2.起頭面
双方下段星眼に居りて向う進まんとする起り頭の面を打つを云う。
3.直面
右同じ構えに守り居るを向う星眼を下段に下ろす頭の面を打つを云う。
4.半身面
此の上段、向う下段等にて此方の方へ突き来るを此方の方は体を開き半身になり其の太刀を外し片手にて面を打つを云う。
5.諸手成面
双方下段星眼にて守り居るを向うより此方の右篭手へ打ち来るを受け留めず其のまま諸手にて太刀を半ば振り上げて面を打つを云う。
6.諸手面
向う下段星眼に守り居るを此方諸手上段より向うの透きを見て面を打つを云う。時宜により篭手を打つこともある。
7.片手面
向う下段星眼に守り居るを此方の左右の内片手上段より面を打つを言う。時宜によりては篭手を打つこともあるべし。
8.左構面
向う同じ構えに守り居るを此方は左足を出し、上段にとりて面を打つを云う。時宜しくば、篭手を打つこともある。
9.片手外
双方下段星眼に守り居るを向う此方の右篭手へ打ち来るを此方は左篭手を外し右片手にて太刀を上段に振り上げて面を打つを言う。
10.右構面
向う右同じ構えにて守り居るを此方右足を出し上段に取りて面を打つを云う。時宜によりては篭手を打つこともある。
11.摺揚面
右同構えにて守り居るを向うより此方の方の面へ打ち来るを上段に摺り揚げ面を打つを云う。
12.切返面
右同じく構えて守り居るを向うより此方へ打ち来るを受け留め其のまま切り返して面を打つを云う。時宜によりては篭手を打つこともあるべし。
13.地生面
右同じ構えに守り居るを向うより此方の面へ打ち来るを此方の太刀を向うの諸手の中へ地生に引き掛け、さて其の太刀を早く引きぬき巻き打ちに向うの右構え面を打つを云う。但し、地生に引きかく云々は当流に唱うる事にて、別に難しき事にあらず。只、向うより打ちこみ来る其の両手の中へ此方の太刀先を引き掛けるを云うなり。
14.巻落面
右同構えに守り居るを向うよりこちらの面へ打ち来るを巻き落して面を打つを云う。
15.張面
右同構えに守り居るを此方向うの太刀の半ばを張り其のまま面を打つを云う。
16.篭手引懸面
右同構えに守り居るを向うより此方の面へ打ち来るを其のまま右篭手を押さえ其のまま上段に取り面を打つを云う。
17.篭手懸面
右同構えに守り居るを向うの右篭手を打たんとする色を示せば向う下段に守り其の篭手を防ぐ其の処を逃さず飛び込みて面を打つを云う。
18.トウ払い面
右同構えに守り居るを向うより突き来る太刀を払い除け其のまま太刀を半ば振り揚げ諸手にて面を打つを云う。
19.片手延面
右同構えに守り居るを此方より向かい込みて左手を離し右方手にて面を打つを云う。但しこの打ちは甚だ軽くして敵に強く当たらぬ業なり。
20.深篭手懸面
右同構えに守り居るを此方太刀を左肩へ取り向うの右篭手を打たんとすれば向う下段に守りて其の篭手を防ぐ、其の処を逃さず飛び込みて面を打つを云う。
突業十八手
1.諸手突き
此方の諸手にて向うを突くを云う。
2.片手突き
此方の片手にて向うを突くを云う。
3.二段突き
双方下段星眼にて守り居るを此方の右篭手を打たんとする色を示せば向う下段に応じて其の篭手を防ぐ、其の処を向うの左より突くを云う。
4.切落し突き
右同構えに守り居るを向う打ち来たり或いは突き来るを切落し諸手にて突くを云う。
5.抜き突き
右同構えに守り居るを向う此方の面へ打ち来るを此方左足より右足を斜めに後ろへ引き向うの太刀下を潜り抜けて喉を突くを云う。
6.表突き
右同構えに守り居るを向うの太刀下段に下げる所を見澄まし此方の片手にて向うの左即ち表より突くを云うなり。
