輪るピングドラム 1〜12話

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01 運命のベルが鳴る

ペンギン神様がイカす。
 そんな今回のお話は…
 両親のいない高倉家には3人のきょうだいが暮していた。双子の兄の冠葉と弟の晶馬、そして妹の陽毬。
 陽毬は不治の病に冒されており、担当医の鷲塚医師から余命が長くないと宣告される。
 数日後、自宅へ帰ってきた陽毬は、兄と一緒に水族館へ行く。数少ない家族の思い出が残るその場所で、陽毬は不思議なペンギンと目が合う……。
 以上公式のあらすじ。

 幾原監督のいさしぶりのアニメーション作品ということで、過大に期待して見たわけですが、それでも期待を裏切らないおもしろさ。さすがとしか言いようがない。
 お話として正直どう説明して良いものか、と考えてしまう分からなさなのだが、それでも一本分魅せるんだからさすがと(ry
 まぁ要は、余命幾ばくもなかった妹が思い出の水族館で死んでしまったが、なんだかよく分からない神様が、その時買ったペンギン帽に宿って(?)、妹の余命を幾分か伸ばしてやるから生存戦略のために「ピングドラム」を探せと言われる。ついでに自分達にしか見えないペンギン三羽が家に住み着く。という流れ。うん、全くもってよく分からない(笑)。
 第1話なので、ここで全てが分かってしまうようでは当然いかんわけだが、全然分からないながらも、「これからどうなっていくというのだ?」と思わせる力がある。
 両親がいない双子と妹の家族。しかし妹の命はもう尽きて、どうしてか突然生き返り、謎のペンギンたちが現れて、妹に取りついたペンギン帽の神様(?)になんだかよく分からない「ピングドラム」を探せと言われる。
 主役の双子同様に、見ているこっちも「何が起こっとるんじゃい。あのペンギンはなんなの?あの神様(?)は何の神様なの?ピングドラムってなに?」と、第1話というツカミで視聴者の興味をがっしり掴んで引き寄せている。
 しかしなんだかよく分からない謎をバラまけばいいというものではない。そのなんだかよく分からない謎を気にさせなければ意味がないわけだが、そこで使ってきたのが日常の中で突然やってくる非日常だ。
 晶馬が困っている所に突然現れたペンギン。何故ペンギン?と晶馬と一緒に思わずにはおれん。幾度となく困っている彼を助けるペンギン。それは自分にしか見えない。怖くなっては知って家に帰ったら、ペンギンは他に2羽いて冠葉と陽毬はすでに順応している。晶馬と一緒にうぉい!と突っ込まずにはおれん。
 そして再度現れるペンギン神様の「生存!戦略ーっ!」からの不思議空間での無駄と思える仰々しさが混乱に拍車をかける。無駄とも思える仰々しさはその無駄とも思える仰々しさでなくては成立せず、突然変わったそれまでと全く違った空間であるからこそ、「一体これはなんなのだ?」と主役との感情共感に繋がる。
 なんだかよく分からないことに食い付かせる、視覚的な楽しさと物語的な「どういうことなのか」と興味を惹かせる仕掛けに見事にハメられてしまいました。
 個人的にあの不思議空間は最高で、たぶん神々しいというイメージと、生存戦略というキーワードからセックス的イメージなんだと思うんだけど、我々凡人が考えるそれとは全く違った斬新なイメージがたまらん。こんなおもしろい表現の仕方があるのかとただただ感心した。のと同時に、自分のあまりの凡才っぷりに泣ける。
 どーでもいーけど、高貴な身分フェチとしてはペンギン神様はものすごい豪速球でどストライクだ。ステキすぎる。
 そんな物語や演出、そしてペンギン神様と共に次回も期待していきたい。

 どーでもいーんだけど、あんまりにもおもしろ過ぎると書く言葉が見つからないんだよねー。悪口ならいっぱい書けるんだから、我ながらイヤな性格してるよなー(苦笑)。

02 危険な生存戦略

上手いなぁ。感嘆しか出てこない。

 そんな今回のお話は…
 陽毬を生かしたければ、生存戦略のため「ピングドラム」を探せ、と冠葉と晶馬に迫るペンギン帽子。
 妹の命を盾に取られた2人は、「ピングドラム」が何かもわからないまま、指示された電車に乗車する。
 そして、「ピングドラム」を所持している可能性がある荻野目苹果という少女の後をつけ、彼女の身辺を探るのだった。
 以上公式のあらすじ。

 お話はメインキャラクターのひとりである荻野目苹果(おぎのめりんご)がどういう人間なのかを紹介しただけであるが、それでも見せるんだからすごい。
 ペンギン神様(本当は『プリンセス オブ ザ クリスタル』というらしい)から、彼女がピングドラムを持っているらしい(あくまで『らしい』)ことを聞き、冠葉と晶馬はピングドラムを奪取しようと尾行するのだが……という内容で、上記したように、兄弟の尾行を通し苹果という人物をコミカルタッチに見せている。
 彼女が持っているらしいピングドラムとは一体なんなのか、普通の少女の苹果が時折見せる謎の行動。内容的には兄弟が尾行しているだけなのだが、ペンギン1号・2号のヘンで愛らしい行動や、ペンギンたちが他人に見えないという設定での「見えるけど見えない」視覚的遊びと相まって見ていて飽きさせない。
 話はただそれだけで終わりではなく、荻野目苹果という人物が本当はどういう人物かをショッキングに見せている。
 兄弟の学校の担任(?)、多蕗(たぶき)に惚れている可愛らしい少女を延々見せておいて、最後は彼のアパートの床下に潜り込んで盗聴までするストーカーであることが発覚するのだが、そのギャップの大きさがちょっと怖いと思わせるのと同時にとても強く印象に残る。「ええっ?普通の女の子だと思ったのにこんな事してる!」というヤツである。
 それがまた、特にそのストーカー行為を恐ろしく恐怖を感じるように見せているわけではないのが上手く、むしろ劇中では彼女の純粋な行動かのように見せているのが逆に怖い。
 ここに至るまでのコミカルさとのギャップだけで「なんか怖い」を演出しているんだから上手いとしか言えない。この最後のストーキングをより良く見せるための、それまでのコミカルさは前フリなのであるが、これがないければここまでの衝撃はないわけだし、最後にくるまでに飽きさせては意味がない事でもあって、そこまでの経過をおろそかには出来ない。
 もう何回か書いたが内容的には「苹果という人物を尾行したらストーカーだった」というだけだが、それだけの内容で丸っと興味深く見せているんだから、その技量たるやといった感じだ。その才能が羨ましい。

