TARI TARI 1〜13話

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第1話 飛び出したり 誘ったり

だってP.A信者だし。

 そんな今回のお話は…
 江の島にある土産物店の一人娘、坂井和奏。弓道部に所属する沖田紗羽。そして紗羽の親友、宮本来夏。
 彼女達が通う白浜坂高校には普通科のほかに音楽科があり、歌うことが好きな来夏は普通科の生徒だが声楽部に所属していた。
 しかし1年前、合同発表会での出来事をきっかけに歌わせてもらえず、日々悩んでいた。ある日、意を決して顧問である教頭に想いを伝えるのだが……。
 和奏、紗羽、来夏、瑞々しい少女たちの高校生活最後の夏が始まる――。
 以上公式のあらすじ。

 なにげに見たらP.Aだったので。変なタイトルだったからスルーする所だったよ、アブねぇ。ま、それはともかく、さすがと言うべきかキャッチーな第1話であった。
 特別とんでもない何かが起こったりするわけでもなく、別に女の子がなんの因果か伝説の戦士になって世界を救うわけでもない、P.Aお得意の群像劇なわけですが、おそらく主役であろう「坂井和奏」になにかあったであろうことは、音楽科から普通科に変わっているようだという時点で分かるんだけど、それが何かは分からない。でも先生がちょっとしたことで気に掛けていたりで、ここがポイントなんだろうと気にさせる。
 もうひとりの主役なのか、物語を動かす人物「宮本来夏(こなつ)」は「こーゆーヤツだ!」と言わんばかりの、ちっちゃいけど明るく元気で行動力があってちょっと図々しい行動の数々が小気味いい。しかし、声楽部に所属している彼女は去年、合唱コンクールでなにか大失敗をやらかしてしまったらしく、冷徹な女教頭に歌わせろと直談判にいくも見事に凹まされて部を飛び出してしまうという、元気いっぱいノーテンキってだけでない部分も見せているのもさることながら、お話としては女教頭がすごく嫌われ役をここでいしているが良いな。
 来夏が音楽科でもないのに声楽部に所属しているし、歌が好きなのは見ていて十二分にわかるのだが、未来ある高校生しかも三年生にそんな物言いしなくてもいいだろうと言うようなぶった切りっぷりされては、どうしたって来夏に感情移入せざるを得ないではないか。
 そんな傷心の来夏をフォローするのが「沖田紗羽(さわ)」だ。来夏から教頭の話を聞いて文句言いに行こうとしたり、新しく合唱部作ると言い出す来夏に協力するし、見まごう事無く来夏の一番の親友は彼女である。
 しかし、しかしねぇ。本当に親友なのかしら?綺麗に百合色に染まった脳を持つ身としてはそんなこと思ってしまうわけですよ。来夏はバカっぽいので(笑)そんなこと考えてなさそうですが、紗羽はその気があると思うんですよねぇ。むしろこのアニメのここが気に入ってみようと思ったと言っても過言でない。たぶん今は素っ気ない和奏がこのふたりと仲良くなっていくと、ほら、色々あるような気がしてくるじゃないですか!たーのしみだなぁ。
 と、メインキャストの女の子三人だけでも、これからどうなるんだろうなぁと続きを気にさせてくれる。物語は次がどうなるのかと気にさせてなんぼだと思っているので、なんかあって音楽止めちゃった和奏に合唱部一緒にやろうよなんて軽ーく言って怒らせちゃったり、鉄の女教頭に合唱部が何とか一泡吹かせてくれねーかなとか、今の所話に絡んでこないメインキャストの男子2人はどう繋がってくるのかとか、世界の命運を駆けた何かが始まるわけでもない割となんでもないただの学校風景なのに、どうなるのかなーと思わせるのだから上手く作ってある。まぁ要するにキャッチーである、ということなのである。

 さて、そんなお話も良かったが、個人的には細かい所も上手い。この辺はさすが。
 和奏を誘おうと教室の外で待っている来夏だが、出てくると待っていたドアとは別のドアから出てきた和奏にビックリする来夏のシーンなんか、別になくてもなんら影響がないのだが、これが来夏のドタバタした感じを醸し出しているし、なんかこういう放っとけないような部分が紗羽は好きなんだろうなーと思わせてくれるではないか。
 そんな紗羽とのデート(デートなんですよ、アレは)での喫茶店のシーンなんかもお気に入りだ。子供っぽい来夏とは対照的に大人っぽい紗羽もさることながら、紗羽の質問にストローすすって答える来夏であったり、去年の失敗をワザと笑ったりする「来夏のことはわかってる」感が良いよなぁ。ぽわわ。
 去年の失敗を取り返すために特訓して去年の私ではないとする来夏に「クリームちょうだい」と突然話の腰を折ってくるのは、来夏が猪突猛進しちゃってこけちゃうのを、ワザと気を散らして周り見せてやってるんだろうなー。この紗羽のフォロー感がたまらないのだ。ぽわわ。
 その後に来夏が「ここ紗羽のおごりね」とか言い出すのも良い。理由は「笑ったから」なのだが、そんなことを言い出すような「らしさ」をすでに第1話で作っちゃっているのが上手いよな。
 最後にメインキャストがの5人が偶然揃ってしまうのも上手い。特に繋がりのなかったこの5人がメインキャストであり、この5人を中心に物語が進んでいくんだよということを見事に表している。
 なんてことのない話なのに見事に見せる、正直文句を言う所が信者だということを差し引いても見当たらないよ。声楽部の合唱曲がtrue tearsのOP「リフレクティア」だったりするファンサービスもあったしなー。

 これから毎週が楽しみです。

第2話 集まったり あがいたり

いきなりクライマックスみたいでした。

 そんな今回のお話は…
 新たに合唱部を作って、合同発表会出場を目指すことにした来夏。しかし部員を5人以上集めなければ、部として認められず同好会扱いになってしまう。
 弓道部と掛け持ちで入部してくれた紗羽、同じ学校に通う弟の誠、そして自分と3人までは集まったものの、残り2人がなかなか見つからない。
 だが紗羽の助けもあり、和奏も名前だけの入部を認め、寄せ集めの合唱部で合同発表会の会場に向かう来夏たち。合唱部という新たなステージで走り始める。
 以上公式のあらすじ。

 お話は紗羽の機転もあって和奏を形だけとは言え、入部させたことがどうも功を奏したようで、来夏念願の合唱部がスタートし合同発表会にこぎ着けるも、当日、顧問である校長が事故で引率できなくなり、会場には来夏・紗羽・和奏の三人しかいない中、高校最後に歌うことをあきらめたくない来夏は、この3人でステージに立ち、合唱曲「心の旋律」を歌い上げる。って感じ。
 冒頭書いたように、第2話にしていきなりクライマックス、みたいな内容で、若干駆け足感はあるものの、部員集めから和奏の参加、練習して合同発表会、そしてその後を上手くまとめてあって感心したし、見所も作ってあってとても良く出来ていた。そういう中で、和奏という人物や心の旋律という曲に隠された謎、事故で怪我をした校長の代理に鉄の女教頭がなって引いたりと、次に繋がる工夫もされてあり、しっかりと次回を気にさせてくれるのも良い。
 見所はなんと言っても、後半の合同発表会当日だろう。引率するはずの校長が来ないと言う所からのトラブルから、部員が出発できず、校長と副顧問であり産休している(?)高橋先生を捜していた来夏と紗羽、そして唯一楽譜が読めリハに参加していた和奏の三人でステージに臨むのだが、部員がギリギリで到着ではなく三人でその場を乗り切るのが、これからの三人にとっての大きな出来事であることを示していて良いし、逆境に敢えて進んで乗り切る気持ち良さと、来夏と紗羽が歌い上げる「心の旋律」という曲の美しさがなんとも心地良いではないか。
 部としての結果はどうあれ、来夏の歌いたいという気持ちや、そんな彼女を応援したい紗羽の気持ち、なにより音楽から離れてしまっていた和奏の気持ちを動かし、歌うことの楽しさと彼女らの青春の一ページを彩っている。

 それにしても今回の紗羽の功績は大きい。この作品で私が彼女を推しているということもあるが、ちっこいくせに妙な行動力のある来夏は意外に結構なビビリであるし、その見た目通り子供っぽくてあまり頼りにならない。来夏が作ろうとしている合唱部のために和奏を引き込んだり、連絡の着かない高橋先生の自宅まで雨の中チャリで行ったり、会場で部員が間に合わないとなって「もう帰る……」などと弱音を吐く来夏のケツをひっぱたいてやる気を取り戻させたり、ステージ上でビビる来夏の緊張を解いたりと大活躍である。
 まぁそれもこれも、愛の為せる技よねー。正直、ただの親友でそこまではしないじゃないですか。でもそうまでするのはそれだからというのはあながち間違いではないだろう。前述しました「もう帰る……」の件なんかを見ると、ケツひっぱたいて「アンタあれだけの人を巻き込んでおいて何もしないで帰るつもり?!」とハッパをかけると一転、失敗から一年特訓してきたんだから一曲歌って帰ってやると言う「いつもの来夏」が紗羽は好きなんだろう。
 また和奏を誘う件でも、来夏がその性格のために考え無しに行動してしまって怒らせてしまった彼女を引っぱり込むためにお家に誘って、来夏の失敗を見せて彼女はこうこうこういう理由で最後にどうしても歌いたいのだと、和奏の懐柔(と言うと語弊があるが/笑)に成功している。特別他の娘と仲良くなってほしくはないだろうが、それよりも来夏がしたいことをさせてあげたいんだろうなぁ。来夏は上記しましたが見た目通り子供っぽく、それ故真っ直ぐで感情の起伏が大きく裏表がない。そういった所を彼女は愛しているのだろうな。
 どーでもいーけど、紗羽は男女とわずモテていそうだなぁ。ナイスバディだしな(笑)。しかしアレだな、自分のバディに自信があるのか私服はけっこうゴイスな格好ですよねぇ。

