翠星のガルガンティア 1〜13話

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第1話「漂流者」

内容はあらすじ通りだが。
 そんな今回のお話は…
 はるか宇宙の深淵、人類銀河同盟は種の存続を賭けて、異形の宇宙生命体群ヒディアーズと終わることのない戦いを続けていた。
 人類銀河同盟の兵士レドは撤退中、不測のワープ事故に巻き込まれる。上官であるクーゲル中佐の援護もむなしく、レドは乗機である人型機動兵器チェインバーとともに空間のひずみへと投げ出された。
 レドが次に気付いた時、チェインバーは見知らぬ格納庫に横たわっていた。緊急事態に陥ったレドは半年間人工冬眠し、外部から刺激を受けたチェインバーがレドを覚醒させたのだ。
 周囲を取囲む、未知の原語を話す、未知の人々。現在位置を喪失し、救難信号にも応答はない。どうすればいいか。
 文明の劣った辺境惑星にたった一人漂着したのだと考えたレドは、人気がなくなったのを見計らい、戦線に復帰するために行動を起こす。
 チェインバーの外へ出たレド。その前に、一人の少女が立っていた。その時レドは……。
 以上公式のあらすじ。

 冒頭に書いたように、今回のお話としてはほぼ引用したあらすじ通りで、この物語を始める為の舞台と設定を準備をして終わったが、ありがちな設定ながらも「これからどうなるのなぁ」という期待値と、最終的に主役をどうしてこの物語を締めるのかが気になる作りになっていて、なかなか見応えがあった。
 あらすじにない設定を一応記しておくと、人類はすでに地球を遠い昔にはなれたようで、遠い銀河で宇宙生命体群ヒディアーズと戦闘していて、この物語の主人公レドは上記あらすじにあるように、撤退する母艦に乗り切れず、ワープ航行による空間の歪みへと投げ出され、サブタイにあるように未開の惑星へと漂流してしまう。それから半年。人工冬眠から目覚めたレドは……というのが今回のお話で、今回のラストの「漂流先は、レドたちにとっては伝説的になっている人類発祥の地、地球だった」ってのが分かれば良い。
 要は、高性能人型ロボット兵器を作って宇宙の謎の生命体と戦闘を繰り広げるほどの文明を持つに至った人類銀河同盟の少年兵レドと、地球に取り残され今の我々の文明よりもちょっと前の文明レベルの地球人が出会うってところがポイントでありこの物語の始まり。
 おもしろいのは「どちらも人間」って所で、こんだけ文明レベルが違うと同じ人間ながらもお互い異星人のように見えてしまっている事ですよね。お互いがお互いを全く理解できず言葉も違ってしまっている。こういう中で、たったひとり流れ着いたレドがどうするか……は、まぁ最後の地球ということが判明し驚愕するレドを見れば、人類銀河同盟はもう「地球はない」と認識しているわけだし、おそらくは地球よりも何万光年も離れているであろうから救助がくるアテもないわけで、現地人と仲良くしていくしかないですわな。

 とまぁ、そういう事になるであろう事は分かるが、地球人でありメインヒロインであろうエイミーたちは純朴そうなので、暖かい交流が育まれるのであろう事は想像出来ようが、何せ人型機動兵器チェインバーだけでもこの地球にとっては無敵の兵器だし、レドはずっと戦う為に生きてきた人間でなので、ただのんびりと地球で過ごせそうもない。まぁ要は、考え方によってはレドを仲間に引き入れれば、この地球を統治下に置く事も不可能じゃないわけですしね。これから何がどうなって、レドやエイミーたちがそうしていくかを気にさせる。
 そして最も気になるのは最終的にどうするか、だ。現時点でのレドは戦線に復帰したいと考えている。もとよりなんだかよく分からない宇宙生命体群ヒディアーズと戦争しているわけだし。そうこうしている内に人類銀河同盟の敗北、人類滅亡ってこともない話じゃないわけだし。
 最終的に帰れる状況になったとして、レドは帰還を望むのか。それとも地球に残る選択をするのか。それ以前に帰れるようになるのか。はたまたもう帰還する事は出来ないのか。どういうふうに物語を締めるのかが、もうこの時点で気になって仕方ない(笑)。

 今回のお話としては、上記しましたように舞台を整えた、というだけなので某ないんだけど、視聴者的にはレド側にもエイミー側にもつけないのが見ていておもしろいなーと思う。
 レドは今現在の我々の文明レベルより遥かに高い文明人だし、地球側のエイミーたちにしたって、我々の地球とは違った地球の姿をしているので、この劇中の地球に馴染みがない。
 しかし、レドの方はAパートで彼がどういうふうであったかを知る事が出来ているのである程度の理解はあるし、この地球の方も今の我々の文明よりちょっと前くらいなので分かる部分も多く、見ていてどちら側もよく分からないけれど、どちらの困惑ぶりも分かるようになっているのは上手い。

 まぁなんにせよ、物語が「どうなるのかなぁ」と思う事が出来なければ個人的にはさして見る価値もないと思っているので(つまり続きが気にならないなら見る必要ないってこと)、ありがちそうな設定ながらも、これからどんなふうになっていくのか想像できないってのはとても興味をそそられる。
 今期(2013年春期)のアニメで色々興味がそそられるのはあったけど、この翠星のガルガンティアが一番どうなるのか分からなくて続きが気になった次第だ。鳴子ハナハルさんの女の子が可愛いっていうのもあるが(笑)。
 ともあれ、ビビットな赤い作戦みたいにならない事を願う。まぁそんなことにはならんでしょうが。シリーズ構成・脚本:虚淵 玄だし。

 どーでもいーけど、一週遅れの感想なんで新鮮味が無くて書く事ないなぁ。2話でどうなるか知っちゃってるし。来週までにサクッと追いつきたい。後どーでもいーついでに、公式がなんかめっちゃ重いんですけど、どーにかなりませんかねぇ。

第2話「始まりの惑星」

逆効果になってしまうわなー。

 そんな今回のお話は…
 太陽系第3惑星・地球。眼前に広がる広大な海。レドは自分が漂着した惑星が、既に滅んだとされていた地球と知って驚く。
 そしてレドは今、その海上をゆくガルガンティア船団の人々に取囲まれつつあった。
 チェインバーの翻訳機能を通じて話しかけるレドと、対話を試みる船団長補佐のリジット。だが、お互いの会話はすれ違い、緊張感が高まっていく。
 ガルガンティア側でも、レドを放り出せと主張するピニオン、チェインバーをサルベージしたベローズ、船団長フェアロックらの間で意見は割れる。
 レドに人質にされかかったエイミーは、パイロットは驚いているだけで、敵意は無さそうだと語るが、紛糾する会議では注目を集めない。
 エイミーの弟ベベルは、少年が、大昔に宇宙へと旅立った人類の子孫ではないかと語る。戦線復帰を保留し、住人と再度接触すべきかと考え始めたレド。
 その目の前に使者が現れる。それはレドが人質にした少女、エイミーだった。
 以上公式のあらすじ。

 お話はあらすじにある通りから、サルベージしていたベローズが海賊に襲われ、エイミーに援護を求められたレドはチェインバーで海賊を殲滅してしまう。という流れ。殲滅ってところがポイント。
 話が動くのは海賊が現れてからで、基本、主役のレドはずっとガルガンティアの人たちに取り囲まれたままで、特使となるエイミーと話す程度で表面的な動きはない。しかし、来訪者であるレドの処遇に割れる意見であったりの状況としては少しずつ動いていて、最後の海賊登場により事態が大きく動く事となって引っぱった。
 先に今回のメイン所の方を言ってしまうと、謎の異性体と宇宙戦争できる兵器なんだから、文明の遅れた地球の海賊なんざ楽勝だし、事実あっという間に「殲滅」してしまうのだけど、見ていて「あぁ〜やっちゃったなぁ」と思わざるを得ないようにしているのは上手い。
 友軍と連絡は取れず、現在位置の座標も分からない今、自力で戻る事が出来ないのであらば、救難信号に友軍が気付くまでここで待機し、ガルガンティアと協力関係を得たい思っていた所での海賊騒動。
 この前に特使としててやってきたエイミーとはほんの少しだけ理解した所だったので、この海賊撃退がレドとガルガンティアの人たちが仲良くなる転機なんだろうと当然思うのだが、ここで文化の違いが大誤算を生んでしまうのがおもしろい。
 ずっと兵士として戦ってきたレドとしては、敵襲に援護とくれば殲滅は当然。そして上記したように乗機チェインバーは謎の異性体と宇宙で戦闘できるほどの戦闘力を有しているわけで、まぁ簡単な仕事をしてガルガンティアの人たちにとっても良いことをした事になるのだけど、あまりに力の差があり過ぎた。
 一筋のビームで海賊船は簡単に爆発するし、リフレクタービームに当たった海賊は一瞬で塵と化してしまう。レドにとっては最も効果的にベローズたちに危害が及ぶ事無く目的を遂行したに過ぎないのだが、エイミーにとって、ことガルガンティアの人たちにとっては予想の範疇を越えていたのだ。
 上で援護要請と書いたが、それはチェインバーの翻訳であって、エイミーは「助けて」と言ったのだ。つまりベローズたちを守ってくれればそれでよかった。しかし兵士として戦ってきたレドは敵を殲滅してしまえば(簡単なことでもあるし)驚異は無くなり、結果ベローズ達の生命は守られているので同じなのだ。
 つまり、レドにとっての最善がガルガンティアの人たちにはやり過ぎになってしまった。レドがよかれと思ってした事が完全に裏目に出てしまい、レドを取り巻く状況は、むしろより悪くなってしまったと言っていい。簡単に撃退されてしまった事で海賊に目をつけられるだろうし、なによりレドとチェインバーを驚異と思ってしまうだろう。何かあった時に自分たちもああなってしまうかもしれないと。
 エイミーの特使で少しは状況が好転するかと思いきやの所でのこの外し。またレドの事もガルガンティアの人たちの事も分かるので、レドが善かれとやった事に、見ていて「わぁやり過ぎだって!」と思わせるように誘導しているのが上手い。状況がさらに悪くなってこれからどうなるのかを気にさせてくれる。

 その他としては、今回はガルガンティアでの日常という部分を見せて、レドが地球の事に対して理解度を上げていく様子を見せている。それは前回レドの方を見せて彼を見ている側に理解させるのと同様に、今度はガルガンティア側がどんなふうであるかを理解させている。まぁぶっちゃけてしまえば設定の説明ではあるんだけど、そういう事を見せていく事によって、レドの理解度を感じられるし、ガルガンティアに住む人たちがどういう思いなのかを垣間見れるのは上手い。
 そういった中で、一番レドと関わりが深いエイミーが特使としてやってきてからはおもしろく、お互いの事を話し合って理解度を上げていく様子が分かり、この交流で上手く好転してくれればいいと思うのだが、当然エイミー以外はレドと話をしていないので、やっぱり「なんだかよく分からない」驚異としてしか見れないのがポイントだ。
 エイミーとは理解を深めたけれど、別にエイミーはガルガンティアで特別偉い立場であるわけでもない一般市民(?)なわけだし、レドはなにかみんなを納得させる事を示さなければならない。そこでの海賊騒動は劇中レドが言うように良い交渉材料だったわけだけど、結果は上記した通りになってしまった。
 レドとガルガンティアが仲良くなれば良いなーというか、きっとなるのであろうけど、都合良くトントン拍子でいってくれないもどかしさが良い。  全く文化文明が違うのだから、むしろ都合良くいってしまう方が違和感あると言いますか、実際こんな事があったならば、きっとこんな感じだろうと思うし、そういう中でエイミーが劇中言うように、もっとお互い話をすれば理解できるのにとも思わせる。このちょっとモヤモヤッとした感じを、どこかでわっと払拭してくれる事だろうと期待してしまうのだ。
 そういう意味では期待値は高く、どういうふうにしてくれるのかなーと思わせてくれるのは上手い。まぁけっこう動きが少なくて(画面的にという意味)地味なんだけど、先が分からないおもしろさって言うのは十分にあると思う。

 これから何がどうなって仲良くなって、仲良くなった先にどうなるのか。自分がまだ知らないワクワクがこの先に待っているのではないかと期待できるのだから、やっぱ物語ってのはおもしろい。
 ってユーなんだか良く分からない締めで今回の感想は終わりんぬ(笑)。