 さて、演出的なこともさることながら物語的にも良く出来ていて、「ピングドラムとはなんぞや」という所では、どうも苹果が持っている「日記」のようだが、彼女曰く、未来はそこに記されているらしい。けどこの日記って、たぶん苹果の「こうなればいいなー」っていう妄想未来日記だよね。
 あらかじめ「こういう日になる」と書いておいて、その通りに行動し、「この通りになったわ!やっぱり私と彼は運命で結ばれているのね」っていう妄想の賜物。
 これがピングドラムだとして、これがどう生存戦略と関わってくるのかさっぱりわからない。それ故に興味が引かれる。
 また苹果という人物も、ストーカーであるということがそこから先を読ませない。
 普通の女の子であるならば、仲良くなってピングドラムとおぼしき日記をなんとかできそうな気もするが、もうストーカーだという時点で一筋縄ではいかないだろうことくらいは想像できる。
 物語がどこへ向ってどうなるのか、それを楽しみにさせてくれる。続きが気にならなければ次回を見る必要はなくなるわけで、次回も見たいと思わせる力と仕掛けが抜群だ。しかもそれは変に謎を振りまいているだけではなく、今の所は「一度死んだ妹に取り憑いた変な神様の命に従って、ピングドラムとやらを手に入れるため、持っているらしき人物を尾行した」というだけの話なのに、続きを気にさせる魅力を放っているんだからすごいことだろう。
 もう次回が楽しみで仕方ないです。


03 そして華麗に私を食べて・・・

相変わらず抜群のおもしろさ。ウシ、かわいいよな(笑)。

 そんな今回のお話は…
 「ピングドラム」が苹果の私物なら、彼女の部屋にある可能性が一番高いに違いない。
 そう推理した冠葉と晶馬は学校を休み、荻野目家に侵入するのだが、なかなか「ピングドラム」が見つからない。そこへ苹果本人が帰宅してくる。
 以上公式のあらすじ。

 お話としては今回も苹果メインで、前回判明したストーキング行為を中心に彼女の行動をコメディタッチに見せている。
 両親が離婚した苹果の家は、未だに律儀にまだ幸せだった頃に作った家ルール「毎月20日はカレーの日」を実施しているのだが、もう今では家族そろってカレーを食べることに特別な感情を持っているのは苹果だけであった。しかしリンゴはめげない。なぜなら今日はそのカレーの日にお手製カレーを作って想い人である多蕗に振る舞う計画であったからだ。
 妄想に胸膨らませ彼の家へ到着した苹果であったが、出迎えたのは女、多蕗の彼女「時籠ゆり」であった。
 部屋に案内されるとゆりは何とカレーの煮込み中。このままでは日記に記されている運命を遂行することが出来ない。そこで苹果は……。という感じの苹果を主観としたあらすじ。
 こういった苹果の行動と、上記引用したあらすじの兄弟の潜入と尾行を見せているわけだが、この話としては特に何がどうという展開ではない。苹果は野郎の家に行ったら女がいた。兄弟は苹果の家に潜入し尾行した。簡潔に言えばそれだけなんだけど、物語的には結構な展開を迎えていて、前回判明した苹果はどうも最重要アイテム「ピングドラム」を所持しているらしいことから、兄弟は彼女のうちに不法侵入する。そこへ苹果が帰ってくるんだから見ていて「どうなるんだろう」と思わずにはおれない。そこから女の影がなさそうだった多蕗に美人な彼女がいることが判明。苹果がストーカーと知ってるこっちとしては、ぶっちゃけ勝ち目なさそうな彼女に「苹果はどうするんだろう」と思わずにはおれない。またこれはあとで語るが傷心の苹果と陽毬がひょんなことから友達になってしまう。
 物語中での最重要アイテム「ピングドラム」を中心に、今回だけで結構な人間関係が出来上がっている。この人間関係だけで別の話が作れそうだが、まだたった3話だ。これからまだOPに出てくるキャラが関連して来ると物語はどうなっていくのだろうと思うとワクワクする。
 表面的なやっていることとしては、主人公たちがマークしているストーカーの女の子が恩命の彼女と鉢合わせして逃げ帰った所で陽毬と出会い友達になる、というだけだが、その一見何気ない中に「どうなっていくんだろう」と思わせる部分がいくつもあり目が離せない。

 全編コミカルであった今回だが、個人的に怖かったシーンがある。それは苹果がゆりの作っていたカレーと自分の持ってきたカレーをすり替えるシーン。
 画面としてはかなりコミカルに描かれていてパッと見おもしろいシーンではあるんだけど、これがよく考えるとすごく怖いのだ。
 だって取っ手のない煮込み中のカレー鍋を素手で掴むんだぜ。手がジュゥ〜とかなってるし。アニメ的表現でその後は「あち!あち!」で済んでいるけど、そうまでしてしまう苹果に正直ドン引きするよ。
 自分の妄想からなる運命日記通りになるよう実行するってだけもキモイ部類に入るのに、そうまでして完遂しようとする気持ちはもはや純情をはるかに通り越して(まぁストーカーという時点で通り越してますが)恐怖を覚えるよ。
 この正直に言えば常軌を逸した行動なんだけど、それをおもしろおかしく見せていて、その恐怖を覆い隠しているのが上手い。そういう「絶対おかしい」と思わせないことによって「苹果にとっては純愛である」みたいに思えてしまう。のだが、よくよく考えてみると「絶対おかしい」部類に入っている不思議さが良いですな。
 他、気になったというよりは意外な展開であったのが、前述したが苹果と陽毬が友達になったことだろう。この関係性がなかったら、まだシンプルな方であったが、これでより混迷したと言える。
 なにせ兄弟がマークしていて最重要アイテム「ピングドラム」所持者と思われる人物がその兄弟の妹と何故か友達になっていて、そもそも兄弟が何故苹果をマークしているかと言えば、その妹に取り憑いているペンギン神様なんだから、もうこの四人の関係だけ見ても変なことになっている。これをどう収拾つけるというんですかね?
 そういえば、ついでに気になったんですが、高倉家でカレーを食う時、家族の話を晶馬がワザと逸らしましたよね。家の表札も何故か両親の所を削ってあって、けれど家の中には家族写真がいくつもある。
 そういえば、そもそもとして余命幾ばくもなかった陽毬という娘がいるというのに家にいないというのはおかしな話である。この辺も物語に関係してくるんですかね?
 一体これから何がどうなっていくかさっぱり読めない。だからこそおもしろいって言うのもありますな。またそれをさりげなく見せているのが上手いのよねー。一見するとそれと気付かないように作ってある。
 これから先が気にならない方がおかしいってもんだろう。次回も楽しみだ。


