ハンドアクセラレーション

ハンドアクセラレーションとは

ハンドアクセラレーションを英語で書くと、『Hand Acceleration』で、和訳すると『手を加速する』、即ち『ラケットを加速する』と言うことになります。
加速とは、時間の経過とともに速度を上げる又は下げることで、ラケットを静止状態からトップスピードまで極力短時間で加速することを意味します。

ハンドアクセラレーションの効果

ラケットが重くなる

ニュートンの慣性の法則では、『物体は外部から力を加えないと動かない』と言うことです。このことを式に表すと、加速度"α"は、力(F)=質量(m)・加速度(α) になります。即ち、力を加えると言うことは『加速する』ということですので、力"F"は加速度"α"に比例することになります。
このことは、加速度が大きくなると、力が大きくなることを意味しています。
例えば、加速度をつけてラケットを振ると、加速した分だけラケットの重さが重くなります。ですから、一秒間に秒速9.8mだけ加速すれば1Gの加速度が働いた結果、280g程のラケットが、1G+1G=2G=2倍の560gになります。
ラケットのスイングが等速度で加速されない時はラケットの重さは280gで変わりません。
加速度でラケットが重くなることは、ボールの反発係数(反発力)が大きくなることになります。

打撃速度が速くなる

ラケットを加速させると、ラケットの重量が重くなるのに伴ってボールの反発係数が大きくなることで打撃(反発)速度が速くなり、威力のあるボールが打てるようになります。
又、ボールがより多く潰れることで、ボールとの接触時間も長くなりますのでボールコントロールが容易にもなります。
このことの例えとして、車体重量が1対1.8倍の自動車が時速50kmで衝突した時の車に掛かる衝撃力は、軽い自動車は重い自動車の2.4倍になり、同じく、衝撃力を自動車の質量で割った加速度も2.4倍になるので、軽い自動車は飛ばされてしまいます。これと同じことがラケットで打つボールにも同じことが起きます。
但し、反発の度合い(反発係数)は、球速が早くなるにしたがって反発係数は小さくなる(弾み難くなる)性質のあることを留意する必要があります。

ハンドアクセラレーションの方法

慣性モーメント

ラケットを振ると言うことはラケットを円運動(角運動)させることです。
ラケットのように回転運動をするものにはすべからく質量のもたらす慣性モーメントがあります。
慣性モーメントは回し難さや止め難さを表すものであり、その大きさは回転半径の二乗で利いてきます。
従い、回転半径が長いと同じ質量(m)でも慣性モーメントは大きくなりますので腕を一杯伸ばして振る時(r3)の慣性モーメントは最大になりますし、振る時に大きな力が必要になります。
対し、手首で振る場合のように回転半径(r1)が短いと慣性モーメントも小さくなって、楽に、軽くラケットを振れますし、加速をつけるのも楽になります。
以上のように、慣性モーメント(I)は、質量(m)と回転半径(r)を二乗との積の、I=m・rで表されます。
図1のように、質量mからの距離、mから手首までと肘までと肩までの半径の、r1を30cm、r2を56cm、r3を80cmとし、質量mを0.280kgとするときの、慣性モーメントは、252、878、1792kgcm2になり、手首で回した時を"1"とすると、その比率は1:3.5:7になります。いかに手首で加速が付けやすいかが一目瞭然です。
又、ラケットを振りまわす力である回転トルク(T)は、T=I・α(角加速度)で表されますので、回転トルクは慣性モーメント(I)と角加速度(α)に比例します。
この角加速度のことをハンドアクセラレーションと言います。
角加速度(α)は、速度の変化量を変化時間で除したものですから、α=(V2-V1)/Δt で表されます。
この式からわかりますように、同じ速度変化量でも変化時間が短い方が角加速度は大きくなりますので、いかに短時間で加速をつけるかがハンドアクセラレーションのポイントになります。

ラケットの振り方

慣性モーメントの項で述べたように、回転半径(r)が小さい方がラケットを振りまわすに必要な力が小さくて済みますので、回転半径の最も小さい手首だけで振るのが最適で、手首と前腕を合わせて振るのが次善です。

①手首で加速をつけるには、ラケットを握った手首を反らせ(背屈)ながらテークバックをして貯めを作っておい
 てから、フォワードスイングで加速をつけながら、インパクト直前で手首(背屈から掌屈)を反します。
 図1を参照下さい。次に、ワンポイントを列記します。
 *加速はより素早く行う。加速度は時間当たりの速度の変化だから時間が短ければ短い程大きくなる。
 *肘を前に出すようにすると必然的に手首が背屈します。

②肩と身体を回して加速をつける
 左腕をテークバックと同じ方向に肩を回して蓄えたバネ力を開放することで、スイングに加速をつけることが
 できます。又、同時に骨盤を回す(身体を回す)ことで更に加速がつきます。いわゆる、ショルダーターンとボデ
 ィターンを同時にすると言うことです。

③踏み込みで身体に反動をつける
 踏み込んだ時に急ブレーキを掛けて下半身の動きを止めると、反動で上半身が前方に押し出されて加速がつ
 きます。

*断り:図1ではラケットの面がテークバックの時にも立っているように描いていますが、これは、このようなテークバックもあり得るという意味合いのものですで、必ずしもこのようにする必要はありません。
実際は、水平にするプレーヤーが多いようです。この場合、テークバックからフォワードスイングに入るところで腕を回して面を立てます

慣性モーメント

図1:慣性モーメントの回転半径とハンドアクセラレーション

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