第3話「無頼の女帝」

キレイにまとまって気持ちが良い。

 そんな今回のお話は…
 圧倒的な力で、ベローズのサルベージ船団を海賊の襲撃から救ったレドとチェインバー。
 しかし、海賊を殲滅させたことは、ガルガンティア船団にショックを与える。仲間を殺された以上、海賊からの報復は必至だからだ。
 強すぎる力を持つレドとチェインバーの処遇を一旦保留にして、船団長フェアロックらは海賊の動向を探ることを優先する。
 レドとチェインバーを戦いに巻き込んだことを謝りに来るエイミー。また、ベローズは、海に生きるもの同士にとっての戦いの意味、海賊の生き方と、船団の生き方の違いをレドに説く。
 ヒディアーズとの戦いしかしらなかったがゆえに、ベローズの言葉に胸を打たれるレド。そんなレドにエイミーは、ガルガンティアにとどまってみてはどうかと提案する。
 そのころ、メンツをツブされた女海賊ラケージは、ガルガンティアへの報復を決める。近海すべての海賊が集まろうとしていることを察知したガルガンティアに緊張が走る。
 以上公式のあらすじ。

 お話は上記あらすじ後、海賊との戦闘を経てレドとチェインバーがガルガンティアのみんなに認められるという流れ。
 冒頭にも書きましたが、見事にまとまっていて気持ちの良いお話になっています。

 前回書いたように、レドを取り巻く状況は悪化してしまった。ガルガンティア船団の上層部からレドの追放も提案されるが、救われたベローズはエイミーを伴ってレドと話をする。
 ここでの会話はけっこうな尺をとっていて、戦う事しか知らない兵士レドが、ベローズから地球に住む人々とその生き方そして考え方を伝えられ、エイミーからは得られなかった情報に地球での事の理解度が増す様子を描いている。文明文化が全く違うために全く考え方が違うレドと地球の人々であるが、ベローズとレドのやりとりを見せる事でお互いがどう思い理解したかを知る事が出来る。
 「何故海賊を皆殺しにしたか」に「敵の排除に理由が必要か?」と答えが帰ってきたことで、ベローズはエイミーが話したであろう、レドが宇宙で戦争していた事とあわせ、レドは敵=滅するものとして認識している事を理解する。そこで「地球では殺生がなによりも戒められている」ことを伝えると、「生物を食用として殺すのは問題ではないのか?」と問われる。
 我々からすれば当たり前の事だが、前回でも魚の干物(鯵の干物かな?)を生物の屍骸と言って食すのに躊躇していたレドであるから、敵を殺す事と生きる為に魚や鳥を殺す事の区別がつかないのだ。こういった問答を繰り返しレドは今の状況を理解した。そしてエイミーの他にレドを理解する人間がひとり増えたのだ。このベローズとの出会いは後にレドの状況を大きく好転させる。
 このベローズとの話し合いはBパートからの戦闘よりも今回のメイン所と捕らえても良いだろう出来事だ。これがなければ後につながらないからだ。

 この後、海賊の紹介がされ、海賊の動きを知ったガルガンティア船団では上層部で会議が開かれる。海賊の大船団と夜には衝突する。メンツを潰された海賊がやってくるからには交渉の余地はない。そこでベローズがレドの力を借りようと言い出す。一般市民(?)のエイミーとは違い、上層部に口出しできるベローズとある程度の理解を得た事がここで活きるのだ。
 また彼女から得た地球の人々やルールを理解したこともあり、船団上層部との交渉をスムーズに行わせ、船団を一瞬で壊滅させられる武力を有しているのに何故それをせず、海賊から船団を守る用意があるとするのか。また自分が何を望むのかを船団を運営する上層部に伝える事が出来た。こうして話し合ってある程度の理解を得ることで利害の一致をみた。あとは船団の皆さんに納得させるだけの事を示せば良いし、その舞台は整っている。

 夜になって海賊船団が近づくと、照明を取り付けたチェインバーが空から海賊たちを照らし戦闘が始まる。
 事前に過剰な攻撃は絶対にしないようにと言われていたため、上空からの陽動に徹していたレドであったが、海賊の戦闘力に押されるガルガンティア船団についに武力介入を始める。ベローズから教わったこの世界でのルールを遵守し、人的被害が出ないよう火器と動力を無力化するレドとチェインバー。
 しかし海賊は潜水艇からユンボロイドを出撃させており、船戦からガルガンティアでの陸戦(?)へと移行しつつあった。そして女海賊ラケージも独自のユンボロイドで出撃。あっという間にガルガンティアに近づくと船楼に取り付いて船団長フェアロックを執拗に探す。どうもラケージとフェアロックには何かしらありそうである。
 それはさておき、そんなラケージのユンボロイドにチェインバーが追いついて取り付くがラケージは慌てない、むしろチェインバーを話すまいと腕を回す。後からやってきたラケージの部下(ホントは女奴隷らしいです)の船からワイヤーが張られ、「空飛ぶユンボロイド」を海に落っことそうとするのだが……宇宙で謎の異性体と戦闘できるチェインバーである。文明の劣る地球の船二艘に引っぱられたくらいで劣勢に陥るわけも無く、逆にラケージのユンボロイドと二艘の船を上空へと持ち上げてしまう。
 人的被害が出ないようレドはラケージに降伏を勧告するが、大海賊ラケージの異名を取る彼女はそれに応じない。仕方なしと圧倒的なパワーでユンボロイドと船をぐるぐると振り回す。激しい遠心力で意識を失いそうになるラケージだが、そこは大海賊の意地かそれでも降伏しようとしない。そんな彼女の意地よりも早くユンボロイドの接合部が壊れ、彼女たちは彼方へと飛んでいってしまった。
 長の敗北を見て引き上げていく海賊たち。ガルガンティアの人々はチェインバーを照明で照らし「ありがとう!」と口にするのであった。

 まぁ過程はどうあれ、結果なんぞはチェインバーを見てきている分、分かりきった事なので展開的にどうこうというものはない。最悪ビーム兵器使っちゃえば、あっという間に逆転可能だしな。
 しかし、レドとチェインバーは地球のルールを遵守しつつ、圧倒的不利な状況をそのパワーでひっくり返し、船団の皆さんにその力と自分たちが驚異でない事を示したのだ。前回で悪化した状況もこの一件でひっくり返ったわけだが、ただ単にチェインバーの圧倒的な武力があったからではなく、それはここまでの会話があったからこそなのだ。
 レドはこの地球で生きる人々を理解し、全くの異文化人である彼を理解しようとした人たちがいたからこそ、ガルガンティアの人々に受け入れられる結果となったわけなので、戦闘部分よりもそれまでのレドとエイミー・ベローズ等々の会話の方が物語的にも重要だったのだ。
 ともあれ、事後に帰還したレドに「おつかれさま!今日もごちそうにするね!」と笑顔で迎えるエイミーに、良く聞いていた異言語の感謝を表す慣用句「アリガトウ」と返すレドを見て、あぁこれでとりあえずは一段落だなぁと実にほっこりした気分になりました。
 まぁ上層部ではまだレドに懐疑的なじいさんたちがいますし、ガルガンティア全ての人たちが全面的に信用しているわけでもないだろう。そして女海賊ラケージも簡単にやられちゃいましたから借りを返そうとするでしょうから、これからも色々とあるでしょうけど、今回でガルガンティアの危機を救った異人として、ある程度の認識を得たレドとチェインバーは、エイミーたちと上手く乗り越えてくれるんだろうなぁと明るい兆しを感じられます。

 なんにせよ、ここからレドとガルガンティアの人々との交流が本格化し、物語的にも序章が終わって本編に入るでしょうから、次回からの展開を期待していきたい。


第4話「追憶の笛」

ものすごくおとなしいお話だが。

 そんな今回のお話は…
 船団にとどまることになったレドは、破壊した格納庫の修理費を労働でまかなうよう言い渡される。
 チェインバーを使って簡単な荷運びを手伝い始めたが、慣れないレドはなかなか仕事がうまくできず失敗ばかり。ついにはチェインバーだけ貸し出すことになり、レド自身はお払い箱になってしまう。
 レドの様子を見に来たエイミーは、手持ちぶさたなレドを気にかけ、会話に誘う。レドは、エイミーと会話するうちに、家族や社会に関して自分の常識が彼女たちとまったく異なることを実感する。
 その様子を見たエイミーは、五賢人の一人、医師のオルダムに会うことをすすめる。オルダムに会い、宇宙へと帰還する方法を尋ねるレド。
 オルダムはそれに対し、現在の人類はかつての英知の大半を失ってしまったと説明する。そして船団の運営が非合理的に見えるというレドを、オルダムは「船団は生き物なのだよ」と諭す。
 そしてエイミーの弟ベベルと会うレド。レドの中で、何かが少しずつ変わり始める。
 以上公式のあらすじ。

 お話は……う〜ん、仕事することとなったレドだが、あんまり役に立たないので放っておかれてしまった所、気を回したエイミーがレドを色々な人に引き合わせ、レドの中で少し心境に変化が起こった。という話。特別何か大きな事件とかがあったわけでもなく、ほぼ会話で終わっているので、とても感想が書きにくいんだけど、まぁお話としてはそれなりにおもしろい形にはなっている。

 船団に駐留することを許され労働に勤しむこととなったレドだが、生まれた時から謎の異性体との戦闘があった宇宙の人レドには理解不能なことが多く、とりわけ船団の組織形態がよく分からない。彼には無秩序に見えるのだ。
 まぁそれは、ずっと異性体との戦闘をしている銀河同盟(だったっけ?)では、軍的な統制が必要であって、命令があって初めて行動に移すことが当たり前に生きてきたレドにしてみたら無理の無い話ではある。
 しかし船団に駐留する以上、郷に入りては郷に従えではないけれど、そこのルールといいますか、生き方には沿っていかなければならない。だが、それがレドにとって理解に苦しむのだ。何せ彼は謎の異性体と戦闘する為に生まれ、兵士として育ってきたのだから。ま、簡単に言えば、生きる為に暮らす船団の人たちと戦う為に生きる兵士では、そら価値観が違うというものである。
 物語的にレドはこれから船団に馴染んでいかなければいけないので、レドの価値観はこの船団では通用しないんだよということを理解させるのと、船団の本来の人間らしい暮らしに、戦うことしか知らないレドが、少しずつ理解していく様子を静かーに描いていてしっとりとしたお話になっています。

 やはり今回のポイントとエイミーの弟ベベルとの会話であろう。
 銀河同盟では謎の異性体との戦闘がなによりも優先されている為、ベベルのような病気の人間は淘汰されてしまう。まぁつまり捨てられてしまうのだ。それが当たり前のレドにはベベルがこの船団にいる意味がよく分からない。
 だがそれは、異性体と戦闘している銀河同盟のルールであって、船団は当然違うのだ。だって船団のみんなは、ただ生きていくために暮らしているだけなのだから。ガルガンティアという地球の船団で暮らすには、レドの兵士としての考え方や銀河同盟の統制っていうのは全く意味を成さない。レドはここでより人間らしくならなければならないし、見ていて彼がもっと人間らしい考えに至ることに期待してしまう。そういうふうに誘導している点はなかなか見事な脚本だ。
 エイミーの弟ベベルは病気で日長ベットにいることが多いのだけど、その分頭が良く、レドとの会話である程度そういうことが分かったのであろう。異性体との戦闘が終わったら銀河同盟はどうなる?レドはどうするのか?と問うのだ。
 その問いレドははっとした顔を見せた後、次の命令があるまで待機すると答える。ここから見て、レドには兵士としての生き方以上のことを知らないことが窺える。銀河同盟のトップの人たちには、きっと異性体との戦闘終結後のプランが用意されているのであろうが、第1話での戦況を観る限り、そのプランを実行するにはもっと時間が必要だろう。そんな状況でレドが戦闘終結後のことなんか考えられるわけが無い。
 ベベルは続けて、それでも命令がずっと無かったら?と問うと、レドは待機を続けるのみだと答え、その答えにベベルはそれならボクたちと一緒だ、待機するってことは生き続けるってことでしょと笑顔を見せ、ベベルとの第1回の会話は終了する。
 その後、やることの無いレドはチェインバーの仕事ぶりを監視するのみ。そこにベローズが現れ話しかけるがレドは随分と落ち込んでいる。自分がこの船団での有益性を示せないからだ。ベローズは慣れていないだけさと答えるが、彼は遂行すべき行動が分からないのだ。生まれてこのかた戦闘の為に生きて、上からの命令に忠実に従ってきた彼は、文化文明の違うこのガルガンティアで自分が何をすればいいのかが分からない。
 困ったベローズはとりあえずその軍人みたいなやめてみたらどうか、もっと自由に……と言いかけた所でスコールが降ってくる。
 初めての「雨」に驚くレドに、ベローズはチェインバーで帆布を張って雨を集めるように言う。海の上では真水は貴重なのだ。船団の皆が作業を中止し雨を集める様子をレドは呆然と眺める。
 これまでレドにとって「生きる」ということは異性体との戦闘で生き残ることであった。しかし、このガルガンティアでは違うのだ。雨が降ったら水を集めるように、生活の全てが生きる為なのだ。戦う為に生きているのではない。