04 舞い落ちる姫君

一人真実を知らない苹果は運命を全う出来て幸せでした、ちゃんちゃん。かと思いきや。

 そんな今回のお話は…
 晶馬がいつもより遅く起床すると、なぜか苹果が台所にいた。
 彼女は陽毬に、おいしい卵焼きの作り方を習いに来たのだという。
 できあがった弁当を持って、多蕗とのデートという名のストーカー行為に励むのだと意気込む苹果に、昌馬は「ピングドラム」の謎を解くため同行する。
 以上公式のあらすじ。

 お話は妄想日記に記してある計画通りになるよう奮戦する苹果の話、が、ほとんどなのだけど最後でガラリと違うものへと変わってしまった。
 苹果が奮戦するまでのことは、妄想と現実が入り乱れる楽しい話なんだけど、最後のほんの数分で「あれ?」と首を傾げてしまう。
 今回冠葉は別行動で、謎のメールに誘われていってみたら、彼がフッたモデルの久宝あさみ(こんな字だったっけ?)が冠葉被害者の会を結成したと言いに来るという、女好きな冠葉に天罰?が下るのだが、その被害者の会の決起人の久宝あさみは今回のラストで何者かにエスカレーターから突き落とされてしまう。
 苹果たちと全く関係のない所で起こったこの事件だが、なぜか苹果の日記に書いてあるのだ。
 正確には彼女がエスカレーターから突き落とされると書いてあるわけではなく、「午後九時、赤坂見附駅。エスカレーター。赤い靴の女の子。」とだけ書いてあるようなのだが、これまで多蕗とのことだけが書いてあると思っていたが、この一文は全く脈絡がなく、なんでこのことが苹果の日記に書かれているのか。
 この流れからいくと、日記に書かれていることをミッションと言って実現しようとする苹果が犯人、と考えるのが普通であるが、それこそ脈絡がなく、ストーカーではあるものの苹果が運命日記に書いてあるからと言って、無差別に全く関係のない人に怪我を負わすような人間とは、これまで見ていてちょっと思えない。
 そこから考えて、苹果が持つこの妄想運命日記はただそうであるわけではない、ようだ。まぁよくよく考えてみれば、ペンギン神様が欲しがっている物語上の最重要アイテムなわけだから、ただの妄想が記してあるわけではなさそうだ。
 また今回のお話としても、最初からなんだか楽し気に進んで「ちゃんちゃん」で終わるのかと思いきや、謎の人物が人をエスカレーターから突き落とすというショッキングな出来事と、それに関連する最重要アイテムの関係を臭わせてEDになだれ込み、楽し気だった雰囲気が一転、サスペンスに変貌してしまった。
 苹果の妄想入り乱れる楽し気な彼らを延々見せておいてのこれだ。その延々見ていたことの裏で一体何が起こっているのか気にならない方がおかしい。
 まだOPに出てくる人物も出揃っていないので、これから物語がどうなっていくか楽しみだ。

 さて、上で語らなかった苹果たちのことだが、上記したことを印象付けるためなのか、実に楽し気に作ってある。
 アバンのスカンクはなんなんだろう?と思っていたら、ちゃんと繋がって来るし、妄想垂れ流しの紙芝居風で進んだりと、アニメであることを活かし、というかアニメだから出来る楽しさがてんこ盛りで見ていて楽しいのだが、やはり私としては物語を気にせざるを得ない。
 何が気になるかと言うと、時籠ゆりが苹果の想いに気付いており、勝ち目がないから諦めろみたいな事を言うのだ。すごく人の良さそうな時籠ゆりが敵に見せたダークサイド。この人も一癖ありそうな感じなのもさることながら、彼女が言うように苹果は逆立ちしたって勝てそうもない。
 しかし日記はおそらく順風満々に関係が成就していくであろうから、必ずどこかで無理がくるはずなのだ。まぁもうここまでで随分無理をしているような気もしますが……(笑)。
 頑に運命を信じる苹果が、そういう事態に直面し、書いてあることを実行できなかった場合に苹果は一体どうなってしまうのか。またピングドラムとしても、おそらくは「運命」が記されているからこその「ピングドラム」であるわけで、それが実現できなかったとなると、あの日記はピングドラムでなくなってしまうのだろうか。
 まぁだとしたら、今回、実際には多蕗とキス出来なかったのだから、運命を実行できなかったことになるわけだが、それでもあの日記の価値は失われないのだろうか。

 と、4話にして謎だらけ、なのはよく考えてみると当然なのだけど、この物語って、そういう謎を気にさせないよな。
 見ていてお話はこれからどうなるんだろうとは思っても、上記したようなことは実を言うと初見はほとんど気にならなかったのだ。この感想を書くに語って見直してみて、あれれ〜?と思ったくらいで、さっき気付いたんだけど、苹果が日記に押す判子もよく考えればなんで「桃」なのか。苹果(りんご)なんだから普通「リンゴ」マークにするよなぁ。
 まぁ、物語なんだから先に進めば分かっていくことなんだけど、そういった謎で気を引くのではなく、あくまで物語として続きを気にさせているんだから見事なもんである。


05 だから僕はそれをするのさ

もしかしてペンギンマークはものすごい重要なんじゃないのか?

