団です!」

なるほどなるほど。

 そんな今回のお話は…
 第63回戦車道全国高校生大会がいよいよ始まる。みほが抽選で引き当てた1回戦の相手は、シャーマン軍団を率いる強豪サンダース大附属高校。
 抽選会後、みほたちが、戦車喫茶でお茶をしていると、黒峰森女学園の選手がやってきた。その中にいるみほの姉、まほ。
 「…まだ戦車道をやっているとは思わなかった」。黒峰森はみほがかつて通っていた高校。どうしてみほは黒峰森を去り、戦車道のない大洗女子に転校してきたのか・・・。
 初戦が近づき様々な思いが交錯する中、みほは作戦を練る。
 以上公式のあらすじ。なんか「黒峰森」となってますが、正解は「黒森峰」です。あらすじ作ってる人、ちゃんとせーよ。

 お話は前半で「少女たち」、後半で「戦車」で、今回も看板に偽り無しの少女と戦車をちゃんとやってくれているんだから頭が下がる。しかも前回疑問に思っていた設定をちゃんと回収してくれるのだから良く出来ている。
 Aパートは全国大会の抽選後にみほが姉のまほと邂逅。一緒にいた逸見エリカに嫌味を言われ、怒る沙織たちとは対照的に沈むみほ。沙織たちの友情や、いかにもな黒森峰の悪役っぷりもいいのだが、私としてはむしろ、ここで分かった色々な事の方が興味深かった。
 まずは前回も言っていた全国大会なのに異様に少ない参加校ですが、戦車道のイメージを壊さないよう強豪校だけが出場する、というのが暗黙のルールとなっているからだそうだ。まぁ冷静に考えてしまえば、1クールでみほたちが決勝戦をするために、その間をちょうど良い回戦数にしたかったわけですが、そういう都合を設定で上手いことカバーしているのと同時に、保守的とも言える戦車道の世界を見せ、そういうしがらみにとらわれない大洗女子がダークホースとなって保守で守られた強豪を打ち砕いていくであろう事を期待させてくれるじゃないか。
 それに一役買っているのが悪役の存在である。ここまでみほたちの様子をしっかりと見せられ、彼女らに感情移入している身としては、黒森峰に一泡吹かせたいと思わざるを得ないし、まぁちょっと考えてみても1クールの物語で主役たちが中途半端な所で負けるはずがない事は重々承知なので、そういう意味でもこれからみほたちが快進撃していくであろう事の期待に胸が膨らみワクワクとさせてくれる。無名の大洗女子が強豪を次々と打ち倒して決勝で黒森峰の前に立つ、そんな先の展開を気にさせて引っぱっているんだから上手い。
 次に黒森峰が昨年の準優勝校で、それまで9連覇していたという情報。これはみほの過去に引っ掛かってくる、のだろう。
 逸見エリカとの話で優花里があの試合のみほの判断は間違っていなかったと擁護したのだが、まぁそこから考えればみほの判断で戦況がひっくり返って試合に負けた、で、昨年準優勝ということは、おそらくそれは去年の全国大会の決勝だった。ということなのではなかろうか。
 おそらくは前人未到の10連覇を目指していたであろう黒森峰としたら、みほは戦犯以外の何者でもなかったであろう事は想像に難くない。それでみほは孤立し居場所を失い戦車道のない大洗女子に転校した。
 まぁ以上は単なる私の妄想でしかないが、この妄想が大事。それだけ入り込んで見れているってことなので、少なくとも私ひとりに妄想させるだけの力がこの物語にある、ということなわけだから、ただ画面をぼうっと眺めているだけで終わってしまうアニメを多い昨今、このアニメを作っている人たちはがんばっていると言えるのではないだろうか。

 その後は、生徒会から何故だか絶対に負けるなと言われたみほが、せめてフラッグ車さえ分かれば戦術の立てようがあるのに(試合は殲滅戦とフラッグ戦がある。フラッグ戦はフラッグ車を行動不能にすれば、残車輛に関係無く勝利)と、つぶやくのを見た優花里はひとりサンダース大附属高校に潜入調査へ向う。
 そんなことは知らないみほたちは、学校を休み携帯にもでない優花里を案じて放課後に彼女の家へ赴くと、優花里の両親に歓待され彼女の部屋へ通される。朝早く学校へ行ってまだ帰ってこないと言う両親も優花里が何をしているかを知らないようだった。いかにも「戦車マニア」な優花里の部屋で待つみほたちであったが、窓からひょっこり帰ってくる。彼女はコンビニの定期便にもぐり込み、サンダース校の情報をカメラに収めてきたのだった。と、そんな件なのですが、ここは彼女たちの友情がじんわりと厚い。
 何故かみほに信奉している感のある優花里は彼女のためにひとりでサンダース校に潜入するという危険まで冒す。今まで戦車ばっかりで友達が出来ず、部屋に来たのがみほたちが初めてだったと言う彼女としては、戦車道を通じ得た友達はきっと格別なのだろう。戦車好きな自分がどうこうではなく、困っている友達をなんとかしたいという一心だけなのだ。
 ある意味常軌を逸した突飛な行動ではあるし、これまで友達が出来ず孤独だった自分を晒してしまっても、みほたちは自分を案じ、また暖かく迎えてくれる。この時の優花里を思うとじわじわっと胸にくるのだ。
 大きな衝撃と共に大変な感動、というわけでは全く無いのだが、考えてみれば、友達なんていつの間にか仲良くなって友達と呼べるようになっていくもので、友情も相手の小さな思いやりが積み重なって築かれているようなものだろう。この優花里も想い想われて積み重なって厚くなる友情を上手く表しているのではないだろうか。
 優花里はまたみほに対しては友情以上に思う所があるようですが、それは何かなーとちょっと考えてみたんですけど、上記した黒森峰の件での「あの判断は間違っていなかった」が発端なんじゃなかろうか。
 結果としてみほの判断で試合は負けはしたものの、その「判断」に優花里はみほの人柄を垣間見たのではないか。その状況は未だ語られてはいないが、みほの判断に優花里が憧れを感じる部分があったのではないですかねー。まぁ私の予想はまず当たらないのでアテになりませんが(笑)。それでも個人的な予想としては、決勝の黒森峰戦ではその時と同じ状況が生まれるんじゃないかなーとは思っています。
 あ、どーでもいーけど、沙織が優花里の事を呼んでないと前回の感想に書きましたけど、今回「ゆかりん」と呼んでましたな。意外と言うかなんと言うかですが、沙織ってその時々で呼び方が違ってたりするんだよねー。みほに対しても「みほ」と呼び捨ての時もあれば「みぽりん」だったりするし。優花里も彼女の家の前では「秋山さんのウチって床屋さんなんだ」と名字にさん付けだし。
 まぁでも、「みぽりん」「ゆかりん」の初出はどちらもちょっと驚いている時だったりするので、こんなふうに呼ぼうかなーと頭の中にあったのがポッと出ちゃったという感じなんですかね(笑)。

 さて、後半からはサンダース校との試合。サンダースは試合に投入できる最大車両数の10輛ということもあっていきなりの大ピンチ。
 というのも無線傍受されていた所為なのですが、それに気付いたみほが逆に傍受されている事を利用しておびき出し先に1両撃破しましたが、まだ9両対5両なので不利なのは否めず。ってところで引っぱった。
 無線傍受は「傍受してますよー」というカットを上手く入れ込んであるので見ていてすぐに分かるのですが、これは見ていて分かるからこそのピンチ感が良いですな。
 傍受されているなら逆に利用できる事は大概の人がピンとくるので、包囲されるみほたちに「ああ、早く気付けー」と思うし、みほが気付いてからこっちが思っている通りに「傍受されている事を逆に利用」をしてくれるのだから「強豪校に吠え面かかせてやるぜ」的な気持ち良さったらない。そんな所も良かったのですが、個人的に一番感心したのが沙織だったりする。
 傍受されているのを利用するのは良しとして、各車輛との連絡に無線は必要だし、一回どこかに集まって作戦立てたとしても、臨機応変な連携が出来ないのでどうするのかと思っていたら、沙織が携帯のメールでやりとりしていたのだった。いやまさか、第3話でのお風呂シーンで通信士に任命された沙織が「メール打つの早いし」と言っていたのがフラグだったとは!

 ま、ともあれ、無線傍受を逆に利用されているのが分かっていないサンダースなので、状況的には5分に持っていった感があり次回の決戦が楽しみなんだけど……どうも調べた所によると戦車戦のCG作成が間に合わなくて次週は5.5話「紹介します!」という特別編のようです。しかも予定されていた最終回は1クール内に収まらず、近いうちに別の日付でということになるそうだ。
 CG全盛のこの時代になっても、アニメ作るのは今も昔も大変なんですねぇ。きっとこだわりもって作ってくれているんだろうなぁ。制作されているスタッフの方々、がんばってください!ガールズ&パンツァーおもしろいですよ!


第5.5話「紹介します!」

そりゃまぁ総集編ですよ。

 そんな今回のお話は…
 いよいよスタートした戦車道全国高校生大会。
 戦車道を避けて大洗女子学園に転校して来たみほが、仲間と共にサンダース大学付属高校との一回戦に臨むことになるまでを、チームメイトの紹介と共にみほ自身が回想する。
 そして、チームの結束を強めるきっかけとなった聖グロリアーナ女学院との練習試合を、みほと優花里による戦車&戦況解説を通じて読み解いていく。
 以上公式のあらすじ。

 前回にも書いたように、6話が間に合わなかったので急遽の特別編。そらまぁ総集編ですわな。
 Aパートでこれまでの大体のあらすじとキャラクターの紹介、Bパートで戦車と対聖グロリアーナ戦の紹介といった所。
 総集編なので特にこれといっておもしろい部分があったわけではないが、ちょっとした情報もあって「ああ、そうだったのか」という部分もあった。
 聖グロリアーナ戦で、見事に敵の虚をついた元バレー部アヒルさんチームの八九式が撃破できなかったのって、当たりどころが悪かったのかなーなんて思っていましたが、八九式の57mm砲は歩兵支援用なので威力が弱かったってことだったのね。なるほどなるほど。
 あと、聖グロリアーナ戦の最後、IV号が突撃すると見せかけて右側面に回り込んだのは、偵察時に優花里が言っていた「こちらの鉄鋼弾では正面装甲が抜けません」にかかってたわけだな。しかしダージリンがそれを読んで砲塔回転させたので、あの至近距離で先に発砲したのにも関わらず撃破には至らなかったということか。
 もひとつ、沙織の紹介で趣味が「結婚情報誌を隅々まで読むこと」となっており、なんとなく納得してしまった(笑)。いやしかし、まだ高校二年生だというのにファッション誌なら分からんでもないが、結婚情報誌ってのはどうなんですかねー。まぁ沙織は結婚願望強そうだけど(笑)。恋に恋する今時の乙女なのかと思っていたんですが、けっこう現実的だったりするんですかね。

 とまぁ正直、何か特別な映像などがあったわけでもないので、感想と言ってもこんな程度くらいしかなく、6話でどうなるのかの方がやっぱ気になりますってゆーか待ち遠しい。
 ああ、最後にみほがまた戦車道をやることとなった経緯をAパートの半分使って見せているんだけど、やはりこの辺りのみほ・沙織・華の友情は見ていて胸にジンとくるモノがあるな。
 6話の放送までにまたちょっとこれまでを見返そうかしら。

 (以下後日に追記)  と思って5話まで見返してみたんですけど、ちょっと気になったことがあって、2話でどのチームがどの戦車に乗るかの段になって、「見つけたヤツが見つけたのに乗ればいい」となったにも関わらず、みほたちは見つけた38tじゃなくてIV号に乗るように言われ、みほが「えっ?」となってましたな。というか、これ2話の初見で気になっていたんだけど、すっかり忘れていたわ(笑)。
 やっぱり「みほがIV号に乗る」ってのは、何かのフラグなんですかねぇ?


第6話「1回戦、白熱してます!」

あきらめたら、負けなんです!

 そんな今回のお話は…  サンダース大附属との死闘は続く。相手のフラッグ車を撃破したほうがこの試合を制する。その時、みほが考えた作戦とは……。
 大洗女子の無線を傍受していたサンダース大附属のアリサは、大洗女子チームが高台に集結することを知る。だがケイたちが到着した時、そこには大洗女子の戦車はなかった。
 無線傍受を逆手に取った作戦だったのだ。そしてその直後、アリサの乗ったフラッグ車とバレー部チームが接触をしてしまう。
 以上公式のあらすじ。