7.押し突き
右同構えに守り居るを此方の向うの太刀の左より押さえ、諸手にて突くを云うなり。
8.篭手引き懸かり突き
右同構えに守り居るを此方の面へ打ち来る所の其の篭手を太刀にて押さえて突くを云う。時宜により左篭手を押さえて突く事もあるべし。
9.引き込み突き
右同構えに守り居るを向うより片手突きにて此方の表或いは裏へ突き来るを向うの太刀に添ひて引き入れそのまま諸手にて突くを云う。
10.利生突き
右同構えに守り居るを向う進まんとする頭へ此方諸手突きにて太刀を真っ直ぐに向うへ延ばせば向うより自然と突きかかるを云う。
11.上段利生月
向う下段此方上段にて進まんとする頭此方上段を下ろし諸手にて太刀を真っ直ぐに向うへ延ばせば向うより自然と突きかかるを云う。
12.上段引き込み突き
右同構えにて守り居るを向うより片手にて突き来るを此方上段より太刀に添え引き入れて突くを云う。
13.篭手色突
双方下段星眼にて、此方向うの右篭手を打たんとする色を示せば向う太刀を下段に取りて其の篭手を防ぐ、其の処を逃さず片手にて突くを云う。
14.篭手外し突き
右同構えに守り居るを向うより此方の右篭手へ打ち来る其の右篭手を離して左片手にて突くを云う。
15.地生突き
右同構えに守り居るを向うより此方の面に打ち来る其の両手の中へ此方の太刀を下より引き掛け、素早く引き抜き諸手にて突くを云う。
16.巻き落し突き
右同構えに守り居るを向うより此方へ面を打ち来るを右或いは左へ巻き落して突くを云う。
17.突き掛り突き
右同構えに守り居るを向う下段になる所の透きを見て其のまま諸手にて喉を目掛けて突きかけ押し行くを云う。
18.三段突き
右同構えに守り居るを此方の方向うの右篭手を打たんとする色を見せれば向う下段に直して防ぐ。此方、又左篭手を打たんとする色を示せば向う又、其の篭手を防ぐ。其の処を諸手にて向うの右即ち裏より突くを云う。但しこの業は至極迅速にあらねば出来難き業なり。
篭手業十二手
1.深篭手
双方下段星眼に守り居るを此方太刀を左の肩に取り向うの右篭手を横筋違いに打つを云う。
2.並篭手
右同様に守り居るを此方より向うの右篭手を打つを云う。
3.左篭手
右同様に守り居るを此方より向うの左篭手を打つを云う。
4.起り頭篭手
右同様に守り居るを向うより此方の面或いは篭手を打たんとする其の起り頭の右篭手を打つを云う。
5.受け篭手
右同様に守り居るを向うより此方の面へ打ち来るを此方の太刀を左の方へ取り受け留め其のまま切り返し向うの右篭手を打つを云う。
6.突き払い篭手
右同構えに守り居るを、向うより片手突きにて此方の右の中へ突き来るを此方はその太刀を右へ払い除け向うの右篭手を小切りに打つを云う。
7.上段篭手
向う下段星眼に、此方上段にて面を打たんとする色を示せば向う必ず太刀を斜めになして受けんとするその右篭手を打つを云う。
8.透き引き篭手
双方下段星眼に守り居るを此方より向うの右篭手を打たんとする色を示し此方の右篭手を業と明渡せば、向う必ずその篭手を打ち来るものなり、その処を受け或いは払いなどして向うの右篭手を小切りに打つを云う。
9.押し篭手
右同様に守り居るを向うより此方の面へ来る所をその篭手を押さえ切りに引ききるを云う。
10.留め篭手
右同構えに守り居るを向うより此方の右篭手を打ち来るを此方は鍔元にて留めそのまま小切りに向うの右篭手を打つを云う。
11.面色篭手
右同構えに守り居るを此方より向うの面を打たんとする色を示せば向う必ずその太刀を受けんとするその右篭手を打つを云う。