 その後、雨で濡れた服を乾かす為にベベルの元を訪れたレド。ベベルのような病人が宇宙で存在しないということから、ベベルはそれでも自分は自分を不必要だとは思っていないことを話す。エイミーが自分を必要としてくれているし自分もそうだと。レドも誰かに必要とされているから今も生き続けているんでしょ?と問うと、レドは戦闘に置いて有益な者のみが生存を許されていると答える。スコール前にベローズに自分が有益かどうかを問うたのは、こういう考えがあるからだ。
 同盟にとって無益な存在に生存の意義はないとするレドに、ベベルはじゃぁこれはレドさんにとってなんだったの?と、これまで謎の異性体の爪にエネルギー銃で穴を開けていたものを取り出す。ベベルの元に来る前に、レドが欲しければやるとエイミーに譲った物だ。
 レドが穴を開けていたそれを、見ていて笛なんじゃないかとは思っていたが、やっぱり笛だったようで、レドはそれが何かは分からないけれど作っていた。戦闘とは全く関係のない笛を。ベベルはその笛で音が出せるようになったと吹いてみせる。その音を聞いた瞬間、レドは幼かった頃を思い出す。
 ベベルのように病気になってしまったであろう同じ年頃の友人(?)はカプセルの中に入っていて、同じような物を作っていたのだ。そして彼は淘汰されていった。カプセルごと宇宙に放り出され、レドの前から消え去った。
 そのことが思い出されレドの頬に涙が伝う。何故涙が出るのか、レドには分からなかった。
 ずっと戦闘の最中で生きてきたレドは、船団の人たちはもとより、見ている私からもおよそ人間らしくはなかったが、やはり彼も人間なのである。知り合いが淘汰され物思う気持ちがあったのだ。そしてその気持ちは思い出の品である笛を作ることで、無意識に彼を忘れまいとしていたのだろう。
 レドは一度はやると言った笛を「ソレ、モウイチド、ホシイ」と言って返してもらう。受け取って彼はほんの少し笑顔を見せる。これまでずっと無表情だった彼が微笑んだ。また同盟にはなんら必要ではない笛をもう一度手にしたいと思ったのだ。彼の中で心境が少し変化したことを如実に物語る。

 今回のラストで、レドはこの星のことを知る必要がありそうだと言う。前々回にエイミーに船団の住人になればいいと言われた時に「なにをバカな」とひとりごちていた彼であった。しかし今は違うのだ。
 チェインバーはいずれは同盟に戻るのだから、その必要は無いと答えたが、レドは兵士であっても、ただ戦闘する為の機械ではなく人間なのだ。自分の中にあった「人間らしさ」を垣間見て、船団の人々を理解したいと朧げながら思うに至った。
 レドがこれまでの「生きる」と違う「生きる」を感じて、心境が変化する様を丁寧に描いていたように思います。
 また船団の人たちも、異邦人レドの発言、例えば「弱者は淘汰されるべき」等の、えっ!?と思うようなことを、彼はまだよく分かっていないことを理解し、受け止めているような節があって、暖かく見守っているような感があります。
 そんな彼らとレドが今後どうなっていくか、そして何か大事件が起きていくのか、さらには最終的にどうやって締めるのかを楽しみにしていきたい。


第5話「凪の日」

チェインバー見てあ〜る君思い出した(笑)。

 そんな今回のお話は…
 「ヒディアーズを全部倒したら、銀河同盟はどうするの?」「レドさんは、どうするの? その目的が達成されたら」――。ベベルにそう問われたレドは、ガルガンティアで仕事を本格的に探そうとする。
 「俺にできること、教えてくれ」とエイミーに協力を頼んだレドは、漁業、農工業、サルベージ業といったさまざまな職業を紹介してもらうものの、これといったものは見つからない。
 そんな時、突如、ガルガンティア船団全体が航行を停止した。何事が起きたのかと怪訝なレド。そこに現れたピニオンに誘われるままレドはついて行く。
 船団が止まったのは、風がやむ「凪」の日だから。「凪」の日は波がおさまるため、船団を停止し船体を修理するのだという。
 つまり修理屋以外にとってはちょっとした息抜き。ピニオンはレドやエイミーをバーベキューパーティーに誘いにきたのだった。
 既に会場にいたサーヤ、メルティも加わり、水着になって泳ぎ始めるエイミー。パーティーの準備は順調に進んでいるかに見えたが……。
 以上公式のあらすじ。

 お話は割とお賑やかしな感じ。水着回だしなー(笑)。
 内容的にはほぼ無く、あらすじにあるように「凪の日に焼き肉パーティーやる」の巻と言った様相だ。

 とは言っても一応物語的には見せなければならないこともあって、それはけっこう船団に馴染んできた感のあるレドではあるけれど、彼にはまだ船団で適応する仕事が見つからず、積極的に「仕事探し」をする様子を見せ、前回に書きましたように、彼がこれまで思っていた「生きる」とは違う、この地球での「生きる」を朧げながら感じ始めている様子を見せている。
 しかしまだ、前回判明したレドの作っていた笛も、音が出ないのならば意味がないとし、仕事のない自分もこの船団において意味を成さないとして「仕事探し」に奔走するのだけど、別にチェインバーに作業させて自分はラクチンしようとしているわけでもないし、前回ベローズも言っていたように海賊を追っ払ってくれて、荷運び役として十分機能しているチェインバーを所有し、それでも尚、自分自身が役に立ちたいと仕事を探しているのだから、船団の皆さんとしてはそれなりに彼はもう役に立っているのだ。
 最初はエイミーたちだけのパーティーであったはずが、最終的にはたくさんの人が集まってきたことを考えれば、レドが船団の皆さんにどのように思われているかが知れようというものだ。(まぁ肉に釣られたこともあろうが/笑)
 まぁレドは、このままずっと何もしないわけにはいかないであろうが、船団の皆さんは温かく彼を見守っている。という所も見せて、この物語の最初とは随分とレドと船団の関係を表しているのだろう。

 それとピニオンに上手いこと使われて焼き肉のタレを取りに行かされたレドでは、アバンでエイミーから仕事はお互いがお互いを支え合うことだと教わる前フリがあって、わけも物も分からぬままのお使いであったが、タレを取ってきたことが「みんなの役に立った」と理解し、ただ単に労働することだけが「役に立つ」ということなのではないことを、レドは朧げながらも感じ取ったのではなかろうか。
 エイミーからの「みんなの為にがんばってくれてありがとね」との言葉に、何も分からないまま言われたことをしただけのレドが「オレガ……ミンナノタメ?」と驚いた表情を見せ、おかげでみんなおいしい焼き肉を食べられたと続けるエイミーの言葉に、はっとした彼の表情から、役に立つとはどういうことなのか彼が感じ取ったとよく分かる。
 きっと今回のお話で一番見せたかったのはこれなのだろう。理解度が上がってまた心境の変化が出たであろうレドが、これから船団で何をしていくかを気にさせてくれる。

 その他気になった所としては、まず冒頭に書いたことですが、電気が止まって肉が焼けなくなったので、太陽熱を浴びてこんがりとしたチェインバーの装甲で肉を焼く様子で「究極超人あ〜る」君を思い出したんですよ。海行ってあ〜る君の顔で肉焼いたことあったよねー(しかも油がサンオイルだったよなぁ/笑)。
 ま、それはそれとして、とりあえず女子の水着に着いても語っておかなければならない、ような気がする(笑)。
 意外と皆さん布面積の小さい水着だったのはちょいと意外でありました。お約束的に「恥ずかしがる」ことがなかったので、あんまりいやらしさは感じませんでしたなぁ。まぁそれは別にどーでもいーんですけど。
 個人的にはエイミーに日焼け痕がなかったので、あの肌の色がなんなのかよく分からなくなってしまった。弟のベベルと肌の色が全然違うので、外にいることの多いエイミーは日に焼けているのだろうと思っていたのだが、あのちょっと褐色の肌が地の色ならば、ベベルは血のつながった弟ではないのかなー。もしくは腹違いとか。
 それと前回も出てきて密かに気になっていたんですが、黒い煙突みたいなタワーはなんなのかと思っていたらスプリンクラーだったんですねー。なんかもっと意味のあるモニュメントか何かかと思っていて、きっと後で何かしらに使われるのであろうと思っていたのですがアテが外れました(笑)。

 ともあれ、割とお賑やかし的なお話で、特になんにもないと言えばなんもなかったのだけど、これまでとはちょっと違う面白さがあって楽しめました。
 しかしこの物語は、どうなったら終わりになるのかが、今の所よく分かりませんな。


第6話「謝肉祭」

そらそうなるわね。

 そんな今回のお話は…
 偵察に出た船が「めぐり銀河」を発見した。船団の動力源であるヒカリムシが群れをなしたその場所は、たくさんの魚が集まる絶好の漁場なのだという。
 漁の仕事を手伝うことにしたレドは、チェインバーではなく潜水ユンボロを使って参加。ところが泳いだことのないレドは、水中での機体操作の感覚がつかめずあえなく失敗。
 漁師ギルドのメンバーに引き上げられたレドは、役に立つことのできない自分をかみしめる。
 そんなレドはピニオンに声をかけられ、大漁の祭りに連れていかれ酒を飲みながら「俺と組んでサルベージをやれよ」と誘われる。そこにベローズも現れ「組むなら本業のサルベージ屋と組みなさいよ」と語り始める。
 二人のやりとりを聞きながら、レドは祭りのステージでサーヤやメルティとともに踊り子として踊るエイミーの姿を見つける。
 そこにチェインバーから緊急信号が入る。単独で漁をしていたチェインバーが問題を起こしたというのだ。いそいで解決に向かうレド。
 以上公式のあらすじ。

 お話は簡単に言えば、レドが仕事を理解しガルガンティア船団でやりたいことを見つける。という話。
 まぁそこはメインと言えばメインなんだけど、その他にも、(意外にも?)ロマンスがあったり、相変わらずのレドのお仕事失敗談などもありつつ、まったりしつつも興味深いお話であった。

 上記しましたように、メインと言うか、今回のポイントとしては、紆余曲折あってレドがやりたい仕事を見つけることなんだけども、それと平行して「レドとエイミー」という所が今回一番見せたかった所なのではなかろうか。
 あらすじにあるように、チェインバーでなくユンボロに乗って漁に出た所、泳げないレドは操作感覚が掴めずに結局乗りこなすことが出来ず失敗する、いつもの残念なお仕事と失敗譚が描かれるのだが、その様子が興味深いのだ。
 何がと言うと、まぁ潜水ユンボロを簡単な操作系だとか言っちゃって、なんとなく出来そうな感じのするレドが、あえなく失敗しちゃう様は、なんとなく機体の操作なら行けそうな感じを見せていた分の外してして良い「お笑い」ではあったが、そこではなく、そんな「なんかできそう」なレドの様子に嬉しそうなエイミーという部分だ。
 彼女は何かとレドを気にかけて、疑問質問に応えたり(誤字に非ず)、期待にそぐわなくても落胆する事無く励ましたり、今回のこの件の後でも、海に入る前にはかなり浮かれているような様子だった所を見ても期待値が高かったろうが、失敗したレドにもっと気楽で良いんだと励ます。
 まぁこういうことから見ても、少なくともエイミーはレドを悪くは思ってはいない、というか、むしろ気にしているわけだが、それがどういう気の仕方なのかなんだよね。
 元々世話焼きそうな彼女のことなので、それはひとりで地球にやってきた宇宙からの異邦人に対しての気遣いなのか、はたまたひとりの男性として好意を持っているのか。それが今の所あんまり見えてこないのがじれったい。
 後にピニオンに誘われ祭りに連れて行かれた際、ステージで踊るエイミーを見るレドや、その後に祭りを堪能したであろうふたりの船縁での一連のシーンを見ると、レドは分かってはいないだろうけど、惹かれてはいるのだろう。まぁ最初っから随分時にかけてくれている女の子なので、まぁ健康な男子なれば、そらそうなるわな。
 だからこそ、エイミーはそうなのであろうかと気になるわけで、ひかりむしの放電に咄嗟にエイミーを庇い、露出した肩に触れていたレドがハッとなると、そんな彼を見てエイミーもハッとしたことを考えると、彼女はむしろ意識しないように振る舞っていると見た方が良いのではなかろうか。
 そんなふたりの様子を見ていると、気になってしまうことがあるんですよねぇ。