 いやぁ、2週間ぶりだし予想していた展開とだいぶ違って実におもしろかった。
 まずは今回のメインであるサンダース戦。前回無線傍受を逆手に取って一輛撃破したが……という所から。
 一両叩いたとはいえ、この大会はフラッグ車を撃破した方が勝ちとなる「フラッグ戦」。なので大洗女子は無線で高地に集まるというウソ情報を流して敵をおびき寄せ、その間に隠れているフラッグ車の捜索に出る。
 あらすじにあるように元バレー部ことアヒルさんチームがばったりと敵ブラッグ車と遭遇。逃げる八九式を追撃する敵フラッグ車であったが、八九式がある意味囮となって逆に大洗女子の全車両から追われる立場に一転してしまう。
 前回に無線傍受を逆手に取って一輛撃破したので、私は無線傍受されていることに気付いていることに気付かれるまで一輛ずつ撃破していって、とりあえず敵車輛を同数に持っていってからの総力戦、になるのではと予想していたのだが、劇中にもありました通り、まさかこんな追いかけっこみたいになるとは思いもよりませんで、思わずほのぼのとしてしまいましたよ(笑)。
 この辺のほのぼのさは一応あとでかかってくることがあるのも上手いし、なにより戦車で戦っているけれど「戦争じゃない」んだよ、ということを表していて、ほのぼのさと笑い所を作っているのが良い。
 八九式を追いかけていた時のフラッグ車を駆るサンダースのアリサはエラい強気だったのに、追われてからは一転、見事な狼狽っぷりが笑える(笑)。また常に乗員に当たり散らしていて、いかにもイヤな人的に見せているので、ここの大洗女子の攻勢は非常に見ていて気持ちが良いことこの上ない(笑)。
 しかし、サンダースもファイヤフライを含む4輛が追いつき、フラッグ車のシャーマン1輛を大洗女子5輛が追い、その大洗5輛をサンダース4輛が追うという、追いかけっこの追いかけっこという変な図式になり、みほたちに取ってはチャンスが一転ピンチとなる。お話的にも、前回無線傍受からのピンチが今回に入ってチャンスになったと思い気や、またピンチとメリハリがあって良いし、このシーソーゲーム感がハラハラとさせてくれるではないか。それにここからが今回の一番の見所である。
 後続のファイヤフライに八九式・M3と撃破され、大洗の皆がもうダメだを消沈している中、みほが言う。敵も走りながら撃っているから当たる確立は低い。落ち着いてフラッグ車を叩くことに集中する。そして「今はチャンスなんです!当てさえすれば勝つんです!あきらめたら、負けなんです!」と。
 この絶体絶命の状況を、むしろ今こそチャンスなのだと、勝機はあるのだと皆の折れかけていた心に奮起を促す。この直後、みほがちょっとだけ消沈するような表情を見せるのが上手く、この状況でこんなことを言ってもムダかもしれない。やっぱり隊長らしくない自分の言葉では……というようなことがその一瞬の表情で読み取れるし、その自分自身への自信の無さは実にみほ「らしさ」が出ている。
 そんなことを思っているであろう、みほの手に自らの手を重ねる優花里と華。その通りだとみほの言葉を反芻する沙織。静かに頷く麻子。みほのあきらめない気持ちが伝播し広がる様子が見ていて気持ちがいいし、なにより熱い。
 またここでみほは嬉しさを噛み締めるような表情を見せるのだ。彼女のことだから、「勝利」というよりも、むしろみんなに自分の「想いが伝わった」ということの方が嬉しかったのではないだろうか。ただ勝つのではなく、みんなで一緒に成し遂げることの方が重要なのだ。
 テンションのあがった沙織の「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」を押さえて、華は一発でいいはずだとIV号を丘の上へと向わせ稜線射撃を仕掛ける。後続のファイヤフライの攻撃をみほの好判断でかわし、次弾発射までの勝負となる。
 IV号とファイヤフライの砲撃は同時であったが、華の砲撃は見事フラッグ車を射抜き撃破。遅れてIV号に直撃、撃破されるが、フラッグ車撃破のため大洗女子の勝利となった。
 まぁぶっちゃければ、どっちが勝つかなんてことは分かりきったことではある。しかしそれをこれだけメリハリつけて見せてくれるんだから、それはもう大したものなのではないだろうか。見ていて「大洗女子が勝つに決まっている」などと冷静になる隙は全く無かったくらい入り込んで見れたのだから、総集編またいだ甲斐があったというものだ。
 それと、個人的に大洗女子がみほのワンマンチームになっていないのが良い。みほ以外はほぼトーシローなので彼女が全体を回してはいるのだが、上記の通り最後の一番おいしい所を持っていったのは華であるように、よくあるヒーローヒロインがひとりでなんとかしてしまうのではなく、大洗のみんなでひとつとし、その中心である主役のみほが束ねているという格好の団体感が見ていて気持ちよいではないか。
 戦後に見事な一撃でフラッグ車を撃破した華に、みほがありがとうと言うが、華はみほが励ましてくれたおかげですと返す。するとみほは「そんな私は……」何もしていない、とでも言いたそうなことを言う。そんな彼女の元に大洗女子のみんなが駆けつけてくることから見ても、みほは確かに大きな起点であり中心であるのだが、優勝候補の一角相手に勝利をもぎ取ったのは、大洗女子全員がいてからこそで、この「誰かが特別」というわけでもない団体としての、まとまることの気持ち良さは、ひいてはこの物語の二本柱のひとつである「少女たち」を見事に表しているような気がします。

 戦後はお互いの健闘を称え合うケイとみほ、帰る段になって麻子の祖母が倒れて病院に運ばれたとの一報が入り、大勝利から一転、実に不安な様相を呈しながら引っぱった。
 健闘を称えるシーンではケイが興味深いことを言っていて、何故全車輛を投入しなかったのかと問うみほに、それはフェアではないし、なによりこれは「戦争」ではなく「戦車道」で道から外れたら戦車が泣くと返す。それを聞いてちょっとはっとさせられた。なるほどそういうことかと。
 この物語は戦車という人殺しの道具である所の兵器を題材のひとつとしているわけだが、別に戦争を描きたいのではないのだ。ミリタリマニアの人たちだって、きっとみんな銃器を使って人殺しをしたいだなんて思ってはいないはずである。
 戦車を使っても戦争をさせない、戦争の中とは別の戦車そのもののカッコよさを伝えたいのであろう。だから「戦車道」として戦争とは一線を画しているのだ。今回も追いかけっこになったりするほのぼのさがありましたが、全体を通しても少女たちを絡めて戦車が持っている兵器としての殺伐さを見事に殺している。飽くまで戦車その物のカッコよさであったり、おもしろさを追求しているのには感じ入ります。
 麻子の方はと言うと、まだ彼女スポットが当たるようなエピソードないなぁと思っていたがここへ来てきましたな。個人的に、麻子はおばあちゃんを怖がっていると思っていたのだが(沙織にちゃんと卒業できないとおばあちゃんすっごく怒るよと言われ顔を青くしていたため)、倒れたとの一報が入り大洗へ急行したいが足がないとなると、「泳いでいく!」などと言ったりして、実は随分なおばあちゃんっ子のようだ。
 そのことを示すかのように、麻子は優花里の部屋に来た際に、写真立てに家族写真があったのを見て何か思うことのあるような表情をしていたりしたので、両親はすでに他界されているのかもしれませんね。
 まぁなんにせよ次回が詳しいはずなので期待したい。あと個人としてのエピソードがないのは沙織だけだなー。まぁ沙織はあの通りに裏がなさそうなので、なくても問題なさそうですが(笑)。

 さて、今回気になった所としては、まずは大洗女子学園が何故負けられないかがなんとなく分かったことか。
 追いかけられ錯乱したアリサが「アンタたちなんかもうすぐ廃校になるんだから」みたいな事を言っており、おそらくは戦車道で実績を作って廃校を阻止しようと生徒会がしているのではないだろうか。廃校になってしまうことを彼女らが黙っているのはきっと生徒たちが無用に動揺しないように、ということなんだろう。
 最初随分と横暴だったため、そんな印象の生徒会の方々ですが、会長は会長になっているだけの落ち着きや気遣いなんかが所々に見れて、今回も38tに砲弾がかすって半べそかいちゃった河嶋さんが、みほの言葉を聞いても「いやもうだめだよ!」などと言うのを黙って頭を撫でてやったりしています。しかしアレだね。河嶋さんは意外と使えない上に精神的にも脆いですな(笑)。なるほど副会長でもなく広報やっているのはそういう所もあってのことなのね。会長はよく人を見てるなぁ(笑)。
 次に思いかけず敵フラッグ車を見つけてしまった八九式ですが、普通に考えれば逆に攻めれそうなんですけど、聖グロリアーナ戦でも至近距離で撃破できなかったことを考えると、シャーマンと八九式では性能が雲泥の差のようです。優花里も戦後に「シャーマンに勝てるなんて」と言っていましたし、アリサも「相手は八九式だぞ!」などと言っていましたしね。
 そう考えるとこれからの試合でも大洗女子は随分苦労しそうだなー。せめて砲撃の威力くらいは上げられないのだろうか?
 最後に、上記したケイの戦争ではなく戦車道だとの言葉に、みほがとても嬉しそうな表情をするんですけど、黒森峰の逸見エリカは「何を甘っちょろい」などと言っておりました。
 そういうことや、今回の最後にプラウダ高校や黒森峰学園が勝ち上がる様子を見ると、彼女らは随分と「戦争」っぽいことをしているのではないだろうか。グロリアーナのダージリンも親善試合で「サンダースやプラウダのように下品な戦い方はしない」などと言っていたことから、そのようなことが窺える。
 そこから考えて、みほはそういう殺伐としたのがイヤなのではないだろうか。だからケイがフェアであることを重んじて戦争ではなく戦車道なんだとしたことは、みほとしても同じような気持ちだったからこそ、その繋がりが嬉しかったのではないだろうか。

 とまぁ、一週跨いだ所為か随分と長分になってしまいましたが、それだけのおもしろさが十分にありました。
 展開も一転二転してハラハラさせてくれるし、みほの名言でぐっと盛り上がってくれるし、なにより勝利した時の気持ち良さと言ったらない。難点があったとすれば、フラッグ車を見つけた八九式のシーンで間を取り過ぎている感があることくらいか。今期こんなに楽しく見れているアニメはこのガールズ&パンツァーくらいですよ。
 次回は公式のあらすじの画像を見るに、みほの過去も語られそうだし、これからの展開に否が応でも期待に胸が膨らみますな!


第7話「次はアンツィオです!」

公式にアンチョビのキャスト名がないから、おかしいなーとは思っていたんだよ。

 そんな今回のお話は…
 倒れた祖母のもとへと駆けつけた麻子。みほたちが遅れて駆けつけると、おばあはベッドに横になりながらも達者な口調で麻子やみほたちを叱りつけるのだった。
 お見舞いの帰り道、安心から寝付いてしまった麻子。みほはそこで沙織から、おばあが麻子の唯一の肉親であると教えられる。
 みほはその話を聞きながら、西住流の家元である自分の家族のことに思いを馳せる。
 そしてアンツィオ高校との二回戦に備え、新しい戦車探しが始まった。
 以上公式のあらすじ。

 お話は「少女たち」メインで、サブタイにある「アンツィオ戦」はものの数秒で終わってしまった。
 メインのひとつである戦車戦が数秒で終わってしまってあっけない限りではあるのだが、そこまで延々と見せてきた「少女たち」があるからこその展開なので、1クールという短い尺の中で、それと分かる所はバッサリと切ってしまっているのだ。ではその「それ」と分かる部分を含めて見ていこう。

 前回倒れたとの一報があった麻子の祖母をみほ・華・優花里が見舞いにいく所から今回は始まる。まこと違って存外に口うるさい祖母であったが、前回引っぱった様相を感じさせない元気さであった。
 元気な様子に安堵したみほたちであったが、帰路で麻子の両親が事故で他界していることや祖母は何度か倒れていること、そして麻子が両親とはなれて暮らしているみほを心配していたことなどを知る。みほはかつて負けて母に叱責されたことを思い出す。西住流は何があっても前に進み強きこと勝つことを尊ぶ流派、犠牲なくして大きな勝利は得られない。母からそんなことを言われていたのだった。
 翌日、あんこうチームでお昼を食べていた所、サンダースに勝てたことを改めて喜ぶ優花里たちに、みほは「……やっぱり勝たないと意味がないんだよね」とつぶやく。
 これはみほの自問自答のようなもので、西住流の伝統をどこかで本当にそれでいいのだろうかと思いつつも、母のいう通り勝ってこその今があるとも思っていて、自分の気持ちとは裏腹に、試合なんだから勝ってなんぼなのかもしれないという気持ちの揺らぎが見て取れる。
 しかしみほの言葉に優花里は「そうですか?」と即座に疑問符を投げかけ、試合も練習も整備も、そのあとの寄り道も全部「楽しかった」と語る。沙織たちも戦車に乗るのが前よりも楽しくなったという。みほもそういえば「楽しい」と思っていた。以前は「勝たなきゃ」とずっと思っていたのにと、大洗へ来た経緯を語り始める。
 昨年の全国大会の決勝戦。川岸の崖を走行中に砲撃を受けた味方車両が崖下の川へ転落。雨中で濁流と化す川に飲み込まれる味方車両を見たみほは、自らが駆るのがフラッグ車であるのも関わらず戦列を離れ、落ちた乗員を助けに行った。車長がいなくなったフラッグ車は難なく撃破され、10連覇を逃してしまう結果となった。だから負けた時に戦車から逃げたくなった。とみほは言っているが、それは一側面なのではないのだろうか。
 語られた過去もそうだがサンダース戦においても、八九式が撃破された際に、みほは撃破されたことよりもまず「ケガ人はいますか?!」と問うて、ケガ人がいないことが分かると安堵の表情を浮かべていたことからも分かるように、彼女はとても優しい、いや優しすぎると言ってもいいくらいだ。そんなみほだから犠牲を払ってまでも得る勝利に疑問を持ってしまった。
 人命救助を差し置いても勝利は掴むべきものなのか。戦争であるならばそうなのかもしれないが、これは戦車道なのである。優し過ぎるみほには味方を助けずに勝利を掴むことの意味が見出せなかったのではないだろうか。
 しかしそれは西住流の否定にも繋がる。みほのことだから姉も、そして母のことも、もちろん愛していることだろう。なによりも勝つことを尊ぶ西住流、それに反する自分の思い、それを解ってくれない母、自分の所為で果たせなかった10連覇、西住流を全う出来なかった自分、常に付いて回る西住流の名前、さりとて愛する母などなど、いろんな気持ちがせめぎあって何がなんだか解らなくなってしまい、戦車に対してただイヤな気持ちだけが漠然と残ってしまったのではないだろうか。  しかし、そんなみほの判断は間違っていなかったと優花里は言う。助けてもらった選手たちはきっとみほに感謝しているはずだと。華は戦車道の道はひとつではないと言い、沙織は私たちが歩いた道が戦車道になるんだよ!と空を指差す。これらはみほにとって大きな救いの手だったのではないだろうか。
 戦車道をイヤなものという側面でしか見れなかったみほは沙織たちと出会い、戦車道の違う側面を見つけることが出来た。また西住流ではない自分の戦車道を歩いても良いのだと気付いたことだろう。こうして彼女らの結束はまた一段と強くなっていった。