 最後に事故って怪我した校長の替わりに鉄の女教頭が代理となってしまいましたな。野郎ふたりがどう絡むのかと思っていたのですが、おそらく教頭の所為で他の部員が辞めちゃって野郎たちをスカウトという形になるんだろう。
 しかし教頭ったら「ホントに教育者?」ってくらい酷いこというよねー。一旦合唱部、というか来夏が選曲した「心の旋律」を「あなたたちが遊びで歌うような曲じゃない」などと言って取り上げたりする様は見ていてさすがにムッとなる。しかし割とお気楽な来夏たちの中にこういう教頭がいることで話がしまって良い。いい役である。
 そんな教頭ですが、OPを見る限り和奏の母親とどうも縁がありそうな感じですな。心の旋律も和奏の母親が関係しているのだろうし、教師連中も和奏を気にしているし物語的にも和奏の母親が重要なポイントなのであろう。そういうところから、和奏が死別した母親と音楽にどう向き合っていくかが見所の一つだと思うがはてさて。

 というわけで次回も楽しみである。っていうか、予告見ると水着回なのか?こりゃ紗羽のナイスバディに注目だな(笑)。


第3話 振ったり 出会ったり

予想に反して紗羽と仲良くなる。うん、まぁそらそうか。

 そんな今回のお話は…
 合同発表会終了後、当初の目的を果たしたということで来夏の弟の誠を含め部員たちが辞めてしまい、また3人に戻ってしまった合唱部。
 ある日、教頭に呼び出された来夏と、1人で活動していたバドミントン部の田中大智は、部員数が5人未満という理由で廃部を言い渡される。
 だが諦め切れない来夏は、部員確保と新たな目標に向けて動き出す。一方、紗羽の実家である源奉寺の離れでは、夏に向けた商店街のイベント企画会議が行われていた。
 以上公式のあらすじ。

 お話としては、上記あらすじにあるように、校長代理となった鉄の女教頭が、部員数5人未満の合唱部とバドミントン部をあっさり廃部。困った来夏はバドミントン部の田中とバドミントンで対決し、勝ったら合唱部に入る負けたらバドミントン部に入るという対戦を申し込む。ちょうど田中に誘われていたウィーンも加わって対決するも敗れてしまった田中。しかし来夏の部活申請書には「合唱ときどきバドミントン部」と書かれていた。かくしてメインキャストの5人は一緒の部活で活動することとなるのだが……って感じ。
 こう書くと、五人が揃ったということがメインのようだが、一番の盛り上がり所は教頭との対決であったように思う。教頭が相変わらずいい悪役してくれて来夏たちに感情移入させてくれる。
 お話としてはそれ以外にも、謎のラテン系の人との出会いであったり、夏の商店街のイベントであったりで、色々見せなければならない中で、一つのお話として見事にまとめてあって感心。ラテン系の人々なんかは、おそらくこれから合唱部としての活動に大きな影響を与えそうな予感がして次回以降への引きとしても見事だ。
 今回は一応メインキャストが同じ部に所属することとなったことがメインと言えばメインであるが、むしろ、そこからどうなるのかといった導入部としての意味合いの方が強いだろう。ラテン系の人々と出会って彼女らがどう変わって何が起こるのかが楽しみだ。

 個人的には色々おもしろいシーンが多く、恒例の(?)お風呂シーンはまた弟君かと思ったら、しっかり来夏でサービスシーンだったり(ってゆーか来夏は見事な幼児体型よのぅ)するのはさておいて、バドミントン勝負で勝った時に、和奏と紗羽がお互い名前で呼び合うのに、いつの間に?と和奏に名字で呼ばれ若干納得のいかない来夏が可笑しい(笑)。でもまぁ来夏は当たり前のように和奏を頭数に入れていたりする空気の読めなさなので、しっかりフォローしてくれて人当たりの良い紗羽とまず仲良くなるのは当然と言えば当然。しかし来夏としては、合唱部に真っ先に誘った経緯もあり、「和奏と一番仲が良いのは私」とか思っていたんだろうなぁ(笑)。その辺の空気の読めなさはハートキャッチプリキュア!の最初の頃の来海えりかを彷彿とさせてくれて可愛い。紗羽もそういう所もきっと好きなんだろうなぁ。
 そんな紗羽ですが、教頭のと対決シーンがいーんですよねー。部活申請書を「馬鹿げてる」と捨てられるのを、一回来夏を見て気持ちを汲み取って教頭に言い寄ろうとするんですよね。申請書から来夏に目線がいって、「一言言ってやるぞ!」という表情に変わって前に出ようとする一連の動作に、綺麗に百合色に染まった脳を持つ身としてはキュンとせざるを得ない。
 あまりのことに呆然とする来夏を見て、また、教頭の言う「遊び」ではなく来夏(とついでに田中)が本気だと知っている紗羽が、自分としても多少は思う所もあるだろうけど、むしろ来夏を想って教頭に立ち向かおうとする紗羽、という所がありありと見えてたまらないのだ。
 しかし、なんで彼女がそんなに来夏LOVEなのか、きっかけが知りたい所ではあって、まぁ紗羽の性格もあるんでしょうけど、今ここまで仲が良いからには、なにかイベントがあったのだろうと考えるのが普通。そのうちそんな過去が語られませんかねぇ。

 さて、主役なのに今の所は影の薄い和奏(主役なんですよね?)の方はというと、ラテン系の人に掴まっておりましたが、見事な英語力低さを披露しておった(笑)。まぁそれはともかくとしても、彼女がこの物語でのキーパーソンであることは間違いなく、まぁでも正しくは和奏ではなく和奏の母の方だとは思うのですが、おそらくは天才的な才能を持った人だったのであろうと想像出来はするけど、和奏自身が特別校内で噂されるほどの天才であったようには見えず、娘というだけで教師陣にに特別視されているのかがよく分かりませんな。
 まぁそれも追々分かってくるであろうし、その辺でイベントもあろうことだろうから、この先のお話を楽しみにしていきたい。

 しかしアレだな。前回も言いましたが、特別な何かが起こるわけでもない女子高生たちの日常を描いているだけなのに上手いこと見せるよなぁ。何回か見たけど飽きないし退屈することもなければ文句言いたい所もない。見事としか言いようがないよ。
 次回は紗羽が「もう合唱部辞めるからね!」などと言っており、おそらく空気の読めない来夏がアホなこと言って怒らせちゃうんだろうなぁ。ホント来夏はバカだなぁ。まぁそーゆー所が可愛いんだけど(笑)。
 ん?野郎?いーんだよ、野郎のことなんざ。


第4話 怒ったり 踊ったり

出てくるんだろうなと思ったが。

 そんな今回のお話は…
 同じクラスの田中大智、オーストリアからの帰国子女ウィーンを加えて、新生合唱部として活動することになった来夏たち。
 次の目標は、地元商店街が企画する夏のイベント「ワールドミュージックフェスティバル」への参加。だが突如強力なライバル、コンドルクインズが現れる。
 憧れのバンドの登場に浮かれる来夏。そんな来夏に苛立ちを募らせる紗羽。合唱部は無事自分たちの歌を歌うことが出来るのか…?
 そんな中、音楽を敬遠し続ける和奏とコンドルクインズ間の意外な関係が明らかになり...。
 以上公式のあらすじ。

 2話で来夏が心の旋律を「なんかコンドルクインズに似てるし」と言っていて、たぶん出てくるんだろうなとは思っていましたがやっぱりね。
 ま、それはさておき、お話の方ですが、ラテン系の人々がコンドルクインズと分かって舞い上がっちゃう来夏と音楽から遠ざかろうとする和奏の話、みたいな?
 和奏は主役なんだろうけど、EDから見てもまだ全然近寄ってきませんねぇ。母親まひるの死が原因なんだろうことは確かなんですが、それと音楽をやめてしまうことがちょっと繋がらないんですよね。なんだったら意地でも続ける覚悟が出来ちゃっても良いような気がします。
 しかし今、和奏がやりたくなくて身を引いているのだから、母の存在していたことこそが音楽を続けていた理由だったということなんだろうけど、どうなんでしょう?
 物語的には、彼女がまた音楽を続けることとなるのが山場の一つだろうし、合唱部が5人ということを考えると、むしろそこからスタートなのだから、今回でまひると交流のあったコンドルクインズとの出会いとまひるの手紙が、和奏をどう動かしていくか見物です。