 そんな今回のお話は…
 今日は陽毬の定期健診。
 陽毬につきそって東鴎病院に来た晶馬は、鷲塚医師から検査結果に問題はないと聞き、ほっと胸をなでおろす。
 一方、自宅に残った冠葉は、叔父の池部と向かい合っていた。
 この高倉の家を売ろうと思っていること、三人はそれぞれ親戚に預けようとしていることを告げられた冠葉は、ある決意を口にする。
 以上公式のあらすじ。

 今回は今回で新展開があり、また冒頭書いたような何かを掴みかけるような事もあるが、謎もまた増える。お話の流れとしての進行度はあまりないが、物語としては確実に進んでいると言えよう。
 お話としては、苹果の妄想運命日記は早々に破綻し、傷心の苹果とバッタリ出会った晶馬と陽毬がお家に招待して、ピングドラムと目される苹果の日記の話をするのは今しかないと意を決して話を持ちかけるも苹果は全く信じず、こともあろうかペンギン帽を家の外へ投げ捨ててしまうのだが……。というのが大体の流れ。
 個人的な大きいポイントとしては、苹果があの不思議空間に連れて行かれた事だろう。これは割とまさかの展開ではないだろうか。冠葉と晶馬だからこそのペンギン神様の発現かと思っていたが、苹果が召喚されたということはどうもそういう事ではないらしい。
 しかし冠葉と晶馬でさえ3話も信じるのにかかったのだから、今回で苹果が晶馬の言った事を信じる事もないであろう。だが、ペンギン帽がないと陽毬が死ぬ、みたいなことは何となく分かったようなそうでないような感じなのではなかろうか。
 ま、何はともあれ、ピングドラムを手に入れることに随分と光が射したような感じではある。
 そういえば、プリンセス オブ ザ クリスタルことペンギン神様が、「メス豚」だとか「この脳ミソド腐れゲロ豚ビッチ娘が!」などと口にするってのもまさかの展開であったな。ああ、でも何故か似合うから不思議(笑)。

 さて、今回もっとも気になったのは、冒頭にも書いたペンギンマークである。
 前回エスカレーターから突き落とされた久宝あさみのお見舞いに来た夏芽真砂子(なつめまさこ)が、突き落とされた時に「彼」を見たようなと口にすると、ペンギンマークの付いた玉をパチンコであさみの額に発射。結果、彼女は事件のときの記憶を失ってしまったようだ。
 冠葉の方も、あらすじにあるように家を売るという話に、霞ヶ関で謎の黒コートの男から、ペンギンマーク入りの封筒に入った大金を受け取り、家の代金に充てている。
 これまで街の至る所にあったペンギンマークはペンギンを印象付ける演出だと思っていたのだが、上記2点でそれが違うのではないかと思わせる。マークは物語上必要だからこそ至る所で目にするようになっているのではないだろうか。
 冠葉が大金を受け取ったのは霞ヶ関。霞ヶ関と言えば政治の中心地だ。そしてあからさまに怪しい黒コートの男がペンギンマーク入りの封筒に大金を詰め込んでくるのだから、マークの後ろに巨大な何かが隠れていると思わざるを得ない。またそれが得体が知れないし、そんな連中から大金を受け取る冠葉も陽毬や晶馬が知らない所で何をやっているのか気にさせる。
 そういえば、冠葉は2話で苹果の学校のデータを手に入れたり、3話では苹果の家をピッキングして侵入したりしていて、その時はギャグの一環かと思っていたが、先述した事を考えるとそれにも意味があったということだ。
 よくよく考えれば、陽毬は病床の身であり現代の医学では治せない病気で学校にも行けないような状況であった。両親がいない高倉家としてはどうしても収入源が必要なはず。しかも莫大な。それを踏まえて考えると、やはり冠葉は「何か」しているのであろう。
 違法に入手した学校のデータやピッキングを見ても、冠葉は陽毬の為ならなんでもする腹づもりであり、それは今回でも見る事が出来る。
 苹果によってトラックに挟まってしまったペンギン帽を追って激走する冠葉。正直私はこのシーンが怖かった。なぜなら、ペンギン帽を掴んでトラックに引きずられているあの状況。一歩どころか半歩間違っただけでも死ぬような状況だ。
 ペンギン帽がないと陽毬が死んでしまうとはいえ、どうしてそこまでするのか。それがサブタイにかかってくる。全ては陽毬のために。ということなんだろう。
 違法にデータを入手するし、ピッキングだってする。トラックにだって引きずられるし、おそらく怪し気な事をして大金を手にしているのだろう。
 そういう冠葉の考え方は回想にもあった親父との事があるんだろうが、何故両親はいないんだろう。叔父はもうあの家には帰ってこないだろうと言っていた。回想であれだけ必死に子供達を守ろうとしていたというのに。
 苹果もそうだが、この高倉家も正直幸せな家庭とは程遠く、あまりこの物語の中で幸せな家族というものが出てこない。その辺の事も物語として重要内地を締めているのかもしれませんな。

 話はまだ混沌としておりますが、この混沌がどうなっていくか楽しみだ。とりあえず、謎の女「夏芽真砂子」がそのようなポジションなのかが気になるところ。そしてペンギンマークがどう関わってくるのか。
 次回が待ち遠しくて仕方ない。


06 Mでつながる私とあなた

なんか、すごいサスペンスになってきたな。

 そんな今回のお話は…
 事故にあった元彼女・久宝阿佐美の見舞いに訪れる冠葉。しかし彼女の記憶から、冠葉の存在は消え去っていた。
 同じ頃、自分の「日記」を貸す代わりに協力するよう苹果に言われた晶馬は、苹果の引っ越し作業を手伝わされていた。
 以上公式のあらすじ。

 お話は色々展開し、分かってきたこともあれば新たな謎も出てきて、さらに混沌としてきた。思えば第1話を見てこんなんになるとは誰が予想しただろうか。
 苹果の方は、なんかプロジェクトMとか初夜だとか言い出すのはまぁいいのだけど、ここで苹果には既に亡くなった姉がいたことが判明。あのピングドラムと目される妄想日記は、苹果のものではなくその姉「ももか」のものであった。
 姉も命日に生まれた苹果。ももかが亡くなったことと生まれた苹果のことで衝突する両親。ももかと同級生で特別な存在だったとする多蕗。見つけたももかの日記、記された運命が真実になれば大切な物が永遠となると書かれた日記。苹果はその運命を成就すればももかとひとつになり、全てを取り戻すことが出来ると信じていたのだ。
 となると、むしろ苹果はストーカーというよりは、運命狂信者だろう。まぁたぶん多蕗のことは好きなんだろうが、目的は彼ではなく運命の成就だものな。本来ならばひとつの家族であったはずが、ももかは亡くなり、両親は離婚。幼い苹果が運命に頼ろうとするのも無理もない話。
 しかし、よしんば日記に書かれていることを全てやったとして、そんな都合のいいことが起こるのだろうか、と思わんでもないが、なにせペンギン神様が出てきてそれを欲しがるんだから、日記には何か特別な意味があるんだろう。
 ともかく、これでなんだかよく分からない謎のアイテムであった日記は、亡くなったももかが遺したものであるということ、そしてまだ幼かったであろうももかが、そんな未来日記みたいなものを書いていて、未来を予見するようなことを書けたのかという部分が加わって、なんだかよく分からないアイテムから本当に重要なアイテムへと変わった。もうあの日記はただの妄想日記ではなくなったのだ。
 まぁよく分からないという点は変わってはいないのだが、苹果の物ではないということが「何かあるんだろう」という気にさせる。あるいは本当に何もないのかもしれないが、それによって人が動かされているわけだから、ただそれが存在するということだけで意味がある物なのかもしれないなぁ。
 そーいえば、今回からプロジェクトMとか苹果が言い出しましたが、晶馬は「マリッジ」のMかと予想していたが、生存戦略ということを考えると、きっと「マタニティ」のMなんでしょうね。ってそれをどう成就しようって言うんですかねぇ。なんかもう苹果の計画には随分とほころびがあるんですが、はてさてどうなりますか。

