カットとスライスの違い
カットとスライスは、飛び方やバウンドの違いで分けられることが多い。表1,図1で概略を説明する。
カットボール | スライスボール | |||
縦カット | 横カット | 這うスライス | 沈むスライス | |
飛び方 |
浮いて飛ぶボールが着地してからバウンドが戻ったり、その位置でバウンドする。図1-a 参照 ボールの回転数や接地角の大小で、着地した後の戻る方は変わる。 |
浮かずに糸を引くように飛ぶボールは、落差の大きいボールよりバウンドが小さく、接地角が小さい程バウンドは小さくなる。図1-b 参照 概して、カットよりボールの回転数は遅い。 |
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使い方 |
トップスピンの良く掛かった速いボールへの対応 | 遅いボールへの対応。トップスピンの掛っている方がやり易い。 | トップスピンの良く掛かった速いボールへの対応 | |
特徴 |
・ボールが白く見える程に速く逆回転する ・ボールが浮き上がる ・バウンドが戻る。回転が速い程 ・飛距離が短い |
・フラットボールのようにほとんど回転しない ・真っ直ぐに飛ぶ。ボールコントロールし易い ・弾みの小さいバウンド ・飛距離が長い |
カットの打ち方
カットとは、ボールに逆回転(バックスピン)を掛けてイレギュラーなバウンドをさせるテクニック。
意表を突くバウンドになるのでレシーブするのが困難になってミスを誘発しやすくなる。
フォアカットの打ち方
ラケットを水平又は斜めに振って、ボールに逆向き回転(バックスピン)を掛ける打法。
ドライブ(トップスピン)の掛かったボールの返球に適している。
・直ぐに握り替えられるようラケットを遊び手で軽く支える
・体の前方でラケットを構える
・膝を少し曲げた前かがみの姿勢をとる
。足のかかとを軽く浮かすか、体を左右に軽くゆすりながらタイミングをとる
ボールの飛んでくる方向に体(胸)を合わせるのと、ラケットを握り替えながらのテークバックを同時に行いながら守備位置を決める。
ラケットの握り替え方の例として次の方法がある。
・横カットの時は、ラケット面が水平気味になるようにコンチネンタルグリップに握り替える
・縦カットの時は、ラケットの面が垂直になるイースタングリップに握り替える
又、守備位置は図3の「ステップイン」のように、踏み込んでカット出来るよう、下がり気味が良い。
図2の「ステップアウト」のように下がりながらでも踏み込めれば良いが、下がりながらf打つと振りが遅くなって力を入れ難くなるので出来るだけ避けたい。
・ステップアウト:左足(軸足)を残して右足(利き足)を右後ろに下がってから踏み込むステップ
・ステップイン:右足(利き足)を残して左足を左前方に踏み込むステップ
フォロスルーの後は、すぐにレシーブの体勢に戻る。
フォロースルーの理由は、フォアドライブの場合と同じ。
バックカットの打ち方
左手側でボールに逆向きの回転(バックスピン)を掛ける打法。
テークバックしたラケットを遊び手の左手でラケットを支えると次の動作に入りやすくなって、ラケットの振りが安定する。
縦カットについては図7参照
カットの時と同じ
縦カットについては図7参照
スライスの打ち方
フォアスライスの打ち方
図2のフォアカットと異なるところを説明する。
スライスはカットとは違い、正確なボールコントロールをすることを目的とする。
トップスピンボールをスライスする時は、ラケットの面を垂直に立てる。
理想のスライスボールは、糸を引くように直線的に飛び、床を這うようにバウンドするボールだから、そうなるように打つ必要がある。
そのためには、接地角を小さくする必要がある。
接地角を小さくするには、ー
・低い軌道であること。ネットギリギリの軌道がベスト
・速いボールであること。遅いボールだと接地角が大きくなってバウンドしやすい
・直線状の弾道を得るために、ボールの落下量を補えるほどのバックスピンを掛けること
ーが必要になるので、これを満足する打ち方をしなければならない。
その一つの打ち方として、図8に図説するトップスピンボールをスライスする方法がある。
その方法とは、まず、
・ラケットの面が垂直になるようにラケットを握る
そして、
・トップスピンボールに対しては、ラケットを右上から斜め左下に直線状に動かす。図8-a参照
トップスピンボールは順回転のボールでドライブされたボールのこと
・バックスピンボールに対しては、ラケットを右下から、斜め左上へ直線状に動かす。図8-b参照
バックスピンボールは逆回転のボールでカットでされたボールのこと
・いずれの場合も斜めにする角度はボールの回転数に比例させる。
・叩くように打つと速い球を打つことができる。
そんな打ち方をするには、まず、ラケットコントロールがしやすい振り方が必要である。
その方法として、ー
・テークバックで開いたの脇を徐々に閉めるようにしながら30~40cmの距離を叩くように振る。
ー、ことである。
要は、スピンしているボールにいかにして意図するバックスピンを掛けてから速い球を打ち返すかである。
バックスライスの打ち方
基本的には、フォアスライスの場合と同じ。フォアの面と反対面になるようにラケットを握り替えるだけ
カットボールの物理
これまでに説明したカットボールの挙動で、ボールが浮いたり、着地の後にバウンドが戻る理由についてこれから説明する。
ボールの浮く理由
回転しながら飛ぶボールには、回転軸と直角方向に揚力(マグナス効果)なるものが発生する。図8参照
図8では、進行方向に向かって上向きに回転しているカットボールが右から左に飛んでいる様子を表している。
この時、ボールに接している空気との下面と上面の相対速度は、ボールの回転速度の2倍分だけ上面の方が速くなる。又、ボールに作用する力(空気の圧力)は上面の方が下面より相対速度が速くなった分だけ低くなる。結果、ボールには下から上へと持ち上られる揚力(マグナス効果)が作用する。
従い、カットボールの軌道はボールに重力(ボールの重量)より揚力が大きいとボールは浮き上がり、等しい時はそのままの高さにとどまる。又揚力が重力より小さい時ボールは沈む。
その様子を図9の「カットボールの軌道」で示し、回転していない「フラットボールの軌道」と対比する。
図9中の「カットボールの軌道」の「A」、「B」、「C」は、ボールの球速と回転数で変化する。
ボールの戻る理由
カットボールのボールは逆回転(バックスピン)しながら飛ぶ。
逆回転しているボールが床面に接地すると、ボールには床面との間の摩擦力と回転力で飛んで来た方向とは逆の方向に戻そうとする接線力が働く。
摩擦力は力(加速度×ボールの自重)と摩擦係数の積だから、摩擦係数を一定とすると摩擦力は力に支配される。即ち、力は落差で決定される加速度に影響されるから落差に支配される
又、回転力(回転エネルギー)は回転数の二乗に比例するから同じボールなら回転数に支配される。
以上から、ボールの戻り量は回転数と落差に支配されることが分かったので、威力のあるカットボールを打つためには回転数と落差を目的に適うように組み合わせる必要がある。
図10に回転数と落差(≒接触角)とバウンドの関係を、aに落差と回転数が大きい場合のバウンドと、bに回転数と落差が小さい時のバウンドを図解する。
カットボールを打つのは『レシーブされ難い』ボールにするためなので、弾みが小さくて素早く戻るボール、図10-bのボールがスリップして空回りした後に転送するボールを打つのが効果的と思われる。