大焦熱地獄(だいしょうねつじごく)

   殺生 偸盗 邪淫 飲酒 妄語 邪見 修行する女性を犯す

 まじめに修行する女性を誘惑したり犯したりした者が堕ちる。とりわけ厳しく責められ、真っ先にこの地獄に堕ちるの
は、清浄の戒めを守り、ひたすらに仏が教え指し示す道を歩もうとして、これまでのだだ一度も淫らなことを行ったこと
はないことはもちろん、夢想さえしなかった女性や尼僧を誘惑、あるいは犯した者である。仏陀を侮辱し、教えを踏みに
じった者も堕ちる。

 

小地獄

どんな罪人が

どんなところ

第一

いっさいほうしょうねつしょ

一切方焦熱処

 五戒を守り修行している在家の女性を誘惑し、道をはずさせた者

 この地獄は、どの方角を向いても一寸一分の隙間もなく火が燃えさかっているので、この名がある。罪人は、燃えさかる火に追われて、断崖絶壁から大火の海に飛び込んで焼かれてしまう。

 次は、鉄の縄で縛り上げられ、逆さにつられて火の中に入れられる。まず目が焼かれ、頭皮、頭蓋と順々に焼かれる。特に、男根は、引きずり出されて叩きのめされ、千畳敷にされた上でじっくり焼かれる。

 そのあとは、長い釘を肛門から頭に抜けるように刺され、焙られながら、鉄鉤で男根を切り裂かれ、睾丸は押しつぶされてしまう。

 また、「可畏波」という沸騰して波となっている河の銅と鉄鑞を飲むように言われる。飲んだとたんに、唇から内蔵、全身が焼かれる。

第二

だいしんあくこうかいしょ

大身悪吼可畏処

 出家修行をして十回を理解するに至ったものの、具足戒を受けるためにもう少し修行をする必要のある女性(沙彌尼)を犯した者

 罪人は、まず体を山のように大きくされ、柔らかくされたあと、徹底的に叩きのめされ、広大な原野を覆い尽くすぐらいにまで延ばしに延ばされる。そして、鋭い刃のついたピンセットで少しずつ引きちぎられる。

 邪淫な男は、咽喉が修行・弓道の妨げになること、女性を蹂躙することがいかに罪重いものであるかを、二重にも三重にも思い知らされる。

 

第三

かけいしょ

火髻処

 仏の教えを自分のものにして、戒律や礼儀作法を守って懸命に修行に励む女性に非道を働いた者

 罪人は鉄鉤でぶら下げられ、真っ赤に熱せられた鉄板の上で炙られる。背中から焼かれ、熱くて泣き叫ぶが、もちろん許されはしない。そして、肛門から「似髻虫」を入れられる。この虫は、弓の弦ほど長く、鋭い歯を持ち、火と毒を噴き出している。少し突っ込まれるだけでも熱さと痛さは計り知れない。その跡は、内臓を貫き脳天まで突いて出てくる。

 その次は、男根と睾丸。この二つはことに念入りに痛めつけられる。まずは男根の先端から睾丸の襞の一筋一筋に至るまで、余すところなく猛毒が。あびせれれる。ついで炙られ、その後食いちぎられる。

 仮にこの地獄を脱出することができたとしても、終生インポテンツの男に生まれ変わるだけである。

第四

うしゃかしょ

雨沙火処

 尼僧の真剣な修行をじゃまし、一度強姦しただけではなく、何度も繰り返した者

 ここもあらゆる場所に火が充満し、あらゆるものが燃えさかっている。一方、金剛石と見間違えるような光る河があり、遠くから見ているといかももきれいな水が流れている。しかし、これは煮えたぎる砂の河、あまりに高温で青白く見えるだけである。罪人はここで延々と煮られ、焼かれる。

 また、この河には、鋭く尖った刃のような、すべての角が鋭角になった砂と石が水のように流れていて、当たるたびに、身肉が切られ、ついには骨も髄も全部臼でひかれたように粉々になってしまう。