 私としましては、和奏のことも気にはなるのですが、やはり来夏と紗羽がたまらないですな。綺麗に百合色に染まった脳を持つ身としても。
 憧れのコンドルクインズに出会って舞い上がってしまう来夏は、海の家のステージを譲ってしまうは、紗羽の家に泊まってもらおうとか言いだすし、合唱部の練習をキャンセルして彼らを観に行くとか言いだしたりと、悪い方の来夏らしさを出してしまって紗羽を怒らせてしまう。見ていてもうバカだなぁと思わずにはおれんよなぁ。
 紗羽は何かを真っ直ぐ本気でやっている来夏が好きなのだろう。きっと本気で騎手になろうとする自分と重なる部分もあってのことなんだろうが、ミーハー心でそれを忘れてしまった来夏が許せなかったんだろう。合唱部のことは本気じゃないのかと言った事からもそれが見て取れる。しかし最後に「おたんこなす!」を付ける辺りが可愛いよな(笑)。
 いつだって味方の彼女から本気で怒られ、自分が浮ついて本来の目的を見失っていたことに気付いた来夏だが、いつも元気でノーテンキな彼女がズーンと落ちてしまっている様子を見せている点は上手く、なんでもポジティブにまっすぐゴー!みたいないわゆる物語的作り物のキャラではなく、一番の親友に見放され、それまで憧れのコンドルクインズに会えて舞い上がっていた所から、テンションだだ下がりになってしまうのは普通のことだろう。世界の命運を賭けた戦いがあるわけでもない普通の女子高生の日常を描くこの物語で、この普通の行動だからこそ、キャラクターが人間らしく写るし、気持ちも分かって感情移入できるというものだ。

 今回のお話としては、コンドルクインズを見事に活かしていて感心。キーパーソンまひると関係のある人物たちなんだから、大きく派手に関わらせたい所だが、その関わり方がさりげないのが上手いのだ。
 物語的に彼は脇役であって主役は来夏たちだ。話を実際動かすのは彼女らなのである。コンドルクインズの彼らは何かをどうするのではなく、ただ自分達の思っていることを言うだけなのだが、それがきっかけとなって来夏が動くこととなる。変に出しゃばらず、かといって背景のようでもない、絶妙な脇役加減で物語のアクセントとなっている点が素晴らしいではないか。
 話の節々に出てくるけれど、決して主役達の邪魔をしないポジションと関わり方で、ひとつのポイントとなる者たちとして見事に機能させているんだから上手い。

 さて、個人的な所としては、やっぱり紗羽と来夏なのである。
 来夏がAパートで見事ならしさで紗羽をイラッとさせてしまって、夜にイライラして寝れない紗羽が、コンドルクインズ目当てで泊まりにきた来夏の顔の顔の上に馬のぬいぐるみを置くシーンは、紗羽の台詞は無いものの「人の気も知らないで!」という気持ちを見事に表していて良い。
 また浮かれまくっている来夏にキツくお灸を据えた紗羽が、ずっと怒っているのではなく、こんだけ言ってやれば来夏はちゃんと分かってくれるはずと紗羽は信じているし、来夏はちゃんと紗羽の言ったことを受け止めて反省し、自分のすべきことにすぐに切り替えて合唱部が歌うステージを見つけてくるという、ふたりの「お互いのことは分かってる」感がなんとも胸キュンじゃぁないですか。
 それと、紗羽の母「志保」が来夏の尻を叩いて来夏が「もう!親子!」と言うのもいいんですが、最後の方で紗羽がお尻を叩こうとするのをさっと避けて、その手をハイタッチのようにぱちんとあわせるのも細かくいい所である。これでまたふたりの仲がレベルアップしたような、そんな気になりますな。
 最後に、今だ名字で呼ぶ和奏に「来夏でいいよ」と言うのだが、やっぱ前回のこと気にしていて「来夏でいいよ」と言う機会を探していたんだろうねぇきっと(笑)。ちょっと喰い気味に言ってくる辺りからもそういうことが垣間見れるが、それもさることながら、物語が始まる前までは、あまり接点のなかった彼女らが仲良くなっていく過程と描くという点で、ちゃんと丁寧にそういう所を描いているのだから見事なシリーズ構成なのではないだろうか。

 と、いうわけで、今回も文句の付けどころのない見事な話であった。
 毎回言っているような気がしますが、なにかとんでもないことが起こるような話でもないのに上手く見せているよなぁ。


第5話 捨てたり 捨てられなかったり

これは見物だなぁ。

 そんな今回のお話は…
 バドミントンの全国大会出場を賭けた試合に出場する大智を応援するため、会場に集まった合唱部のメンバーたち。
 マラカスを手に持ち即興で応援歌を歌う来夏やウィーンを中心に皆盛り上がっていた。だが和奏は体調が悪いからと先に帰ってしまい、後日開かれた大智を励ますパーティーにもひとり参加しない。
 フェスティバルの後、コンドルクインズから受け取った手紙は、和奏を母との思い出に引き戻す。彼女は、自分に何も話してくれなかった母の想いを今も量りきれないでいた。
 以上公式のあらすじ。

 お話はあらすじにあるように、コンドルクインズから受け取った手紙で母との思い出も思い出す和奏から、過去の出来事と現在の和奏の心情を描いている。
 なんであんなに頑に音楽を避けているのかと思っていたが、当時受験生だったため、母まひるが病気であることを知らなかった和奏にとって、突然の訃報のショックは計り知れないよなぁ。事前に知っていたのならまだ心の準備も出来たであろうが、和奏にとっては後悔だけが残ってしまった形になってしまっている。
 受験のこともあって、天真爛漫な母まひるが疎ましかった当時の和奏は、まひるの想いに気付くことはなかった。劇中「お母さんから(昔のことを)聞いてない?」と聞かれることが多々あり、答えに窮する和奏というシーンがよく見られたが、あらすじには『自分に何も話してくれなかった』とありますが、反抗期的であった和奏が聞こうとしなかった、というのが正しい所なのではないだろうか。
 ともかく、お話としては現在和奏が母の死にどう向き合っているか、を見せているのがポイントで、部屋にあったピアノを処分してしまったりと、思い出すとつらいので逃げてしまっているよなぁ。まぁ現在の和奏にとっては後悔しか残っていないので無理もない話ではあるのだが、本来は死んでしまったことに真っ正面から向き合わないと気持ちの整理ってつかないんですよねぇ。そうだとしても、一番多感な年頃でのことなので、後悔しか残っていない和奏にとっては、もう一緒に歌うことも出来ない母を想うと、今自分一人音楽を続けていくことに意味を見出せないのだろう。
 これほどつらい思いが和奏にあるとなると、彼女をまた音楽の世界に呼び戻すのはかなり難しい。物語的には彼女がまた合唱部で歌を歌っていくこととなるのは分かっていることなのだが、これをこのアニメを見ている者が納得する形にするのはけっこう難儀だろう。
 一応、復帰のヒントは今回まひるの残した言葉の数々の中にはあって、そこいら辺と来夏たちが和奏を包んでいくのだと思うのだが、なんにせよこの物語の山場のひとつであることは間違いなく、どうなるのかが見物だし楽しみだ。

 今回は、というか今回もお話としては良く出来ていて、つらいからなるべくまひるのことを思い出したくない和奏なのだが、まひるが言っていたように「受験が終わっても音楽は続く」し、当たり前に彼女の周りには音楽があって、しかもなんの因果か合唱部の連中とは知り合いになるし、とどめはコンドルクインズの手紙である。現在のちょっとした事とまひるとの思い出がシンクロし、和奏がことあるごとにまひるの事を思い出すとともに、どういう経緯でまひるが亡くなって和奏が音楽を辞めるに至ったかを見事にまとめている。
 また上記したように、あまりにつらいのでまひるの死に向き合えない和奏を良く描いていて、自らピアノを処分したいと言いつつも、ピアノのなくなった部屋を見て息を飲んだりする様は、彼女がまひるという大きな存在を失って、どうしたらいいのか分からなくなってしまってもがいている心情が良く出ている。
 こんな和奏をある意味救う為に、合唱部の連中がこれからどうして、和奏を救い上げていくのかが楽しみだ。

 さて、個人的な所なんですが、紗羽はいい女だよなぁ。気遣いがさりげないのがいいのだ。
 なんていうか、変に重くしないといいますか、田中がベスト8に入ったものの全国大会出場権を逃した後でも、俯いてイメトレする彼に「泣いてる?」とちょっと茶化したように言う辺りの、話かける言葉と態度のチョイスが絶妙で、相手が普通にいられる所を狙って突いてくるのだからいい気遣いだ。来夏と一緒に踊ったりするノリの良さもあるし向上心高いし、おまけに美人でゴイスなバディなんだから言う事無いですよ。
 それと最初からずーっと言ってますが、来夏とのコンビが綺麗に百合色に染まった脳を持つ身としても良く、バドミントン大会後に田中を見に行ってくるという紗羽に来夏が「ついでに緑茶買ってきて」といつものちょいウザさ(笑)を発揮するのだが、それに「あぁん?」と思いっきり「ふざけんな!」という顔をしておきながらちゃんと買ってきた、と思ったら夏にホットのお茶を買ってくるこのノリの良さ。
 大会の打ち上げをやるというのに帰ってしまう和奏に「もしかして私、ウザがられてる?」と言う来夏に「……それはちょっとあるかも」と返すのも上手く、これは来夏が考え無しに他人に対しズカズカと入り込んでくる事をいなしつつ、自分の言葉を素直に受け取っちゃう来夏のリアクションを見て楽しむという紗羽の計算高さ。さらにそこで言えば、紗羽の「それはちょっとあるかも」に対して来夏が文句を言わないのは、自分としても多少そんな気がしているのもさることながら、紗羽が言うならホントにそうなのかもと、他の誰かならいざ知らず紗羽が言うのなら、というのが来夏にあるのと、紗羽としても、おそらく和奏はそうは考えていないと分かっていながら、来夏にはそう言っても怒らないというのが分かってるというこのふたりのコンビネーションがたまらないのだ。
 このふたりには最後までイチャイチャしていてもらいたい(笑)。