 何が気になるかと言いますと、設定ですよ。ことこのガルガンティア船団と言いますか、舞台であるこの地球での性的環境が。いや、別にいやらしい意味ではなく。
 と、いうのも、エイミーたちを見ていると、水着の件でも割と大胆な水着であったし、今回の衣装もけっこうな衣装で扇情的なダンスを踊っていましたよね。祭りの前ではメルティがまだ着替えていないエイミーを見つけ、「早くしないと良い男みんなとられちゃうよ」と言っていました。
 こういう事と、この舞台の地球を考えるに、人間が生き残っていく為に「産めよ増やせよ」というわけではないけれど、それに準ずるような、いわゆるフリーセックス的な環境なんじゃないのかなーと思ったんですよ。陸地が無いようだから若いヤツが常にいないと船団なくなっちゃいますもんね。
 とまぁそういう想像をすると、そういう環境でも別におかしくはないなーと思っていて、今回謝肉祭でこれはいわゆるリオのカーニバル的なことと考えれば、エイミーたちのような女の子が扇情的なダンスで男を誘っているとしても、それはまぁむしろ自然ではある。
 そういうことから考えてみて、エイミーはレドをどのように思っているかが気にかかる。そういう関係になれば良いなーと思いつつ、いつかは宇宙に帰ってしまうのかもしれないから、敢えてそっちの方へ持っていかないようにしている。のかもしれないなぁ。まぁ私は女心なんてさっぱり分かりませんので、全くアテになりませんが(笑)。
 ともあれ、エイミーをただ単に「良き理解者」なだけで終わろうとはちょっと思えないのだけど、これまで全くそういう部分が見えてこなかったエイミーに、今回ちょっとだけそういう部分が垣間見れたような気がしたという点が興味深かった。
 この物語が最終的にどうなるのかまだ全く分からないけれど、それに伴ってレドとエイミーのふたりがどうなっていって最終的にどうするのかも楽しみになってきました。せっかくだから結ばれて欲しいなぁ。いや別にスケベな意味ではなく(苦笑)。

 後はやっぱりレドのことも少々。
 随分と地球の生活にこなれてきた感じで、言葉もかなり理解してきたし、翻訳機能もあんまり使わなくなってきました。そんな彼は今回報酬を得て、それが誰かを支えた証であり、それが「仕事」であると理解しました。まぁ仕事というよりかは「働くってどういうことか?」を理解したと言った方が良いのかもしれません。
 そこでピニオンとベローズにサルベージの仕事をしないかと誘われた件がおもしろい。結局レドはピニオンではなくベローズと仕事をすることに決めたのだが、これにはちゃんと理由を見つけることが出来る。
 食事の際にピニオンとベローズが各々「自分と組めば〜」と言い出すのだが、ピニオンは金を稼いで欲望を掴めと言っていた通りであったが、ベローズは汐の流れの読み方等々の一流のサルベージ屋に必要なことを教えると言っていました。
 まぁピニオンの言う事も尤もなんですが(金を金のまま持っていても仕方無いは至言だなぁ、とか言っているから貧乏なんだなぁオレは)、レドは「仕事ができる人」になりたいわけだから、まぁそらベローズに付きますわな。
 そんな中入ったチェインバーからの支援要請。レドが出来なかった漁をチェインバーがやっていたのだが、チェインバーは機械故に「魚は獲って栄養を摂取出来れば良い」としか判断出来ないため、武装で魚をすり身にしてしまい、それが何故ダメかが分からずレドを呼んだのだ。
 駆けつけたレドがチェインバーに乗り込む際、彼は微笑を浮かべ、なんだか晴れやかな表情をしている。
 レドひとりで出来なかった。チェインバーでも出来なかった。でもレドがチェインバーに搭乗すれば出来る。レドとチェインバーが必要とされているのだ。
 前々回にエイミーの弟ベベルとした誰かに必要とされているから生きる、ということがあまりよく分からなかったレドであったが、今ここに至ってレドは、それを十分に理解したのだ。そしてなんでも良いから仕事をしたいと思っていた彼は、エイミーの「まず自分のしたいことを仕事にすれば良い」の言葉に、何がしたいか分からないと答えていたが、必要としてくれるベローズとサルベージの仕事がやりたいと、今は自分の口から言えるようになった。
 最初の方の感想で、レドを文化文明の違う云々と書きましたが、彼は文化の方からはほど遠い存在であった。が、この地球で暮らしていく中で、人の営みの中から文化を感じ取り、最初の頃から比べると随分と人間らしくなったと思える。異性体との戦闘しか知らなかった彼が、ひとり地球に流され、戸惑いながらも文化を理解していく過程が見えて気持ちが良いではないか。
 しかし彼は、銀河同盟に戻って本隊と合流し戦線に復帰したいとも思っている。というか、それが彼の本懐である。
 だがまだ座標は分からないし、戻れるようになったとしても、そこに至るまでは随分と時間がかかるだろう。その間に彼に心変わりはあるのか、それとも未練無く地球を飛び去ってしまうのか、はたまた別の展開があるのか。物語の着地を気にさせてくれるではないか。

 そんな物語的なこととして、タコの料理を出されたレドは、それを戦っていた異性体ヒディアーズと誤認していました。また、サルベージを行っている所、地球の海洋生物を99.97%でヒディアーズと認定して迎撃行動に移った所で引っぱりました。
 ん〜?ということはなにか? 異性体ヒディアーズも地球起源の生命体ってことなのかなぁ。地球を飛び出した際に持っていった生物を、お得意の「淘汰」した所、上手いこと宇宙に馴染んじゃった種があった、ってことなのかなぁ。
 ますます今後の物語がどうなっていくかが気になります。


第7話「兵士のさだめ」

大きく動きましたな。

 そんな今回のお話は…
 ベローズの下でサルベージ業に就いたレドは、海中での作業中にクジライカという大型の生物に遭遇する。
 クジライカは凶暴だが手出しをしなければ無害な生き物。だがその姿がヒディアーズと酷似していたためレドは、ベローズの制止も聞かずチェインバーで攻撃し、殺してしまう。
 クジライカは、大昔から人々に神聖視されてきた生き物。レドが禁忌を犯したことは瞬く間にガルガンティア全体に広がり、船団の中には不安が渦巻く。
 一方レドは、ヒディアーズの侵攻が地球にまで及んでいるのではないかと、臨戦態勢をとる。レドはエイミーに、かわいそうだと思わないの?なんで地球にまできて戦争の続きをするの?と責められるが聞く耳をもたない。
 逆に、ヒディアーズとの接触は時間の問題なのに、人類は人類同士で争っているとレドから反論され、言葉を失うエイミー。
 一方、ピニオンはこれを機に一攫千金を狙う。さまざまな気持ちが交錯する中、膨大な数のクジライカの群れが船団に迫ってくる。
 以上公式のあらすじ。

 お話はあらすじ後、船団長の機転で船団全ての動力を停止しクジライカをやり過ごす。兵士であることを強く自覚しているレドは、ここにいては使命を果たせないと船団を出ると言い出し、クジライカの巣の奥にまだ見ぬ古代文明の遺産を狙うピニオンと賛同者が船団を離れると申し入れ、元々体調の悪かった船団長が発作を起こした所で引っぱった。
 これまでの割とのんびりした話から一転、物語が動き出しておもしろくなってきましたが、色々な流れが地味に絡み合って進んでいっているので感想が書きにくい(笑)。まずはレドの流れですが、それはクジライカとやっぱり密接に関係してくる。
 レドは頑にヒディアーズ=クジライカを殲滅しようとする。それは地球に来るまでずっと戦ってきた事もあるし、銀河同盟にとって殲滅しなければ先はないということもあるのだが……正直、なんで銀河同盟がヒディアーズと戦争しているのかの理由ってはっきりしていないのよね。
 レドは殲滅以外ないの一点張りで、地球の人類が襲われないのは、まだ文明が未熟だから無視されているだけで、その内衝突することは時間の問題であるとしている。しかし99%以上ヒディアーズと一致するというクジライカは、動力を落とした船団を無視したように「何もしなければ襲ってこない」のだ。とするならば、地球人類が更なる文明を手に入れる「だけ」で、クジライカと衝突することとなるのは考えにくいではないか。となると、銀河同盟がヒディアーズにちょっかい出したから戦争になっているのではないのか。
 まぁ真相はともかく、地球でのクジライカを見る限り「ヒディアーズ=人類の敵」は今ひとつ信用ならない。そういう中で、レドが自分は兵士であると、エイミーの制止を振り切ってまで使命を全うしようとする様にモニョモニョせざるを得ない。ヒディアーズはともかく、クジライカと戦うことはなかろうに。
 エイミーとだって、せっかく前回で「なんかいい感じ」になってきたというのに、この一件で完全におかしくなってしまった。
 神聖視されていたクジライカを殺して帰ってきたレドを気にして見に来て、船団トップに事情聴取で呼ばれた際も様子を見に来るし、クジライカの群れが近づいてきた際は、殲滅しようとチェインバーに乗り込もうとするレドに抱きついてまでも止める。
 「だめだよ!行かないで!お願いだから!」「離せ!何故だ?!オレの戦いに君たちは関係無いんだろう?!」「関係ある!」「船団のことか?なら迷惑はかけない。オレは出て行く。ひとりで戦う!」「違う!そんな危ないことして欲しくないの。あたしがっ……」
 以上がクジライカの群れが近づいてきた時のレドとエイミーのやりとり。エイミーが「あたしがっ……」と言い淀んだ時にリジットがやって来てしまうのだが、この時エイミーは何を言おうとしたのだろうか。
 海賊対峙で上がった株もクジライカの件で一気に転落し、また厄介者になってしまったレド。それでもエイミーはレドに「危ないことをして欲しくない」と思っているのだから、彼女がレドを話さなかったのは船団や迷惑云々ではなく、あたし(エイミー)がただ、彼にここにいて欲しいと思うから、なのではないだろうか。
 しかし事後、レドは「ここにいる限り、オレは使命を果たせない。オレは兵士だ!」と船団を離れる決意をし、そんな彼にエイミーは涙する。出て行く決意をしたことも悲しかったろうが、それよりも、彼が自分を兵士としたことの方が悲しかったのではなかろうか。船団に、いや地球にいる限りは、レドは兵士である必要はなかった。ただ地球に住む人として一緒に暮らしていければそれで良かった。だが生まれてこのかた戦うことしか知らなかった彼には、数ヶ月船団で暮らしたからと言っても伝わることはなかった。

 レドとチェインバーがクジライカをも凌駕する力をもっていることが分かったピニオンは、彼らを擁してクジライカの巣の奥にあるというお宝を引き上げる野望を抱く。
 どうもピニオンの死んだ兄が最後にもたらした情報のようだが、ホントにそんなすごいお宝があるんですかね?それと共に、これもやっぱりクジライカが関係してくる(まぁ当然か)。
 あらすじにあるようにクジライカは「大昔から神聖視」されていたようなのだが、だとすると、やはりヒディアーズは地球起源ということとなるが、その「大昔」がどれほどのことなのかがよく分からんよな。レドとチェインバーが漂流の目に遭った際、ヒディアーズがくっついていたので、レドは自分が地球に持ち込んだのか?と懸念していたが、そうだとすると「大昔から」との整合性が無くなる。
 ワープホール(?)に入った際にヒディアーズの方はもっと前の時間に飛ばされて〜みたいなSF(?)的な事も考えてみたが、ワープ航法と時間移動は別物だものな。これはあまりにも突飛か。だとするとやはり地球起源説が有力か。
 これまで1話のAパートにしか出てこなかったヒディアーズを、何回もレドに言わせてその存在をこの物語で示していたのだから、何かしらの意味があって然るべき。そう考えると、クジライカの巣の奥になる何かってのは、物語的に何か意味のあるものなのではなかろうか。
 それに伴って、サルベージの際に戦闘ともなれば、結果的にクジライカと人類の戦争への引き金になってしまうのではないのか?また、多くの船がガルガンティアから離れてしまうこととなるので、ガルガンティア、ひいてはエイミーたちはどうなってしまうのか、今後の展開を気にさせる。

 しかし、最初から言っておりますけど、この物語の着地点が今ひとつ見えてきませんなぁ。今回で色々と展開してきたけど、とりあえずこうなったら終わるみたいなのがないんですよねー。
 まぁだからこそ「どうなるのかな?」と気になって見続けていることもあるんですが(笑)。銀河同盟の辞書には「共存共栄」が無いことが分かったので、そっちの方へ持っていくのかなーという気はしますが。はてさて。