 もうひとつ気になっていたペンギンマークと夏芽真砂子の方は冒頭にも書いたように随分とサスペンス的であった。
 真砂子がハチンコで射出するあの玉は人の記憶を消してしまう。そのシーンはなんとまぁ随分と大袈裟な演出だったなとは思うけれども、そのナンセンスさが逆に怖くて上手く演出されていると思った。
 それはともかく、物語的にはそのペンギンマークのついた玉を真砂子が使っていて、街にはペンギンマークがあふれかえっている。真砂子が大きい組織を使って、あるいは大きい組織が真砂子を使って、何かしようとしていることを窺わせる。
 そして真砂子も今回のラストで「プロジェクトM」を言う言葉を使う。苹果と真砂子の言うプロジェクトMは、一緒のことではないのだろうけど、同じ語句を使っているのが気になって仕方ない。
 今の所は苹果と真砂子に接点はないのだけど、このプロジェクトMという言葉だけで、何かしら関連性があるんではないかと予想させてくれるし、それがどう繋がるのかを楽しみにさせてくれる。全く良く出来たシナリオだ。
 そーいえば、真砂子は口癖なのか、「いやだわ。早くすりつぶさないと」とよく言うのだが、私は「すりつぶす」と聞くと真っ先にリンゴをを思い浮かべた。そういう所から言っても、苹果と、というか日記と何か関連がありそうな気がしてくる。
 まだ物語的には交わりのない線が、まだ見ぬ先で交わっているような気にさせる。まぁ物語なんだから交わってはいるんでしょうけど、何となく微妙に先が読めるような気がするのが、とてももどかしく先を気にさせる作りになっているのが上手い。
 なにより今回一番の驚きであったのは、真砂子が高倉兄弟と同様に傍らにペンギンがいたことだろう。OPでなんで1〜3号の他に岩飛びペンギン(だったっけ?)がいるのかと思っていたら、真砂子のパートナーであったのだ。
 と、言うことはだ。彼女もペンギン神様の関係者、ということにならないだろうか。いや、もしかしたらプリンセスオブクリスタルとは別の何かかもしれず、それが街に氾濫するペンギンマークと関係あるのかもしれない。

 というわけで、何か分かると謎も増え、上記したが話は混沌の様相を態している。あ、そうそう。謎と言えば、苹果の母親が晶馬の名字である「高倉」に「まさかね」と何か知っているふうであった。高倉家の不在の両親も謎のひとつであるが、これも苹果と家と何らかの関連を予想させる。
 よくよく考えてみると、分からないことだらけなのであるが、先述したように「なんだか分かりそうな気がする」という微妙なラインを絶妙につたっていて、物語が気にならない方がおかしいというくらい「気にさせる」パワーがある。
 なんだか分かりそうな気がするのに、この先どう展開して行くが予想もつかない。実に良く出来た構成ではないだろうか。


07 タマホマレする女

なんだったんだろう、今回は。

 そんな今回のお話は…
 多蕗のアパートの床下で生活をはじめた苹果の元に、晶馬は呆れながらも差し入れを続けていた。
 そんな中、苹果の携帯電話に多蕗から「一緒に劇を見に行こう」というメールが届く。
 喜んで出かける苹果だったが、それは恋のライバルにして、東池袋サンシャニー歌劇団の娘役スター・時籠ゆりが主演を務める舞台だった。
 以上公式のあらすじ。

 うーんと、今回のお話はと言うと……苹果の言うプロジェクトMは、マタニティ大作戦であった。というのが判明しただけのような気がする。
 彼女がストーキングする多蕗が、恋敵(と言うべきなんだろうか?)東池袋サンシャニー歌劇団の娘役スター・時籠ゆりと婚約し、にっちもさっちもどうにもブルドックわん!となった苹果が、ネットの怪し気な魔術(?)サイトの情報から、タマホマレガエルの惚れ薬を作ろうとするも失敗し、もう計画を成就するには逆レイプしかないっしょ!ってところで終わった。
 話の進展度としては、苹果の無茶な計画が多蕗と百合の婚約によってついに頓挫したということと、苹果が多蕗と要は「アダルトしたい」(冠葉談)ということなら、それに乗じて一発かまさせて日記=ピングドラムをゲットしちゃおうぜ!と画策する双子(主に冠葉)とペンギン神様。という二点だけである。
 前回、夏芽真砂子の襲撃(とでもいうのだろうか)で、これは前半の転機が訪れたかと思った矢先にこれなのだから、見事に外されたと言って良いだろう。まぁ今回としては、苹果の計画が破綻し、もう無理くりデスティニーしてしまう他ないという所に来てしまった(ちょっと前からそんな感じではあったが)というのが見せたい所なのであろう。
 にしても、まぁコメディとしておもしろくはあるのだが、よくよく考えてみると「これは一体なんなんだろう?」と思ってしまう。サブタイにもあるタマホマレガエルはそんなに重要なのかしら?つーか、2号はモザイクかかっちゃうようなタマホマレガエルの卵喰うし(笑)。
 ともかく、ゆりが出てくる回の苹果妄想の紙芝居的演出であったりの、遊びの強い回で上記したようにあんまり内容は感じられないし、話の進展度もあまりないのだけど、それでも1本分ちゃんと見せているよなぁとは思う。よく言えば割と急展開した前回やこれまでのことを考えると緩急を付けているとも言える。
 この感想を書くにあたって、この7話をもう一度見返してみたわけだが、まぁだからこそ、プロジェクトMの「M」はマタニティの「M」、苹果の「デスティニー」の破綻くらいしか無いとおもえるわけで、1話からの流れとして見ていた初見としては、内容ないなとは感じなかったことを考えると、物語の展開として、この時点で判明する「M」の意味と計画の破綻はちょうどいいのかもしれないなぁ。

 と、いうわけで、改めて見てみると、意外と内容なかった回であった(笑)。なるほど物語とは園全体の流れこそ大切なのだなぁと独りごちたりしてみたり。
 まぁなんにせよ、これから苹果としては、無茶して行かないと計画の成就はならないわけで、もともと無茶な所に無茶して行くわけだから、そらもう上手くいくとは到底思えないし、目的不明な夏芽真砂子もいるしで、これまで同様これから先が見えてこないおもしろさはある。
 正直、次回に何かとんでもない展開が起こったとしても、なんら不思議でないものなぁ。そういうことを考えても、この物語は上手く作ってあるという気になる。


08 君の恋が嘘でも僕は

しょ、晶馬ーっ!!