第6話 笑ったり 想ったり

和奏よかったなぁ。

 そんな今回のお話は…
 風邪をひいて始業式を休んだ和奏。ずっと元気がなかった彼女のことを気にしていた来夏は、ためらいながらも様子を見に行くことにしたのだが、ちょっとした勘違いからとんだことに……。
 だが来夏がコンドルクインズを好きになった理由や、和奏の亡き母についてなど、お互いのことを話していくうちに以前よりも距離が近くなったと感じた二人だった。
 その数日後、元気になった和奏は、志保(紗羽の母)から母の高校時代の写真と、志保が合唱部だった頃に録音したテープを渡される。
 以上公式のあらすじ。

 お話は和奏が母まひるとの事に向き合って、思い出すのもつらかった事を思い出に変え、また歌い出すまでを描いている。
 特に大きなイベントがあったわけではないが、合唱部の連中であったり、父であったり、また生前の母であったりがしたこと、してきたことに和奏が自分は愛されていると気付き、自然と彼女の中での気持ちが前向きに変わっていく様子を上手く描いている。
 まぁそんなわけなんですけど……感想書きにくいなぁ。前述しましたが、大きなイベントがきっかけというわけではなく、和奏の周りがじんわりと彼女の気持ちを変えていっていくので、「ここが転機!」というポイントがないんですよね。
 言うなれば全てがポイントではあるのですが、要するに物語的ではなく、けっこう現実的といいますか、実際あんなふうにふっと抜けるような感じなので、イベントでドーン!というような盛り上がりではなく、じんわりと気持ちが変わっていき、以前は合唱部の発声練習ですら聞きたくなくて逃げていた和奏が、田中とウィーンに発声に仕方を教える為に声を出し、母まひるの声の入ったカセットテープから流れる「心の旋律」を「自然」に歌い出すという、緩やかな右肩上がりな盛り上がりなのである。それゆえこちらも、和奏がまた歌いはじめた事に「やったー!」という感じではなく、色々な事が積み重なって最終的に歌いはじめた彼女に「良かったなぁ」とほっこりくるのだ。
 こういうアニメ・マンガ的でない、良い意味での割と普通な感じは、特に世界の命運を懸ける戦いがあるわけでもない普通の高校生の日常と青春を描くこの物語に見事にマッチしているのではないだろうか。

 さて、個人的な所としましては、やはり今回は和奏を中心としている事もあって彼女の心の変遷だろう。上記したが特に後半、彼女が声を出し、そして歌い出すのにははっとさせられた。
 これまで頑に音楽に関わろうとしなかった和奏が、田中とウィーンの秘密の練習を見て声を出して大笑いする様子から、あぁ随分と彼女の気持ちが変わったなぁと窺えるし、その後、上手くなりたいと言う田中とウィーンに、母から教わった発声の仕方を教えて自らも声を出す彼女に、これまでの事もあって「あっ音楽に関わった」と思う。
 そして父からまひるが何故和奏に病気の事を知らせなかったかの理由を聞き、音楽に関わる事で母を思い出しつらかった事は、逆に音楽を続ける事で、いつでも母を思い出せる、側に感じられると思い至り、「自然」と歌い出す和奏と、ちょうどやってきた来夏たちが合唱する「心の旋律」のメロディと共に心地が良く、なんとも気持ちが良い。

 物語としましては、和奏の復帰という山場が終わって、お話はこれからどういう方向へ向かっていくのかよく分かりませんな。
 まぁなんにせよ、これから5人で活動していく事となる合唱部がどうなるか、ということ共に、けっこう無謀な夢、騎手になりたいという紗羽がどうなっちゃうかが楽しみだ。


第7話 空回ったり 見失ったり

ああ、紗羽。それは一番ダメなパターン。

 そんな今回のお話は…
 和奏を正式メンバーとして迎えた合唱部は、次の発表の場を白浜坂高校の文化祭「白祭」に決定。
 教頭が顧問を務める声楽部には負けたくないと意気込むメンバーだったが、実際にステージで何をするのかはなかなか決まらずにいた。
 さらに来夏は生徒会の副書記である弟の誠から、メインステージの使用は選考会をパスしなければならず、その責任者が教頭であると聞かされ頭を悩ませる。
 そんな彼女を見て和奏は、白祭の参考にと市民ミュージカルに来夏と紗羽を誘うことに。大喜びの来夏だったが、紗羽はどこか元気がなかった……。
 以上公式のあらすじ。

 お話は和奏編が終わり、これから紗羽編ってところがメイン。なんだけど、それ以降に向けても話は着々と進んでいて、そういう観点から言っても良く出来ている。
 メインどころの紗羽は、騎手になることを父に反対されていることは前回語られているが、今回はそのことを大きく取り上げている。
 まぁ父の言うことは父親として至極真っ当ではあるのだが、紗羽もあの性格なのでそんなことは聞く耳を持たない。ああ、思春期だねぇ。
 それはともかく、競馬学校の学校案内(?)を見た紗羽はどうも体重制限を気にしているようで、無理なダイエットを敢行してしまい、流鏑馬の練習中に落馬してしまう所で引っぱった。
 紗羽が何キロだったのかは分からなかったが、背が高く肉付きのいい彼女であるので、正直な所、騎手になるってのはキツいよなぁ。しかし馬ラブな紗羽はあきらめきれない。ほとんど食べず、食べても戻したりして、冒頭にも書きましたが、それは一番やってはいけないパターンである。見ていて「あぁダメだって……」と思わせてくれるのだから上手く作ってある。
 そもそも、それを続けて騎手になったとしても、そんな状態で続くはずがない。夢をあきらめないことは立派ではあるが、自分に出来ることと出来ないことがある。そういうことが分かってくる高校三年生という年頃だ。
 来夏くらいの体格ならまだしも、紗羽ではどうしても無理が出てしまう。そんな彼女がこれから自分の夢に見切りをつけるのか、それともそれでもあきらめないのか、はたまた別の道を見つけるのか。彼女が自分の進む道をどう決めていくか、そしてなんかフォーリンラヴと勘違いしている来夏をはじめ、合唱部の連中が紗羽にどうするかが見物だ。

 物語としては、まず白浜坂高校の文化祭、略して「白祭(しろさい)」に向けての動きがある。
 合唱部としてなにかやろうという話になるのは当然として、問題は声楽部との兼ね合いだ。合唱部を快く思っていない者たちも多くいるようで、合唱部を教頭よろしくお遊び集団だと思っているらしい。まぁあながち間違ってもいなくもないが(笑)、その辺の合唱部と声楽部の軋轢をちゃんと少しずつ見せていって、いざ白祭というイベントでどう持っていってどういう結果を出すのか興味が引かれる。ようにさせているのだから、シリーズ構成は上手いことやってくれている。
 また学校というところでも、理事長が事業計画がどうとか校長に言っており、おそらくは最終的には学校全体を巻き込む大きな流れになるのであろう。終盤でのイベントになるのであろうが、突然降って湧いた話にならないように、この中盤でちゃんとフラグ立てしていて終盤での盛り上がりを期待させてくれる。
 上記2点はこの段階でどうなるのかは全く想像がつかないのだけれど、紗羽のメインの話に差し込んで物語を構成しているのだから、やっぱりシリーズ構成はよくやっているし、脚本としても、メインの紗羽を気にさせつつも、次の展開にも気を止めておくような仕掛けを配して、丁寧に物語を作ってある印象だ。
 紗羽がどうなるかも楽しみだが、この先の展開も楽しみである。

