奥居合の部


奥居合 坐業と立業とあり
坐業
 霞
 脛囲
 四方切
 戸詰
 戸脇
 棚下
 両詰
 虎走
 
立業
 行連
 連達
 総捲
 総留
 信夫(暗討)
 行違
 袖摺返
 門入
 壁添
 受流
 暇乞 一
 暇乞 二
 暇乞 三

刀の納め方
鍔元より三寸乃至五寸まで一気に納め後は残心にて徐に納める

血振
動作の最後に血振を行い引き続き刀を納める
動作を早くするため正座立ち膝の場合のごとく振りかぶりを深くすることなき場合多き事ありといえども、習熟の結果早く振りかぶりて浅くなるのであって、威力は強くなければならぬ。だから、稽古の時は正座の動作のごとく正確に大きく心掛けて何十年か後に早く強くなることを期待すべきである。特に手の内の作用を練磨するのであるから手の内よくしまる必要がある。
 



〔坐業〕

第一本目 霞

座り方
正面向き立ち膝

意味
正面の敵に横一文字に抜きつけ間髪を入れず反転して敵の足を右より左に薙ぎ切り更に上段より切り下ろして仕留める

方法
1.横雲の第一動
  右膝を立て腰を上げるが足は踏み出さず十分に胸を
  張ること

2.第一動を終わると右足を踏み出し同時に手の掌を上
  に右拳を十分に返し(右手下がらぬよう注意)刀先を
  右後ろ刃を前に刀を平にし、右より左へ上体を前方
  に十分に(胸が右太腿につく位に)屈しながら敵の脚
  を払い切り
  
  右拳が左上肘の外方に来た時に上体を起こすと同時に
3.上段にかぶり両手にて切り下ろす

腕を右前斜め下に延ばして血振(横の血振)
第三動と間を置かず引き続くこと
鍔元より三乃至五寸まで一気に刀を納め後は徐に納めつつ右足を回して左足に引きつける



第二本目 脛囲
座り方
正面向き立ち膝

意味
相手が切り来るを体を後ろに引き敵刀をはずし、元の位置にある右足の脛を防ぎ間髪を入れず、上段より切り下ろして仕留める

方法
立ち膝の虎一足に同じ
異なる点は血振、納刀



第三本目 四方切

第四本目 戸詰
座り方
正面向き立ち膝

意味
自分を中心として右斜め前、左斜め前に自分の方向に向いて監視する敵あり、これに対するもの

方法
1.斜め右前の敵に対して刀を大きく上より右片手にて
  斬りつける。右足はその方向に出す。右拳は右脇に
  ひきつけしめること(肘を十分締める)

2.斜め左前の敵を切り下す
  切りつけたる剣先を下げることなく右に受け流しつ
  つ両手にて上段に振りかぶりながら右足を左斜め前
  の敵の方に踏みかえる。体を左斜め前に向け上段と
  なりきりおろす
  左斜め前向きに納刀する。

血振 納刀
納刀を終わりたる時の向きは左斜め前向き



第五本目 戸脇

第六本目 棚下

第七本目 両詰

第八本目 虎走
座り方
正面向き立ち膝

意味
前方にある敵に走りかかりて抜き付け更に切り下して仕留め、更に別の敵に対して後退しながら間合いをとりて抜き付け斬り下ろして仕留めるなり

方法
1.立ちあがり上体を前屈小足小走りにて前方に進み、
  右足を大きく出して立ちあがりと同時に柄を握る。
  左膝を低め、右足を前に立て、鱗返しの時のごとく
  膝をつかず横一文字に抜きつけ膝をつけて上段より
  切り下す。
  血振、納刀

2.納めながら前進と同じ方法を以って後退し、左足を
  大きく後ろに引き元の位置に戻り、左膝を低め右足
  を前に立て第一動と同様横一文字に抜きつけ諸手に
  て上段より切り下す