 そんな今回のお話は…
 時籠ゆりと婚約した多蕗は、新居となるマンションへ引っ越してしまった。がらんどうになった多蕗の部屋で肩を落とす苹果。
 しかし、晶馬が多蕗から受け取っていた転居通知を見つけ、試合続行を宣言する。
 すっかり振り回され気味の晶馬に、冠葉は次も失敗したら自分が力づくで苹果の「日記」を奪うと告げる。
 以上公式のあらすじ。

 最後にまさかの大どんでん返しであったな。
 どんでん返しかどうかはまぁ別として、前回に引き続きの苹果の悪戦苦闘な話に終始するのかと思いきや、ラスト数分で物語がゴロッと動き出した。
 まずはそれまでのことであるが、その辺は前回同様にかなりコメディチックなのだけど、よくよく考えてみるとこの苹果はかなり「イカれている」と言っても過言でなく、プロジェクトMである所の妊娠をするために、睡眠薬を盛ってでもアダルトしようとするのは、実際こんな光景を目の当たりにしたら絶対ドン日期するに決まっているし、何よりその思考が恐ろしい。
 しかしおもしろいのは、実際にあったらそんな恐ろしいことなのに、見ていて何故か苹果のデスティニーの成就を期待してしまうのだ。
 というのも、これまで散々、彼女の悪戦苦闘を見てきたわけだし、何より視聴者である我々は彼女の事情を知っている。そして彼女自身は嫌味のない女の子であり、見方を変えればデスティニー成就のために奮闘する姿は、彼女の飽くなき努力を物語っているとも言え、日本人特有の判官贔屓も相まってちょっとばかり彼女を応援したいと思ってしまっているからだろう。
 物語的には苹果と多蕗が結ばれるような状況は今の所無いに等しい。だが苹果がそれをどう覆そうとするかを期待してしまうのだ。
 見ていてたぶん無理なんだろうと分かってはいるものの、「さぁ!どうなる?」とそれからの展開にワクワクしてしまう。しかし、やっていることは恐ろしいことこの上ない。
 この何か変なバランスを絶妙にとっているような、それとも真意をフィルターを通して別の物に見せているかのような、何かおかしな感じが奇妙で良い。

 物語としては、上記したようにラスト数分で急激に動く。
 それまでのどこコメディな雰囲気はなく、明らかに何かしらの真実に繋がっているような真意を突いている、ような気がする(笑)。
 気になったのは、苹果が自分の意志を全く無視している点で、姉である桃果の命日に生まれた苹果は、姉とひとつになることで、バラバラになった家族が元通りになると信じているのはこれまでに語られたが、今回の苹果の台詞を聞くに、苹果は桃果になろうとしていて、そこに苹果本人の意思は介在していない。現実問題として、日記にあることを全て成就したとしても、苹果が桃果になるはずもなく、もともと彼女のデスティニーはそう考えるとなんの意味もない。
 現実は現実として受け止め、苹果は苹果自身として新しい形を作っていかなければならないはずだ。彼女はそれに気付くことが出来るんだろうか。また、その彼女を縛る日記、これは一体なんなんだろう。
 桃果の物なのだから、これは桃果の妄想日記である。本来はそれだけの物なのに、なんだかよく分からない神代の者がそれを欲しがって、なんだかよく分からないことになっているわけで。
 その日記も今回なぞの人物にかっさらわれそうになり、日記は半分になってしまった。高倉兄弟と苹果しか知らないと思われていたが、奪っていったのだから、それを目的とする輩がいるということで、ピングドラム争奪戦の様相を呈してきた。
 まぁおそらく奪ったのは、これまでの登場人物を考えるに、岩飛びペンギン(だったっけ?)を擁する夏芽真砂子なんだろうが、彼女がこの桃果の妄想日記を手に入れてどうするというのだろうな。謎は尽きない。
 展開的にも、上記三人しか知らないと思わされていたと言っても良いだろう日記が、彼らでない者に奪われるという急激な進展を見せ、プリンセスオブザクリスタル、高倉兄弟、荻野目苹果という三者間の輪から、さらに大きく膨らむこととなった上に、主要人物である晶馬が今回ラストで車に轢かれ、もうこれから先どうなっていくか見当もつかない。

 とまぁ、進んでいないようでちゃんと進んでいるこの物語の続きが楽しみでしょうがないのだが……、これ、最終的にちゃんと収拾つくのかなぁ。何がどうしてどうなったか分かるようになるのかしらね?


09 氷の世界

晶馬は?

 そんな今回のお話は…
 晶馬が事故に遭った頃、陽毬は自宅で、兄弟妹三人で水族館に出かけた日のことを夢に見ていた。
 夢の中で、ほかの人間には姿が見えない不思議なペンギンを追っていく陽毬。兄たちと離れ、エレベーターへと乗り込んだ陽毬は、木立に囲まれた白い図書館に辿り着く。
 以上公式のあらすじ。