 さて、個人的なところとしましては、やはり女子のここぞという時の結束力であろう(笑)。
 白祭が分からなかったウィーンに、敢えて白いサイのことだとウソを教える来夏に乗っかる紗羽と若菜もさることながら、無理なダイエットで倒れそうになった紗羽に、心配した田中がダイエットなんか必要なほど太っていないと言うのに反応して、来夏と和奏がバカだの無神経だのクズだの言いたい放題である。いやいや、田中は男として至極真っ当なことを言っているし、正直なんで田中がここまで非難されるのか私にも分かりません(笑)。でもきっと女子的にはアウトなんでしょうねぇ。女心と秋の空、一生分かりそうにありません。
 しかし上記したやりとりで改めて思ったんですけど、女子って男ほど友情に厚くないのですけど、共通の敵に対しては男が引くくらいの(黒い)結束力を見せますよね……。うん、田中。女って怖いな(苦笑)。
 上記以外としましては、来夏のウザ可愛さが印象に残った。
 Aパート始まってすぐ、和奏が正式部員になったことで挨拶を半ば無理矢理させておきながら途中で止めてしまうし、待ち合わせの件で紗羽が恋をしていると勘違いしている来夏が「和奏には経験ないから分からないと思うけど〜」などと、「どうしてそう思った!?」というようなことを平気で言いやがる(笑)。どちらかと言えば、子供っぽいお前の方がよっぽど経験なさそうだっつーの(笑)。
 とまぁ、来夏はそういうノリのいいところが愛されているのだとは思うのだが、長所は短所とよく言ったモノで、彼女のそういうところを嫌っている人間も多そうではある。声楽部の人達は合唱部を作った人間でもあるし、チビでウザくて本気で音楽に取り組んでいる自分達に対して遊びでやっていると思われていそうだ。
 そういう人としての部分で来夏はけっこう人間臭いのだが、いつもどこかハイテンションであったり、トラブルメーカーであったりという、マンガ・アニメ的でもあって、キャラクターとして良く出来ていると思う。
 最後に高校三年生ということもあって、卒業後の進路ということも見せているんですけど、田中はちゃんと色々と見据えているのでいいとして、和奏は芸大音大を気にはしているようではあるけれど、けっこうスルー状態でもあるな。そっち方面に進む気はないということなんだろうか。紗羽のことはそういう和奏のことが転機になるような気がしますな。
 そして来夏は上記したように、音楽に本気で取り組んでいる、というふうでは全く無いよな(笑)。本屋でのシーンなんかを見ると、上記したようなことを声楽部の連中が思っていたとしても仕方ない。ちゃらんぽらんな来夏が最終的にどうするかもちょっと気になるところではある。
 最後にウィーンだが、特撮ヒーロものが好きだとか、向こうに病気(?)の友人がいるくらいのことしか分かっていないんですよね。なにか特技があるわけでもないし、卒業後に目指している道があるわけでもなしで、彼がこの物語でどんな役割を持っていて、どこで発揮するのか、それともしないのか(笑)。
 なんにせよ、上記したようにメインどころの紗羽に白祭に事業計画以外にも、これからどうなるのかなと思うようなところがたくさんあって、物語を飽きさせない作りはやっぱり見事だ。
 とりあえず次週に紗羽が自分の夢にどう結論出すかを見守りたい。


第8話 気にしたり 思いっきり駆け出したり

見事にひとつにまとめてる。上手いなぁ。

 そんな今回のお話は…
 父親に反対されながらも競馬学校への進学を諦めきれずにいる紗羽。だが、一番の問題は応募資格にある様々な条件だった。
 一人で悩み苦しんでいる彼女を心配する来夏と和奏は、紗羽が恋に落ちたのだと勘違いしてしまう。
 一方、今まで使っていた部室が白祭のメインステージ選考会のため声楽部に解放され、練習をできずにいた来夏たち。
 それを知った紗羽は、鬱憤を晴らすかのよう声を荒げるのだが……。
 以上公式のあらすじ。

 お話は次回予告を見ると、どうも今回で紗羽編完結のようだ。紗羽の悩みをメイン所に据え、他のことを上手く関連づけて見事にひとつにまとめている。
 無茶なダイエットがたたって落馬した紗羽は流鏑馬の出場も出来なくなってしまい随分と落ち込んでしまう。そこへ勃発する声楽部と対立。
 紗羽の不安定な精神と部員5人の弱小部活の穏やかならぬ雰囲気で不安を煽りつつ、そこから浮上するためのフラグの数々で盛り上がっていく様子が見ていて心地良いではないか。
 上記したようにメイン所は紗羽のことなので、それを中心にお話は回っていくのだが、紗羽一辺倒にならない所がいい。世界は彼女中心に回ってはいないので、お話の中心ではあるものの、彼女の周りを取り巻く様々なものがあり、そういった全ての出来事が折り重なって世界は動いていて、その中での「紗羽のお話」となっているのだ。
 今回のお話を簡単に言ってしまえば、落ち込んでいた紗羽が合唱部や家族に支えられて浮上した。というだけなのだが、自身ではどうにも解決できないからこそ落ち込んでしまっている紗羽なので、そんな彼女を浮上させるために周りがどう動けばいいのかが緻密に考えられている印象です。
 というのも、今回のお話。紗羽はなんにもしていないのですよ。騎手の学校に自分の体格だとどうしても入れなくて落ち込んでしまっているだけで、動いているのは全て彼女の周りの人間なのだ。紗羽が知った動きもあるし知らない動きもあり、そういった周りの動きが積み重なって、ある意味茫然自失となった紗羽の背中を少しずつ、少しずつ押していく様子を上手く描いている。
 このアニメの公式HPのあらすじに、「大人と呼ぶには幼く、でも自分達はもう大人と思っている高校生」と見出しがあるのですが、まぁ私の歳からしますと高校生なんざ箱庭で育ってる子供にしか見えないわけで(ってゆーか実際そうだし)、でも本人たちはなんでも出来ると思っていて、そういう危なっかさとか若さ故に周囲が見えなかったりだとかの、自らも経験のある高校生らしさがよく出ている。本人は自分の力で走っているつもりでも、知らず知らずに周りの力を借りて走っているわけですよ。でも今はそれでいいのだ。後ろを振り返る機会はこの先いくらでもある。だから今は前に向って走れ、と応援したい気分にかられますな。

 なんだかとりとめのない感想になってきましたので(笑)、個人的におもしろかった点としましては、まずは来夏だろうか。
 前回から引き続き、紗羽の悩みを恋の悩みだと勘違いしていた彼女が実に滑稽ではあるのだが、らしい勘違いはともかく、いつもと違う紗羽を一番気にして見ているのだ。そして勘違いしてはいるものの、彼女の力になりたいと強く思っているのがありありと分かるのがいい。
 そしてまたらしいのだが、そんな来夏が特に効果的な何かをしたわけではない、というのもいいではないか(笑)。結局は空回りしているだけなんだけど、でも来夏はこんなにも気にしてくれていると、じわじわと紗羽の中でもきたのではないだろうか。あんま役に立たないけど(笑)自分の為に本気でなにかしてくれる、そういう来夏らしさが見ていて楽しいし気持ちが良い。
 次に紗羽。あれだけ反対していた親父が電話で騎手養成学校(?)に直談判している様を見て、心動かされるものがあったであろうが、母に「後でお父さんに謝りなさいよ」と言われると「無理。」と言うんですよねー。母が言っていたように、父が気持ちを伝えるのが下手すぎるのと同様に、娘である彼女もそうなのだ。そんな父の頑固な部分であったり、母の男勝りで気さくな部分であったりを見ると、ああ、なるほど親子であると思わせてくれる。
 アニメやマンガでの親子って、キーである部分だけを見せて「親子である」とする場合が多いのだけど(というか、なんで親子なのってのも多々あるよな)、こう自然に色々なことの節々からそう思わせるってのは、なかなか希有なのではないでしょうか。そんなところに感心してしまった。
 感心と言えば、一番のクライマックス。サブレ(飼い馬)で疾走する紗羽ですが、馬って車両扱いだから公道走るの免許いるんじゃなかったっけ?とか思って調べてみたら、車両は車両でも軽車両扱いなのでした。まぁつまり自転車と同じ扱いということですな。律気に学校の駐輪場においておくところがイカす(笑)。
 ま、それよりも、おそらくは馬で学校へ向う紗羽ってのがポイントなわけで、あの場面で自転車でなく、どうサブレに乗せるかを上手く前フッてあるなぁと感心したのだ。電車でウィーンの家に行くが前フリだとはさすがに気付かない。たぶん、合唱部の危機に馬で駆けつける紗羽、というところから逆に考えて話作ったんだろうなぁ。
 それから声楽部の部長にくっついているおそらく後輩の娘、ムカつきますよね(笑)。でも彼女はそーゆー役所なので、むしろここでムカッとさせられなければダメ。そういう観点からして良いキャラクターである。たぶんコイツ裏ですげー嫌われているんだろうなぁ特に女子に(笑)。
 最後にウィーンなんですけど、たぶんそうなんじゃないのかなーと思ったが、やっぱり結構なお坊ちゃんっぽい。彼のことはどうも次回からが詳しそうなので、さしてこれまで何かしらあるわけではなかった彼で、どんな話を見せてくれるかが楽しみだ。

 どーでもいーけど、第1話でウィーンはちゃんと自己紹介したはずなんですけど……本名が全く思い出せません。公式のキャラ紹介も「ウィーン」となっていて本名書いてねぇし(笑)。


第9話 白くなったり 赤くなったり

なんか田中がちょと不憫だな。

 そんな今回のお話は…
 白祭で音楽劇を行うことになった合唱部。台本は来夏、振り付けは紗羽、大道具と小道具は大智とウィーン、そして作曲は和奏が担当することになった。
 しかし本格的な音楽劇をやるとなると、学校から支給される援助費だけでまかなうことはできず、足りない分をどうにかしなくてはならないことに……。
 一方、紗羽の実家の離れでは商工会の面々が集まり、商店街活性化について話し合っていた。なかなか話がまとまらない中、志保は商店街をアピールする「ご当地ヒーロー」の企画を提案する。
 以上公式のあらすじ。