12.居鋪(おりしき)篭手
前条の深篭手と同断なり。但し向うの右篭手を打つとき此方の膝をつきて打つを云う。
胴業七手
1.摺り揚げ胴
向う上段又は星眼に構え此方は下段星眼等に構え守り居るを向うより此方の面へ打ち来るを摺り揚げ胴を居り敷き打つを云う。
2.抜き胴
双方下段星眼等に守り居る時、向うより此方の面へ飛び込み来る太刀を受け留めずして如何にも早く胴へ抜け居り敷き打つを云う。
3.立ち胴
右同構えに守り居るを向うより此方の面へ飛び込み打ち来るその太刀を受け留めずして如何にも早く胴へ抜け居り敷かず立ちながら打つを云う。
4.篭手懸かり胴
向う上段、此方下段星眼等より向うの上段の篭手を打たんとする色を示せば向うその太刀を避けんとする処を迅速に飛び込み胴を打つを云う。
5.利生胴
双方下段星眼に守り居るを向うより進まんとする頭へこちらの太刀を真っ直ぐに向うへ延ばせば向う突きかかるものなり、もし其の突き外る節は其のまま居り敷き胴を打つを云う。
6.飛び込み胴
右同構えに守り居るにこちらより飛び込み胴を打つを云う。但し、この業は甚だ無理なる業なり。
7.手元胴
双方鍔迫り合いになりたる時、向うの透きを見て立ちながら胴を打つを云う。
続き業十一手
1.片手篭手面
此方右片手上段にて向うの下段星眼等の右篭手を打ちそのまま太刀を振りまわし再び面を打つを云う。
2.篭手張り面
双方下段星眼にて此方より向うの右篭手へ打ちこまんとする色を示せば向う太刀を下段に取り其の篭手を防ぐ其の処を逃さず面を打つを云う。
3.篭手面胴突き
右同構えに守り居るを此方より向うの右篭手を打ち其のまま又面を打ち又胴を打ち又突く都合四度続け打つを云う。ただし、この業は別して迅速ならでは出来難き業なり。
4.篭手突き
右同構えに守り居るを此方より向うの右篭手を打ち其のまま片手突きにて再び突くを云う。
5.面足がら
右同構えに守り居るを此方より飛び込みて打ち太刀の当たる当たらぬに拘らず其のまま足がらみにて投げ倒すを云う。
6.トウ張り落し面
此方上段に構え向う下段星眼等の太刀を張り面を打ち或いは向うより此方を突かんとする其の太刀を上段より張り落して面を打つを言う。
7.篭手外し摺り揚げ面
双方下段星眼に守り居るを此方より向うの右篭手をわざと打ち外して示せば向う必ず面へ打ち来るものなり。其の処を摺り揚げ面を打つを云う。或いは胴を打つこともあるべし。
8.左右胴
右同構えに守り居るを向うより此方の面へ打ち来るを摺り揚げ居り敷きて左右の胴を打つを云う。此れ又至極迅速なるを必要とす。
9.一文字投げ
右同様に守り居りたるを向こうより此方の面へ打ち来る処を此方身を沈め太刀を右片手にて一文字に受け留め、左片手にて向うの右足を捕り右手は太刀を持ちたるまま向うの体を強く押せばよく倒るものなり。
10.抱き揚げ
右同構えに守り居るを向うより此方の面へ打ち来る所を此方身を沈め太刀を一文字になし右片手にて受け留めたれば、其のまま太刀を投げ捨て向うの腹下に入り向うを高く抱き揚げて投げつけるを云う。
11.組討
組討にて向うを打ち取らんと思はば打ちの当たる当たらぬに拘らず向うの真向かいに打ちこみ其のまま太刀を打ち捨て右手にて向うの面の後ろを確と取り左手にて面の垂れを確と取り、右の手は此方の右前に強く捩じる、又左の手はそれに応じて強く突き上げ捩じ回してじりじりと強く捩じるべし。決して其の左右の手は緩むべからず。少しにても緩めば向う息を継ぎ容易に勝負付かざるものなり。右の術よく練磨すれば例え幾十度の組討を為すとも決して負くるものにあらず。
以上