第8話「離別」

非常に上手い。

 そんな今回のお話は…
 持病を悪化させたフェアロックが急逝。フェアロックが最期に船団を託したのはリジットだった。だが、求心力に欠けるリジットという選択に、大船団主たちの胸中は複雑だった。
 そのころ、チェインバーがレドに、地球の座標が特定できたと報告する。地球の位置は、人類銀河同盟の勢力圏よりもはるか遠く、光速でも6000年以上かかるという。
 超光速航法が使えない以上、レドが人類銀河同盟へと復帰することは不可能だ。ショックを受けるレド。
 フェアロックの葬儀の準備が進む中、大船主フランジが離脱を表明。対処に追われるリジットは葬儀をクラウンに任せ、かえって船主たちの反発を買ってしまう。
 リジットはフランジと面会するが、フランジの問いかける言葉に言い返すことができない。
 メルティもまたフランジの船団と一緒に離れなくてはならないし、ピニオンはピニオンで、クジライカの巣に眠る手付かずの遺物を目的に船団を離脱しようとする。
 揺れる船団の中、帰還の夢が絶たれたレドは……。
 以上公式のあらすじ。

 お話は船団長フェアロックの死で多くの船団がガルガンティアから離れていく中、地力で銀河同盟に戻ることが出来ないと分かったレドと、船団の後を託されたリジットを長い尺で描いている。
 フェアロックの葬儀が行われる中で、リジットとレド、そしてエイミーを対比させていて、船団長の葬儀と離れ行く船団とレドという重く静かな話ながらもシナリオの上手さが光る。
 対比という部分では、娘のようにフェアロックに可愛がられたリジットが彼と死別し、レドはクジライカ=ヒディアーズを殲滅する為に船団を去り、ガルガンティアに残るエイミーとは別れてしまうこととなる。サブタイの「離別」という括りでは同じだ。
 後を託されたリジットは、その責任から葬儀にも参加せずに離れる船団を引き止めようと躍起になるが、それ故に反発も買ってしまう。しかしベローズの助言もあって、その立場故になんでもひとりで背負い込むのではなく、どうすれば上手く回るかを考えて、出来ないことは誰に任すか。また誰に頼るのか。彼女は長たる者の役割を少し理解する。
 ひとりで何でもかんでもやってしまえるような人間は、後に偉人などと呼ばれるような特殊な人間であり、そんなヤツラだって誰かに任せる所は任すのだ。組織が大きければ大きいほど自分の出来ることは少ない。凡人たれば尚のことだ。長とは物事を上手くまわせるようにして、何かあった時に良い方へ舵を切れる決断力がある者なのだ。
 リジットの話の方は、まだ若い彼女が不意に長という立場に立ち、失敗や助言を得て「誰かに頼る」こと、ひいては他人を信頼することの大切さに気付く様を見せているが、これがレドの方にかかってくる。

 レドの方はアバンで銀河同盟に帰還することは事実上不可能であることが分かり、ならばなおさらということもあったろうが、クジライカ=ヒディアーズ殲滅の決意は固くなる。リジットとは違い、レドは自分ひとりで人類の為になんとかしようとしているのだ。
 リジットとレドでは立場は全然違うが、本当にクジライカはレドがなんとかしなければいけないことなのだろうか。銀河同盟では人類の生存領域をヒディアーズが圧迫していて、それで戦争状態になっているという。地球でも人類の生存領域が大きくなれば、いずれ同じこととなるだろうとレドは言うが、前回にあったように、クジライカは刺激しなければ何もしてこないのだ。そして銀河同盟には「共存共栄」という言葉はない。
 ここでおもしろいのは、前回に「ここにいる限り、オレは使命を果たせない。オレは兵士だ!」と言っていたレドですが、今回彼の元へやってきたベベルに、ヒディアーズと対するのは人類を守るのと同時にエイミーを守ることであるとしている。また、地球がヒディアーズとの戦争になって同盟のようになってしまえば、ベベルも生き残れないと言う。
 レドが頑に戦うとするのは、前回ではただ兵士としての使命を全うするがためのように思われたが、今回でそれは、ベベルやエイミー、ガルガンティアで出会った人たちを守りたい一心で、兵士である自分だからこそなのがが分かる。もう彼は、ただ単純に兵士としてヒディアーズを殲滅する使命感だけで戦おうとしているのではないのだ。
 地球に漂流して、そこで住む人々と暮らしていく中で、彼らを守りたい、とレドは思うに至った。それ故ヒディアーズ=クジライカに対抗出来る力を持つ自分(とチェインバー)でなんとかしなければいけないとひとりで背負い込んでしまっている。それはベローズの助言を受ける前のリジットと同じなのではないだろうか。
 人類を守ることはエイミーを守ることでもある。同盟のようになってしまえばベベルは生き残れない。要はエイミーとベベルをレドは守りたいのだ。兵士としての使命感もあって、彼には戦って雌雄を決する以外に彼らを守る道はないとしか考えられない。けれどエイミーたちを守りたいならば、レドはエイミーたちがどう思っているかを理解し、それ以外の選択肢がないかを模索すべきだろう。
 リジットが自分に出来ないことを他の誰かに任せたように、レドも他人と手を取り合い、一本道でないことを知るべきなのだが、まだレドはそこへはたどり着けず、ガルガンティアから離れていってしまう。

 まぁこれからどうなるかは分かりませんが、レドが同盟に戻れないことが分かったし、ヒディアーズ=クジライカと云々という所で、なんとなく着地点が見えてきたような気がします。
 しかし、離れてしまった船団とレド、そしてガルガンティアをどうするつもりなんですかねー。一回離したものをどうくっつけて着地に向わせるか、期待させてくれます。

 個人的に今回一番良かったのはエイミーであった。というのも、彼女の心情がよく表れていて、見ていて実に興味深かったからだ。
 レドが本当にガルガンティアから出て行ってしまうことをメルティから聞いての「そっか」と気のないフリをしながらも、すごくショックを受けているのが、これまでを見てきた分ありありと分かるというものだろう。そして彼の元へと行くのだが、姿をちらと見て話しかけずに行ってしまう。きっとなんと言えばいいのか分からなかったのではなかろうか。前回にあれだけ必死に止めても聞き入れてくれなかったのに、今、何を言えばいいのか分からないのも当然であろう。
 そして遠くからレドを見つめるエイミーの元にサーヤがやってきて、レドと一緒に行ってもいいのではないかと提案する。離れてしまうのは寂しいが、まるでこの世の終わりみたいな顔をされるよりは良いと。エイミーにとってはそうかもしれないが〜と言うサーヤの言葉に、ふてくされたように「まだ始まってもないよ」と小声で言うエイミーで、彼女の気持ちが分かるというものだ。しかし彼女には弟のベベルがいる、ベベルにはオルダム先生が必要だし、自分もベベルが必要だからガルガンティアを離れるわけにはいかないのだ。そんなエイミーにサーヤは「良かった」と言い、「私もエイミーがいなくなったら寂しいもん」と続けると、エイミーは、はっとした後に涙を浮かべた笑顔で「ありがと」と応える。自分がいなくなることが寂しいと思ってくれる者が、ベベル以外にもいると分かったことは、彼女にとってほんの少しでも救いになったのではないだろうか。
 その後、家に戻り夕飯の仕度をするエイミー。ベベルから「レドが行っちゃうって、ホント?」と問われると、それまで笑顔だったエイミーの表情はみるみる曇っていき「残念だよね。せっかく仲良くなれたと……思ったのにね」と声をくぐもらせる。「どうしてわざわざ危ないことをするんだろう?」というベベルの続けての問いに、エイミーは手を止め、肩をふるわせ、ついに気持ちが噴出し、これまで気丈に振る舞っていた彼女がぼろぼろと涙を流すのだ。
 きっとベベルの疑問はエイミーも感じていたことなのであろう。優しいエイミーが「ホントだよ……あのバカっ!」と口にして、涙ながらに「どうして自分の事、大事にしてくれないんだろう?お祭りの時、レド、楽しそうだった。笑ってたんだよ。でも今は、初めて会った時より苦しそう。きっと、あの時のレドが本当のレドだったのに」と胸に秘めていた気持ちを吐露する。
 自分がこんなにも必要としているのに、どうして自らを危険に晒すのか分からない。初めて会った時と違い、お祭りの時に笑顔を見せ、自分の肩に触れてはっとした彼こそが本来の姿で、そんな彼に惹かれていた。しかし今は初めて会った時より苦しそうで、そんな彼を苦しみから解放させることも出来なければ、危険に飛び込んでいくのを止めることも出来ない。気持ちを解ってもらえない怒り。何もしてあげられない自分への責め。いなくなってしまう寂しさ。それ故募る慕情。
 様々な感情が入り乱れながらも気丈に振る舞ってきた彼女が、ここで一気に気持ちを噴出させる様は、そんな彼女も普通の女の子であることを強く印象付け、また、本来実在しないこのエイミーというキャラクターから人間臭さを感じられるではないか。
 そしてエイミーがどれだけレドに惹かれているかも、手に取るように分かるというものだし、レドはエイミーを守ろうと戦おうとし、エイミーはレドに危ない目に遭って欲しくないという、お互い想い合っているのに気持ちの齟齬が生じてしまう物悲しさが良い。これからふたりがどうなってしまうのかを気にさせるではないか。
 最後に別れを言いにきたレドは、彼からヒディアーズの牙で作った笛を渡されたベベルが「これは預かっただけだから何時でも戻ってきて」との言葉に、「今までありがとう。緑の波の、恵みあらんことを」と微笑しながら返すのだ。
 「戻ってきて」に適切な言葉を返さなかったのは、戻って来れない可能性があるからだ。つまり、レドの戦う決意は変わらない。彼の言葉にベベルもエイミーも悟ったのであろう。止めることは出来ない、と。そして地球の文化を理解し、今、微笑みを見せる彼だからこそ、ふたりは行って欲しくはないのだ。笑顔のレドに対し、お盆を強く抱きしめ、涙を堪えるエイミーが見ていてつらい。

 と、今回のエイミーを見ると、謝肉祭の時の彼女のダンスって、案外「求愛のダンス」だったんじゃないかと思ったり。今思えばけっこう扇情的なダンスだったよなぁ。エイミーには、そういう期待があったのかなぁ。
 ま、それはともかく、今回は上記したようにリジットとレド・エイミーを、フェアロックの葬儀という流れの中でザッピングしていき、サブタイ通りに離れ行く人々を見事に演出していて見事でした。
 物語も気になりますが、レドとエイミーには幸せになってもらいたいなぁ。


第9話「深海の秘密」

地球起源とかいう問題ではなかったか。

 そんな今回のお話は…
 ガルガンティアを離れたピニオンたちが到着したのは「霧の海」。霧の中には旧文明の海上プラントがあり、その海底にはお宝が多数眠るはずの海底施設があるのだ。
 いまは遺跡として静かに眠る施設に、ピニオンはかつて兄とともに迫ろうと試みたことがあった。
 だが、そこを巣とするクジライカの大群によって兄は命を落とし、ピニオンはその仇をとろうと心に誓っていたのだった。
 同じくガルガンティアを離れ、霧の海に挑んだレドは、襲い来るクジライカをチェインバーとともに次々と撃退する。
 禁忌の生物と思われていたクジライカを倒すことができるとわかり、快哉をあげるピニオンたち。
 さまざまな武器を駆使してクジライカをほぼ全滅まで追い込んだチェインバーの前に、ついに女王クジライカが姿を見せる。
 その力に苦戦を強いられるレド。かつて研究施設であったとおぼしき海底遺跡で、レドやピニオンを待つのは果たして何なのか。
 そしてついに、レドは旧文明の滅びの真実を知る。
 以上公式のあらすじ。

 お話は基本的に過去話。Aパートでガルガンティアから離れたピニオンとレドたちがクジライカの巣なる旧時代の施設へ進入し、Bパートからはレドが施設内で過去の記録を見つけ地球の過去とヒディアーズの起源を知るという内容。
 Aパートはレドとチェインバーがその戦力でクジライカを屠りながら巣となっている施設に入って行く様子を描いているのだが、途中で「おや?」と思わせておいてのBパート、という展開になっている。
 メイン所は当然サブタイでも「深海の秘密」となっているだけあって、過去の出来事が分かるBパートだ。結論を先に言ってしまえば、ヒディアーズの起源は人類だったのである。Aパートでヒディアーズの子供らしきものを見ることとなるのだが、それが人間の胎児のような形なので、ここで上記したように「おや?」と思わせておいてのこの事実だ。
 そこまで散々チェインバーとレドがクジライカ=ヒディアーズを撃滅していく様子、まだ動くこともできない子供や産卵場を容易くレーザー兵器で難なく焼き殺して行くのを見せているので、この事実の判明はなんとも後味が悪いのだが、分かった情報は実に興味深いものであった。