 というわけで、前回の引きから見事にすかされて、今回は陽毬が第1話で死ぬまでや、彼女の過去にスポットライトを当てている。
 これまで陽毬は蚊帳の外であって、中心となる人物にも関わらず彼女がどのような人間かはよく分からないと言えば分からなかったわけで。なんか天真爛漫な割にどうも何か含みがあるようで、とりわけ電車の吊り広告でお馴染みのダブルHとの関係がなにやら彼女の心にとげが引っ掛かっているようだ。
 そんなダブルHと家族の事を中心に、まだ幼かった頃の陽毬を描いていて、第一次陽毬死亡までに彼女に何があったかも合わせて見せているわけだが、ここでようやくOPにも出てくる謎のピング髪の人物も登場し、どうもかなりの重要人物のようである。
 お話としては基本的に陽毬の過去を追っていて、学校でのダブルHのふたりとの関係を描いていて、三人でアイドルになるという夢に満ちあふれた幼少期と、現状の陽毬との対比から、陽毬がただ天真爛漫なだけでない人間らしさが垣間見える。
 特別強い友情を紡いでいながら陽毬は学校を去る事となってしまう。その経緯は不明だが(普通に考えれば病気なんだろうが)ともかく親友光莉とヒバリは夢を叶えてダブルHとして今や有名なアイドルである。しかし言えでその姿を見る陽毬の気持ちははどうなのであろうか。
 劇中で陽毬は謎の人物「渡瀬眞悧(わたせさねとし)」の恨んでいるんじゃないの?という問いに、恨んでなんかいないし応援していると応える。が、まぁ普通に考えて、なんとなしにやりきれない想いは当然あろうというものである。
 まぁその辺は正直よく分からないようになっていて、その陽毬の思いも実際何があって今こうなのかという真実は今ひとつ見えてこない。今回はただ、こういう事があったと過去を断片的に見せているだけで、真意はかなり霞みがかっている。見ていて何となく分かったようではあるものの、実際、本当に分かった事は少なく、むしろ謎を多く残している。その辺の分かっているようで分からないという、物語を気にさせる手法は見事だ。
 基本的に分からない事だらけなのだけど、こういう事なのかな?と隙間からちらほらと見えるものがあって、分かったような気になって入るけど、それが本当にそうかは分からないという微妙な所を突いてくる。まぁ回りくどいという意見もあるようだが、個人的にはああなのか、こうなのかと色々想像できて楽しい。それが鼻につくくどさでなく、ちょうど気持ちのいい分からなさが良いのだ。

 さて、個人的に気になった所としては、まずは上記しました陽毬が学校を去る事となった経緯。
 普通に考えれば病気なんでしょうが、なんかそういう感じではなく、出て行かざるを得ない状況であった、ような気がする。というのも、病気が原因であったなら、学校から一人去るシーンがそぐわないような気がするんですよねぇ。あのシーンはどうも陽毬自身よく分かっていないけど、とにかく学校へ行けなくなった、という状況を理解できていないような表情に見えるのだ。一体その時なにがあったのか。
 それと陽毬が探していた本「カエルくん東京を救う」。謎の中央図書館分室にあったカエルくんシリーズの本は全て「カエルくん○○を救う」となっていて、それが全てかどうかは知らないが、陽毬の過去と繋がっているようであった。と、いうことは、そのカエルくんが何者かは知らないが、東京都全体に何かしら影響を及ぼす事があったのだろうか。もしくはそういう事が今後起きるのか。
 まぁそんないきなり「世界を救うぜ!」みたいな話にはならないでしょうが、いろんな何かしらに何かしらの意味がありそうなのは間違いなく、それはもう気になって気になって仕方ない。

 ともかく、陽毬という人物は、その身にプリンセスオブザクリスタルが宿る、以外でも物語の中核を成すであろうことはなんとなく分かった。
 しかし現在、中心となっている桃果の日記と陽毬は接点ないよなぁ。桃果の日記がピングドラムであるのだから、何かしらの接点があると思うのだが、はてさて。


10 だって好きだから

冠葉のストーカーだったってことか。

 そんな今回のお話は…
 目を覚ますと、晶馬は東鴎病院のベッドの上にいた。一晩中付き添っていた冠葉と陽毬から、軽い打撲で済んだものの、念のため検査入院することを告げられる。
 一方、陽毬たちと共にずっと付き添っていた苹果は、晶馬が事故に遭ったは自分のせいだから、晶馬に会う資格がないと廊下で佇んでいた。
 以上公式のあらすじ。

 お話は夏芽真砂子が前々回半分奪われた日記の残りを手に入れる。という話なのだが、これまでなんなのかよく分からない人物であった夏芽真砂子はどういう人物なのかを見せる話でもある。ってゆーか、それだけだったような気がしないでもない。
 まぁ冒頭書いたように、ストーカーだったかはともかく、冠葉に心底惚れているらしく、劇中でもあったように、男としてみたら、そりゃもう「重いなぁ」と思わずにはいられないプレゼントの数々が正直キモイよなぁ。
 お互い好きなのなら、おそらくなんてことはないような気がしますが(あばたもえくぼ、恋は盲目とも言いますし)、こっちがなんとも思っていない人からなんかもらうのでさえ気が引けるというのに、手編みのセーターetcはキツい。
 ともかく、冠葉にとってはこれまで忘れてしまっていた人であったが、真砂子があそこまでして思い出させたいと想いを寄せているのだから、ふたりの関係は並々ならぬものではあるのだが、それが一体どういう関係かのかは全くわからない、のはいつもと同様で、今の所は何かしらの深い繋がりがあるみたい、ということを示したに過ぎん。
 物語としては、最後に出てきたマリオさんなる少年が、プリンセスオブザクリスタル同様ペンギン帽をかぶって登場した事か。
 唯一無二の存在かと思っていたペンギン神様ことプリンセスオブザクリスタルですが、なんだろう、ピングドラム争奪戦に関わっている人それぞれに、ペンギン神様がいるんですかねー。それとも真砂子が高倉兄弟と同じ境遇なのか。
 まぁなんにせよ、この段階では全然分からないうえに、今回はなんか後藤圭二が一人で何役もやっていて、正直アニメーションとしてもおもしろい所は無かったなぁ(私は彼があんまり好きではなかったりするのだ)。
 まぁ物語的には、苹果の手から日記が失われて、ピングドラムを巡る動きがどうなるのか気になるところであり、高倉兄弟と苹果の縁と言いますか因果と言うかはどうなってしまうんでしょうね。特に苹果は日記の所持者でなくなったのなら、ピングドラム争奪戦の輪から外れてしまうような気がしますがはてさて。

 とまぁ、こんかいはそんなもんである。が、続きが気になって仕方ないのは変わらずで、物語がどうなるのかを気にさせてくれるのは上手い。
 正直、これからどうなって行くか全く予想がつかないものなぁ。というか、上手く折り畳めるのかな?