 お話的には色々ある中で、今回からウィーン編のようだ。とは言え、次回辺りで彼のことに決着がつくとも思えず、そういったことも含め、彼が中心となる話なんだろう。
 まぁそういう観点から言っての冒頭のことですが、田中のことって、確か3話の大会のことくらいしか話がなかったわけで、合唱部の他の連中がそれなりに尺使っていることを考えると、まぁなんか不憫な気がしますなぁ。
 まぁそれはともかく、お話としましては、あらすじにありますように、まず白祭で来夏がなんも考えずに(笑)音楽劇やるとか言いだしたところから始まり、やるにしても諸々の金がないというところから、ご当地ヒーローの話が出てきて、そこからウィーンに繋がるという流れ。
 ウィーンのウィーンにいる友達ヤンが引っ越ししてしまっていたため、出していた手紙が届かず戻ってきたことで落ち込んでいた彼だが……というのが大体の流れなのだが、そこはちょっと自己解決してしまった感があり寂しい。のだが、ヒーローものが好きな彼が、商店街のご当地ヒーローとは言えヒーローをやることになって、ヒーローの台詞から「希望は捨てない」と持っていくのは、彼が純粋にヒーローを愛しているピュアな青年という感じがして悪くない。また田中の女性陣には不評だった気遣いは、ちゃんと男子であるウィーンには上手く効いている点なども上手く作られているように思います。
 そういう観点から言って、今回は結構女子と男子の温度差みたいなのが見られ、ヒーローに熱くこだわるウィーンに対し、女子たちは商店街のお賑やかしになって人が集まればいいんでしょ?くらいにとらえていたりするのが、女子と男子の差として見ていておもしろい。男はいつまでたっても子供が抜けないからねー。対して女の子はすぐ大人になっちゃう。
 その辺考えると、ウィーンのヤンもきっとがんばっているだろうからボクも信じてがんばると言うのに、田中がそんな彼に対して熱く乗って来るのは実に男子っぽく、男たるもの友の熱い想いに応えて当然。なので男として田中がの気持ちがよく分かる。それを見ていた女子たちはと言うと、なんと言いますか形容し辛いのだが、子供を見る母親のような感じでふたりを見るのよねー。ウィーンのこともあるし彼らがそんなに本気なら乗っかろうという感じ? そういうノリとかの男女の違いが上手いことよく出ていて見ていて興味深い。
 お話としては、白祭の音楽劇があってのご当地ヒーローのバイトなので、このヒーロー活動がおそらくクライマックスであろう音楽劇の方に繋がっていくわけだから、ヒーロー活動はメインではない。だが、ウィーンのこともあるし、音楽劇へのステップアップになるのであろうから、このご当地ヒーロー活動をどう持っていくか楽しみだ。

 さて、個人的なところとしましては、まず今回全く語られていないのだけど、前回メインステージ云々の話はどうなったか、ということなのだが、上記しましたように、来夏が音楽劇やるとか言い出すのだから、見事使用権を勝ち取ったということに他ならない。
 今回それをおそらくはワザと説明しないのが良いな。来夏が何故か自信満々に本格的な音楽劇を白祭でやるんだと言い出した時点で、「あぁ、上手くいったのだな」と自然に分かってしまうようになっている。劇中的にはそのことはもう終わったことなので、わざわざキャラクターが状況を説明しなくてもいいようにしてあるのが上手い。
 しかしその音楽劇だが、大道具や小道具、衣装に曲などたった5人でなんとかなるものとはちょっと思えないよなぁ。それで気になっているのが学校の今後の経営方針(?)を聞いた教頭だ。
 随分とショックを受けていたようで、来夏たちがバイトの許可申請にきても上の空だったことを考えると、予想としては音楽科を無くす、という話なのではなかろうかね。学校から音楽科が無くなると言うところから、今のところ仲の悪い声楽部となんやかんやあって一緒にやることになるとかにならないと、とても音楽劇なんて出来そうもないが、はてさてそんな素人考えのように話が進むものかどうか。
 他はと言うと、ヒーローでだれがどの色かという件で、なにげなしに赤がいいとする紗羽とレッドになりたいウィーン。
 まぁね、男なら当然レッドがリーダーであり一番重要なポジションだと知っていて当然。なのだが、女の子の紗羽がそんなことを知っているはずもなく、なにげに赤を選んだらレッドになる覚悟を問われてしまい、そんなウィーンに若干引くのと同時に慌てて譲るのがおかしい。この辺も男女の温度差であったり、男子の変なこだわりを理解していない女子がよく出ていて見ていておもしろい。

 このアニメはタイトル通り、なにか色々と「TARI TARI」する高校生を上手く描いているなぁと思います。
 毎回言っているような気がしますが、特に現実的にあり得ないような「な、なんだってーっ!?」ということが起こらない、普通の日常を描いているだけなのに、突飛なことが起こる物語以上に見れるのだからやっぱ良く出来てるわ。


第10話 萌えたり 燃えたり

「燃え」は分かるが、どこに「萌え」が?

 そんな今回のお話は…  音楽劇の費用捻出のため、「西之端ヒーローショウテンジャー」のアルバイトをすることになった合唱部。
 一人ノリ気のウィーンをのぞき、初めは照れていた面々だったが、回数をこなすうちにまんざらでもない様子に。また悪役を担当した商工会メンバーも、大人気で終わったことを喜んでいた。
 志保からアルバイトの期間延長をお願いされ、ショウテンジャーを続けることにした来夏たちだったが、翌日、教頭から呼び出しがかかる。
 以上公式のあらすじ。

 お話的にはウィーン編が上手いこと終わったという感じではあるが、ウィーンは話の中心ではない感じではある。じゃあどんな話だったかと言うと、簡単に言えばウィーン編の後編なんだから上手いこと話を作ってあると言える。
 全体的な話の流れの中にウィーン編が混じっている、というのがおそらく正しい認識なんですが、こう書くとすごく中途半端な感がありますけど、上手くバランスがとってあってひとつのお話としては散漫な印象はなく、物語全体の流れの中の一部分として良く見せている。
 「西之端ヒーローショウテンジャー」ショー(?)をやり始めるところから始まり、白祭の準備もあってヒーローを続ける続けないの話になり、鉄の女教頭の横槍などもありつつ、曲作りに悩む和奏から、教頭とまひるの関係性をピックアップして、最後はウィーンの熱きヒーロー魂を見せてウィーン編を上手く締めくくっている。
 ウィーンの話だけをクローズアップしても今回ひとつのお話を作れるだろうが、ただそれだけで彼らの生活は当然回っておらず、物語と同様に合唱部の連中、つまりは高校三年生を取り巻く色々な事柄の中でのウィーンの事なのであって、ウィーン以外の流れを見せている点は群像劇としても物語としてもよく考えられているのではないだろうか。

 さて、個人的なところとしましては、まずはなんと言ってもウィーンの熱きヒーロー魂だろう。
 来夏の鞄が置き引きされてしまったのを、あきらめる事無く追いかけるウィーン。ヒーローの台詞を口にして殴られ蹴られても決して折れない彼は、その純真な心だからこそ、ヒーローの言葉を支えとしてその通りにあろうとする。
 彼としては便りを出す手段もなくなってしまったヤンの事もあって、彼もきっとがんばっているであろうから、今自分がここでがんばらないわけにはいかないということもあったでしょうが、ウィーンがそう思うのもヒーローが根底にあるからなわけで、ここで彼は本物の変身ヒーローでないからといって悪に屈するわけにはいかないのだ。
 実際のところ、殴られて怪我をしているし、たかが自転車の置き引き泥棒とはいえ、ナイフなどの凶器を持っていたかもしれず、彼の行動としては一概に褒められた事ではないかもしれないが、ウィーンが正義を説くヒーローの言葉を胸にその通りに行動する様は、あるいは愚直なのかもしれないがその心に間違いはなく、毎週欠かさず愛と勇気と希望を説くプリキュアを視聴し続けている身としましては、彼の想いに感じずにいられないものがありました。
 またそこから来る5人の友情が熱い(誤変換に非ず)のが良いではないか。殴られ蹴られてもヒーローソングを大声で歌い立ち上がるウィーンに呼応するように颯爽登場し集結する仲間達。ウィーンがヒーローたろうとするからには自分達もと彼の志を受け取ってヒーローする彼らの熱き友情が見ていて気持ちいい。ショーの最初は見事にバラバラだったかけ声も、ここへ来て見事に揃っている点も、5人の想いを象徴しているようで良い。それもさることながら、「歌う」ことによって「合唱部」の面々なのである。ということを強く印象付けて、「歌」が中心にある物語に沿った話にしてしまっている点でも感心したし、ウィーン編の最後をを盛り上げているのだからやはり良く出来ている。
 