 地球が今のようになる前、氷河期を迎えようとしていた地球では、住めなくなる地球から脱出して他の恒星に移り住もうと画策するが、遠い旅路で死滅しないように遺伝子工学で宇宙に適応しようとする施設が誕生する。まぁ簡単に言ってしまえば遺伝子操作して人類作り替えて宇宙に適応しちゃおうぜって話。人道的にどうかと言われながらもヒトゲノムを操作し、それが後にヒディアーズとなるのだが、それはまた後の話。
 そんな研究が進んでいくと、当然それに反対する者も現れる。地球はもう氷河期に飲み込まれようとしているのに、それで二極化していくのだ。ヒディアーズとなって宇宙に適応していこうという一派と、それに反対する者達で戦争状態になる。まぁもはや人では無いような形になってまでというのも分からんでもないし、ただ滅び行くのを指をくわえてまっているのもおかしな話なので、どちらが正しいとか正しくないとかの話ではないが、こんな時でさえ争ってしまうヒトという種族は実に人間らしく、そして愚かしいと思わざるを得ないのだが、また同時に結論が出る話でもないのでなんともモニョモニョしてしまう。
 ヒディアーズに反対する者達は科学技術によってワープホールを作り出す装置の開発に成功。自分たちはワープ=超高速移動して地球圏から脱し、その時点でワープホールの装置を自爆させ、ヒディアーズを地球圏に閉じ込めようとする。しかしヒディアーズ賛同側も黙ってはいない。自分たちも地球圏を脱出し、ヒディアーズの適応能力で生存領域を広げ、更なる発展を遂げたいのだ。おそらくはこれが地球での最終決戦だったのであろう。記録は正にその戦いが始まろうとする所で終わっていた。第1話での銀河同盟とヒディアーズの戦争のことを考えれば、結果的に両者超高速移動して地球圏を離れたのであろう。

 チェインバーは銀河同盟の公式記録と違う点が多々見られると言っていたが、銀河同盟の記録なんざ、地球を脱してからどれくらいの時間が経ったのかは不明だけど、同盟に都合よく改変され、時間と共に真実を知る者など、もはやいないのかもしれない。ともあれ、レドがガルガンティアを去ると決めた際、エイミーに今の地球は先への展望をめぐらす事無く人間同士で争っていると言っていたが、つまるところ、レドたちも人間と人工的に進化(?)した人間とで争っていたのだ。大昔の地球の戦争を今尚続けている。
 今の地球の人たちが、クジライカを神聖なものと扱っているということは、きっとヒディアーズ賛同者で地球に取り残された人達の末裔なのだろう。クジライカを侵さず殺さずは納得の文化であった。しかしヒディアーズをもはやヒトに非ずとした末裔であるレドは、これで戦う理由を失ってしまった。ヒディアーズは銀河同盟の言うような下等で人類の生存を脅かす生物ではなかったのだから。
 そんなレドの前に、ヒトの形をした(女性のような?)ヒディアーズが現れると、機械であるが故に銀河同盟に忠実なチェインバーは躊躇なく握りつぶしレーザーで焼き殺す。ヒトであった者、いや、もはやなんと言っていいのか分からないが、ヒト起源、むしろ人類よりもあらゆる環境に適応した同種とも言える彼らを殺したレドはその事実に驚愕し、また慟哭する。その頃ガルガンティアでは、レドから預かったヒディアーズの笛をベベルは奏で、その音色にエイミーは涙するのであった。

 という所で今回は引っぱったわけですが、真相を知ってしまったレドはもう銀河同盟に帰れないわけだし「共存共栄」を選んでいくんだと思うんだけど、そこへ行き着くまでが想像つかないなぁ。一体どうなるというのか。
 またピニオンたちもこの事実を知ったらどうするというのだろうか。おそらくレドはもうこれ以上クジライカを戦うようなことはしないだろうから、施設から何かを発掘というのは無理だろうし、そもそもこの施設に今の地球に何らかの利益をもたらす遺産があるとは思えない。そもそもあれだけクジライカを殺してしまっては、同盟とヒディアーズではないが、人類を敵視してしまっているかもしれず、このまま無かったことにでは済まなさそうではある。
 これから物語をどう折り畳んでいって収束させるか楽しみなのもさることながら、レドとエイミーはどうなるのかも期待していきたい。


第10話「野望の島」

興味深かったのだが……

 そんな今回のお話は…
 ついに自分たちの船団をプラントに接舷させたピニオン。
 旧文明の遺物の力を目の当たりにしたピニオンは、「クジライカを倒し、自分たちが圧倒的なお宝を手に入れた」と無線で宣言する。
 近づく船は容赦なく沈めると断言するピニオンに、船団は大きく揺れる。ピニオンの考えに抵抗を感じるもの、賛成するもの。メルティは渦中に巻き込まれ苦悩する。
 一方、海底遺跡の中で手に入れた記憶媒体を通じて、ある真実を知ってしまったレド。すべてを捧げて戦ってきた人類銀河同盟の戦争に意味はあったのか。
 レドは自分の行ってきた行為を振り返り、嫌悪感を抑えることができなかった。一方、ピニオンの無線を聞いたガルガンティア船団にも、大きな衝撃を受が走る。
 レドとチェインバーがクジライカを殲滅したと知り、動揺を隠せないエイミー。「レド、どうして……」。
 やがてピニオンの警告にもかかわらず、お宝を狙った海賊船が接近してくる……。
 以上公式のあらすじ。

 ……何を書いていいのかよく分からなくなって困る(苦笑)。
 お話的には、あらすじにあるように、ヒディアーズが進化した人類であることを知って戦意を、いや、戦う意味を失ってしまうことから始まり、サブタイにあるように、クジライカがいなくなったことで、旧時代の遺産を手にしたピニオンは、その発達していた旧文明を人類の総資産として分配する事無く船団で独占し、妙な野心を見せる。と言った所が前半の大体の流れ。
 まぁこの辺は、真実を知らないピニオンが、お宝の山に野望を膨らませる不穏な空気が分かれば良いだろう。
 チェインバーの火力の何十分の一とは言え、電磁砲などの兵器も掘り出され、発掘遺産を狙ってくる者どもを蹴散らし、また仲間に引き入れ、おそらくは巨大化していくピニオンたちは、正直、印象良くないと言いますか、長期的戦略とは言えない割と行き当たりばったりなので、先行きが不安と言った方が正しいか。
 そもそも、現在の地球人としては、いきなりのハイパーテクノロジーを手にして急激な発展をしてしまうと、大概の場合、後々ろくなことが起きないものであるし、仲間になりたいヤツをなんでも迎え入れてしまっては、何かあった時に統制がきっととれないだろう。何かをきっかけにあっさりと瓦解してしまいそうな不安感があるが、むしろ、そういう「何か良くないことが起きそうな感じ」を見せているのだろう。
 劇中のピニオン達の盛り上がりに反し、見ている側としては不安しかなく、それ故先を気にさせるのだから、この誘導は上手いと言えるだろう。

 さて、レドの方はと言うと、上記したように真実を知って戦う理由を失ってしまうのだが、後半にチェインバーが、前回知った真実を的の情報操作の可能性ありとしていたが、その情報の裏付けがとれ、それ故に戦う理由があるとしたのが非常に興味深かった。
 まぁ単純に言ってしまえば、人類が知能を発達させ高度な文明を手にすることで生きながらえる生存戦略をしているのに対し、ヒディアーズは文明を捨て己の肉体を進化させ続けることで生命を繋ぐ全く逆の生存戦略をしているので、衝突して負ければ淘汰されるのは必至だから、人類として、その英知の結晶である自分(チェインバー)と共に戦うこと必然であるとする。
 このチェインバーの言葉にレドは「銀河同盟のお題目はたくさんだ!」とすると、チェインバーはすでに銀河同盟との平行リンクは解除されていて、この結論はチェインバー自らが、これまでの地球での情報収集の結果にたどり着いた答えだとする。機械のチェインバーが、自らを人類の英知の結晶とし、戦う意味を失った人間のレドに戦う理由を示し、更なる戦果を求めるのだ。
 チェインバーの言うことは、機械だけあって論理的で、ヒディアーズが元人間であっても戦う理由としてはこれ以上無く、正直自分としては全く反論の余地のない見事な解答だ。しかし、人として、何か違う・間違っているような気がするよなぁ。高度な文明の遺産を手にし、不穏な空気を醸し出すピニオンたちを見せているだけあって、すごくモニョモニョした気分にさせられる。
 本来、人間も生物である以上、自然と共に生きるのが真っ当な形なのであろうが、また人類が人類であるからこそ文明を発達させ今の我々の生活があるわけで、なにが良くて悪いんだが分からなくなってくる。レドと同様に「どないしたらええねん?」と思ってしまうよなぁ。
 おそらくは、シナリオ的に見ていてそう思わせたいはずなので、じゃあこっからどう展開して折り畳むのかを気にさせてくれるのだから、見事なシナリオなのではなかろうか。

 その後、チェインバーが友軍機の暗号通信をキャッチし、1話で戦死したと思われたクーゲル中佐(だったっけ?)のマシンキャリバーが出てきて引っぱるのだけど、なんか宗教団体のような船団が、クジライカの屍骸を船に吊るし、中佐の紫のマシンキャリバーを灯台のように照らしながらやってくるのだから、なんだかとってもよくないことが起こりそうな雰囲気じゃないですか。
 クジライカの屍骸をこれ見よがしに吊るしている様を見ると、神聖視する人たちが昔の地球でヒディアーズを賛同する人々の末裔だとするならば、この宗教団体のような人たちは、彼らと戦った人達の末裔、つまり銀河同盟になれなかった人たちなのだろう。とするならば、結局人類はずーっと人類同士で戦っていたって事になりますなぁ。ああ、なんだかさらにモニョモニョします。
 おそらくは、当時に地球に取り残されて、氷河期に飲み込まれて、文明を多く失って、それでも生き残っても、同じ堂々巡りしているってことなんでしょうか?まぁその辺次回が詳しいはずなので、期待せざるを得ない。
 それと、現時点で中佐が生きているかどうかは不明だけど、生きているとしたらレドは軍紀的には中佐に従わなければなりませんよねぇ。なんだかよく分からない宗教団体みたいなヤツラに祭り上げられている(ような気がする)ヤツに、レドが従わなければならないのかと思うと、ああ!さらに不安感が募るではないか!レドは一体どうしたら良いのだろうか。
 そしてこの物語として、謎の第三勢力の出現にどう展開していき、どう収束させようというのだろうか。この「これからどうなってしまうのだろうか」と先を気にする楽しさが物語というものの醍醐味だろう。そういう意味で、この「翠星のガルガンティア」という物語は、派手さは無いものの、良く出来ているなぁと思わざるを得ない。

 前回、着地点が見えてきたような気がしていましたが、今回でまたなんだかよく分からなくなってきてしまいました。どう着地するかはともかく、最後は気持ち良く終わって欲しいなぁと思います。


第11話「恐怖の覇王」

祭り上げられてるのかと思ったら。
 そんな今回のお話は…
 霧の海に接近する大船団。攻撃を仕掛けたピニオンだったが、圧倒的な戦力の差を見せ付けられる。
 率いていたのは、人類銀河同盟でのレドの上官・クーゲル中佐。クーゲルもまた乗機ストライカーとともに地球へと漂着していたのだ。
 クーゲル船団でレドを迎え入れたのは、オンデリアと神官たち。クーゲルは、地球の人々に戦い方を教え、ヒディアーズを殲滅するという思想で船団を築き挙げていていた。
 レドはクーゲルに海底遺跡で知った真実を告げる。ヒディアーズと人間は、同じルーツを持つ種だったのだと。だがクーゲルは驚かなかった。
 それは人類銀河同盟の上層部では暗黙の了解だったのだ。同盟はそれを知りつつ、人間であることをやめたヒディアーズと生存をかけた戦いを続けていたのだった。
 力による統率で自らの船団に“幸福”をもたらしたと語るクーゲルは語りかける。
 「なぁレド、俺と一緒に、この星を変えてみないか? 」
 以上公式のあらすじ。