第五

ないねつふつしょ

内熱沸処

 三方に帰依し、五戒を守り、修行の道に生きている在家の女性を誘惑し、無理やり非法を行い、また、そそのかした者

 ここには五つの火山があり、大地も空も、内も外もすべてが真っ赤に焼けている。罪人は鬼に追い立てられて、全身傷だらけ、虫の息で、まずは第一の「普焼山」にたどり着く。歩くと足は焼け、上からは焼けた噴石が降り、地面は割れ、通る者を飲み込む。二つ目は「極深無底山」。ここは活火山で、やむことなく引責が降り注ぎ、潰されてしまう。三つ目は「闇火聚觸山」。ここは全くの闇であるが、超高熱を発し、猛毒を排出している。熱で苦しまされるが、熱湯の池に投げ込まれて、茹でられる苦しみも味わう。四つ目は「割截山」。鉄炎の鋸で男根を切り取られたあと、山の割れ目にはさまれて押しつぶされる苦しみを味わう。最後は「業証山」で、鬼の責めにあう。

第六

たたたせいしょ

咤咤咤済処

 戒めを守り、修行する女性を毒牙にかけた男。一度だけでなく何度も繰り返し、その女性の姉妹や母、親戚にまで手を出した者

 まずは炎熱で焼かれ灰になる苦しみを何度も味わわされる。そのあと、切り刻まれで塵芥より小さな存在に落とされ、金属の歯を持ったネズミに襲われる。ネズミは、まずは男根、睾丸にかじりつき、食い尽くす。その後、身肉や内臓と、全身を食い尽くしてしまう。この責めは、熱風による焼殺切刻よりも苦しい。次は、火を吹く無数の黒虫が出てきて、全身をはいずり回り、締め上げる。この虫もまずは男根にまとわりつき、炎と毒を吹きかけ、こんがり焼いて食べる。男根のあとは睾丸、内臓へと進んでいく。罪人が何度も女性に非道を働いたからである。

第七

ふじゅいっさいししょうくのうしょ

普受一切資生苦悩処

 比丘であるにもかかわらず、修行している女性に酒を飲ませて強姦した者、あるいは、金や物でつって誘惑した者

 まず、足の先から頭の先まで皮膚をはがされる。むき出しになった肉に熱風が吹きあたる痛さと熱さは表現できない苦痛である。さらに、熱湯の灰をかけられ、焼かれ、蒸され、煮られる。

 もちろん息絶えても、鬼によってすぐに生き返らされ、また皮膚を少しずつはがされて、と、繰り返し苦痛が与えられる。

第八

びたらにしょ

卑多羅尼処

 ひたすらまじめに生きようとしている女性に薬物をかがせて、淫行に及んだ者

 ここは、「卑多羅尼」という猛毒と熱泥が流れる河があり、闇のすべてが集まる虚空地獄である。真っ赤に焼けた鋭い刃の鉄の杖が雨のように降っていて、全身に突き刺さる槍地獄でもある。熱鉄の杖を無数に突き刺された罪人は、全身が、外も内もすべてが焼かれてしまう。この槍をよけようと逃げると、無数の炎を噴き出す毒蛇が待ち受けている「卑多羅尼」河に飛び込んでしまい、毒蛇に食べられてしまう。

第九

むげんあんしょ

無間闇処

 誘惑を断ち切って努力している男性に対して、女性を近づけ、誘惑し、修行の邪魔をした者

 「地盆虫」という虫がいる。この虫は、嘴が鋭く、顎の力も強く、すごい毒を持っているので、どんな固い金属でも水のようにさらさらにしてしまう。これがよってたかって、罪人に噛みつき、肉を食べ、血を啜り、骨を囓り、髄を飲み尽くしてしまう。焼かれながら食いちぎられるのである。

第十

くまんしょ

苦鬘処

 戒律を守り、修行している比丘を騙して、誘惑し、断られると、「強姦された」を言いふらす女

 鬼は、このふしだらな女を起きあがることもできないほど痛めつけたあと、全身の皮をはぎ、肉を削り、筋も神経も引き抜き、髄も吸い取って骨だけにしてしまう。これだけでもたいへんな苦痛であるが、さらに、猛烈な熱風の中で削がれるから、痛さに熱さが加わり、二重の苦しみを味わう。女は、責め苦の中で朦朧となり、男との淫行の幻覚を見る。男に抱きつくと、それは真っ赤な大焦熱の火柱で、焼かれてしまう。これが何度となく繰り返される。