 その他としては教頭だ。鉄の女と冠を付けて呼称しておりましたが、むしろ鉄仮面をかぶっている、という感じですな。
 あまり何を考えているかはよく見えませんが、とりあえず和奏の母まひるに対しては、彼女の天才っぷりにコンプレックスを持っているのは十分にわかりますが、その反面、憧れと尊敬も抱いていたのでしょう。かつてまひるがひとりで作り上げたと評した合唱部が今は声楽部になっているのは、まひるに負けず劣らずのものを自分も作ってみせる、ということの表れなのかもしれませんな。まぁ、声楽部にしたのが教頭なのかは分かりませんけども、病床のまひるが合唱部と言うのを、わざわざ声楽部と訂正するのを見ると、そんな気がしてきます。
 しかし、教頭の音楽の根底はまひるの影響が大きくあって、作曲に苦しむ和奏がアドバイスを求めた際に、まひるの言葉を引用するのを見ても、教頭がまひるにコンプレックス以上にその人柄と才能を愛し、また彼女の死を和奏と同じようにショックを受け悲しんだのであろう事が窺える。
 今回Cパートで学校での測量が始まったのを見ると、やはり音楽科を無くすのではないかと思われるが、音楽を愛したまひるの言葉を今も思っている教頭が、まひるとの思い出の場所でもある学校をどうするのか見物です。
 それから気になったのは和奏。曲作りにかなり悩んでいる様子で、来夏にちゃちゃっと出来るものじゃないんでしょ?と言われ、ついカチンときて八つ当たりしてしまうらしくない行動が見られましたが、教頭の口を借りたまひるの言葉でなにかを掴んだ様です。おそらく冒頭で書いた「萌え」はこれなのではないでしょうか。いわゆる二次元的な「もえ〜」(今となっては結構な死語だよねー)ではなく、和奏の中で何かが芽吹く、そういう事をいいたいのだろう。
 そういう事もさることながら、あまり音楽の事に関してまひるから話を聞く事が出来なかった和奏であるが、紗羽の母志保や教頭から和奏が教わりたかった事、聞きたかった事が語られるのは、和奏の中でまひるが生きているのと同様に、まひると関わった人達の中にも生きていて、それぞれの胸の中のまひるが更新される事はないのだけれど、死しても確かに息づく想いがあると思わせてくれる。某有名なマンガの青い鼻のトナカイのお話で、人が本当に死ぬのは誰も思い出さなくなった時だ、みたいな台詞があったような気がしますけど、確かにそんな感じだなーと思いましたよ。
 ちょっと話がそれましたが話を戻し、和奏が来夏に八つ当たりしてしまった後日、あの時は悪かったと謝る彼女に対し、「なんの事?」と来夏が全く気にしていなかったというのも興味深い。
 来夏はあんな性格だからというのもありますが、自分が気に触るような事を言ってしまったようだし、なにより本当のことを言われたのだと全く後に引いていない来夏の様子に、ああ和奏は本当に友達になったんだなと思わせるし、来夏が紗羽や和奏に愛されているのも彼女のこういう面なんだろうなぁと感じられるいい個性でありました。

 さて、次回からは白祭に向けたお話のようで、来夏たちの音楽劇がどうなるかはもちろん、学校の件がどう絡んで物語がどういう方向へ向かっていくか楽しみだ。


第11話 満ちたり 欠けたり

「花咲くいろは」の水野さんですよね?

 そんな今回のお話は…
 約1ヶ月後に迫った白祭。合唱部の5人は音楽準備室で音楽劇の練習をしつつも、それぞれの準備に追われていた。
 小道具担当のウィーンは精巧な小道具のミニチュアを作り、その手の器用さを披露。また作曲を任された和奏と振り付け担当の紗羽は、制作途中の和奏の歌を聴きながらお互いに盛り上がっていた。
 そんな中、大道具を任された大智は舞台セットのイメージを描いたのだが、あまりにも個性的なため皆から厳しい意見を言われてしまう。
 以上公式のあらすじ。

 あらすじを見ると白祭準備のお話がメインのようですが、お話的には以前からフッてあった事業計画は、私の予想の音楽科を無くす、ではなく、学校自体が無くなるというもので、その影響で白祭も中止に追い込まれてしまった事がメインである。
 楽し気な学校祭の準備の様子を見せておいてからの急転直下で、それまで準備でにぎわっていた放課後が、人もまばらな様子になってしまい、来夏たちも音楽劇をやる意味が無くなりそれぞれ過ごす中、ひとり曲を作り続けていた和奏が曲を完成させ、みんなで歌いたいから白祭をやろう!と明るい兆しを見せたところで引っぱった。
 
 前回だかに、5人で音楽劇をやるのには人員が足りないだろ、という話をしたが、なるほどこれで道筋がつきましたな。それでも白祭を敢行しようとする来夏たちに呼応するような形で人々が集まり、大きな流れを作っていくのであろう事は容易に想像できる。
 そんな先の読める展開ではあるのだが、音楽科どころか学校自体が無くなるというショッキングな出来事で一旦ガクーンと盛り下げたところなので、これから上がって来るであろう期待に胸が膨らむではないか。
 来夏たちが白祭を敢行する事で、学校を存続させる方向へ持っていくには至らないであろうが、一矢報いると言うわけではないが、どうにもならない状況でも自分達がやろうとしていることを、こんな形で諦めたくはないと立ち上がる、その歳だからこそのパワーが見ていて気持ちがよい。

 さて、個人的なところとしましては、冒頭にも書きましたが、美術部部長さんは「花咲くいろは」の水野さんですよね?どっかで見た事あるなーと思っていたのですが、ED見てあぁそうかと手を打ちましたよ。熱心にP.A作品を見ている者としてはニヤリとさせられますな。水野さんがよく分からない人は「花咲くいろは」の19・20話を見てみると良いでしょう。
 その他はというと、紗羽はバク転出来るんですねー。すごい!
 音楽劇で振り付け担当ということですが、田中のバドミントン大会で来夏と一緒に踊っていたりもしたし、彼女は弓道だったり騎手だったりよりも、身体を動かすことの方が向いている様な気がしますなぁ。それに伴っての事ですが、やはり紗羽は男子に人気があるようで、田中が大道具作成の条件に紗羽の写真を要求されておりました。まぁ人当たりもいいし何よりゴイスなバディですからさもありなん。

 と、そんなわけで、今回もおもしろかったんですが、なんかあんまり書く事ないな。まぁクライマックスへの序章なのでそういうモノかもしれないが、次回以降にどうなっていくかの方に興味がそそられる。
 来夏たちのこともさることながら、まひるとの思い出の詰った学校が無くなることに鉄の女教頭が、このまま何もせずにいるとは到底思えないところでもある。
 物語として学校存続となると都合良過ぎな感があるので、そこまではいかないであろうが、どういう方向へ行ってどう着地させてこの物語を締めるのか楽しみだ。


第12話 重ねたり 響いたり

展開的には大逆転展開ではあるのだが。

 そんな今回のお話は…
 突然学校から生徒募集の中止を知らされる和奏たち。それに伴い白祭も中止になってしまう。
 唖然とする生徒たちだったが、諦めきれない和奏は「母が作った歌を合唱部の皆で歌いたい、合唱部だけでも文化祭をやろう」と来夏たちを誘い、彼女たちもそれに賛同することに。
 だが無常にも工事は進み、ウィーンが作った小道具も処分されてしまう……。
 それでも挫けず前に進もうとする彼女たちの情熱は、徐々に他の生徒にも伝わっていた。
 以上公式のあらすじ。

 お話はあらすじにあるように、諦めない来夏たちが他の生徒達を少しずつ動かして協力を取り付けるが……という話。
 流れ的にはその来夏たちの動きが大きなうねりとなって体制を変えていく、みたいな感じなのだけど、この物語はそんな青春的な話でもなく、ままならん事はままならんままで、単純にひっくり返して「イエー!」ってなわけにはいかなさそうな雰囲気もちゃんと出している。
 まぁ正直なところ、ひっくり返してしてやったり!では単純過ぎるし、あまりにも都合が良過ぎるような気がします。そもそもそうなのだったら、5話の商店街のイベントで合唱部の歌をみんな聴きにきて繁盛しちゃうなんて展開になるだろうし。
 そういう事やこのアニメがP.Aお得意の群像劇だということを考えると、やはり高校生ではままならん事はやっぱりひっくり返せない、ってのが正しい流れだろう。し、そういう中で普通に生きる高校生たちが、自分たちにできる事を精一杯するってところを見せるのがこの物語の趣旨だろう。
 お話としては、上記したようにままならん中でも精一杯自分たちができる事をしていく来夏たちを見せ、どうせなら、彼女たちが納得いくような形になってくれるといいなぁと思わせてくれるのだが、どうも上手いこといきそうにないふうにも見せており、どうなるのかという気にさせてくれる。
 むしろ一番の難題であったであろう衣装を手芸部(?ほんとは何部なのかしら)の協力を得たりなど、上手いことひっくり返せそうな感じの方が強く、ここで「上手く回るかもしれないなぁ」と思わせているのが上手い。
 メインキャストである来夏たちが彼女らなりに本気でやろうとしていたのに、大人の勝手な都合でできなくなってしまったわけだから、どうしたって彼女らに感情移入してしまうわけで、むしろひっくり返しちゃってくれた方が見ていて気持ちがいい。しかし、これまでを見てみると、2話ではせっかくみんなを巻き込んで作った合唱部の晴れ舞台は紗羽と来夏のふたりで歌う事になってしまったし、4話では海の家のステージで歌う事はできなかった。5話では田中は後一歩で県大会出場権を逃してしまうし、紗羽は騎手を諦めざるを得なかったし、ウィーンは友達との連絡手段を失ってしまう。このように彼らにとって一番いい結果が出た、ということはなかったのである。と、いうことは、おそらく今回の件も一番いい形には至らないのであろう。だからこそ、今ここで来夏たちにやりたいようにさせてやりたいと思わせておくことがポイントなのだ。
 これまでのように、一番いいようにはいかない中でも自分たちが納得できる答えを見つけてきた。きっと今回上手いこといった事もフイになってしまって「上手くいけば良い」というこっちの気持ちを落としてくれるのだろうが、そこから彼らがどのようにしてそれでも良かったと思わせてくれるのかが見物だ。