 お話の流れとしては、クーゲル中佐とストライカー率いるクーゲル船団が、ピニオンたちの船団を吸収してしまったという話。大雑把に言えばだが。
 発掘兵器を手に入れて、無敵と思われていたピニオンたちであったが、クーゲル船団はなにせマシンキャリバーを有していますから、ピニオンたちを凌駕する戦力を有しており、割とアッサリと吸収されてしまうこととなったわけですが、この辺の件は、力を振りかざす者が、より大きな力でねじ伏せられる様を表していておもしろい。まぁ結局の所は、ピニオンの判断によって船団が危機に直面してしまったわけですな。
 ピニオン側にはレドがいるけれど、前回に書きましたように、レドはクーゲルの直下の部下なので、あっさりとクーゲルに帰順。まぁ軍属であるので当然といえば当然。
 今回はその辺の流れよりかは、クーゲル船団がどういった様子なのかを見せるのがポイントだろう。

 冒頭にも書きましたが、変な宗教団体に祭り上げられているのかと思っていたら、むしろ自らが神如き存在として君臨していたのは意外であった。
 マシンキャリバーの力と情報で船団を統率して、クーゲル船団はさながら地球での銀河同盟の体を成していた。まぁ言ってしまえば超実力主義と言いますか、能力によって待遇が違うのである。病気を抱えているものが銀河同盟で淘汰されていたように、全体への貢献度で待遇に差があるのだ。
 宇宙でヒディアーズと戦争しているからこそ銀河同盟はそれで成り立っていたのだろうが、この地球でそれはどうなのかと思うが、クーゲルは住民の幸福度は上がっているというのだ。
 「銀河同盟の理念に置いては、幸福とは個人が全体に奉仕する際の費用対効果が最大効率を発揮する状態と定義される。故に幸福は統率の安定度に比例する。」というのがストライカーの説明なのだが、劇中レドが呟いたように「そうなのか?」と思わざるを得ない。
 宗教じみたこの船団は、確かにひとつの理念によって統率され全体として動いてはいるが、船団に活気が無く、ピニオンたちが離れる前のガルガンティア船団のような、人が活き活きと暮らしているようには全く見えない。まぁつまるところを言えば、全体を重視し過ぎて個を顧みていないのだ。正直とても幸福とは思えない。
 クーゲルはヒディアーズが人間であったことを知りながらも、「元」人間だとし、上層部として暗黙の了解であったが、自分たち前線の兵士には不要の情報だと切り捨て、欲望のままに生き繁殖するだけのヒディアーズを人間とは呼べないとする。そしてこの星の人間は恵まれた環境にいてヒディアーズに圧倒され恐怖している。我々の使命は彼らに戦い方を教え、人類の尊厳を啓蒙することだ。と結論付け、レドにこう言うのだ。「なぁレド、俺と一緒に、この星を変えてみないか? 」
 これまでこの物語の舞台である地球を見てきて、ヒディアーズ=クジライカがそんなに人類を圧迫しているとは思えないんだよなー。別に彼らは地球を統べようとしているわけでもないし、海中は彼らばっかりではなく、ちゃんと他の魚も生きていて、人類としても、こっちから手を出さなければ襲ってこないのだから、特別問題があるようには見えない。
 でも風土病にかかり、滅菌状態のコクピットから出られないクーゲルは銀河同盟の兵士として、その使命を全うし、地球を第2の銀河同盟のようにしたいのではないか。
 だが前にベベルが言っていたように、仮にこの地球上のヒディアーズを殲滅したとして、それ以降にこの秩序は必要なのであろうか。この銀河同盟のシステムは、ただ対ヒディアーズの為だけのシステムのように思えてならない。郷に入りては郷に従えと言う言葉があるように、銀河同盟の理念は、この地球に置いて意味があるようには思えないのだが、はてさて。

 とはいえ、レドは軍属故にクーゲルに帰順せざるを得ない。クーゲルはマシンキャリバーが2機になったので、兼ねてより計画していた啓蒙作戦を実行すると言う。その対象は近くを通りかかったガルガンティア船団であった。ってところで引っぱった。
 クーゲルの言う啓蒙活動がどういうことを言うのかは、クーゲル船団がピニオンたちを吸収してしまったことを見れば分かろうというもので、力で飲み込んで一部にしてしまおうというのだろうが、う〜ん。物語は二転三転して、これからどうなっていくのかが予想もつきませんな。レドはエイミーのいるガルガンティア船団が、このまま飲み込まれてしまうのを黙って見ているはずもないと思うし。
 ちょっと気になるのは、いずれ出てくるであろうと思っていた大海賊ラケージがクーゲル船団にいたこと。表向きは船団に帰順しているが、どうも裏がありそうな感じであるので、何かのきっかけなのだろうとは思うが、はてさて。
 それと、風土病でコクピットから出られないクーゲルって……ホントにいるんですかね?映像でしか見れてないとなると、ストライカーがいるかのような映像を流しているだけ、のような気がしないでもない。ストライカー単体でそうまでする必要性はないのかもしれんが、チェインバーが前回にこれまでの情報収集の結果、銀河同盟の平行リンクから外れても、自ら結論を得たことを考えれば、ストライカーが自ら、もしくは、途中で風土病で死んでしまったクーゲルの代わりをしているような気がしないでもない。

 ともあれ、物語序盤ののんびりしたとしていた所から、物語は二転三転し、どうなっていくのか分からなくておもしろくはあるんだけど、これってたぶん1クールだよね?
 この状態でどう物語を上手く締めるというのだろうかね?綺麗に終わってくれればいーんですけど。


第12話「決断のとき」

予想が当たった!(笑)

 そんな今回のお話は…
 クーゲル船団がたくわえてきた遺物の修復を一手に任されることになり、狂喜するピニオン。そこに接近してきたのは、女海賊ラケージ。
 ラケージは一旦はクーゲル船団に身を寄せていたものの、そのやりかたに相容れないものを感じていたのだ。
 一方、銀河道に沿って航行するガルガンティア船団も、クーゲル船団のいる海上プラントへ接近しつつあった。
 ガルガンティア船団も武力により併合することを考えるクーゲルは、接収に成功したらその統治をレドに任せたいと語る。
 「文明の後退したこの星に、新たな秩序をもたらすことは我々の使命だ」。だがレドは、その考えに素直に頷くことができない。
 地球を第二のアヴァロンにするのだ、というクーゲルの言葉を思い返すレドの脳裏に浮かんだのは、ガルガンティアで過ごした日々、そしてエイミーのことだった。
 以上公式のあらすじ。

 お話は大雑把に言えば、レド、ピニオンたち、ラゲージがクーゲル船団に反旗を翻し、レドはクーゲル・ストライカーと相対するが……と言った流れ。ポイントは、元いた銀河同盟の秩序と地球での暮らしの中で得たことの狭間で苦悩するレドが、どこで決断をするに至ったかだろう。

 近づいてくるガルガンティア船団を、啓蒙活動と言う名の戦闘行為で併合しようとするのを止めようとするが、逆に彼らに肩入れするのなら早く啓蒙してやるべきと言われてしまう。苦悩するレドであったが、そんな折に雨が降ってくる。以前ガルガンティアで海上では貴重な真水を集めようと、皆が一致協力して雨を集めたことが思い起こされる。しかしこのクーゲル船団では別のことが行われた。老人や病人が拘束され海に捨てられたのだ。
 かつてレドのいた銀河同盟で、自分に似た病気の子供が宇宙にカプセルごと放り出されたように、船団に貢献出来ない人々を淘汰した。
 「オレは、こんなモノを見る為にここへ来たんじゃない……」と呟くレド。エイミーを、ベベルを、地球に来て何も分からず何も出来なかった自分を暖かく迎え入れてくれた人々を、ヒディアーズの驚異から守りたくてガルガンティアから離れたはずだった。しかしその為の船団で、レドが守りたかった人々がこの船団に併合されれば、こうして淘汰されてしまうかもしれないのだ。あるいは地球で目覚めた当初のレドであったなら、これを容認していたかもしれない。だが地球で暮らし、銀河同盟とは違う生き方を理解した今、改めて見たこの「淘汰」を認めることは出来なかった。レドはガルガンティアに危機が迫っていることを伝える為にメルティを向わせ、クーゲル・ストライカーと対決することを決意する。

 その後、格納庫でチェインバーとレドのやりとりがあるのだが、このやりとりはなかなかおもしろい。チェインバーはガルガンティアで色々な人たちと接する機会が多かった所為なのか、銀河同盟の平行リンクからも外れ、自ら情報収集し、結論を得るに至っているのは前回もあった通りだが、機械なのにチェインバーはちょっと人間臭いのだ。
 まず、クーゲルより臨戦態勢へ以降し指揮下へ入れとの命令があったことを伝え、「貴官の判断を請う」とレドに聞くのだ。機械なんだから、上官の命令なわけだし、いちいちレドにそんなことを聞く必要は無いではないか。むしろさっさと乗って臨戦態勢をとれと言っても良いくらいだ。なのに判断を聞いてきたということは、チェインバーはレドがどうしたいのか知りたかったのではなかろうか。
 レドはチェインバーの言葉に「判断か。オレが判断してお前が実行する、いつもそうだったな。……でもオレは、本当に何かを選ぶことを一度もしたことが無いのかもしれない」と呟く。チェインバーが「発言の意味が不明である。中佐の指令への……」と言いかけるとレドはチェインバーとストライカーの戦力比と聞いてくる。
 まぁ確かに、「判断」に対してのレドの呟きは彼の独り言なのでチェインバーが「意味不明」と言うのは当然。チェインバーは「中佐の指令への対応」を知りたかったのだし。ストライカーとの戦力比もデータの不足により算出不能とし「質問意図が理解不能」と答える。これも当然であろう。本来従うべき相手との戦力比を聞いてどうしたいのか?ということなんだろう。
 レドはひとつ大きく息を吐いて「お前はストライカーと戦えるか?」と聞く。これはレドの決意だ。自分の意思を明らかにしたのだ。これからクーゲル中佐を戦うつもりなんだと。チェインバーが、ストライカーは現在、同盟の軍務にない行動を遂行中。交戦対象として認定は可能だとすると、レドは「そうか」と言い、続けて「ならオレは、中佐と戦えるか?」と問う。
 レドの質問にチェインバーはこう答える。「その質問への解答は、支援啓発システムたる当機の機能を越える。戦闘行動の方針策定は、いかなる場合も、これを貴官に委ねるものである」
 つまりチェインバーは、どうあれレドに従うと言ったのだ。レドが判断してチェインバーが実行する。いつもそうだったように。チェインバーの言葉にレドは微笑する。これまで共に過ごしてきたレドとチェインバーに、友情のような信頼関係を窺わせ印象的であった。もう銀河同盟へ戻ることは出来ないし、レドはもう戻れた所で同盟に適応出来ないであろう。それならば「ふたりとも」地球で穏やかに過ごしてほしいと思わせてくれる。
 ともあれ、チェインバーはピニオンによって武装され、臨戦態勢へと移行した。

 密使となったメルティによってガルガンティアに危機が伝わり、その頃クーゲル船団ではガルガンティアへ向けての啓蒙活動が始まろうとしていた。
 出撃しようとするストライカーの前に出て立ちふさがるチェインバー。ここは地球で銀河同盟ではない。この星にはここで生きる人々が作る世界がある、それを壊して良いはずが無い。とするレドにストライカーから発砲。戦闘が始まった。ピニオンは電磁砲でレドを援護。フランジは連結器を爆破し船団から離脱し、反乱を企てていたラケージも同調する。
 仕官機と思われるストライカーは性能においてチェインバーを凌駕していたが、ピニオンの援護によって姿勢を崩した隙に取り付き動きを封じることに成功したレドは、ストライカーのコクピットを開ける。中にいたのはクーゲル中佐の屍骸であった。
 戦闘中もこれまで言っていた台詞を繰り返していたこともあって、やはりと思っていたが、前回予想していた通り、クーゲルではなくストライカー独自の行動であったのが判明した所で引っぱった。

 次回へのポイントはガルガンティアの方だろう。
 メルティによって危機を知らされ、進路を変更して逃げる他無いとしていた所にエイミーがやってきて、レドが自分たちの替わりに、昔の仲間に歯向かって、たったひとりで戦おうとしているのに、自分たちは逃げてしまってそれで良いのか?と訴える。
 しかしガルガンティア船団には戦えるだけの戦力が無いのだ。皆うなだれる中、船団五賢人であるオルダム先生がリジットにあの鍵を使う時だと進言する。前船団長であったフェアロックが死の際にリジットに託した物だ。
 それが何かは分からないが、どうも「天のはしご」と呼ばれる物らしい。流れからいけば、次回最終回でもあるし、この状況を一変させるだけの物であることに違いないだろう。とすると、おそらくは旧文明の遺産と考えられるが、名称が「天のはしご」なので武装ではなさそうなんだよなー。はしごって言うくらいなのだから、宇宙へ向っていける何かかと思うんだけど、それで状況を終わらせることが出来る何かってなんなんでしょうかね?
 ともあれ、とりあえずストライカーをなんとかするのは当然だとしても、あと1回分でこの物語は綺麗に終わってくれるのか。
 見て「ああ、良かった」と思える最後になってくれればいい。


第13話「翠の星の伝説」

チェインバー!!