 Bパートからは一回戦に勝って士気が上がっている大洗女子戦車道チームの面々が、練習後に一番戦車に詳しいみほに続々と戦術会議やら補充品のリストやら照準器の合わせ方やらカーブの上手い曲がり方やらクーラー付けれないのかとか戦車の話をすると彼氏が引くとか別れたとか言ってくるので、あんこうチームの面々が役割を分担することとなり、それぞれがそれぞれのチームと仲良くなっていく。また書類の整理を手伝っていた華が、まだ戦車がある形跡を発見し、懸念されていた戦力不足を補うためにも更なる戦車の捜索が行われる。
 まずは言い寄られるみほに、「みんなで分担してやりましょう」「みぽりん、ひとりでがんばらなくてもいいんだからね」と言う華と沙織のシーンだが、真面目で優しいみほのことだからひとりで抱え込んでしまわないようにと、一番みほと仲の良い沙織と華が彼女をよく見ているのと共に、困っている友達を助けたい、なんとかしたいという友情を見せつけるようではなく、このふたりだからこそ自然に現れる友情を見せてくれるのが気持ちが良い。また、そう言われたみほも改めて沙織と華に出会えたことに感謝したことだろう。こういうさりげない所でさりげなく見せたい部分を入れ込んでくるのは上手い。
 戦車捜索の件では、仲良くなったチームらと共に協力し合って2両の戦車を発掘することとなる。先述したものの数秒で終わったアンツィオ戦はこれがポイントなのである。
 これまではあんこうチームを中心に各チームごとの結束を描いていたが、サンダース戦の勝利以降は大洗女子全体として結束し、より大きな団体となってレベルアップしたことを描いているのだ。戦車発掘後、全員で同じお風呂に入り、裸の付き合いということもあってか、さらに志気も上がり、アンツィオ戦では発掘した戦車は間に合わないにも関わらず、おそらく圧倒したであろうことは数秒で終わったこの試合から見ても分かる。
 つまり、各チームがそれぞれ結束を深める中で、さらに大きく全体としてもまとまった大洗女子の彼女らにとって、優勝候補でもないアンツィオは敵ではなかった、ということに他ならない。だからこそ、このアンツィオ戦はものの数秒で十分なのだ。そこまでに彼女らが交流を深めていく様子を十二分に描いて「それ」が分かるようにしてあるのだから。
 初見では「アンツィオこれだけ?!」と思ったものだが、どうしてこうなのかを考えると、実に理にかなっていたのであった。短い尺の中では彼女らが大きく繋がったことを示せれば、試合の様子を見せることがなくとも、どうしてそうなったかを理解できるし納得できるのだから上手いこと考えて作ってあると言えるのではなかろうか。

 さて、個人的に気になった所と言えば、役割分担の件でメカ関係を優花里、操縦関係を麻子、書類精鋭に華ときて、沙織は何するのかと思ったら恋愛関係だったんだけど……2話のお食事会を見て分かる通り、全く実を伴っていないんだから役に立ったのかどうか疑問ですな(笑)。何故か一年生たちには好評でしたが。まぁ沙織はもとよりの面倒見の良さがあるので、随分と一年生たちに懐かれておりましたが、それもあってのこの配役だったんですねぇ。一年生たちには随分と頼りになるお姉さんに見えたのではなかろうか。
 一年生と言えば、一年生チームは目立たないんですけど、ひとり「ぽやーん」とした娘がいますよね。船底で遭難した際も、みんな半べそかいている中でひとりぽやーんとあさっての方向いてるし。そう言えばサンダース戦勝利後にみほの元に集まってくるシーンでも、ひとりちょっと離れて空を見上げていたし。と思って公式のキャラ紹介見てみたら、この丸山紗希さんは「ひとりで物思いにふけっていることも多く、おとなしい」のだそうな。キャラが沢山出てくるこのアニメですが、ちゃんとひとりひとりを考えて作ってんだなぁとこういう所でも感心してしまいました。
 それから一番存在が謎だった「学園艦」。どうして出来たかが語られましたな。沙織曰く「大きく世界に羽ばたく人材を育てるためと、生徒の自主独立心を養うために学園艦がつくられた、らしいよ」だそうな。そう言えば、艦を動かしているだろう船員たちも若い女の子たちばっかりなので、艦全体を生徒でまかなっているってことなんですかねー。なるほど生徒会が権限持ってるわけだ。それにしても沙織の説明を受けて一年生が「無策な教育政策の反動なんですかね?」と返しており思わず笑ってしまったよ(笑)。現実でもその内「ゆとり」の反動で学園艦作る日が来るかもね。
 最後に歴女チームと仲良くなった優花里が魂の名・ソウルネームを付けられたのですが、モントゴメリは難色を示し、グデーリアンには随分と喜んでいましたが……調べたけどなんでかよく分からん。優花里はドイツ贔屓ってことなのかな?38t見つけた時もロンメル云々言っていたしなー。

 さて、戦車も2両増えて戦力もアップし、次回は優勝候補の一角プラウダ高校と対戦です。プリキュア対決が見物ですね(笑)。
 それはともかく、戦車が増えたはいいけど人員はどーするんですかねー。ここへ来てさらにキャラが増えるとか?ってゆーか、あんま役に立たなかった八九式は乗り換えて、もう一方はOPには出てくる桃の眼帯している人たちなのかしらねー。なんにせよ、今回戦車戦がなかったから、プラウダ戦はそっちも期待していきたい。
 どーでもいーけど、随分と支離滅裂な感想になってしまったような気がするな(苦笑)。


第8話「プラウダ戦です!」

三国志的に言うと「ジャーンジャーンジャーン!ははは!げぇ孔明」的な感じです。
それにしても話は上手い!

 そんな今回のお話は…
 プラウダ高校のカチューシャと聖グロリアーナ女学院のダージリンがお茶の時間を楽しんでいた。カチューシャは、ダージリンから大洗女子の隊長が、西住流の娘であると知って驚く。
 一方西住の家では、母しほが、戦車道を再び始めたみほの勝手な行動に怒っていた。
 準決勝出場を前に盛り上がる大洗女子の生徒たち。そんな中、みほは生徒会のメンバーに呼び出される。
 みほを待っていたのは、あんこう鍋だった。生徒会の狙いは……
 以上公式のあらすじ。

 いやぁ今回は見事なシナリオが綺羅星の如く光っていて、実に興味深いお話になっております。
 視聴者的には分かっている「負けたら大洗女子学園は廃校」は、劇中的には生徒会チームにか知らないことになっている。練習後に大事な話があるから生徒会室に来るように言われたみほが行ってみるとアンコウ鍋が用意してあって、みほは転校してきたばかりで知らないが、校内行事の思い出話に花が咲き、みほは結局「大事な話」を聞かされないまま帰ることとなる。
 当然、ここは生徒会役員たちの無くなってしまうかもしれない学校への思いが語られているわけだが、廃校となることを知らない、また学校が無くなるなどとは思ってもいないみほにとっては、3年生たちが思い出話に興じているくらいにしか見えないのだが、みほがここで彼女たちが、どれほどこの大洗女子学園に愛着を持っているかを知ることが後ですごく活きてくる。
 また、最初は廃校の阻止ということもあって、かなり強引にみほを戦車道に引き込んだ経緯もあって、横暴な印象の強い生徒会の皆さんであったが、今ここへ至っては、みほの指揮力もあって勝ち上がってきたこともあるし、また彼女の人柄もあってのことだろうが、廃校阻止のためにどうしても勝たなければならないということを伝えずに、転校してきたばっかりのみほに重荷を背負わせたくないし、なにより彼女にはのびのびと戦車を駆ってほしいとする。
 生徒会長の角谷杏は、みほが転校してきてからの短い間ながらも、彼女を良く見ていて、みほも皆と同様に大洗女子学園の生徒の一員として見ており、これまでも節々に見せていたように懐の深い部分を見せている。もはや生徒会の皆さんは横暴な権力を振るう人たちではなく、彼女たちもみほの大切な学校の友達となっているのだ。

 そしてプラウダ戦。見事に敵の罠に引っ掛かり包囲され、大きな教会(?)に立て篭る。敵の砲撃が止み、プラウダ校の隊長カチューシャから降伏勧告がなされてからが今回の一番の見所である。
 「全員で土下座するなら許してやる」との伝令に徹底抗戦の構えを見せる大洗女子。だがみほは4両撃破したとはいえ、敵はまだ12両も残っているし、これだけ包囲されている状況ではケガ人が出るかもしれず徹底抗戦を躊躇する。
 前回の感想で書いた通り、優しいみほは「戦争」でもない「戦車道」の「試合」でケガをする人間が出ることを嫌っている。ケガ人を出してでも戦おうとは思わないみほにあんこうチームの皆は賛同する。初出場で準決勝までこれただけでも十分だと。しかし河嶋さんは「ダメだ!」と一喝し、みほの説得にも折れず、ついに「負けたら廃校」の事実を明かすのだった。
 前回ようやく西住流ではない「楽しい戦車道」「自分の(自分達の)戦車道」を見つけたみほである。が、ここへ来て、また「勝たなければならない戦車道」との選択を迫られることとなったのだ。
 戦車道がイヤになって家を飛び出し、大洗女子へ来て大切な友達が出来て、イヤだった戦車道の違う側面を見つけることが出来て、やっと自分が道をどう進むべきかを見出した矢先の出来事である。次があるからここで終わっても次の一歩に出来ると思っていただろう。しかし、今ここで負けたらみほが大洗女子へ来て得たものが全て無くなってしまう。
 また試合前に生徒会の皆さんが語った思い出話を聞いたみほである。優しく人の気持ちに敏な彼女が、生徒会の皆さんの学校への愛着に気付かないはずがない。生徒会に限らず、他のチームの面々も、麻子も優花里も華も沙織にも、転校してきたばかりのみほ以上に学校への想いがあるはずで、ここで降伏を受け入れてしまっては、みほの大切な友達の想いも無にしてしまうのだ。
 冷静に考えれば、次回で大洗女子学園は勝つ。それは分かりきったことである。しかしどう勝つというのだろうか。包囲された状況をどうひっくり返すかということではなく、みほが廃校阻止のため多少の犠牲を厭わずに、勝つことを最も尊ぶ「西住流」をするのか、それとも自らがやっと掴んだ「自分の(自分達の)戦車道」をするのか、みほがどちらを選ぶのか、はたまた第三の道を見出せるのか。
 思えば第1話で、戦車道をやりたくないみほを思って、生徒会の「学校にいられなくするぞ」との脅しにも屈せず、自分を庇い続けた華と沙織の友情と戦車道へのイヤな気持ちを天秤にかけ、それでも自分を思う友達を不利な状況に追い込みたくないと戦車道をまたはじめることとしたみほである。そんな彼女が廃校を決定づける降伏勧告を受け入れるとは到底思えない。だからこそ、みほが何を選択しどう勝つのかが重要であり興味をそそられるではないか。
 これまで戦車戦以上にみほたちの様子を見せてきたこともあって、十分に感情移入し、みほたちが「廃校」ということにどれだけのショックを受けたかがありありと分かった上に、この絶体絶命の状況で、重大な選択を迫られている所で引っぱるのだから、これはもう見事なシナリオとしか言いようがない。先にも述べた通り、勝つことは分かってはいる。しかしそれよりも、この物語の中で彼女たちがどう生きるのか、生きていくのかの方をメインに据え置いている。
 最初の方の感想でも言ったような気もするが、ただ戦車が走って砲撃しているだけでは物語にならない。それに搭乗し動かす彼女らがいてこそ物語が回り、正にタイトル通り「戦車と少女たち」の物語となっている。戦車を通しての少女たちの青春の1ページを見事に彩っていると言って良いのではないだろうか。
 と、このように今回は、みほが得た自分の戦車道と西住流、ケガ人を出したくない自分と徹底抗戦したいみんなの気持ち、そして降伏を受け入れて廃校か犠牲を受け入れて存続か、をこのプラウダ戦の勝負に引っ掛けて、これまでを踏まえた上での選択を主人公西住みほに託すという、抜群のシナリオ構成にぐうの音も出ない見事なお話だったと思います。

 そんな抜群のシナリオも、やはり戦車あってこそ。なにせこの物語のタイトルは「ガールズ&パンツァー」なのである。みほが選択を迫られる状況を見事に作っている今回の戦車戦も見所のひとつであろう。
 といっても、おもしろいのは戦車云々と言うよりかはその状況の方で、プラウダ戦の前に、前回発掘したルノーB1ビスとみほたちの駆るIV号に長砲身を取り付け戦力的にちょびっとあがったことや、サンダース・アンツィオを敗り大洗女子の志気が異様に上がっている様子を見せ、プラウダ戦直前では、みほが立案した慎重に攻めるを遮って、皆が一気に攻めることを提案し、みほもそれを了承してしまう。
 みほは前回に「楽しい戦車道」「自分の(自分達の)戦車道」を見出したので、皆の士気を落としてまで負けるリスクを減らす戦術をするよりも、リスクが高くても皆が納得する、ひいては皆がやりたいことの方を選んだのだろう。しかし見ているこっちとしては、もうこの時点でハラハラしっぱなしである(笑)。士気が高いのはけっこうなのだが、何せテンションがあがりすぎなのである。
 そして一気に攻め込んで幸先よく2両撃破。みほもこの時点で何かおかしいことを感づく。見ているこっちとしても、これは明らかに囮であるとすぐ分かる。残った1両を追撃中にフラッグ車の一団を発見し、千載一遇のチャンスとばかりに攻め込み、みほの制止を振り切って窪地へ誘い込まれてしまう。ここでみほが皆を止められないあたりが彼女の弱点で、能力は高いけど指揮官としてはあまり向いてないよなぁ。案の定見事に伏兵されて包囲されてしまうわけだが、これが冒頭の「三国志でいう所の〜」である。
 この一連の流れの上手い所は「案の定」なのだ。あんこうチーム以外が妙に調子に乗っている時点で、敵の罠にはまるんじゃないかとすぐにピンとくる。だからこそ、調子に乗って追い回す彼女ら、またそれを制止できないみほに「あぁ〜だめだってば」とハラハラさせられる。まぁつまり、分かりきった先を予想させることで「ハラハラさせられる」ことを誘導しているわけだ。また見事に「ハラハラ」させられちゃったんだから、作り手の術中に見事にはめられたと言っても過言ではなかろう。
 それにここまでには、視聴者的には廃校の事実を知っているし、前半で生徒会の皆さんの思い出話を見ていることもあって、大洗女子に勝ってほしいと思っている所であるし、さらには敵であるプラウダ校の隊長カチューシャの悪役っぷりが功を奏している。
 ちっこいのに傲岸不遜で大洗女子を見下し、昨年味方を助けるために戦列を離れ黒森峰の敗北を招いたみほを嘲笑する。これまでみほたちを見てきた身としてはムッとせざるを得ないではないか。だからこそヤツをぎゃふんと言わせてやりたい気持ちとは裏腹に、大洗女子の皆さんがプラウダの術中にはまってしまうのだから、余計にハラハラしてしまうのも当然で、おそらくはそれを見込んでの作りなのだからやはり見事なのである。
 また包囲され立て篭る際には、八九式は副砲がやられ、III突は履帯と転輪を打ち抜かれ、頼みのIV号は砲塔が故障してしまう。プラウダはまだ10輛以上残っているし、大洗は全車輛残ってはいるものの半数は故障していてさらに包囲されている。これまでにない絶体絶命感だ。この状況をひっくり返せなさそうな状況があるからこそ、廃校の事実を知り、みほが選択を強いられることにより悲壮感が出し、次回にどうひっくり返るのかを期待させる。これまでのことがひとつに折り重なって物語を形成しているのだから、見事と言う他ない。

 さて、個人的に気になった所としては、まずは前回発掘したルノーに誰が乗るかだが、園みどり子略してそど子率いる風紀委員チームであったのは意外であった。しかし彼女らは何か活躍する場が与えられるんですかねぇ(笑)。まぁせっかくの発掘戦車なので、プラウダ戦で何かしらの役割がありそうですが。
 それと一番気になったのがプラウダ出陣時の歌である。初見ではけっこう尺をとっているし「これはいるのか?」と思ったものだが、全員でカチューシャの歌を歌っての進軍ということで、彼女を中心に見事にまとまった統率力を表しているとだとすると割としっくりくる、ような気がするのはオレだけですかね?
 ああ、そういえば長砲身をつけて(前回物干竿にされていたのは発掘戦車の砲身だと思ってました)外観もちょっと変わったIV号ですが、外観はどの辺が変わったのかちょっとよく分かりませんでしたが、IV号はあのちょっと無骨な体躯にちょこんと付いてる短い砲身がかわいいなーと思っていたんですけどねー。

 ともあれ、今回は見事なシナリオがおもしろかったし良い引っぱり方で、次回で何を選択しどうひっくり返すか興味津々です。というか、結果が分かっているのにこうも期待させるのだから良く出来ていると言って良いだろう。
 良い意味で期待を見事に裏切ってくれることを期待しています。


第9話「絶体絶命です!」

ええっ!?11話も!?