血振 納刀
前進後退共に腰揺れざるよう、また刀の鞘上下に動かざるよう注意。


〔立業〕

第一本目 行連

立業
静かに歩む

意味
両側に敵と三人横に並んで歩行中敵を切る

方法
1.右斜め前に踏み出し、刀を大きく抜いて右斜め前
  に斬りつける。刀は右足より外側、抜け手になら
  ぬよう充分に手首を締める事。右方手切りなり。

2.右に受け流し上段に刀を構える時左手を副え左斜
  め前に右足を踏み出し、敵正面を切り下げる。

血振 納刀
形は坐業戸詰の立業。動作に段をつけぬこと。歩行、斬り付けいづれも自然の歩みの足運びなるべきこと。前進は右足から、後退は左足から一歩一歩進退する。



第二本目 連達
立業 
歩みつつ

意味
自分を中にして右側の適は少し前、左側の敵はやや後れて三人横に雁行の形にて前進中敵をしとむる業なり。

方法
動作としては坐業戸脇に同じ。但し右側の敵を牽制すること無し。

左足が出た時、左手鯉口、右手柄、同時に刀に手をかけ、右足が出る時右足でやや右斜め前に踏み出すと同時に戸脇の時の要領で刀を抜いて剣先は胸を基準として刀の差し裏が上になる如く水平に抜き斜め左後の敵の胸をつき、すぐ引き抜きざま体を右斜め前の敵に向けると同時に上段の姿勢となり、左手を柄にかけると同時に敵の頭上より斬る。



第三本目 総捲

第四本目 総留
立業
歩みつつ

意味
水田の畦道の如く細長き通路にて敵多数あるも我に向かうためには一列縦隊になりて来る他無き場合の対敵動作なり。(山内豊健先生は、並べてあるのを切っていく刀法といえり、また伏兵を切るともいえり)

方法
右足出た時大きく袈裟切り、体は左向き半身なり
納める刀先鯉口に入るや左足を出して体はやや右側向き
となるなる時納刀、但しハバキ近きところまで。右足を
出して大きく袈裟切り。
繰り返す。
通常三回行う。

正面に向き血振 納刀
<足の運びと、納当の関係大切である。初めはあまり早く練習せず、納刀と脚の関係を考えてゆっくり動作して習熟してだんだん早くなるのが良い>



第五本目 信夫(暗打)
立業
歩みつつ

意味
暗がりにて前進中、敵前方より歩み来る気配を察して道をそらして刀先を前の通路路上に打ち当てあたかも切りつけれる所空をきりしものの如く思わせ、敵われそこにありと誤認打ち込み来たるを上より切り下す。

方法
歩みつつ直ちに前進方向を左に取り、左足を斜め左前に
踏み出して次いで右足出た時抜刀。抜刀は体に近く従っ
て体は左向きなり。そのまま体に近く刀を頭上を超えさ
し右手を背に伸ばし刀先を床に触れる。上体は後ろにそ
らすなり。
そこまでの動作はおもむろなり。

刀先床に達し音がすれば忽ちに身をひるがえし正面に対
して斜め右に左右足を出して上より切り下す。左足を出
した時に刀を上段に振りかぶる。
この動作は敏速に行う。

血振 納刀


第六本目 行違
立業
歩みつつ

意味
我を中にして前後に敵ある場合あるいはその形で一列縦隊で歩いている場合の業なり

方法
下げ緒を緩めるかはずし置くこと
歩みつつ左足前のとき柄を握り、右足を大きく踏み出し
刀を抜くことなく両手を伸ばして柄頭を以って敵を突く。
鞘を戻して抜刀。そのまま後を向くと同時に諸手にて刀
を頭上にして切り下し(左回りなり)そのまま、後ろ向き
(右回り)正面に切り下す。

血振 納刀
抜きつつ後ろ向きとなり、ちょうど後ろを向いた時鞘はなれ上段より切り下すこと。抜いてから後ろを向くにあらず。(抜きながら、後ろへ回りながら、振りかぶりながら)



第七本目 袖摺返

第八本目 門入

第九本目 壁添
立業
歩みつつ

意味
敵は前面に在り我両側障害在り刀の操法不自由なる場合刀を上下方向に主として用いて敵を倒す業なり

方法
歩みつつ右足の出た時上方に抜刀。真向の時の如く
刀身を上体にそわして上体左側より振りかぶり、同時
に左を右足にそろえ爪立て、両拳を体の前面に近く
切り下ろし、右足の前にて刀身を下げて血振。上方
より刀を納め踵を下ろす。



第十本目 受流

第十一、十二、十三本目  暇乞 其一、其二、其三
正面向き正座

意味
暇乞いの挨拶を成し、或いは其の時相手の敵意を察し、又は相手の切り付けを左方に受流しながら真向かいに抜き打つ業なり。
三本あり

方法
其一 少し頭を下げる(黙礼程度)

其二 少し深く下げる(普通挨拶程度)

其三 上体を前に屈し、頭を深く下げて刀の柄及び手を
   かけるのを前より見えないようにする抜き打ちな
   り。

振りかぶり間隙無く斬り下ろすこと。振りかぶり刀を止めること無し。
抜くと同時に体を起こすなり。上体を起こして抜くにあらず。



番外(奥居合が完成してから実施するのが良い)
    
 |目次へ次頁へ|