 そんな今回のお話は…
 クーゲル船団に反旗をひるがえしたピニオンは、ラケージ、フランジらと共同戦線を張っていた。
 上空ではマシンキャリバーの、海上ではユンボロたちの総力戦が激しさを増す。チェインバーとストライカーが激しい空中戦を繰り広げる中、衝撃の事実が明らかになる。
 レドがチェインバーのコックピットを強制的に開け放った時、そこにいたのは既にミイラ化したクーゲルだった。ストライカーのAIは、生前のクーゲルが構想した社会形態を、その死後も維持し続けていたのだ。
 ストライカーはレドに迫る。「レド少尉、貴官もまた自ら思考し判断することを負担と感じていたはずだ。私はその重圧から貴官を解放できる」。
 レドが反論しかけた時、チェインバーが割り込みストライカーの論理に反論する。この地球にも居場所はなく、さらに人類銀河同盟にも幻滅したレド。  レドは、ただ自らの命を賭けてストライカーを止めようとする。行き場のないレドが最後の戦いの果てに見たものは……。
 以上公式のあらすじ。

 お話は上記引用したあらすじにある所から、ガルガンティア船団が参戦して〜という流れ。最終的にはストライカーを排してエピローグに移る。まぁ当然だが(笑)。
 前回判明したクーゲルの死は、そこからストライカーが何を思って船団を率いているかという話になるが、簡単に言うと絶対的な偶像になって従わせることで、思考・判断することが無くなり人類を苦しみから解放すると言う。まぁ分かりやすいかは甚だ怪しいが(笑)、フレッシュプリキュア!のラビリンス総統メビウス閣下と同じなのだ。
 そんなストライカーの論理を今のレドが服従するはずもないが、あらすじにあるように、チェインバーがそれに反論するのがおもしろい。
 クーゲルが生前どう思って船団の社会形態を作ったかは不明だが(そもそもその頃に彼が生きていたかも不明だが)、ストライカーは銀河同盟をそのままこの地球に持ち込んだのだ。しかしチェインバーはレドと一緒にこの星の人たちと関わって、色々なことを経験し、文化を学び、真実を知り、自ら思考して、ストライカーの言うそれは間違っていると論理を否定する。
 自らを神の名乗るストライカーは奉仕すべしと要求するが、チェインバーはそれを否定する。支援啓発インターフェイスである自分の奉仕対象は人間であり、神を名乗る存在に奉仕する機能はないと。自ら思考し判断する存在こそが人間であり、それを放棄した者、また神だとする者に従う理由などないとしたのだ。前回そうだったように、チェインバーの思考はレドとこれまで過ごしてきたことの経験と情報から人間に限りなく近いのだ。ストライカーのしていることは、人間を奴隷にしているに過ぎない。
 またそれは銀河同盟も同様である。レドはこの地球で暮らし、同盟がどれほど空虚であるかを悟った。従属することで安寧を得ていた自分を悔いた。帰ることが出来なくなった今、いや、帰れた所で何になろう。レドが今するべきことは、この星からストライカーを排除することだ。この星を銀河同盟のようにしてはならない。
 レドは機械化融合しストライカーとの戦力差を埋めようとするが、サポートのない状況での機械化融合は彼の身体を蝕む。よってチェインバーは許可しないがレドは言う。ストライカー・銀河同盟は故郷を捨ててまで憎み合うことをやめられなかった人類が生み落とした怪物、またそこから生まれた自分も、チェインバーも同類なのだと。再び蘇ったこの星に、自分たちの居場所はなく、また帰り道もない。ストライカーを道連れに出来るならそれで良いと。
 チェインバーはその論理に破綻がないとレドの命令の許諾。レドの生命限界まで482秒。残された時間は少ない。レドとチェインバーはストライカーとの差を一気に埋めた。その時モーターカイトで飛んでくるエイミーを発見する。

 ガルガンティアでは「天のはしご」を使用する準備に追われていた。「天のはしご」は旧文明の遺産、宇宙へ出る為の発射台であったが、今となってはその飛距離を失ってしまったが、無敵の石弓となっている。巨大なスプリンクラーとなっていたあの黒い塔は砲塔だったのだ。廃棄するはずだった船などを砲弾にして彼方の場所へ打ち落とし、運動エネルギーと位置エネルギーで強大な威力を発揮する。エイミーは先行し座標を知らせているのだ。エイミーはレドに向って叫ぶ。
 「私たちがついてる。私たちが一緒に戦う。あなたと離れてやっと分かった。どんなにつらくても私はあなたの側にいたい!だから帰ってきて!あなたが守ろうとしてくれた場所に!私たちのガルガンティアに!」
 続けてエイミーは言う。「私たちの仲間に手なんか出させないんだからね!」レドはもはや宇宙から来た漂流者ではないのだ。 
 次々と落ちて来る空からの砲弾にクーゲル船団は瓦解し、クジライカの巣があった島も崩れ去った。ストライカーはガルガンティアを最大驚異対象と確認し優先排除に回る。レドとチェインバーの最後の戦いが始まった。なんとしてもガルガンティアを守らなければならない。

 ストライカーと互角の戦いを繰り広げるレドとチェインバー。しかし、これ以上機械化融合を続けては確実にレドは死んでしまう。チェインバーはレドに最終意志確認をする。「レド少尉は自らの死を要望するか?」
 その問いにレドは「オレは、死に方は分かっても生き方が分からない。そんなオレの為に、生き方を一緒に探してくれる人がいた。もう一度会いたかった。もっと声を聞きたかった。」と言って涙を流した。するとチェインバーは警告を出し「レド少尉の心理適正は兵士の条件を満たしていない。よって貴官の軍籍を剥奪する」と言ってコックピットを切り離すのだ。突然のことに「何をするんだチェインバー!」と問うレドにチェインバーは言う。
 「私はパイロット支援啓発システム。あなたがより多くの成果を獲得することで、存在意義を達成する。この空と海の全てが、あなたに可能性をもたらすだろう。生存せよ。探求せよ。その命に最大の成果を期待する。」
 この星に居場所がないと思っていた。この星の為にストライカーを道連れにするつもりだった。しかしガルガンティアの皆が、エイミーが、帰ってきて欲しいと望み、レドは死を前に彼らに会いたいと涙を流した。生きたいのだ。死にたくないのだ。従属していた以前と違い、自ら思考し判断して行動し生きようとしている。そしてそれを望まれている。あるべき人間の姿ではないか。チェインバーこう判断したのだ。レドをここで死なせてはならないと。
 支援啓発システムにパイロットを拒絶する権限はないと言うストライカーに、チェインバーは「彼に支援の必要はない。もはや啓発する余地がない。後はその前途を阻む障害を排除して私の任務は完了する」と答え単機向っていく。
 レドにはガルガンティアに多くの仲間がおり、自ら思考し判断できる。それを踏まえてチェインバーはこう考えたのではなかろうか。人間である以上いつかはレドも死んでしまう。そうなった時に自分もストライカーのようになってしまうかもしれない。またこの星には過ぎたオーバーテクノロジーである自分が、この星に悪影響を及ぼすことがあるかもしれない。ストライカーと自分は、この星、そして今のレドにとっても、もう必要ないのだと。レドたちは無限の可能性を前に自分の助けがなくとも成長していくだろう。そして自分の存在意義を達成するには、後はストライカーを排除するだけなのだ。
 ストライカーはチェインバーを対人支援回路としての第一原則すら放棄し暴走したことは明白だとし、直ちに初期化、再起動せよと最後通告する。その最後通告にチェインバーはこう返信する。「くたばれ!ブリキ野郎!!」
 チェインバーに特攻して取り付き一撃を入れ、爆発するストライカーと一緒に、チェインバーも光の塵と化した。切り離されたコックピットの中でその様子を見ていたレドは「チェインバー……」と呟き涙を流した。
 思えばレドと一緒に色々なことを経験し、人の営みを見て、情報を収集してきたチェインバーは、自ら思考し判断して結論を出すに至っていた。ストライカーに思考し判断することが人間であるとチェインバーは言っていたが、その定義ならチェインバーも人間であると言えるのではないか。
 ヒディアーズが人間であったことを知って、戦う理由を見失ったレドに戦う理由はあると提示し、クーゲルと戦うレドに追従し、ストライカーの論理に反論し、そして彼の最後の台詞「くたばれ!ブリキ野郎!!」は、従属を強要する神を名のる機械に対しての人間の感情だ。論理に論理を返してきたチェインバーが人間を学習し理解したのだ。きっとプログラムだからではなく、チェインバーは思考の末に人間を、レドを守ろうとしたのだろう。チェインバーが消滅し涙を流すレド。戦友が亡くなったように感じられたのではなかろうか。

 こうして危機は去り、ピニオンたちとクーゲル船団の人々を受け入れたガルガンティア。レドもまたガルガンティアでエイミーたちと暮らしている。ストライカーがいなくなって絶滅を免れたクジライカも、海の底でその生命を全うしている。レドは言う。研究が進めばコミュニケーションをとれるようになるだろうと。
 この海の星に人類は新たな可能性を見出して、これからも生き続けていくのだろうと思わせてこの物語は終わる。

 と、いうわけで全体的な感想ですが、たった13話で良くまとめたなという印象。
 かなりのんびり目であった前半戦は、何か大事件が起きるわけでもないのに退屈しないよう上手く作ってあるし、後半からの割と怒濤の展開は、それでも詰め込み過ぎというふうでもなく、ひとつの物語として落ち着けている点はとても上手い。
 のんびりとした前半は、後半でレドがストライカー=銀河同盟に反旗を翻すことの裏付けになっていて、どうと言うことのない地球での生活を描いているだけなのだが、「生きる」ことを知らないレドが、少しずつ人間らしくなっていく様を良く描いており、後半からは明かされていく真実に、「人間」レドが何を思いどうしていくかが、前半を見てきた分、感情移入させられるようになっていて、そう考えるとこの物語は今思えば、マシンキャリバー「チェインバー」の視点に近かったような気がします。
 上記しましたように、チェインバーが最終的にレドを支援の必要、啓発の余地がないとしたのは、彼をずっと見てきた結果であって、それは視聴者の視点と同様なのだ。それがあるからこそ、チェインバーが最後にエイミーたちともう一度会いたいと涙を流すレドを切り離し、まるで自分の役目は終わったと言わんばかりの台詞を残して物語を締めるのだから胸にぐっとくる。
 ちょっと気になった点としては、まず、思いのほかエイミーの関わりが薄かったことか。
 前半を考えれば、それでも物語的には重要な役ではあるが、もうちょっと何かしらレドとあった方がドラマチックであったように思う。が、全体としてこの物語を考えると、主役はレドとチェインバーなので、敢えてエイミーとのロマンス的なことは大きく描かなかったのではないかと推察する。彼女とのことは、エピローグの後に、きっと上手いことなるんだろうなぁと想像する余地を残し、このふたりはレドの人生と同様に「ここから」なんだよ、ということにしているような気がします。
 もうひとつ。クジライカのことも、「元々人間なんだよ」という事実以外でも何かあって欲しかった所で、最終的な「銀河同盟の否定」に行き着く為のステップのように感じられてしまうのは、ちょっともったいないような気がします。
 上記2点を考えると、もうちょっと尺が欲しかったんじゃないかと思うし、それは放送形態上仕方のない事なので、この物語を1クールで上手く収めるのに苦心した結果なのかもしれない。
 ともあれ、正直、手放しで褒めるような素晴らしい何かがあったわけではないのだけど、毎週楽しみに見ていたおもしろいアニメでありました。最後もスッキリさわやかに終わってくれて気持ちが良かったです。
 まさかこんなことが起こるなんて的なジェットコースターのようなめまぐるしい展開ではなく、じわじわっとくる感じなのを考えると、メインターゲットは学生さんくらいよりも上なのかもしれません。まぁ飽くまでそれは私の想像なんですが(笑)。


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