映画Yes! プリキュア5 〜鏡の国のミラクル大冒険〜

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現時点で見た映画6作の中で、私はこれが一番好きです。
お話良し、アクション良し、そして大好きなのぞみの大いなる愛。
これを見ずしてプリキュア5を語るなかれ。という逸品です。

 そんな今作のお話は…
 わたし夢原のぞみ!プリキュアとして、がんばってま?す!
 わたしの仲間は、大親友・りんちゃん、アイドル・うらら、ステキな先輩・こまちさんとかれんさん。
 タイプの違う5人だけど、心はひとつ!そんなわたしたちが、お姫様になりた?い!?ってことで、西洋風のテーマパークに出かけたの。
 豪華なお城で、フリフリ?のかわいいドレスを着てお姫様気分を満喫していたら、貴族に扮したココとナッツが現れて周りは騒然!
 元々パルミエ王国の王子様の二人だけに、ホンモノは違うわ?なんてウットリしていたら、ココとナッツが鏡の国にさらわれちゃった!!
 犯人は、鏡の国のミギリンとヒダリン。実は彼らは、シャドウって悪者に操られていたの。
 シャドウは鏡の国の大切な宝物・クリスタルを利用してドリームコレットを奪い、世界を支配しようと企んでいたの!早くココとナッツを助けなくちゃ!
 ところが、鏡の国に向かったわたしたちの前に、ナント、わたしたちにソックリなプリキュアたちが出現〜〜〜
 ちょっと、ちょっとちょっと〜ッ!わたしたちがプリキュアと戦っちゃうって、一体全体どういうこと?
 しかも彼女たちは、シャドウの力とプリキュアのパワーを合わせ持つ最強の敵!!プリキュア、大・大・大ピ〜〜ンチッ!!!
 みんなが持っているミラクルライトで、力を貸してッ!!!! わたしたちがパワーアップするためにッ!!!!!
 以上東映公式のあらすじ。

 そんなわけでわたくし絶賛のこの「鏡の国のミラクル大冒険」、別に私がプリキュア5が好きだから褒めているわけではなく、上記したように、しっかりと面白いお話になっている。
 お話としては、鏡の国を乗っ取った悪いヤツ「シャドウ」が、ココナッツの所持するなんでもひとつだけ願いが叶うドリームコレットを奪う為、鏡の国の宝であるクリスタルを利用し、プリキュア達のコピーを作って……というお話。
 序盤の導入部はプリキュアの皆さんがテーマパーク「プリンセスランド」へ遊びにいき、お姫様になってキャッキャウフフと遊んでいる様子を15分ほど見ていなくてはならないのだが、ここでしっかりと、のぞみとココの絆(と言うか愛と言うか)を見せて、この物語のテーマのひとつである、大切な人を想う、守るを前振っている。
 そこでののぞみがちょっと面白くて、ミラーハウスでのぞみがどんな姿になってどこにいても感じるといったココに、衣装のマントをちょいと引っぱって、ひどく不安そうな顔で「さっきのホント?」と問いかけるのだ。
 どうしてそんな不安そうな顔をするのだろうと思っていたのだけど、おそらくは、ココのそれが冗談なのか、本当のことなのか、のぞみには分からなかったのだろう。
 それが本当のことだと分かったのぞみが、「ええ??ホントかなぁ」と返す表情が、本当のことだと分かった嬉しい気持ちと、照れを隠している様が愛らしい。
 その後、ココが同じように見つけてくれるのかと返した時も表情が興味深く、一瞬考えるのだけど、すぐ笑顔で「見つけるよ!」という。
 のぞみはあの通り、バカみたいに素直なので、汚れっちまった大人のように、とりあえず良い方に言ったりしない。
 あの一瞬の考えた表情は、もう本当にそうなった時を考えたのだろう。そしてすぐに答えが出た。だから笑顔で「見つけるよ!」と言った。それはすぐ後で証明されることとなる。そういったのぞみの胸中が、読み取れる所がよく出来ていると言える。
 その後、あとで仲間になるゲストキャラ、ミギリンとヒダリンが攫ったココナッツに化けて、ドリームコレットを奪おうとするのだが、
上記のような事があったのぞみは、そのココがニセモノであると断言するのだけど、その理由が実にらしく、「ココは私が呼んだらこっちを見てくれるの! いつも真っ直ぐ私を見てくれるの!」はのぞみの台詞だが、はっきり言って、これは何の証拠にもなっていないのだが、上記ミラーハウスで彼女が出した答えがこれなのだろう。
 他人にとっては何の根拠のない事ではあるが、のぞみにとっては確たる証拠なのである。
 彼女はいつも自分の信じた事を決して疑わない。これが実にのぞみらしくて気持ちいい。
 この後戦闘になり、ココナッツを取り返す為に鏡の国へ行く事になるが、この映画のメインはそこからである。
 ちなみに、このプリンセスランドで後に出てくるダークドリームがちょこちょこと姿を現しているのだが、それが後々の大逆転に繋がっているのもポイントのひとつだ。