 そんな今回のお話は…
 プラウダ高校に包囲され、廃墟の中に追いつめられた大洗女子学園。
 メンバーの一部に「ここまで頑張ったのだから……」という空気が流れた時、生徒会長・角谷がこの大会で絶対に負けられない理由を明かす。
 衝撃の事実に寒さと飢えが加わり、士気のあがらないメンバー。その時、みほがとったのは思わぬ行動だった!
 期限の時間がきてプラウダ高校から降伏か否かを確認する伝令がくる。その伝令に対してみほは「最後まで戦います!」と宣言する。
 以上公式のあらすじ。

 冒頭のことは最後に語るとして今回ですが、前回言っていた選択云々の話は、そりゃぁまぁ見出した「自分の(自分達の)戦車道しながら勝つ」に決まってるじゃないですかぁ。
 前回そう書くと私が熱く書けない(感情移入して書けない)んで、敢えて気付かないフリして書いてみました。どーでもいいい?うん、だよねー。
 さて、今回も看板通りにAパートで少女たち、Bパートで戦車と正に看板に偽り無しをいっております。
 Aパートでは廃校のことを知って意気消沈する大洗女子チームが、戦闘開始までにどう盛り上がるかを見せていて、予算が無かった学校は良い戦車は売ってしまい今ある戦車は売れ残りで、それでも優勝する以外の廃校阻止の方法が思いつかなかった。また、泣いて一年過ごすより希望を持っていたかった。との生徒会の皆さんの言葉に、みほは戦う決意し言う。「来年もこの学校で戦車道をしたいから。みんなと」。
 だが自分の見出した道を彼女は忘れてはいない。最後まで戦い抜くと言いながら「ただし、みんながケガしないよう冷静に判断しながら」を付け加える。廃校阻止の為に何がなんでもではなく、みほはこの大洗女子学園へ来てやっと見出した、いや、作り出したと言ってもいい自分の道は、もうすでに揺るぎないものになっているのが窺える。多少の犠牲を顧みず大勝を掴む西住流ではない、みほが友達たちと一緒に作り上げたものに対して全くよどみを感じさせないのだ。
 そんなみほに士気のあがる大洗女子は、降伏時間のタイムリミットまでに戦車の修理と偵察を出す。前回ピンチ感を演出した戦車の故障だが、ここへ来てあっさり直ってしまうのはちょっとあっけないが、始めっから戦力差のある状況ですのでそれは致し方ない所か。
 ともかく、一度は士気が上がったものの、餓えと寒さに加え、廃校の事実に士気は瞬く間に下がっていってしまう。外ではプラウダはたき火で暖をとりボルシチを食し、コサックダンスまで踊っている余裕っぷり。一気に下がってしまった士気をあげるため、みほがとった行動とは、あの「あんこう踊り」であった。
 河嶋さんに「隊長だろ、なんとかしろ!」と言われ、自らもこのままではと思ってやったのがこれだ。まぁ劇中でも河嶋さんがいっていましたが逆効果、というか、かなり脈絡が無く何にもなっておらず、士気のあげ方としては正直なっていない。だがこれはとてもおもしろい所ではあって、みほは下がった士気をあげる、ということではなく、「楽しい戦車道」をするために、みんなに楽しくなってもらいたかったのではなかろうか。
 どうしたらみんなを楽しくさせられるか。恥ずかしがり屋でちょっと引っ込み思案な彼女にすべらない話をする話術などあろうはずもなければ鉄板のギャグを持ち合わせているはずもない。そこで思いついたのが「あんこう踊り」なのだ。
 踊っている最中にみほが「みんな歌ってください!私が踊りますから!」との言葉から分かるように、みほは自分がピエロになって笑われることでその場を盛り上げようとしたのである。先述しましたが、この状況でそんな事してもなーんもおもしろくはない、むしろ寒い。だが、その場を盛り上げようと笑い者になろうとするみほを見て、グロリアーナ戦でもそうだったように、あんこうチームの皆はみほひとりにそのようなことをさせられないと踊りに加わり、最終的には全員で楽しく歌って踊ることとなる。みほが思っていたようにはならなかったが、結果として全員が一体であることを確認できたことだろう。みほひとりではなく、大洗の全員で作った一体感なのだ。
 ここから考えるに、みほの能力はここまで素人同然だった大洗女子を準決勝まで引っぱってきたのだから相当のものではある。だが指揮官としてその性格は向いていない。そう、みほは凡人たちを引っぱっていくスーパーヒロインではないのだ。
 この一連のシーンは、みほの足りない部分を敢えて見せ、他の娘たちとなんら変わりがないことを示し、そしてその無い部分をこれまで彼女たちが培ってきた友達という線で繋がる友情で埋める所を見せているのではなかろうか。けっこうあっけにとられるし都合も良く見えるシーンではあるが、こう考えると割と自然、とはいかないとしても、彼女たちの友情を見せているのだと考えれば納得できる。
 こうして踊っている所でタイムリミットがきて降伏せず最後まで戦うことを宣言し、包囲網を突破する「ところてん作戦」を決行する所でBパートへ入る。

 Bパートからは戦車戦。今回も強豪相手に手に汗に握る展開が上手い。
 まずは立て篭っている建物から出て、敢えて手薄にしてある包囲網の部分ではなく包囲の厚い部分へ向かい、一陣を走り抜けて突破し、二陣は38tが突撃し攪乱している間に他の車両は窪地を抜けるため転回する。
 難攻不落の城に一ヶ所弱点があると、そこに敵が集まって一網打尽にできるので、プラウダ隊長のカチューシャの戦略は間違ってはいない。だが、みほたちはそれを読んで敢えて包囲の厚い部分に向って攪乱を仕掛け、逃げ道を作ったのだが、ポイントは一両突撃した38tである。
 Aパート終わりでみほが「本当にいいんですか?」とヒドく不安そうな表情で生徒会の皆さんに聞いていたのはこのことがあるからだ。敵の注意を引きつけるために囮役を買って出たのだろう。しかもただの囮ではなく、それ以降のためになるだけ敵戦力をそがなくてはならない危険な役目だ。集中砲火を浴びることとなるこの役目を負ってみほは生徒会の皆さんがケガをすることを恐れている。
 しかし劇中「上手くいったら合流する」といっていたように、生徒会の皆さんは覚悟の上でこの役を志願したのであろう。またみほに心配させないよう無事に包囲を抜けてくることを一応は示唆している。
 だが人の気持ちに敏なみほとしては、その辺の生徒会の皆さんの覚悟を分かってはいたであろうことは、突撃を敢行する38tを見送る彼女の表情から見ても窺い知れる。生徒会の皆さんは他を生かすため、はなっから犠牲になる覚悟であったわけだ。これはみほとしてはあまりやりたくはない戦術ではあったろうが、一番廃校なることを憂いており阻止のために動いた彼女たちであることと同時に、みほの気持ちも重々承知な彼女らだからこそ、この役目を任したのであろう。
 それにしても、あんまり役に立たない河嶋さんに変わって生徒会長が砲手をやって、圧倒的に戦力の勝る戦車4両に囲まれながらも2両撃破したんだから、撤退しようとした所を狙われて撃破されてしまったが、生徒会長の面目躍如だろう。河嶋さんも言っていたが「お見事です!」。
 生徒会ことカメさんチームから報告を受けたみほは、「頼んだぞ!」「お願いね!」の言葉を受けて少し間(ま)を取った後に「この窪地を脱出します!」と力強く言う。生徒会の皆さんのためにも負けられないと強く思ったことがその間(ま)から窺い知ることができる。敢えて危険な役目を買って出て、自分に想いを託した生徒会の皆さんを思うこの間(ま)から出た、これまであまり無かったみほの力強い言葉が印象的だ。
 窪地を脱出した直後、攻撃力のあるIV号、III突は脇にそれ暗闇に乗じてやり過ごし、残っている敵フラッグ車の捜索と撃破に向う。ここからが今回のクライマックスだ。追われている自軍フラッグ車が落ちるのが先か、敵フラッグ車を見つけ撃破するのが先かの勝負である。
 ここでポイントなのが敵プラウダ校の油断である。Aパートでタイムリミットを待つ間に随分と余裕かまし、フラッグ車も敵来襲にも慌てる様子も無く、IV号・III突に追われて初めて慌てる始末。それも追う側にスターリンが到着し、あと少しあれば先にフラッグ車を撃破できるとし、町中を逃げ回れば良しとしてしまうあたりも油断だろう。IV号から優花里を偵察に出し高い所から見下ろしているとは思ってもいないのだ。
 スターリンに撃破されたM3はフラッグ車をお願いします!とルノーに守りを託し、そんなルノーも撃破されると八九式に健闘を祈る!とエールを送る。とこのように、生徒会の皆さんを囮にとしてまで敢行したこの作戦で、廃校阻止のために必ず次につなげたい大洗女子と戦意と一体感が全く違うのである。
 ついに単機となったアヒルさんチームこと八九式が敵の砲撃を受けながらも激走を見せるのだが、これがまたいいのだ。何がいいってどう見ても撃破されてしまいそうなのである。
 八九式のすぐ側を何度も砲弾が着弾し、何度も車両が傾きながらも必死の逃走を演じるのだ。この「撃破されてしまいそう」感と自らを奮い立たせる元バレー部員たち、そして別の場所でフラッグ車を追うみほたちが差し込まれ、サンダース戦のような「ハラハラ感」を見事に演出している。見ていて「踏ん張って逃げろー!」と思うし「早くフラッグ車と叩けー!」と思わせてくれるのだ。
 敵フラッグ車がぐるぐる回っているだけなのに気付いたみほは、カバさんチームことIII突に砲撃を停止させる。もうこの時点でIII突得意の待ち伏せ作戦なのはピンときて、見ていて「キター!」と思ったのはきっと私だけではあるまい。そして上記したプラウダの油断がここで活きる。追ってくるのがIV号だけになったと気付きなからも、III突は「エンコしたんじゃね?」などと気に留めないのだ。
 スターリンが八九式をついにとらえたのと同時に、雪に潜って待ち構えていたIII突がフラッグ車を打ち抜く!どちらが先か?!……という所で引っぱった。わけだが、まぁ言わずもがな。油断のあったプラウダと見事な一体感を見せた大洗女子。推して知るべしである。
 なににしても、常に戦力の劣るみほたちが強豪相手に薄氷を踏むようなハラハラ感を、「分かってはいる」中でもそう感じさせるのだから、上手いこと作ってあると言わざるを得ない見事な作りだ。次週も楽しみです。

 そういえば、今回気になった部分があって、カメさんチームこと38tってフラッグ車じゃなかったっけ?とか思って8話見直したらちゃんと八九式がフラッグ車である所を見せてました。サンダース戦では38tだったから勘違いしてたよ。
 38tは他の車両と比べてかなりちっさいし、2話の優花里の話からすればかなり走るみたいだし、今回の生徒会の皆さんの戦いぶりから見てもフラッグ車に向いているような気がするけどなー。替えたってことはやっぱ八九式の戦力って無いも同然なんかなー。

 さて、そんな見事なこの「ガールズ&パンツァー」であるが、冒頭にちょろっと書きましたが、11話の放送予定分が10.5話「紹介します!2」に差し変わることが公式でアナウンスされました。な、なんだってー!!
 一回くらいなら分からんでもないが(まぁそれもどうかとは思ってはいるが)、二回ともなるとなんか意図的なものを感じてしまうのだがどうだろう。おそらく11・12で黒森峰戦であろうから、11話で放送終わってしまうのはどうか?という判断なのではないのか?などと邪推してしまうのもさることながら、個人的にプロフェッショナルの仕事としてどうか?という点でも思うことがあるな。
 クオリティの高いものを作るのもプロの仕事ではあるが、期日に間に合わせることもプロの条件のひとつである。と私は思っているので、アニメ作るのが今も昔も大変なのは重々承知なのだが、アニメーション制作のプロフェッショナルであるからには、枠内にきっちり収めることはしてほしいなぁ。スケジュール管理や制作工程の管理もプロの仕事のひとつでしょ?
 11・12話が3月放送予定ということなので、もしかしたら人気の延命策かも知れませんがねー。ってそれは邪推のしすぎかな(笑)。


第10話「クラスメイトです!」

ええっ?!ゲーマーチームっていったい……。

 そんな今回のお話は…
 辛くもプラウダ高校を下し、決勝進出を決めた大洗女子学園。
 その戦いを見たみほの母・しほは、みほの戦いを「邪道」と一蹴。黒森峰女学院の隊長まほに決勝戦では「王者の戦いを見せてやりなさい」という。
 一方、大洗女子は決勝戦に備えて、戦力の増強と各戦車の武装強化に余念がなかった。最後の練習を終えたみほたちは、みほの部屋で沙織お手製のカツを囲み食事をする。
 そして決勝戦の会場は、戦車道の聖地・東富士。そこに黒森峰女学院の戦車が到着する。
 以上公式のあらすじ。