第十一

うるまんとうそうしょ

雨縷鬘抖処

 努力している比丘尼に近づき、暴力で犯し、清らかな生き方をけがした男

 ここは、火焔燃えさかる大焦熱の上、無数の鋭い刃がジャングルのように入り組んで、それがまた無数に集まって山となっている地獄である。しかもそれが高速回転しているので、瞬時に全身傷だらけとなってしまう。

 次に鬼に鉄条網のような縄で縛り上げられ、弓の的にされる。連射された矢が全身に突き刺さって、体は潰れて飛び散る。

 また、火の塊で焼かれる責めや、猛毒火焔を吐く大蛇に飲み込まれて、毒と熱に苦しむ責めもある。

第十二

ほっきうしょ

髪愧烏処

 酒によって、姉に対して淫行に及んだのみならず、妹までも毒牙にかけた者

 ここは、銅を精錬する炉のような地獄である。罪人は、熱沸する赤銅の中で浮き沈みする。浮いてくると、鬼が銛で突き刺してすくい上げ、鉄の砧の上に置く。その後、刀鍛冶が鉄を打つように、大きな重い金槌を何度も振り下ろし、粉々にしてしまう。

 この地獄から逃げ出せたと思っても、実はそこは、鬼がいつも叩いている鼓の入り口になっており、罪人は鼓の中に閉じこめられてしまう。狭く苦しい上に、鬼が鼓を叩くと、大音響地獄と化す。音の振動で、体がバラバラになって、すべての内蔵が破れてしまうほどである。

第十三

ひくこうしょ

悲苦吼処

 邪教を見抜けず、騙され、淫行に走った女性

 ここには、真っ赤に焼けた臼がある。女性は、邪淫な考えをたたき出すためだと、臼に投げ出され、熱と炎を噴き出している杵で、打たれ、粉々にされてしまう。

 また、青い雲がたなびき、鳥がさえずる静かな森と美しい泉がある。ところが、泉に飛び込むと、そこは千の頭を持つ大きな龍が数え切れないほどいる。目から赤炎を出し、口からは毒を噴き出しており、あっという間に食べられてしまう。腹の中で熱炎と猛毒に苦しめられ、肛門から出た後は、火焔地獄の泉で焼かれてしまう。

第十四

だいひしょ

大悲処

 恩師の妻をたぶらかし、暴力で淫行に及んだ者、あるいは、教え子の妻や恋人を寝取った者

 ここは、至るところが焼ける鉄の床であり、しかもヤスリで研いだような鋭い刀が突き立っている。鬼は、罪人をそこに転がし、邪淫の心を全部すりおろしてやると言いながら、大根おろしの要領で刃が突き立つ床に押しつけて潰していく。皮膚も肉も内蔵も、筋も筋肉も神経も、骨も髄も血液も、すべてぐじゃぐじゃにされ、しぼりとられてしまう。

第十五

むひあんしょ

無悲闇処

 自分の息子の妻に淫らな行為をした者   

 ここは、地面の至るところから炎が噴き出している。火山の噴火口の中そのものである。随所に煮えたぎる池があり、ここで火の塊で焼かれ、茹でられる。この後、臼に放り込まれ、杵で延々と搗かれる。

 焼かれるのは、邪淫な心を焼くため、茹でられるのは、邪淫な考えを蒸発させてしまうため、搗いて搗きまくるのは、二度と繰り返さないように心の中から邪淫をたたき出すためである。

第十六

もくてんしょ

木転処

 助けてもらった恩人の妻をそそのかし、淫行に及んだ者

 ここは岩石、重金属などすべてが超高熱で溶けて巨大な「大叫喚河」となっている。罪人はこの熱い河で焼かれる。熱さに耐えかねて浮かび上がると、金棒で思い切り叩かれ、沈められる。この河には、「摩竭受大魚」という巨大で、獰猛な魚が数え切れないほど泳いでいて、罪人に群がって食べてしまう。

 仮にこの責め苦から逃れることができたとしても、すべての女性から嫌われる存在になり、五百世に渡って不能となる。


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