11 ようやく君は気がついたのさ

割と内容は無いな。

 そんな今回のお話は…
 苹果から残る日記の半分を奪った夏芽真砂子から日記を取り戻すため、冠葉は真砂子の家へと赴く。だが真砂子は自分たちにも日記は必要だといい、日記を渡そうとはしなかった。
 一方、苹果は、日記が姉の桃果のものであることを晶馬に明かす。そして姉が死んだ日に生まれた自分は姉の生まれ変わりなのだと主張する。
 だが晶馬は「君は君だ」と返すのだった。
 以上公式のあらすじ。

 お話は簡潔に言えば、サブタイ通り苹果が晶馬を好きな事に気付く、のがメイン。なんだけど、そんだけでよく一本作ったなという印象。
 今回ラストの方の桃果が死んだのは高倉兄弟の所為という引きは、おそらく次回の方が詳しいので、やはり今回は上記の事柄さえ分かっておれば良いだろう。
 冠葉と真砂子の方もイベントがあったが、正直な所、何を言っているんだかさっぱり。両者分かっている事を前提で喋っているので、分かってない視聴者としては、どうもふたりにあさはかならぬ事情があるらしい事くらいしか分からない。
 というわけで、物語の進展度は遅々として進んではいないような気がするが、とりあえず最初の多蕗のストーカー苹果がピングドラムとおぼしきモノを持っていて高倉兄弟がそれを狙う。から、苹果が日記を失い、桃果としてでなく苹果として多蕗でなく晶馬が好きなんだと気付いた事から、第2ステージへ移行していると言っていいだろう。
 まぁそんなわけで、実は書く事があんま無かったり(笑)。
 冠葉と真砂子の関係を示す前半は良いとしても、それ以降のヒメホマレガエル(だったっけ?)のドタバタ劇は、割とどーでもいーちゃぁどーでもいい様な気がせんでもないな。
 苹果が自分の気持ちに気付くという点で、そこへ至るまでの過程ということなんだろうけど、なんだろう、あんなコメディチックにする必要があったんでしょうかね?まぁ上手いはずしと言えばそうなのかもしれませんが、この調子で行くと、最後に上手くまとまるのかどうか心配になってきちゃうんですけど。最後に詰め込みすぎとかにならんでしょうね?
 そもそもなぁ、あのピングドラムとおぼしき日記に、どれほどの価値なりなんなりがあるのかすら語られていないからなぁ。ピングドラムがなんなのかも分からないし。
 もうちょっと見えてこればいーんですが、今の所は見てくれの関係性しか見えないので、誰もが心の奥底でどう思っているかとか、本当はどんな事情があるとか全くわからない。
 でもそれが割とサラリと流されている感じは上手く、そういった先の展開を読む事よりも、目の前で起こっている事に集中しちゃうような作りになっている、ような気がします。きっと、あとから「あぁ、そういえばそんなこともあったが、そういうことだったのか」とか思うんだろうなぁ。

 個人的にちょっと気になったのは、ラストの方の桃果が死んだのは高倉兄弟の所為の件で、OPのアイコン(?)の丸に95の「95」は一体なんなんだろうと思っていたんだけど、どうも劇中はリアルと一緒の時間みたいで、1995年を表しているみたい。95年で地下鉄って言ったら「地下鉄サリン事件」だよなぁ。
 なんだろう、桃果もそんな事件に巻き込まれてしまったんでしょうかね?


12 僕たちを巡る輪

過去話と陽毬第二次危篤。

 そんな今回のお話は…
 昔起こった事件で多くの人が死んだ。死亡者の中には、10歳になった苹果の姉、桃果も含まれていた。
 この事件を起こしたのは、晶馬たちの両親である剣山と千江美。2人は犯罪組織の幹部だったのだ。
 その事実を苹果に明かした晶馬は、君の姉さんが死んだのは僕たちのせいなんだと告げる。
 以上公式のあらすじ。

 お話は冒頭に書いたように晶馬たちが生まれた時に起こった事件と陽毬の第二次危篤、そして9話で登場した謎の人物の再登場。
 晶馬たちが生まれたときの起こった事件は、現実に照らし合わせれば地下鉄サリン事件、あらすじにあるように晶馬たちの両親が地下鉄で事件を起こした数の死傷者が出て、その中に苹果の姉である桃果も含まれていた。
 で、なんで晶馬たちの所為なのかという話だが、子供が生まれる事が地下鉄事件発動のにお設定されて板からのようである。まぁつまるところ、自分達が生まれた所為で事件が起こったという事なんだろう。なんにしても迷惑な話である。子供は親を選べないのだから。
 まぁそれはともかく、苹果と高倉家を結ぶ因果が提示されたのはいいのだけど、ピングドラムと目される日記を失った事で、プリンセスオブザクリスタルがあの世界に降臨できなくなった模様で、陽毬も危篤状態というか、心臓止まって引きましたよ。
 陽毬はメインキャストなんでこの段階でいなくなる事はないと思うんで、次回あたりなんだかんだで生き返るんだと思いますが、プリンセスオブザクリスタルはいなくなってしまったようだし、日記も手元に無いしで話はこれからそうなってしまうんでしょうね。今度は日記を取り返す云々の話になるのだろうか。
 そうそう、そういえば、第1話の不思議空間でプリンセスオブザクリスタルことペンギン神様に胸からなんか玉を取られたのは難だったのかと思っていたら、命を分け与えていたんですねぇ。しかもシルエットだったので、落ちていった晶馬かと思っていたら冠葉の方であった。それでその分け与えた命も尽きた、というころでのペンギン神様の退場=陽毬の死という事のようだ。
 と、このように「ああ、こういう事だったのか」と上記事件の事をも含め、分かったような気になりはするんだけど、物語的にはむしろ分からない事の方が多く、しかも謎の人物も出てきたり、メリーさんのひつじの話とか、どこにどう絡んでくるか分からないことだらけだよなー。ペンギン神様はヤツを止めろとかなぞの言葉を遺して消えるし。
 そんな彼女の言葉のひとつに運命の黒ウサギがやってきて云々とあったので、謎の人物こと眞悧が連れている子供と言うかウサギと言うかを見ると、どうも眞悧がかなりの重要人物のようである。

 とまぁ、上記したようなことが今回起こったことなのですが、物語の進展度としては、晶馬が過去を語りペンギン神様が退場して陽毬が危篤し、最後に眞悧が現れた。というだけだよな。なんか進んでいるようであんまり進んでいないのではないか?
 そもそもこの物語がどういう方向へ向かって何を指し示したいのかもよく分からん。まぁ分からないからこそ知りたいとも思うわけだが。

 難にせよ続きが気になることには違いない。話をこれからどういうふうに持っていってどう締めようといているのか気になって仕方ない。


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