 鏡の国へ行ってからは、シャドウの作り出したニセキュアことダークプリキュア達との戦闘を経て、シャドウの野望を打ち砕く事になるのだが、メインはダークプリキュア達との戦闘であろう。
 ダークプリキュア(以下メンドクサイのでニセキュアと表記)との戦闘は流れが見事で、一対一で闘う事になるのだが、ニセキュアの皆さんはコピーであり、また、シャドウの魔力で疲れを知らない、という設定なので、プリキュア勝てるはずがないということを示しておき、圧倒的な戦闘力の差を見せつけ、プリキュア達はとにかくやられまくる。
 ドリームなんかは結構なフルボッコ状態になるのだけど、「それじゃあ、がんばって自分を乗り越えないとねっ!」から形勢が変わってくる。
 このYes! プリキュア5という物語全体のテーマである、「かなえたい夢がある。だから成長する。」を見事に体現してくれるのだ。
 あれだけ劣勢だったプリキュアたちは、この戦闘の最中にも成長していて、その時点で勝てないはずであるニセキュアと対等に闘っていき、「私はずっと同じ私じゃないのっ!」「昨日の私より、一時間前、一分前、一秒前、そんな私より、もっと良い自分になりたい」以上はドリームの台詞だが、その通りに成長していく彼女らは、ついにはニセキュアを圧倒し倒す事となる。
 この戦闘では、上記したように一対一で別々の場所で闘っていて、ニセキュア達も個別に語りかけるのであるが、プリキュア達が、ひとつの長い台詞を割り振って言っているようなカット割りと演出が見事で、彼女らが離れていたといても、想いが同じであり、心の奥底で強く繋がっている様子を見事に物語っているし、なにより、最初のピンチから大逆転までを段階を踏んで見せて、プリキュアを倒す為だけに生み出され、それしか知らない彼女らを自分らの考えの元に論破し、そして成長してみせるプリキュア達の活躍は、カッコいいアクションと共に見ていてとても気持ちがよく胸がすく。

 ニセキュアとの戦闘は、個人的な所として、特にミントとドリームが印象に残った。
 ミントはダークミントに、守る力は損だ、守る力は何の役に立たないなどと言われるのだが、守りたい人がいるから強くなれるとして張ったミントシールドは、ダークミントの攻撃をそのまま跳ね返して、彼女は自らの力で滅んでしまう。
 そして消えゆく彼女にミントは「私はあなたの事も守りたかった……。」と言う。ミントは守る力で守りたかった相手を消してしまったのである。力は大切な人を守る事もできるが、逆に傷つける事もあるのだ。力とは何かを考えさせられる悲しい結末であった。
 ドリームの方はというと、大好きな人の為ならがんばれる、強くなれると、ものすごい急成長を見せて圧倒するドリームに、プリキュアを倒す為だけに生み出されたダークドリームは、それしか知らないんだと涙を流しながらも放った一撃は、最初フルボッコにしていたドリームが、片手でいとも簡単にあしらってしまう。
 ドリーム自身が言っていたように、そこにいるドリームは、もうフルボッコにされていたドリームではないのだ。
 そして、楽しくて笑っちゃうだとか、ひとりでさみしいだとか、大好きな人が大切だとか分からないと言って泣いたダークドリームに、「大丈夫だよ。きっと分かるよ。だってあなたにもちゃんと心があるんだから。」と慈愛に満ちた表情で言い、「ここから一緒に出よう? ね?」と手を差し伸べ、みんなの元へ連れてきて、怪訝そうな仲間に「私の友達だよ」というのである。
 ダークドリームはプリキュアを倒す事しか知らないから闘っている。それ以外を知らない自分に泣く心を持っている。
 それを知ったドリームにとって、もうダークドリームは倒すべき敵ではなく、守るべき友となったのだ。
 なんという大いなる愛だろうか。思えば、TVシリーズでも、ラスボス「デスパライヤ」でさえ倒さずに説得した彼女である。
 人に愛された事のない人間が人を愛す事がないのなら、のぞみのその大いなる愛は、それだけ愛されたという事だろう。そしてのぞみはその身に受けた愛を周りに返していくのだ。
 ダークドリームはのぞみから受け取ったそれを、この映画のラスボス「シャドウ」との戦闘で、またのぞみに返し、そして逝ってしまう。
 笑う事ができなかった彼女が、消えゆく時に笑顔であったのだから、彼女は幸せだったのかもしれない。

 ニセキュアとの戦闘の後は、ラスボス「シャドウ」との戦闘だが、正直この辺はオマケ程度である。この映画で気に入らない所を挙げるとしたらここであろう。
 なぜなら、シャドウは鏡の国を乗っ取った理由として、好きな物を何でも取り寄せる事ができるとして、ドリームコレットで願いを叶える為に必要な55のピンキーを取り寄せるのである。
 それは、うららんが一匹キャッチュしてコレットに移し忘れていた為、事無きを得るのだが、問題はそこじゃない。
 それならば、事後にパルミエ王国を復活させるという願いがすぐにかなえる事ができる、という事になるのだが、その辺が全くスルーされている事が気に食わないのだ。集まったピンキーが、事後にどうなったか全く語られていない。
 もうひとつが、映画でお馴染みのスーパープリキュアだ。
 この作品から劇場参加型と銘打って、劇場に来るメインターゲットな皆さんに「ミラクルライト」をいうペンライトを配り、「プリキュアがピンチの時につけて応援してね」という物なんだけど、せっかくスーパープリキュアになるというのになんもないんですよね。
 つまり「スーパープリキュアになるだけ」なのだ。その後すぐにプリキュアファイヴエクスプロージョンでラスボス倒してしまう。
 正直、ならなくてもお話的に何ら問題ないわけだ。どうせなるのであらば、ちょっとくらい何かあって欲しい。

 最後は文句ばっかりになってしまったが、この「鏡の国のミラクル大冒険」はなかなか良く出来ている。
 上記したようにラスボスやスーパープリキュアのおまけ感はあれども、ニセキュアとの戦いはとても見応えがあり、またアクションもとてもカッコいいのでそれだけでも十分見応えがある。
 綺麗に百合色に染まった脳としても、のぞみとダークドリームがすばらしく、むしろそれがメインとも言える良いシーンに仕上がっているので、そういった趣味の方も是非、見ていただきたい逸品だ。
 Yes! プリキュア5の魅力がたぶんに詰っているので、まだ見ていない方は是非一度ご覧あれ。


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