 お話としましては、前回引っぱったプラウダ戦の結末と、決勝戦までの大洗女子の少女たちの流れ、そして決勝の黒森峰戦の最序盤まで。どーせ11話延期なんだから、黒森峰戦までやらなくてもいいような気がしますが、おそらくは、ある程度の引っぱりがないと3月まで興味を引っぱれないと踏んだか?
 まぁここで文句たれた所で来週11話が放送されるわけもないので放っておいて今回のお話ですが、まずプラウダ戦。フラッグ車を両校同時に撃破か?という所で前回引っぱったわけだが、大洗女子のフラッグ車八九式は砲撃を受けたがヨタヨタながらも走行し、III突はもぐって底面への砲撃ということもあって(戦車は上面・底面の装甲が一番薄いらしいです)見事フラッグ車を撃破し勝利する。
 正直、どちらが先か?という勝負となると思っていたので、八九式がヨタヨタながらも走行を続けている様を見て「おぉ!」と声をあげてしまいましたよ。と、言うのも、予想した展開でないということもさることながら、砲撃を受け黒煙を吐きながらも走る八九式が、絶対に負けられないとする大洗女子の想いのように見えて胸にぐっときたのだ。
 どちらも撃破され、勝負を時間的な運に託すのではなく、ヨタヨタながらも「生き抜いた」八九式は正しくみほたち大洗女子の皆さんが勝ち取った勝利を見事に表しているように思えたのです。そう、みほたちは「勝てた」のではなく「勝った」。まぎれもない彼女たちがもぎ取った勝利なのです。
 何を今更と思うかもしれませんが、このプラウダ戦までの試合とは彼女たちの「勝利する」ことの意識が違っていて、おそらくは皆「勝てたら良いな」くらいな気持ちであったであろうが、廃校の事実を知って「負けたくない、勝ちたい!」に変わり、全員がその想いと目標に向って手を伸ばし掴み取った、という意識の差が感じられるのだ。
 まぁ冷静に振り返ってみれば、前の試合って言ったらグロリアーナとサンダースしかないわけだけど(アンツィオは描写されていないので含まず)、今ここに至ってみれば、みほたちは随分とたくさん戦っていつも薄氷を踏むような勝利だったようなイメージがあることもあるし、なによりここまで十二分にみほたちを中心に大洗女子の皆さんを見てきたこともあって、彼女たちの意識の変遷を感じられるのだから上手いこと作ってあると言える。
 試合後もまたおもしろく、みほの元にやってきたカチューシャの「まさか包囲網の正面を突破できるとは思わなかった」との言葉にみほが正直に「私もです」と返し、「あそこで一気に攻撃されていたら負けていたかも」と続けると、カチューシャは「それはどうかしら?もしかしたら……」と言い淀むのである。
 負けたと分かったカチューシャが涙ぐんでしまったのを見ても、傲岸不遜な彼女だが戦車と戦車道を愛し、この全国大会に一念を持って参加していただろうことが分かろうというものだ。そんな彼女だからこそ、自分たちに驕りと油断があったこと、そしてなにより大洗女子が絶望的な状況でも降伏勧告を受け入れず、決してあきらめることなく一体となって戦ったことを考えて、そうだったとしても、もしかしたら結果は同じだったかもしれない、と思ったのではないだろうか。
 そう思ったからこそカチューシャはノンナの肩から降りてみほと握手したのだ。試合前は見下していたが、圧倒的に勝る戦力に臆する事無く立ち向かい果敢に戦ったみほを、今は自分と対等であるとしたのだ。自分より下の存在ではなく、同じ所に立つ好敵手だと。
 もう一点、試合後の興味深い点があって、それは観戦していたみほの母のしほが「勝ったのは敵に油断があったからよ」と言うのを、姉のまほが「いえ、実力があります」と意を唱え、みほがどうしてこのプラウダ戦で勝てたのかを言い当てるのだ。そして「西住流の名に賭けて、必ず叩き潰します!」と敵意を向ける。
 このまほの様子から見ても、彼女はみほが持つ能力、持ち前の優しさとピュアさで全体をひとつの大きな力へ変えること、そして臨機応変に対応することに優れていることを解していることが分かる。みほはその生まれから西住流を汲みつつ、またそれにとらわれない何かを持っている、最も手強い相手と認識しているのだろう。
 これまでのみほの相手は皆、最初は彼女たちを見下していたがまほは違う。黒森峰戦はこれまでのようにはいかないと思わせてくれるではないか。しかも強豪校で戦車も豊富。これをみほたちがどうひっくり返してくれるのか、実に興味がそそられるし期待させられる。

 プラウダ戦後は黒森峰戦までのみほたちを長い尺で描いている。
 決勝へと駒を進めたことで、全校生徒たちにも廃校の事実が伝えられたようで、義援金が集まるも戦車を買うには至らず補強・改造へ回すこととなり、発掘戦車2号の88mm砲搭載の戦車はポルシェティーガーだったり、置物だと思っていた三式中戦車を発掘したり、38tにヘッツァー改造キットを取り付けたり、IV号がマークIVスペシャル(どうも北アフリカ戦線仕様?ということらしい)になったりする。
 しかしポルシェティーガーは……生徒会長も言ってたけど、アレは戦車なんか?もはや置き砲台にしかならないような気がするが(笑)。なにより一番ビックリなのが38tですよ!ヘッツァーが何かよう知らんけど(戦車らしいが)、38tが可愛くなくなっちゃったよ!ちんまりして角々してるのが可愛かったのに!ヘッツァーは虫の幼虫みたいで全然可愛くないです(私は虫が大嫌いなのです)。あうう。まぁ可愛いとか可愛くないはともかく、黒森峰線が始まるまでに、上記したような戦力のちょっとした増強やこれまでの設定の回収などが計られる。
 それと、以前に勘当されるような形となった華が、今まで自分になかったモノを身につけ母に認められたり、入院していた麻子の祖母が退院したことが分かったりするが、個人的にはその後の練習前(?)の件でみほが一言いう件が印象に残った。何故かと言うと、みほが全く大したことを言わないのである。
 なにか熱く語るわけでもないし、胸にしみ入るような感動的なことを言うわけでもない。言ったことといえば、決勝で当たる黒森峰は以前通っていた学校であること、でも今は大洗女子学園が自分の大切な母校であるとしていること、そして自分もがんばるから皆さんがんばりましょうという、なーんでもない言葉。しかし途中で「あの、えっと……」と言葉に詰まる間がとってあるのだ。
 この言葉に詰まる部分が実にみほの心情を表していて、自分の所為で10連覇できなかった黒森峰を、今度は違う学校へ来て黒森峰の優勝奪還を阻む形になってしまっていて、さりとて黒森峰に未練があるわけでもないし、大洗女子は今や自分の大切な母校で、今一緒にいる大切な友達、一緒に戦車道をする仲間たちがいて、何か言いたいんだけれど何を言っていいかよく分からないみほの複雑な気持ち、でも大洗のみんなと一緒にがんばりたいんだという確固たる思いが見て取れ、そのなんでもない言葉が実にみほらしくていじらしいのだ。
 これまでもちょいちょい述べましたが、彼女はみんなをグイグイと引っぱって勝利へ導くスーパーヒロインではない。ちょっと戦車に精通しているだけの、どこにでもいるような優しい普通の等身大の女の子なのだ。そんな彼女をこれまで見てきたからこそ、そのなんでもない言葉が「らしく」、またこれまで通りのみほであることが気持ちが良い。

 Bパートからは決勝前日の最後の練習後、各チームがゲン担ぎにカツ系のものを食べつつ翌日の決勝へ想いをめぐらすわけだが、まぁそこは各チームがそれぞれ示し合わせたわけでもなくカツ系のものを食べていた点でも分かるように、彼女らの決勝へ懸ける想いと、ここへ至っての一体感を分かりやすく表しているので特に某ないが、それ以外のことでちょっと興味深い点があったので挙げてみる。
 まずはあんこうチーム、というか、みほの部屋なのだが、実は1話からずーっと気になっていたんだけど、みほの部屋にあるぬいぐるみってみんなケガしているんですよね。包帯ぐるぐる巻きだったり、眼帯していたり、たんこぶがあったりetc...。このお食事会で初めてそのぬいぐるみたちを印象的に見せていて、あぁやっぱりみほはこういう人なんだなぁとしみじみと思うことができました。
 前回・前々回でも記しましたように、みほは試合で勝つことよりも、チームメイトにケガ人がでないことの方がよっぽど大事と考えているとっても優しい娘なのです。それは彼女のポリシーとかいうものではなく、この後の黒森峰戦の前でも語られるが、誰かがケガをしたり危機に陥っているのを見ると、考えるよりも先に出てしまう彼女の心の奥底に元来からある気持ちなのだ。おそらくは元々クマのぬいぐるみが好きなのであろうが、包帯だったり眼帯だったりの装飾を施すことで、彼女が持っている庇護欲とはまた別のそういう気持ちが刺激され、ぬいぐるみをより愛おしく感じるのであろう。
 上で彼女はスーパーヒロイン的な特別な人間ではないと書きましたが、特別な所があるとすれば、それは「こんなにも優しい」という部分だと言える。それを如実に感じさせる意味でも、このケガをしているぬいぐるみたちは、良いオブジェクトとして成り立っていて見事です。
 1話で戦車道を履修するかどうか悩んでいるシーンで、なんでぬいぐるみがケガしてるんだろうと思っていたのですが(包帯がアクセントになっていてかわいいなーとも思っていました/笑)、話が進むにつれて見えてくるみほの人柄に、そういうことかと納得し、ここへ至って確信になった次第で、個人的には興味深いシーンでありました。
 それとアヒルさんチームこと元バレー部。体育館で無言でバレーの練習をする彼女らにぐっとくる。
 元々は廃部となったバレー部復活のための戦車道の履修だったが、今となってはバレー部復活どころか学校存続の危機である。彼女らにとっては逆境また逆境であろう。当然彼女らの根底は部の復活ではあるが、それ以前にの話になってしまっているからこその、今ここでバレーの練習なのではなかろうか。
 本来ならば、他競技をしなくてはならないのだから不本意であるはず。しかし廃校の事実もあり、また他のチームとの繋がりも出来て、またなによりの大前提である「大洗女子学園でバレーをやりたいんだ」という気持ちの表れの様に見える。プラウダ戦で見せた不屈の激走も彼女らのバレー魂あってこそ。次こそ負けられない・絶対に勝つ!という彼女らの静かなる闘志が垣間見えてこれまた良いシーンでありました。

 翌日。決勝戦会場にて、みほの元にグロリアーナのダージリン、サンダースのケイ、プラウダのカチューシャがそれぞれやってくる。その様子にダージリンが「あなたは不思議な人ね。戦った相手みんなと仲良くなるなんて」と言うと、みほは「それは、皆さんがステキな人たちだから」と返す。
 もちろんダージリンはみほのその人柄を褒めたのだが、みほはそれと分かって「あなたたちの人柄の方が良いからです」と謙遜したわけだが、そういうみほだからこそ周りに人が集まるのだと思わせてくれる。そしてダージリンはイギリスの諺「四歩足の馬でさえつまずく」をみほに贈る。まぁこれはけっこう有名な諺なんで説明不要かとも思いますが一応記しておくと、日本で言う所の「猿も木から落ちる」です。
 そして試合前の挨拶で、相変わらずの悪役っぷりの逸見エリカはさて置き、重要なのは去年の決勝で助けたチームメイトがお礼を言いにやってきたことだろう。8話で優花里が言っていた通り、みほの行動は間違ってはいなかったわけだが、興味深いのは元チームメイトが「みほさんが戦車道やめないでよかった」と言ったのに対して、みほが「私は、やめないよ」と返したことだ。元チームメイトの言葉にはっとした表情を見せたみほは、この時いったい何を思ったのであろうか。
 第1話で戦車道やります!と決意した後、本当に良かったのか?と聞く沙織と華に胸中をもらした際、誰も自分の気持ちを考えてくれないと言っていたみほ。でもそんな黒森峰の中にも、みほのことを考えてくれていた人はいたのだ。しかし自分は黒森峰から逃げ出し、そして今に至る。みほが黒森峰に留まる可能性はあったが、それは「if」でしかなく、これまでがあってからこそ、今ここにみほは立っているのだ。きっと本当はこう言いたかったのではないだろうか。
 「私は、もう戦車道をやめようだなんて思わないよ」
 でもそう言うと、戦車道をやめようとしていたのだと傷つくかもしれない。だからの上記した返答だったのではなかろうか。過去があって今のみほがある。それにあの時、自分を思ってくれた者がそこにいたのだと分かっただけで十分だったのだろうことが、みほの表情から読み取れる。
 その後試合が始まり、元チームメイトとの様子を見ていた優花里がやはりみほの判断は間違っていなかったことを伝えると、みほは今でもそれが正しかったかは分からないが、そうしたかったし、それでいいんだと晴れやかな表情で言う。
 もうあの時のことで悩む自分はいない。正しいとか間違っているとかは関係無い、自分の気持ちを素直であればいいということにたどり着いたのだ。全てが吹っ切れた、そんな表情が実に清々しい。

 その後、いきなりの強襲を受けフラッグ車のIV号が狙われるも、偶然三式中戦車が縦となり撃破されて引っぱった。ってここで終わるくらいなら開戦前で終わってほしかったような気がすることもさることながら、見せ場もなく撃破されちゃったゲーマーチームの皆さんって一体なんの意味が……(笑)。
 次回は前回書きました通り総集編なので、今回がこの1クールでの事実上の最終回です。ああ〜3月の11・12話見るまでは死ねない!!待ち遠しいなぁ。

 最後に、アマチュア無線二級を取得した沙織が交信を優花里と華に褒められ、「プロっぽい?」などと調子に乗っていると、麻子が「全然プロっぽくない」と返しました。
 幼馴染みのふたりなので、調子に乗っている沙織を戒めるために言ったのかなーなんて思っていたら……「だって『アマチュア』無線だし」
 なるほど!座布団一枚!(笑)


第10.5話「紹介します2!」

そりゃまぁ総集編ですよ。

 そんな今回のお話は…
 弱小チームながらも、メンバーの知恵と勇気と友情で辛くも戦車道全国高校生大会を勝ち進んできた大洗女子学園。
 いよいよ黒森峰女学園との決勝戦がスタートした今、改めてみほと優花里がこれまでの道のりを対戦相手のメンバーや使用車輌、戦術の解説を交えながら振り返る。
 以上公式のあらすじ。