 個人的な事としては、まずは田中が興味深いポジションをしている点だろうか。
 事この音楽劇に関しては、不器用であんまり役に立っていない彼なのだが、その不器用さ故に意図せずに他からの協力を取り付けていて、役に立たなさっぷりを見せつけているだけに、彼の本当の役割が見えてきておもしろい。
 むしろ田中がなにか出来てしまってはダメで、合唱部としてやろうとしている事は、前にも書いたが彼らだけでは到底できない事なので、他からの協力が絶対必要なのである。そのための「田中」というポジションが実に上手く作ってあるなぁと感心しました。
 その他としてはやはり教頭だろう。以前考えていたように、声楽部はまひるが作った合唱部よりも良いものを、という気持ちがあった事が語られるのだが、やはりそれは対抗意識ではなく、まひるのことを愛していたからこそなのだろう。
 まひるの墓の前で和奏に「まひるにも自分と同じように、一緒に音楽を楽しめる仲間がいたはず」などと言われ、あの鉄の女教頭が涙をこらえきれない様子を見ても、彼女のまひるに対する想いが表れている。そんな彼女ですから、きっと最後になにか動くんだろうと私は見ているのですが、どうなんですかねー。
 あと声楽部の部長さん。おもしろいですよねー(笑)。来夏が嫌いと言っていたし、実際そうなんだろうけど、言う事言う事来夏に正論吐かれてひっくり返されちゃってるのよね。またそれが自分でももっともだと思っているところもあって口をつぐんでしまう。来夏が嫌いな分、随分と悔しい思いをしているのがありありと分かる。今まで結構酷いこと言っていただけに、こっちとしてはちょっと気持ちがいいですな(笑)。ま、そういう事を考えるといい役ではありますな。

 そんなわけで次回で最終回。ままならん状況の中で、来夏たちがどういう答えを出して物語を締めるのか楽しみです。
 どーでもいーけど、なんか今回の感想はとりとめのない内容だなぁ(苦笑)。いつもとかゆーな。


最終話 晴れたり泣いたり あとは時々歌ったり

歌は良いねぇ。リリンが生み出し(以下略)。

 そんな今回のお話は…
 白祭当日。合唱部のメンバーはそれぞれの想いを胸に、舞台となる学校へと向かう。
 しかし文化祭を開催することを快く思わない理事長により、校門や駐輪場は太い鎖が巻かれ、駐車場には警備員が配置。体育館のドアにもすべて鍵が掛けられていた。  何とか校門を乗り越えようとする大智の前に理事長が現れ、勝手なことをすれば内申書にひびくと脅されてしまう。
 どうすることもできないのかと暗くなる彼女達。その時「やりなさい、文化祭。私が許可しよう」と声が響く――。
 以上公式のあらすじ。

 前回から引き続きの白祭関係はAパートで終わり、Bパートでエピローグ的な云々の最終回。
 案の定、理事長の横槍が入るもなんとかかんとか開催にこぎ着けるのはまぁ当然と言えば当然。しかし、合唱部がこうなればいいという100%の希望は叶わない。でもこれがいいのだ。
 なんやかんやで立ちはだかるものをやり込めてしまってやりたい事全部やって万々歳!ってな事なんざ起こるはずがないわけで、ましてやこの物語は物語だとは言え、世界の命運を賭けた某があるわけでもなく普通の高校生たちを描く群像劇なのだから、100%念願かなった!なーんて都合が良すぎるというものです。なので、上手くいってもこれくらい、という中途半端さに落ち着けているのが逆にこの物語とマッチしていると言えよう。
 来夏たちが「こうしたい」と思っていた事はできなかったわけだが、本来なにもさせてもらえないはずのところで一部だけでもできた、ということが彼らにとって大事で、それは一矢報いるというのではなく、完全ではないけれど自分たちがやってきたことが実を結んだ事に、彼らは大きな喜びを見出したのだ。
 学校が無くなるという事態が起こらず、普通に白祭が開催されていたとしても、やりたいと思っていた事は完全にはできなかったであろう。そういう観点ではどちらも一緒ではあるが、そういう事態になったことで逆に得たこともあって、むしろ彼らの思い出として、普通に開催され卒業していく事よりも、何倍もの思い出と得るものが彼らの中であったろう、と思わせてくれるではないか。
 確かに不完全で中途半端ではあった、がしかし、諦めないで進み続けてきた彼らにとって、それでも納得のいくものであったというのが実に見ていて清々しい。

 そんな清々しく終わった白祭は、Bパートに入って「そんなこともありました」かと言うように時は流れ、秋は過ぎ冬を迎える。
 騎手になる夢を捨てられない紗羽は、アメリカにまだ希望が残っているとして留学を決意し、来夏たちは卒業後に向けそれぞれの道を進んでいくこととなる。
 物語的にクライマックスであった白祭ではあるが、Bパートに入ってあっさりとそれを流してしまったように、あの白祭は彼らの大切な青春の思い出の1ページに過ぎないのだ。
 確かに(彼らの中では)大きな出来事ではあったが、まだ18歳の彼らの物語では序盤のちょっとした山場なのである。Aパートでの高揚感を、Bパートでバッサリと切ってしまったのはきっとそういうわけなのであろう。だがこれで良いのだ。
 この物語は、来夏たちの人生のほんのひと時を切り取った物語なのであって、これ以降も彼らはそれぞれ物語を紡いでいく。もしかしたら合唱部の連中が全員集まる事はもうないのかもしれない。でも決して彼らが合唱部として活動してきた事は忘れる事はないだろうし、彼らと過ごした時間があったからこそ彼らの今があり、そしてこれからをそれぞれ進んでいくのであろう。
 合唱部の5人が紡いできたこの物語は、最後は5人バラバラになってしまったというのに、上記した思いがあるので全く寂しさを感じさせない。むしろ彼らがこれから進む未来が希望で溢れているかのような明るさを感じさせてくれる。夢や希望、勇気や諦めない気持ち。そしてその先にきっとあるであろう明るい未来は、べつに世界を滅ぼす巨悪に立ち向かい倒さなくとも感じる事ができるのだ。

 と、いうわけで、彼らがタイトル通り「〜たり」する群像劇であったわけだが、ともすれば普通過ぎて退屈になってしまうような事を、見事に「物語」させていたように思います。  なんかとんでもないことが起こっているのにも関わらず、見ていて退屈にしかならない物語も多くある中、ふつーな事をこれだけドラマチックに描いて見続けさせたんだから、ただそれだけでも良く出来ていたと言えるのではないだろうか。
 まぁ正直なところ、ふつーな事を描いているだけにインパクト的な事が薄いのは否めなず、このアニメの特徴はコレ!っていう某を挙げろって言われたら、割と返答に困ってしまうのだけど(歌は人それぞれ好みに偏りがあるからなー。安易にお進めできないってのがある)、キャラクターが活き活きとしているし、それぞれの心情もよく表していて、よくありそうな出来事が大きなイベントとして成り立っている。そういう観点から言うと、アニメというよりかはドラマ的だ。
 今となっては「P.Aお得意の〜」なんですけど、割とファンタジー色の強い傾向にある(と自分としては思っている)アニメーション作品の中において、こういう物語はめずらしい。まぁ恋愛ものなんかもこういった形にはなるものの、そういう惚れたはれた以外のところで話をちゃんと引っぱれるのはやはり良く考えられているし上手く作ってあると言えるんじゃなろうか。
 なんかスレッドタイトルみたいなタイトルのわけの分からなさそうな物語を見る時間を作るくらいなら、このアニメを見た方が随分を有意義と思えるのではないだろうか。  ともあれ、割となんでもないと言えばなんでもない物語を、随分とおもしろく作ってくれたなぁという印象。全13話と短いので、少しでも気になったという方は是非一度ご覧あれ。

 個人的には合唱曲「心の旋律」がお気に入り。気持ちのいいメロディと歌詞がステキ。またあまり聞く機会のない「合唱」ってのが良い。綺麗なハーモニーが「『歌』っていいなぁ」と思わせてくれますよ?
 最後にどーでいーんですけど、来夏の部屋にあるでかいイルカののいぐるみ。かぶれるんですねぇ(笑)。


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