 最後の放送となる10.5話は5.5話と同様に総集編。
 新しいカットとかがあるわけでもないので内容的に某あるわけではなかったが、戦車道のルールや劇中あまり語られなかった戦車の事などが語られ、興味深い点も少々あった。
 まずは戦車道の事ですが、車両が行動不能になると白旗が掲げられる「判定器」。
 あれは単純に自車輛が動けるか動けないかを見ている機械なのだと思っておりましたが、砲弾にもチップが埋め込まれていて、それを踏まえての判定なんだねー。それに伴って、砲弾は安全面のため車輛を貫かないようになっているので、何mm砲からどのスピードでどんな角度で当たったかを着弾時に計測して破壊力を求めて判定しているというわけですな。
 今回特に語られなかったが、プラウダ戦の最後は八九式は着弾したけど走行可能なので白旗は揚がらず、対してプラウダの方は底面へほぼゼロ距離からってことで、もうそれは普通なら貫いちゃってるよという判定だったということか。なるほどなるほど。
 それと全国大会のルールですが、1回戦から準々決勝までは参加車両が10両、準決勝は15両、決勝は20両までとなっていて、麻子が強豪校が有利云々いっていたのはこの事だったんだねー。しかしこれは劇中語られて然るべきなのでは?今回で語られるまで分からなかったぞ。
 しかし最初は参加車輛数が少ないので、小さい学校でも参加しやすいし、フラッグ戦だから一発逆転がある事が語られるが、それなら大洗女子以外にも参加しちゃう高校があっても良さそうなものだが。まぁ一応「強豪以外は出場しないという暗黙のルール」ってのがあるらしいので、まぁ見合わせているのかもしれないが、ボロ負けでもいいので記念に参加したいっていう所があっても不思議じゃないからなぁ。
 ま、その辺は大洗女子以外が皆強豪っていう中で、ほぼトーシローの寄せ集めであるみほたちが、難局を打開しつつ薄氷を踏むような勝利を得る、ってところがポイントなんで致し方ない所か。
 あ、今気付いたんですけど、フラッグ戦だから一発逆転可能ってことは、聖グロリアーナ戦もフラッグ戦だったなら勝てたかも分からないですねー。何せあの戦力と殲滅戦で隊長機同士の一騎打ちまで持ち込んだのだから。
 なるほど、だからダージリンはみほのその手腕を高く評価したのだな。予想外に善戦した、エキサイティングな試合をした、という以外にも、みほを好敵手と認める部分があったわけですな。

 またこれまでのサンダース戦、プラウダ戦のことも語られますが、興味深かったというか、そう言う事だったのかと思う事も紹介されました。
 サンダース戦において、通信傍受していたアリサのフラッグ車。八九式を追いかけている時の装填が遅い云々は、通信傍受器にスペースを取られて砲弾が取り出しにくかったということだったんだねー。これももうちょっと劇中で分かりやすくした方が良かったんじゃないですかねぇ。
 あと、プラウダ戦。カチューシャがKV-2を「カーベーたん」と呼んでいたのが気になっていたんですが、彼女の好きな戦車がKV-2だからだったみたい(笑)。
 個人的にKV-2は可愛くないなぁ。自分が一番好きなのはやっぱり感情移入もあってか、みほたちの駆るIV号が一番可愛いです。改造する前の一番最初のD型、あの短い砲がちょこんと付いているのが可愛らしい。なにより!全体を見た時のバランス(デザイン的なバランスの事)が、これまで出てきた戦車の中で抜群で美しいです!そんなIV号ですが、長砲身を付けたプラウダ戦はF2型仕様、黒森峰線でのシュルツェンを付けたのはH型仕様ということだったようです。シュルツェン付けてるのもカッコいいなぁ(可愛くはなくなったが)。
 それにしても、前回にも書きましたが、やっぱりヘッツァーは虫の幼虫みたいで全然可愛くもないしカッコよくないです……。

 とまぁ、そんなわけでこのガールズ&パンツァー、今期の放送がこれで終了です。ああ3月の11・12話が待ち遠しいなぁ。それを見た後に全体的な感想を述べようかと思います。


第11話「激戦です!」

相変わらずおもしろい。

 そんな今回のお話は…
 黒森峰女学園と熾烈な戦いは続く。火力と数に勝る黒峰森に対抗するため、長期戦に持ち込みたい大洗女子。
 みほは地形的に有利な山の上に陣取るため「もくもく作戦」「パラリラ作戦」を連続して展開する。だが、それには動じず、正攻法で対抗する黒森峰。
 ようやく山の上に集結した大洗女子は、攻勢をかけ最終的に2台の黒峰森戦車を倒す。
 これで7対18。みほの繰り出す作戦が効果をあげ、試合の流れは大洗女子に傾いているように見えたが……。
 以上公式のあらすじ。

3ヶ月待ってのようやくの再開。相変わらずおもしろいです。
 さて、前回一体なんの意味があって出てきたのかよく分からないゲーマーチームが開始早々やられてからのスタート。戦力の劣る大洗女子がいきなりのピンチをどう切り抜けるかが見せ所。物量と火力と正攻法で押してくる黒森峰を、みほらしい戦術と機動力で少ない戦力を最大限に発揮できる地点まで移動し敵を待ち構える。まぁ、あらすじに書いてある所が第一段階なわけです。
 「もくもく作戦」「パラリラ作戦」は、まぁ単なる煙幕なんですが、とにかく大洗は早く有利な山上へ行って布陣したいわけです。また戦力を落としたくもないわけで、万が一にも山上へ行くまでに撃破されたくはないので、この煙幕は非常に有効。足の遅いポルシェティーガーもワイヤーを使って他の車輛で坂を引っぱり上げる為にも必要だったわけです。
 私はそれよりも、ここで一番のポイントだったのは、ただ一機単独行動していた38tだと思っている。「いないなー」とは思っていたんですが、小さくて小回りの効くこの車輛が伏兵として攪乱し、撃破できないまでも履帯を壊して敵の進攻遅らす、また後述する山上での戦闘において退路を作った意味はデカイだろう。
 大洗は数的に絶対的に不利なので、戦力を常に集中させるだろうと思っていたので、この38tの伏兵に「みほ、やるなぁ」と唸らされましたよ。きっと私は戦場でみほとやり合ったらコテンパンだ(笑)。
 コテンパンはともかく、山上で布陣してからは有利な地形を活かして2輛撃破するも、重戦車を盾にしてじわじわ包囲してくる黒森峰に押し負けてしまう。
 まぁ展開的にはそうならざるを得ない所なので、ここでの展開に某ないが、この山上での戦闘シーンはすごくロングで引いたカットで山全体と布陣を映すカットがあるんですよね。戦車はコマ粒ほどの黒い点でしか見えませんが、砲撃による砲火と轟音の後にどわーっと土煙が湧き上がり砲撃戦のすごさを物語る。この客観視点は画面的にアクセントになっていて、個人的にはおもしろいカット割りでありました。
 山上での砲撃戦の状況は、劇中でキャラクターの皆さんが語ってくれるので置いておくとして、おもしろいのは押し負けて包囲される前に撤退する段になって、先述した38tが突撃して攪乱する「おちょくり作戦」だ。こちらもどういうことなのかはサンダースのお二人が解説なさってくれるので譲るとして、私がおもしろいというのは、先述した38tの小ささと機動力が伏兵として見事にハマったことなのだ。
 いつのまにか紛れ込んできた38tに気をとられてワタワタしていると、上から大洗の本体がやってきて撃つ。先ほどまでジリ貧だった所を見せていただけに、伏兵38tの登場から黒森峰が見事に攪乱され、みほらしいちまちまとした作戦に、まんまとしてやられていることが見ていて実に気持ちが良い。そして隊列が乱れた所で今度は重くて固いポルシェティーガーを先頭にし盾にして突っ込み敵布陣を突っ切る。この小勢が多勢を手玉に取る「してやったり感」がたまらないではないか。
 また、黒森峰が王者の誇りなのだろう西住流の正攻法でくる所を、「みほ」が用意周到・臨機応変に対応して引っ掻き回すことで、みほが大洗に来て見出した「自分達の戦車道」は西住流に勝るとも劣らないと思わせてくれるのが良い。
 ともあれ、ここから大洗は市街地へ向って移動することとなるのだが、川を渡る段になってからが今回の一番のメイン所である。

 川を渡っている最中にうさぎさんチームことM3がエンストしてしまう。ここでモタモタしているとせっかく引き離した黒森峰に追いつかれてしまう。M3を駆る一年生たちは意を決し自分たちを置いて先に行くようみほを促す。しかしM3をこのままにしておいては横転して流されてしまい一年生たちに危険が及ぶかもしれない。
 ここでみほは座ってじっと下を見ているのだ。そして去年の出来事を回想する。崖から落ちて河に落ちた仲間を助けるためフラッグ車の車長でありながら戦列を離れたことを。そしてその結果は、負けてしまった。
 みほがじっと座って回想するこの間(ま)。このけっこう長い間(ま)が実にじれったく、見ていて「みほ、行きたいんだろ?行けよ。行ってやれよ!」と思わずにはおれんではないか。みほがどうするかは分かりきってはいる。だが分かっているだけに、そしてこれまでを観てみほの想いを知っているだけに、みほが自分の気持ちを素直に行動に表す所を見たいと思わせてくれるのだ。
 しかし状況は昨年よりも逼迫していると言え、負ければ大洗女子学園は廃校になってしまう。みほの、仲間達の大切なものが無くなってしまうのだ。負けてはならないのだから、うさぎさんチームを置いていくことに理はあるが、本当にそれで良いのか?みほがじっと座って何をその時思っていたかを感じられる。だからこそ、ここでみほに「助けに行ってほしい」と思うのだ。
 すると、そんな視聴者の気持ちを代弁するかのように、沙織が「行ってあげなよ。こっちは私たちが見るから」と笑顔で言って頷くのだ。その言葉にみほは意を決する。以前の感想でも述べたように、みほは決して類い稀なリーダーシップを発揮してみんなをグイグイと引っぱっていくスーパーヒロインではない。負けたら廃校という決勝戦と仲間の危機を助けたい気持ちの狭間で揺れて、気持ちが立ち往生してしまう普通の女の子だ。そんな彼女の気持ちを友達の沙織がそっと背中を押したのだ。第1話で「誰も私の気持ちなんて考えてくれなくて」と言っていたみほには、今、こうして彼女の気持ちを汲んでくれる友達がいる。
 沙織の言葉に驚くでもない喜ぶでもない表情を見せたみほはこの時なにを思ったであろうか。きっと自分は自分であって良いと思ったのではなかろうか。だからみほは大きく息を吸い込み、優花里に「ワイヤーにロープを!」と意を決した表情で言ったのだ。彼女にもう迷いはない。決勝が始まる前に優花里に言っていたように、みほは「そうしたい」のだから。
 こうしてみほはワイヤーと自分にロープを結びつけ、ルノー・III突を足場にしてエンストしたM3まで飛んでいく。一年生たちを助けようと戦車と戦車の間を力強くジャンプして飛ぶみほの姿は見ていて実に誇らしいではないか。そんなみほだからこそ彼女のいないIV号の中では、前進することよりも仲間を助ける事を選んだみほの選択を、みほがみほであったことに頷き合い、そして彼女の戦車道が間違っていないことを勝って証明したいと決意を新たにする。
 みほがM3に到達すると、遠方で土煙が見え黒森峰の接近を知り、仲間達は「隊長を助けるんだ!」と援護射撃を始め、M3ではみほと一年生たちがロープを引っぱりワイヤーをたぐり寄せ引っぱり上げる。すると一年生たちは口々に「隊長!ありがとうございました!」と礼を述べるのであった。
 戦争であったなら、みほは良い隊長ではないのかもしれない。戦車道という武道においても勝ち負けがある以上、必ずしも正しくはないだろう。だがけっして「間違ってはいない」のだ。プラウダ戦で彼女が言っていたように、これは戦争ではない。勝つことよりも大事なことがあるのだ。そして当たり前の優しさを当たり前にするみほだから、みほは大洗女子戦車道チームの隊長として、またひとりの人間として皆に慕われている。視聴者的にも、これまで見てきた「誰よりも優しいみほ」は、間違いなくその通りであったことがこの上なく心地良い。またそれは大洗女子チームの皆もそうなのだ。
 この決勝戦、きっと勝つであろうことは分かってはいるものの、どうしてもみほたちに「勝ってほしい」と思わせてくれるではないか。見事に主役に感情移入させてくれるのだから、素晴らしいと言わざるを得ない。

 M3もエンジンが再びかかって窮地を脱した大洗女子は市街戦へ持ち込む為に市街地へ向けて移動を開始する。
 個人的にちょっと嬉しかったのは、途中にあった石橋をポルシェティーガーが自重を活かして橋を壊したことだ。橋を壊す理由は言うまでもないので省くが、ちゃんと壊してくれたのを見ては「分かってるなぁ!」と思わざるを得ない。よしよし!といった気分である(笑)。
 さて、市街地についた大洗女子は先行していた黒森峰の斥候III号戦車を発見。今のうちに撃破しようと追いかけるが、逃げた先には史上最大の超重戦車「マウス」が待ち構えていた。その装甲は大洗女子の砲撃を難なくはじき返し、その砲撃は直撃したルノーを簡単にひっくり返す。
 遮蔽物の多い市街地で、足を使って優位に立とうと思っていたであろう大洗女子であるが、ルノーとIII突を失い、またも窮地に追い込まれてしまった。ってところで引っぱった。

 しかしあんな超重戦車を投入されたら、アンティークみたいな大洗の戦車では太刀打ちできませんなぁ。III突はけっこうな至近距離から撃ったというのに、簡単に砲弾が後ろにカキーン!と跳ね返されていたもの。まぁ足はたぶん当然重いであろうから、完全スルーするのもひとつの手だとは思うが、はてさて。(ああ、でもバーチャロンフォースでtetsuoスルーしていると痛い目見るよね……)
 それから斥候のIII号を発見し追いかける件。見ていて「これは囮だ」と私はすぐに勘付いたのだが、みほともあろう者がそこに気付かないとはなぁ。まぁ、彼女のそういうところが、完全無欠のスーパーヒロインしていなくて、逆にみほの人間らしさを感じられて良い。
 あとIII突なんですが、撃破されたんですかね?判定器の白旗上がっていなかったと思うんですが。個人的にはこのIII突は実は生きている、ってのが最終決戦のポイントだったり、などと思っていたりするが、私の予想など当たった試しが無いのできっと違うんだろう(笑)。
 ともあれ、お話としては相変わらずピンチありチャンスあり、そしてまたピンチと展開を楽しませてくれる。そしてしっかりとみほを中心とした大洗女子の厚い友情を見せてくれるんだから言う事ない。
 が、個人的には大洗女子を応援しにきてくれた他の学校の方々が、節々で解説をしてくれるのがちょっと気になってしまった。どうせなら自分で「こういう事なのかな」と想像を働かせたり、「なるほど、こういう事か」と得心を得てニヤニヤしたかった所(笑)。
 マウスの登場までは割とみほの思い通りに進んだが、最終的には5対17(だったっけ?)だから圧倒的不利なのは変わらない。これをひっくり返すにはもうフラッグ車の撃破しか手はないが、みほの姉まほが容易にそんなことをさせてくれるとは思えない。しかしそこは、みほの戦術と腕、かな?
 初めての対外試合と同様に市街戦に持ち込んだ大洗女子が、この圧倒的不利な状況からどう勝利を得るか。そしてこの物語をどう締めるか。次回最終回を楽しみにしたい。


第12話「あとには退けない戦いです!」

何度見ても泣ける。

 そんな今回のお話は…
 黒森峰のマウスの圧倒的な力に押される大洗女子。だが、ここでマウスを倒さなくては、形勢の逆転はあり得ない。
 カメさん(生徒会)チーム、アヒルさん(バレー部)チーム、そしてあんこうチームは捨て身の作戦で挑む。
 果たして活路は開けるか。大洗女子の命運は!?
 以上公式のあらすじ。

 いやぁ冒頭にも書きましたが、何度か見たが、その度に涙ぐむよ。素晴らしい物語であった。
 さて、お話は前回からの超重戦車マウスの登場で、ルノー・III突が撃破されてしまった所から。
 市街戦で決着をつけるには、この超重戦車マウスと戦うしかない。しかしモタモタしていたら黒森峰の主力が追いついてしまう。大洗の残った5輛が一斉射撃をしてもマウスの装甲は厚く、前どころか横も後ろも抜けない。主力が追いつくまでにこのマウスをどう落とすか。ここが序盤の山場のひとつ。
 私も見ていて足が遅いので危険承知でスルーするか、動けないような状況にして無力化してしまうしかないなーと思っていたんですが、戦車データを見ていた沙織が「いくらなんでも大き過ぎ!こんなんじゃ戦車が乗っかりそうな戦車だよ!」のぼやきを聞いてみほははっと作戦を思いつく。さすがに私も気付きました。そう、横がダメなら上からですよ!マウスの上部は排気口等々スリットが多い。そこを狙うのだ!ここから見事な連携と戦術を大洗女子が見せてくれる。
 高低差がある所まで一旦逃げマウスをおびき寄せると38t(ヘッツアー改)が突撃して衝突。その小ささと形を利用し下にもぐり込む。車体前面を浮かせて動きを止めたのだ。次は横へ回って攻撃。効果は無いが、マウスは当然そちらへ砲塔を回す。そこへ八九式が38tを足場にしてマウスの上に乗っかり、砲塔が回らないようブロックしてしまう。
 上からの攻撃が有効と分かっても、敵が動いていては狙い外れるし、こっちが狙っている所を撃たれたら元も子もない。自軍の戦力を見てどうすれば有効な攻撃を仕掛けるられるかを瞬時に思いついたんだから、みほの作戦立案能力はなかなかずば抜けてるよなぁ。彼女は1話で母も姉も戦車道の才能があるけど私は……みたいな事を言っていたが、これはみほの才能と言っても過言でなかろう。ともあれ、みほはマウスを動くことが出来ないようにして「張り子の虎」にしてしまったのだ。
 個人的にここで好きなシーンがあって、上に乗っかった八九式にマウスの黒森峰が「おい軽戦車!そこをどけ!」と怒鳴るのだが、八九式の小窓から顔をのぞかせた磯部さんと佐々木さんが「いやですぅ。それに八九式は軽戦車じゃないしぃ」「中戦車だしっ」と言って返すのだけど、この口調の見事におちょくった感じが可愛らしくてステキだ(笑)。そんな八九式と38tの働きで動きを止めたマウスに、IV号が段差を登って上から後方上面のスリット部へ砲撃。見事撃破に成功する。
 おそらくまともに戦ったらまず勝ち目のない超重戦車を、大洗女子の比較的小柄な戦車が手玉に取って仕留めてしまうことの気持ち良さ。そして土壇場をひっくり返した高揚感と言ったらない。
 しかし、次の行動へ向う際、マウスの下から出る38tを見ていて「砲身はこれで死んだなー」とは思ったが、超重戦車の下敷きになったダメージはかなり大きかったようで、38tの動きが鈍くなりエンジンからは黒煙が噴き上がり止まってしまい判定器の白旗が揚がってしまう。このシーンはなんともやりきれない思いだ。
 軽戦車である38tは前回伏兵として、今回はマウスの動きを止めて、この決勝で見事な働きをしてくれた。劇中河嶋さんが言ったように「ここまで良くやってくれた」と思わずにはいられない。確かにマウスの撃破は大きい。がしかし、それと引き換えに大洗女子は38tを失ってしまったのだ。火力の小さい38tでここまでの働きをしてくれたのだから、これでも十二分であるという気持ち半分。3年生のチームであった38tにはもっとがんばってほしかったという気持ち半分で、ここでのカメさんチームの脱落は妙に悲しい。
 だが38tの彼女らは「我々の役目は終わりだな」と清々しく言い、すいませんと謝りにきたみほに「謝る必要はない」「良い作戦だった」「後は任せた」と、ここで脱落する悔やみひとつ言わず、みほに後を託すのだ。そんな彼女らの言葉を受け、無茶させた上に撃破ではなく故障でリタイアさせてしまって申し訳ないという表情から、後を託され勝ちにいく決意ある表情に変わり、力強く「はいっ!」と応える。
 決勝開始直後に1輛、マウスの登場で2輛、そのマウスと引き換えに1輛。ただでさえ少ない戦力が、さらに少しずつ減っていく大洗女子の戦力。減らしても減らされ変わらない戦力差。普通に考えてまだ勝つ見込みは見えない状況だが、みほの力強い返事からは悲壮感は感じられない。彼女たちはまだ勝利を信じているのだ。みほは次の作戦の展開前に各車に言う。こちらは残り4輛、相手は14輛だがフラッグ車はどちらも1輛であると。そして次の作戦の指示を出し、それに答える各車の士気の高さから見ても、彼女たちがこの状況でも絶望せず、勝利を信じているのを裏付ける。
 また最後の舞台である市街戦。これは大洗女子チームが最初の対外試合での再現だ。あの時、トーシローの集まりで負けて当然と思っていた彼女らは今、みほの細かく難しい指示を理解し、圧倒的不利な状況でもあきらめず勝利を信じている。グロリアーナ戦からまとまり出した彼女らは、ここで完全に一丸となって勝利へと向っている。どうしても彼女たちに勝ってもらいたいと思うのが人の情というものだろう。
 そして大洗女子は最後の作戦「ふらふら作戦」を決行に移す。フラッグ車同士の一騎打ちに持ち込む為に、機動力を活かして敵を分散させるのだ。ここからが序盤のもう一山であり、これまでをつなげてくれるのだ。

 敵の前に姿を現して追わせ、細かい路地に入ってフラッグ車を誘う。大洗女子の残りの車輛はIV号・ポルシェティーガー・八九式・M3。ポルシェティーガーは別に役割があるので、引きつける役目は八九式とM3が負う。ここでM3の一年生たちがエレファント・ヤークト率いる後続を任せてほしいと買って出るのだ。
 わざと皆から離れ、まずは最後尾のエレファントに狙いをつけ追われる。細い路地に誘い込み、機動力を活かしてロの字の道を周り込んで背後をとる。狭い道故に砲塔の無いエレファントは信地旋回することができない。
 これは決勝戦前、最後の練習の後に一年生たちが集まって見ていたDVD戦略大作戦の有名なシーンを見ていたことがここでつながった。そして彼女らは次にヤークトティーガーに狙いをつけるも逆に向かい合わせで追われる格好になってしまう。それでも彼女らはバックしながらもヤークトにくっついて砲身の内側に入り砲撃させない。ちょっとでも距離が開いて128mmの砲口の前に出てしまえば撃破されてしまう。しかしこの状況でも一年生たちは「怖い〜!」と言いながらも「ヤークト、西住隊長の所に絶対向わせちゃいけない!ここでやっつけよう!」とするのだ。私はここで泣きそうになりましたよ。
 細い路地を抜けてすぐには川(廃棄された市街地なので川は枯れている)がある。そこでうっちゃって川に落とそうというのだ。路地を出た瞬間、転回したM3はヤークトとの間が空くので砲撃され撃破されてしまったが、M3を撃破しようと必死だったヤークトは勢い余って川に転落、ひっくり返って砲身も折れ、判定器は白旗を揚げる。
 思い出してみてほしい。初めての対外試合であったグロリアーナ戦で、逆包囲され激しい砲撃を受けた彼女たちは、怖さのあまりに戦車を乗り捨てて逃げ出していたことを。
 敵前逃亡した無様な彼女たちは、その初戦からみほの活躍を見て反省し、全国大会のここまでの激戦をくぐり抜け、そしてこの決勝戦でエンストした自分たちを助けてくれたみほの為、そして勝利の為に危険を投げ打って後続を任せてほしいと買って出て、厄介なエレファントとヤークトを撃破するに至ったのだ。グロリアーナ戦の時では想像もつかない成長ぶりではないか。もはや彼女たちはこの大洗女子戦車道チームにとって立派な戦力となっていたのだ。最初に無様な所を見ていた分、今ここに至っての心の成長ぶりが胸にぐっとくる。これまでの経験が彼女らを大きくしたと思わせてくれるじゃないか。
 また元バレー部のアヒルさんチームこと八九式も3輛を引きつけ激走を見せる。
 初めて乗った練習試合で上手く動かせずに木にぶつかってしまった彼女らは、麻子に操縦を教わり、プラウダ戦ではフラッグ車とKV-2以外の全車輛に追われながらも、勝利を呼び込む不屈の逃走を演じた彼女たちである。それを考えれば3輛に追われたくらいで、そう簡単にやられるものかと思わせてくれる走りを見せる。
 この物語の始まりからここまでがあって、今この時の一年生たちと元バレー部たちなんだと、これまでの彼女たちの軌跡が蘇る。ここまでがつながって正に活きているのだ。この「つながり」を感じられるからこそM3の活躍と八九式の激走が胸を打つ。
 そしてIV号は最終決戦地の廃校へと残りの敵を誘い込む。廃校寸前の大洗女子が最終決戦地を廃校跡地に選ぶのがなんともニクい演出だ。(なんか断言しちゃってますけど、『たぶん』廃校跡地だと思うんだよね。)
 唯一の入り口をIV号と敵フラッグ車ティーガーが通ると、別のルートを通ってきたポルシェティーガーが道を塞いで後続を通さない。ついにフラッグ車同士の一騎打ちへと持ち込んだ。
 大きな広場に出て対峙するIV号とティーガー。まほは「西住流に逃げるという道はない。こうなったらここで決着をつけるしかないな」と言い放つと、みほは不安そうな表情から一転、決意ある表情を見せ「受けて立ちます」と応える。
 全国大会の抽選の後、邂逅した姉まほに萎縮していたみほであったが、今ここへ至って彼女に臆する心はない。信頼し合える友達と一緒に見出した戦車道で、圧倒的に不利な状況から勝利へつながる一騎打ちへと持ち込んだのだ。駆るIV号には最も信頼する沙織・華・優花里・麻子がいる。どうして恐れよう。

 入り口に鎮座したポルシェティーガーは、まるで弁慶かはたまた長坂橋の張飛か。黒森峰の残りを一手に引き受け先に行かせない。その間にIV号とティーガーの一騎打ちが始まる。
 広場を対峙したまま一週した後、細い路地へ逃げるIV号。逃げの一手はない西住流は当然追う。みほは機動力を活かし、一撃を入れるチャンスを冷静に狙っているのだ。まほもただ追っているだけではない。IV号が行く先の建物に榴弾を放ち瓦礫で道を塞ぐ。行く先を塞がれたIV号はバックを余儀なくされるとティーガーはそこを狙って全速で追ってくる。IV号はそのまま全速後退。ティーガーと衝突し砲身の内側へ入って砲撃を避ける。逃げるIV号に追うティーガーの激走は続くが、さすがは全国大会9連覇した猛者黒森峰の砲撃は正確で、IV号のシュルツェンは少しずつはじけ飛ぶ。
 その頃、敵の一部を引きつけていた八九式はついに捕まり被弾。入り口を固めていたポルシェティーガーも囲まれて集中砲火を浴び両車輛ついに力尽きるが、ポルシェティーガーはその重量と大きさから撃破されてなお入り口を守り続ける。
 プラウダ戦で不屈の逃走を見せた八九式が被弾して吹っ飛ぶ様、ポルシェティーガーが集中砲火を浴びてもなお動かず黒煙を揚げる様が見ていてつらい。ここまで少しずつ減らされていった大洗の車輛は、もうみほたちの駆るIV号を残すのみとなってしまった。
 そのIV号とティーガーの一騎打ちは続く。お互い路地を行き交いつつの撃ち合いとなっていた。IV号は通り向こうから一撃を入れるがティーガーの装甲は固く抜けない。ここでは砲塔視点のカメラワークが効いていて、流れる建物の壁からそのスピード感を感じるし、通りへ出た一瞬での両者の砲撃は手に汗握る。そして両車輛は最初の広場へ戻ってきた。
 そこでポルシェティーガーから交信が入る。後続がポルシェティーガーの上を登って無理くりそちらへ向おうととしていると。もうみほたちに残された時間は少ない。
 みほは一撃をかわし、その隙に距離をつめて至近距離から必殺の一撃で決着をつけるしかないと決意する。グロリアーナ戦で隊長機とやり合ったあの戦法だ。
 優花里に更なる装填時間の短縮を要求すると「任せてください!」と力強く応える。華は0.5秒でも停車する時間をくれれば確実に撃破してみせると豪語する。麻子には全速力から一気に後部まで回り込めるかと問うと「履帯切れるぞ」と忠告する。しかしみほは「大丈夫。ここで決めるから」と答える。みほの決意は固い。いや、もうここで決めるしかないのだ。麻子は「分かった」と力強く頷いた。初めての対外試合でみほにおんぶにだっこだった彼女たちは、今、みほの要求に応えることが出来るのだ。
 そしてみほと同様に、華たちの決意も固い。前回エンストし川で立ち往生した一年生たちを助けに向ったみほの戦車道は、決して「間違っていない」と勝って証明する、その決意だ。愛する学校の廃校阻止の為、友達の為、そして自分たちが信じた道の為、IV号は一丸となりみほの「前進!」の声と共に最後の勝負へと発進する。
 広場の外周を回るIV号に、ティーガーはやや中央へ出て回るIV号を旋回して射線に入れようとする。十分速度を出したIV号は中央へ転回、「撃て!」の合図と共に砲撃。当たるもティーガーの前面装甲は抜けない。続いてティーガー砲撃。左に避けて砲塔右側面のシュルツェンが吹き飛ぶ。そのまま全速力で駆けるIV号は左側面から後方へと回り込む。猛スピードでの回り込みに履帯から火花が飛び、転輪は次々と弾けとんで、麻子が忠告したようについには履帯もちぎれるが、それでもIV号は横滑りし止まらない。回り込むIV号を追ってくるティーガーの砲塔。綺麗にティーガーの真後ろまで回り込むIV号と見事にそのIV号を追ってきたティーガーの砲塔。同時に砲撃し、両車輛が黒煙に包まれる。
 IV号の砲撃はティーガーの後部装甲を貫き、ティーガーの砲弾はIV号の残った砲塔左側のシュルツェンを吹き飛ばしていた。このシュルツェンはプラウダ戦後に廃校の事実が知れ渡り、学校の各部から集められた義援金で取り付けられたものだ。ティーガーを撃破したのは見まごう事無くIV号を手足のように駆ったみほたちの力だが、最後にIV号を守ったのは、大洗女子学園を廃校にさせたくない在校生の皆さんの力であったのだ。一丸となっていたのは大洗女子戦車道チームだけではない、あの学園艦で生きる人たちも彼女たちの勝利を信じひとつにまとまったからこその勝利なのだ。

 試合後、みほたちの元に集まってくる大洗女子チームの面々は、お互いの健闘と勝利を讃え合う。生徒会長はみほに「私たちの学校を守れたよ。ありがとね」と言って抱きつくと、みほも「いえ、私の方こそありがとうございました」と返した。
 思えば、廃校阻止の為にみほを利用しようとした生徒会と、せっかく戦車から逃げてきたのに戦車道をやらされるはめになったみほであった。しかし、その出来事がなければ今はないのだ。ひょんな運命の巡り合わせではあったが、この数奇な運命の巡り合わせは沢山の運命と道を良い方向へと大きく変え、ことさらみほにとっては輝かしい青春の1ページとなって彩られただろう。
 そして帰る段になってみほは姉のまほの元へと向う。「お姉ちゃん」と呼びかけるも、みほはその後の言葉を紡げない。するとまほの方から「優勝おめでとう。完敗だな」と言って微笑むのだ。その言葉にみほは困ったような照れくさそうな顔を浮かべる。そしてまほは手を差し伸べ、みほはその手を握り握手する。
 「みほらしい戦いだったな。西住流とはまるで違うが」「そうかな?」「そうだよ」「……じゃあ行くね」「ああ」
 離れて久しい姉との会話だというのに随分と素っ気ないが、ここで言葉が紡げないのもみほらしいではないか。そしてこの会話の中で、まほ視点になる場面があるのだ。握手しているみほの後ろに、彼女と共にIV号を駆った仲間達が見守る姿をまほは見る。
 おそらくは黒森峰で唯一みほを理解していただろうまほ。誰よりも優しく勝利の為に仲間を見捨てることが出来なかった妹は、黒森峰と実家から去り、もう二度と戦車に乗らないだろうと思っていたが、今こうして妹を理解し想ってくれる友人を得て戦車に乗っているのだ。そして去り際に「お姉ちゃん。やっと見つけたよ。私の戦車道!」と言って微笑む妹に笑顔で頷いて返すまほの気持ちは、きっとこれまでを見てきた私たちと一緒なのではなかろうか。それにこれこそみほが姉に一番伝えたかったことだ。みほはもう自分らしく生きていけるのだ。
 表彰式では優勝旗を持つみほと大洗女子チームが並ぶ。最初18名だったチームは、今や彼女を中心に32名が集った。みほのトラウマから始まったこの物語は、彼女が信頼できる友達を得て、トラウマを克服し、新たな道と更なる友達を得て大きく成長し、その出会いをくれた場所に帰っていって終わる、実に清々しい物語でありました。

 随分と最終回の感想が長くなってしまいましたので、全体的な感想はまた次回で。


全体的な感想

最終回の感想が随分長くなってしまいましたので、ここで全体的な感想を。

 いやはや、まずは「天晴!見事なり!」と言っておこうではないか。正直、第1話のOP見ている時点で、これほど見事な物語になるとは思っていませんでしたよ。
 転校してひとりぼっちだった主人公西住みほが、ふとしたきっかけから友人を得て、そこから始まる友情。そしてみほの転校のきっかけでありトラウマでもある架空の武道「戦車道」を通しての少女達の成長。「ガールズ&パンツァー」の看板に偽り無しの、正に戦車と少女たちの友情と成長譚であった。
 某巨大掲示板のスレッドタイトルみたいな、わけの分からない物語(個人的にスレタイみたいなタイトルにするのは、ものすごく見苦しいのでやめた方がいいと思うぞ?)がある昨今、これほど綺麗にストレートな物語を見事にまとめているんだから、もうそれだけでもすごいのではなかろうか。

 この物語のおもしろいところは、まず「大きな転機がない」ことだろうか。
 まぁ、第1話で戦車道から逃げて、二度と戦車に乗るまいと思っていたみほがまた戦車道をやることになってしまった、ということでは転機ではあるが、それはこの物語を始まるきっかけである。みほ率いる大洗女子戦車道チームが全国大会に出場し優勝するまでに、トーシロー軍団であった彼女らが、優勝に至るまでに「ここで大きく変わった」ということがないのだ。
 だがしかし、第1話と最終話での大洗女子のみなさんは全くと言って良いほど違っている。それは最後に至るまでに彼女たちが少しずつ変わっていったからで、彼女たちの小さな経験を積み重ねていった結果、最終的にそのようになった形になっている。見事なのは、それをたった1クールで視聴している者に理解させ、納得させた力量だ。
 1クールという時間的制約がある中、割と登場人物が多いこの物語で、その登場人物たちの交流と成長、そして経験を積んでいく様を描いているのだから、見ていて最初と違う彼女たちを自然に受け入れることが出来る。また、その相違点を感じられれば、前にこんなことがあったあんなこともあったとこれまでの軌跡を蘇らせ、その違いを納得することが出来るのだ。
 それをことさら説明するわけでもなく、自然に見せるということをやってのけている点が素晴らしい。4クールもやってお話に全くつながりを感じさせなかったあげ玉ロボットアニメのシリーズ構成は、このアニメを見て見習ったらどうか。

 もう一点としては「友情譚」。
 最終的には「廃校阻止」ということもあってさらにまとまりを見せた大洗女子チームであるが、別にそれだけでまとまったわけではない。むしろそれまでがあるからこそ、廃校というイベントで「まとまれる」のだ。
 第8話プラウダ戦でのろう城中にもあったように、来年も「この仲間達と一緒に戦車道をしたい」から廃校にしたくないのだ。お互いが特になんとも思っていない間柄であったなら、ここで一致団結して廃校を阻止しようとなるだろうか。いや、なるまい。最初、大洗女子チームはそれぞれ目的が違っていたが、まずみほの乗るIV号の中での交流を見せ、そこから試合を通して各チームとつながり始め、全国大会で苦戦を強いられる中でより密接につながっていく。彼女たちが信頼し合うに至る様子を丁寧に描いているから「廃校にしたくない」部分で「まとまれる」。
 またその彼女たちの友情が小さな積み重ねなのだ。例えば、陸自の教官にみほが西住流のことをふられて困っていると、事情を知っている沙織が即座に話を変える。まぁここまではありそうな話ではあるが、この後にみほが後ろを振り向いて沙織の顔をちらと見るのだ。ほんのちょっとのことだが、みほが困っている自分を助けてくれた沙織に「ありがとう」という意味で振り向いたのだと分かるではないか。沙織も顔は映っていなかったが、そんなみほに笑顔で返したのではなかろうか。こういうちょっとしたことで、大きく彼女たちの気持ちを感じられ、見ていて「いいなぁ」と思わせてくれる。やはり美しい友情は見ていて気持ちがいい。そしてそれを上手く使っているので以下で語る。

 もうひとつとしては「展開」だ。
 まぁ正直言ってしまえばだ。1クールの物語で、主役たちのトーシロー軍団が全国大会に出れば、まぁまず優勝するってのが物語ってものですよ。そう、結果は分かっているのだ。ではなんで、私は分かっていることにこんなにもハラハラドキドキしながら試合を見ていたんでしょうね?
 常に戦力差のある大洗女子でしたから、勝つことは分かっていても「どう勝つのか?」という部分と判官贔屓的なことはもちろんあった。でもそれだけではこんなに楽しく見れないだろう。勝つと分かっていながら「どうなっちゃうんだろう?」と思わせてくれることが大事なのだ。
 考えてみれば、勝つと分かっているのにどうなるんだろう?はおかしな話ではある。勝つって分かってるんだから。では何故そう思うか。結論を先に言ってしまえば感情移入しているからだ。見ていて劇中のみほたちと同じ様に感じられてしまって、頭の中から「勝つと分かっている」が吹っ飛んでしまっている状態。
 つまり、試合前から試合中にかけ、みほたちの上記した友情譚であったりを見てきて、勝ってもらって気持ち良さを味わいたいと思うのは当然。それがあっての展開なんですよ。その良い例がサンダース戦。
 始めての対外試合でグロリアーナに僅差で負け、次は勝ちたいとなっての全国大会。抽選後に黒森峰のまほとエリカに会い、萎縮するみほをいじられて憤慨する仲間達。もうここで初戦を勝って見返してやりたいと思わずにいられない。そして試合。無線傍受でいきなりのピンチに陥るも、それを逆手に取ってチャンスを作る。そこから敵フラッグ車を見つけてさらにチャンス。しかし後続に追いつかれ、八九式・M3が撃破され一転大ピンチに。勝ってやるぞと思っていた中でのシーソーゲーム。ハラハラしてしまうの無理はない。そんな危機的状況に皆あきらめかけている中で、主役のみほが「今はチャンスなんです!当てさえすれば勝つんです!あきらめたら、負けなんです!」と仲間の奮起を促す。見ていて勝ってほしいのに劇中の彼女らが意気消沈。「ああ、がんばれがんばれ」と思っているところでの視聴者の声を代弁するかのようなみほの台詞。そしてそれが皆に伝播するのだから気持ちが良い。そこから意を決してのIV号が稜線射撃へ移って見事敵フラッグ車を打ち抜く。もうここまできたら、IV号から発射される砲弾に「当たれー!」と思わずにはいられないし、白旗が揚がって一発逆転し「やった!」と思わずにはいられない。決着後はグロリアーナ戦でバラバラであった彼女たちが、みほの元へわーっと集まってきて健闘を称え合う姿が胸に沁みる。
 と、このように、感情移入させてお話の中に入り込ませ、「勝つに決まっている」と思う隙を与えない。そういう中で展開を二転三転させて「この後どうなるのだろう?」と思わせる。見事な運びとしか言いようがない。
 また分かっている展開で間を持たせることで、じりじりとさせる点も上手い。
 サンダース戦での稜線射撃もそうだが、プラウダ戦においても、逃げる敵フラッグ車を仕留めることは分かっていても、たくさんの敵車輛に追われる八九式と、逃げ回る敵フラッグ車の両陣営の逃走を見せつけて「ああ、早く早く」と思わせる。また決勝戦でも、エンストしたM3を助けに行く際も、助けに行くことは分かってはいても、みほの気持ちが解っている分、彼女が下を向いて考えている間が非常にじれったく「早く行ってあげて!」と思わずにはいられない。
 それもこれも、戦車戦と同様にみほたちキャラクターの方もじっくりと描いてきたからこそで、彼女たちの気持ちを感じられることが出来るから、冷静に考えればストレートな展開に、こんなに感情移入してみることが出来るのだろう。そう考えると、物語やお話ってのは、特に捻らなくても十分に人を感動させることが出来るのだなぁ。
 ああ、それと、最初の対外試合グロリアーナ戦で負けているってのがその後のお話で大きなポイントとなっているんですよね。これがあるから万が一にも「負けることもあるかもしれない」と思わされる。一抹の不安を憶えるのだ。実に素晴らしい脚本とシリーズ構成だったと言わざるを得ない。

 上記以外では、砲塔視点でのカメラワークが印象的であった。
 けっこう何度もあったこの砲塔視点だが、これはスピード感を感じられるし、なにより戦車に乗っているような気分を味わえる。実際乗っているとしたら「こんなふうに見えるんだ」と思えるだけで追っている・逃げている感が違うだろうし、馴染みのない戦車という乗り物がどんなふうなのかを擬似的にでも感じられるのは良いだろう。
 そうかと思えば恐ろしくロングで引いたカットで状況や布陣を語る事無く説明したりして、お話もさることながら、見せるという点でもよく考えて作られている。
 演出・カット割りでは「IV号始めての砲撃」は個人的に圧巻であった。第3話の感想で詳しく書いているので省くが、そこに限らず、どこを印象的に見せるかがよく考えてあり感心。
 最後にひとつ持ち上げたいのは、「スーパーヒロインがいない」ということだ。
 登場人物は誰もが変わった人たち(笑)であったが、主役のみほでさえ、特別天賦の才能を持っていたわけではないし、類い稀なリーダーシップを発揮して皆をグイグイと引っぱっていったわけでもない。
 彼女たちは普通の女子高生で、普通に学校生活をしていて、普通に戦車道という武道(?)をしている等身大の女の子たちなのだ。世界の命運を賭ける戦いや、命を賭す闘争に巻き込まれるでもない話で、普通の女の子たちが友情を育み成長する様をこれだけ感動的に、そして盛り上げて見せているのだから素晴らしいという他ないではないか。

 とまぁ、上記したしたように、文句の付けどころのない物語でありました。素直に製作陣の皆様に拍手をしたい。パチパチ。
 敢えて文句を言うならば、2回も落としたことだろう(プロとして期日に間に合わせられないのはダメ!)。それを除けば私なんぞがとやかく言うことも無く、まだ見ていないなら是非見てくれと言いたい。
 私は好きなアニメを一つ挙げろと言われたら「一つに絞るのは無理!」と答えるようにしているんですが(無理だよね。)、5つ挙げろと言われたら必ずこの「ガールズ&パンツァー」を入れようと思います。それだけ私の中では群を抜くおもしろい作品でありました。
 アニメが好きという方で見ていないのならなら是非見ていただきたいし、アニメ云々じゃなくても物語が好きな人にも是非勧めたい、そんな逸品でありました。
 なんか久しぶりに良い物語を見たなぁ。


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